予測が難しいAI時代だからこそ注目される「教育」をテーマにした「子どもの未来のための教育カンファレンス2024」が、2024年12月21日に開催され、多くの教育関係者や家族連れで賑わいました。本イベントでは、AIやCanva(キャンバ)をテーマにしたトークセッションやワークショップが行われ、参加者の関心を集めました。今回はデザインツールの「Canva」や、教育版「マインクラフト」を使ったワークショップの模様をお伝えします。
「Canva」でオリジナリティあふれる年賀状作り
iPadに入れた「Canva」を使って、小学校低学年でも簡単に年賀状作りが行えるワークショップです。「Canva」は、誰でも簡単にデザインを作成できるオンラインツールで、テンプレートやドラッグ&ドロップ機能を活用して、プレゼン資料をはじめポスター、SNS投稿、名刺などをデザインできます。デザイン初心者からプロまで幅広く利用されるソフトです。
まずは今回のワークショップのために用意されたCanvaの年賀状用テンプレートの中から好きなデザインを選びます。そこからイラストや写真を選ぶ(その場で撮るのもOK)、イラストを作るなどしてオリジナルの年賀状にしていきます。

ワークショップには「Canva公式クリエイター」が講師としてついてくれ、わからないことはその場で質問して教えてもらえました。

対象年齢は小学校低学年からですが、お姉ちゃんと一緒に許可を得て参加していた幼稚園年中の男の子は、Canvaのデザインからドット絵の土管とその上に人が載っているイラストを選択し、ゲーム風のデザインに。年賀状というテーマからは遠くなってしまいましたが、年中さんでも、タッチ操作でメニューから選んで配置するだけで、簡単にデザインできるのはいいですね。
こちらも小学校低学年の女の子です。もとのテンプレートとは違うデザインを選んで自分で文字入力もしています。アニメーションの設定で、自分で作ったヘビの画像を左右に動かす設定をしています。動く年賀状ができあがりました。
こちらは学校の先生の作品。「マジック生成」機能を使うと5つのキーワードからオリジナルのイラストが作成できます。「カッコいいヘビ」と入れたところ、サングラスをかけたカッコいい男の人が出てきました(笑)。
実際に体験させてもらいました。Canvaでデザインをするのは初めてだったのですが「こうしたい」と思ったことが、メニューを選ぶだけで簡単にできることに驚きです。「マジック生成」でヘビを作ってみたのですが、思っていた以上にリアルで怖いヘビに…。

完成した年賀状は印刷して実際に送るのはもちろん、「動く年賀状」などはURLでメールやLINEなどで送ることも設定ができます。参加者それぞれ、思い思いの年賀状が完成し、笑顔があふれたワークショップでした。
教育×ゲームのプロが監修!「金融を学べるマイクラ」
続いて取材したのは「金融を学べるマイクラ」です。「マイクラ」とは「マインクラフト」の略で、ブロックでできた世界を探索し、素材を集めて建築や冒険を楽しむゲームです。講師は マイクロソフト認定教育イノベーターで、埼玉県立越谷西特別支援学校の先生・佐藤 裕理さんです。ワークショップが始まって最初のスライドは「みなさん、お金、ほしいですか?」。参加者全員が手をあげます(笑)。
続いて、お金を稼ぐには、どんな方法があるかをみんなで考えていきます。子どもたちからも「働く」「ギャンブル」「株で稼ぐ」というのはすぐにあがりましたが「不用品を売る」「お金を借りる」や「おこづかい」は盲点だったようです。
お金はいろいろな方法で稼げることがわかったところで、いよいよ本題。ワークショップで使うのは「教育版マインクラフト(教育目的に特化して設計された特別バージョン)」用のオリジナルワールド「クエストオブファイナンス ~勇者の武器はお金の知識~」で遊びます。
このゲームは、現実に起こりうるお金に関するできごとをゲームの中で疑似体験することで金融リテラシーの必要性を実感できるようにと、教育のプロ・正頭英和先生と、日本で最初のプロマインクラフター・タツナミシュウイチ先生、株式会社SCRAPとSMBCグループが開発した教材です。
参加者の手元には「勇者新聞」が配られており、ワークショップの開始前から読むことができました。講師の佐藤さんが勇者新聞をスライドで出しながら、ゲームの目的が「大魔王ヤミクモスが復活する前に伝説の剣を抜くこと」と「そのためには借金がない状態で100コイン貯める必要がある」ことを明かしました。
問題は「大魔王の復活までの30分間にどうやってお金を稼ぐか?」です。このゲームには、さまざまな方法でお金を稼ぐことができます。まずはお金を得る方法を考えるのですが、ここでは佐藤さんが作成した補助教材のカードを使って、100コイン貯めるまでのプランを練ってワークシートを組み立てます。
紙の表側にはイベントで手に入るコインやアイテムが、裏側には表側のイベントがどこで行われるか地図が書いてあるので、ワークシートを見ながら次の行動がスムーズに行える仕組みです。

例えば「スライム」や「ヒーリングストーン」などの素材は、そのまま素材屋に安く売ることができますが、両方をかけあわせてポーションにすることでより大きな利益を出すことができます。そのほか、冒険者にお金を預けて時間が経つと預けた額より多い報酬を得たり、炊飯器を安く買って欲しい人に高く売るなど、商売の基本や仕組みがしっかり詰まっています。これは大人でも考えはじめると悩んでしまいますね。
参加者の小学生は木を切って報酬をもらい、その木を家を建てる人に売ってさらに利益を得るなど、着実な方法でお金を稼いでいましたが、街にいた「泥棒」に全財産を盗まれてしまい、本気で怒っている様子も見られました。佐藤さんは「現実にも詐欺や泥棒などにお金を盗まれることがあります。でも、ゲームの場合はやり直しができるから安心ですね。ゲームの中で盗まれたとしても『よい経験』になりましたね」となだめつつ、「スタート時点のお金を持っていない状態で泥棒に会えば二度と出現しない」という攻略法もそっと教えていました。
記者が実際に体験してみたところ、予定していたプランが途中で崩れてしまい、どうしても時間までに100コイン稼ぐ手段がなくなってしまいました。そこで、くじびきに頼ってみたところ、見事「3%の確率で100コイン」を当ててクリア! もう一度挑戦してみたところ、泥棒にあってしまって失敗という結果に…。

全員が1プレイ終わったところで、佐藤さんは「ゲームのいいところは、いろいろな方法でクリアできますし、失敗しても何度でもやり直して、違う方法が試せること」と教えてくれました。例えばお宝図鑑を買ってお宝をみつけて売れば100コインが手に入るなど、知識があると損をしない方法に気づくことができます。
じつは、ワークショップ開始前から配っていた「勇者新聞」には冒険のヒントが多数ちりばめられていて、時間前にきた人はゲームを有利に進める知識が学べるチャンスがありました。佐藤さんが作ったカードは、新聞の内容の一部だったので、さらに読み込むと攻略が楽になるのです。こうしたところも知識が現実に役に立つ例になっています。

理科×マインクラフト「リカクラ」
「リカクラ」は教育版マインクラフトを使って理科の実験をするワークショップです。講師を務める愛知県江南市立古知南小学校の岩田智文先生は、ICTを活用した授業に定評があり、マイクロソフト認定教育イノベーター(MIE)として活躍しているほか、生徒の自発的な学びを促進する取り組みが評価され、日本に6人しかいない「MIE Fellow」に選出されています。

「教育版マインクラフト」では、科学ブロックや鉱石、多様な動物とバイオーム(気候や地理的条件に基づいて特徴づけられた生態系)が再現されており、この日も複数のメニューの中から、参加者からリクエストがあった「化学イージーモード」が選ばれました。

参加者の中に「マインクラフト」に初めて触れる人が多かったため、本題に入る前に操作やできることのチュートリアルを行いました。これは「教育版マインクラフト」のみに入っている機能です。

まずはスライドに映し出された水素や炭素、酸素などのブロックを自分の手持ちバッグのようなものに取り出します。

それから「水素(H)2つと酸素(O)1つを合成して水(H20)などを作ります。写真は塩素とカリウムを混ぜて塩化カリウムを作ったところです。実際に理科室などで行うのは危険な実験も、ゲーム上なら気軽に行えます。

実際に作ったものは「マイクラ」の世界でも同様に使えます。酢酸ナトリウムを4つ組み合わせると「氷爆弾(Ice Bomb)」ができます。これを水の上に投げると、氷に変えることができます。さらに熱を持ったブロックを置いて氷を溶かす実験なども行いました。

ゲーム内で作ったものを、現実で実験してみるという試みも行いました。次亜塩素酸ナトリウムは漂白剤の主成分なのですが、これをゲーム内で使うと染色した羊毛や旗などを無色に変えられます。

水に水性インクの赤を入れた液体に漂白剤を入れてしばらく待ってみます。

ときどき液体をふりながら様子を見ていると、数分で無色透明に! ゲーム内で取り扱いが難しい薬品を作って試してみたり、現実で実験して自分の目で見られるという、双方のいいところをリンクさせて理解が深まりやすくなっていると感じました。

取材を終えて
小学校では、タブレットを使った授業がかなり以前から行われていますが、最近では「Canva」や「教育版マインクラフト」を活用する学校が年々増加しているそうです。「Canva」は、小学校低学年の子どもでも直感的に操作でき、自分の考えたアイデアを簡単に形にできるのが特徴です。また、簡易的なAI画像生成機能も備えており、これからのAI時代に必要なスキルを体験する良い機会を提供してくれます。「教育版マインクラフト」では、失敗から学びやり直すプロセスや、現実の課題とリンクさせる体験を通じて、相互に良い面を活かした授業が展開されているのが魅力的でした。こうしたツールを通じて、子どもたちの好奇心や想像力を伸ばす授業が次々と生まれていることに驚かされた取材でした。(KAZ)
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