古野電気株式会社

魚群探知機やレーダーで世界をリードする古野電気が「見えないものをみる」子ども向け職業体験を実施【いこーよスイッチ企業事例インタビュー】

アクトインディ株式会社では、子どもたちの生きる力を育む体験プログラム「いこーよスイッチ」を企業様、事業者様と実施しています。今回は2022年8月と2023年8月に古野電気株式会社様と実施した「こどもわーく(『本物の環境で、本物の達人、本物の仕事を学ぶ』がコンセプトのお仕事体験プログラム)」でのお仕事体験について、プログラムを制作した際の工夫や苦労した点、社内で得られた効果などを古野電気株式会社の経営企画部ブランドコミュニケーション課 課長の佐藤知英様と清水美也子様にお話を伺いました。

Point

■ ねらい
・子どもたちに海の魅力を「働く」という視点から伝えたい
・海に関するさまざまな課題がある中で、子どもたちにまず海そのものに目を向けてもらいたい
■ 効果
・子どもたち向けに難しいものをシンプルに伝えることを社内で議論したことで、大人にとっても気づきがあった
・古野電気株式会社が「海の課題を本気で解決する努力をしている」ことを社外に伝えられた
・プログラムづくりを通して社員が、自分の仕事が「社会の役に立っている」と実感できた

【課題】「海に育てられた企業」として海へ恩返ししたい

――「こどもわーく」でお仕事体験にご協力頂いた思いをお聞かせください。

古野電気 佐藤課長(以下、敬称略):弊社は「海に育てられた企業」だと思っています。その思いから子どもたちの「海離れ」「海への無関心」に危機感を持っています。子どもたちに海の魅力を伝え、課題に目を向けてもらう場が必要であると考えていました。いこーよスイッチの「こどもわーく」は海の魅力を「働く」という視点で、子どもに伝えるところに非常に共感できたので協力させていただきました

古野電気株式会社 経営企画部ブランドコミュニケーション課 佐藤知英課長

古野電気株式会社 経営企画部ブランドコミュニケーション課 佐藤知英課長

―― 御社にとって「海の課題」というのは具体的にどんなことでしょうか?

佐藤:たとえば「物流」でいえば海難事故をいかに減らしていくかが課題ですし、「漁業」で見れば漁業生産量が低下しているため、「スマート漁業」で効率よく資源管理を考えた漁業にしていかなくてはならないという課題があります。また弊社では 約3年前から「海洋プラスチック問題」にも取り組んでおり、それをはじめとする海洋ゴミ問題も課題のひとつです。弊社は海に関するすべての課題と事業がつながっているので、さまざまな課題がある中で、子どもたちにまず海そのものに目を向けてもらわないといけないのではないかと考えました。

【体験内容】子どもたちに伝えるには?試行錯誤して見えたこと

古野電気さんは世界で初めて魚群探知機の実用化に成功し、世界80カ国以上に販売拠点を持っています。お仕事体験のプログラムでは「見えないものを見えるようにする」をテーマに2022年は魚群探知機で魚やゴミがどのように映るのかの実験に子どもたちが取り組みました。2023年は子どもたちが養殖漁業の課題を解決する「魚体重推定システム」の提案に挑戦しました。

体験内容:”見えないものをみる” 技術で海のゴミ問題にチャレンジ(2022年)

まずは魚群探知機の仕組みやどこで使われているかについて学んだあと、実際に魚群探知機から超音波を発信してどのように映るかなどを体感しました。子どもたちは、超音波で海底の形や様子や魚の情報がわかることを知って驚いていました。

古野電気

その後、水槽実験室に移動し、海洋ゴミ問題で困っている漁師さんの力になるため、ゴミとして見立てたペットボトル・ポンプ容器・ビニール袋が、魚群探知機でどのように反応するか実験しました。まずは、魚やゴミがどのように反応してモニターに映るかワークシートに予想を書き、魚に見立てた球を水槽に入れて魚群探知機の反応を観察。次にゴミに見立てたペットボトルなどの反応を見ました。魚に見立てた球とは異なる反応の太さや色があらわれ、ペットボトルとビニール袋とポンプ容器もそれぞれ反応に違いがあり、子どもたちは興味深々な様子でした。実験を通して子どもたちは、魚群探知機の技術の難しさや精密さを実感していました。

古野電気

体験内容:見えないものを見る技術で養しょく漁業の課題を解決しよう(2023年)

まずは、養殖漁業について研修を行います。養殖漁業では、出荷に向けて魚の成長度合いや与える餌の量を管理するため、魚の正確な体重を知ることが重要です。しかし、実際に魚を引き上げて手で測ると魚を傷めてしまったり、目視だけだと正確な数値が必ずしも分かるわけではなかったりと、魚の正確な体重を知るためにいくつかの課題があることを学びました。

古野電気

次に、その養殖漁業の課題を解決する「魚体重推定システム」を、実際にPCを操作しながら学びました。人の両目と同じように2点から同時に撮影することで、魚とカメラとの距離がわかるステレオカメラの技術や、撮影した映像の中から魚を認識するAIの技術など、古野電気の最新技術を研修と体験を通して理解することができました。

古野電気

次に、提案書の作成に向けて、実際に「魚体重推定システム」を使用している養殖業者さんに現場の意見を伺いました。実際に導入してみての感想や、養殖漁業をする上でうれしかったことなど、たくさんの質問に答えていただきました。

そしていよいよ、今日学んだことを振り返りながら、魚体重推定システムの提案書を作成しました。子どもたちは、どうすれば製品の良さが伝わるのかなどを考えながら、個性豊かな提案書に仕上げました。一人一人の発表では、皆の前で緊張する様子もありましたが、一生懸命提案していました。

古野電気

最後に修了式を行いました。今日のお仕事に対する”報酬”と、一人前の証としての”名刺”が、一人一人に手渡されました。皆でお互いの名刺を交換し、楽しかった一日を締めくくりました。

古野電気

【効果】わかりやすい言葉に置き換えたことで自分の仕事とのつながりが見えた

――体験活動を子どもたちに提供することで何か変化がありましたか?

佐藤:自分の会社が、子どもたちに事業や海について知ってもらう活動をしていることで、社員に「自信」や「自負」が生まれてくると思います。また「社会貢献している企業である」ことを発信するのは、新入社員の採用の面でもよい影響があると感じています。

――開催にあたり、ご苦労されたことなどはありますか?

佐藤:正直、準備は大変です(笑)。子どもたちの反応も分からないままプログラムを作るので、最初の頃は(プログラムづくりが通常の業務に追加することになるため)社員から「準備が大変」などの声もあったのですが、それでも終わったあとに社員から「またやってもいいよ」っていう前向きなコメントをもらいました。

 清水様(以下、敬称略):体験プログラムを作るにあたり、当社が伝えたいことは「社会課題の解決」です。そのままだと難しい表現になってしまうので、子どもにも伝わりやすくなるように深堀りしていくことで、難しい表現を省いてシンプルなメッセージにしていくことが大変ですね。

古野電気株式会社 経営企画部ブランドコミュニケーション課 清水美也子様

古野電気株式会社 経営企画部ブランドコミュニケーション課 清水美也子様

 佐藤:我々の仕事は(魚群探知機やレーダーなど)見えないものを扱っているので「(子ども向けに)シンプルに伝えるとは、どういうことか?」をかなり社内の中で議論しました。我々にとっても、とても勉強になりましたね。 

社員の笑顔に救われる

――子どもと一緒に取り組んだことで、良かったことはありますか?

清水:(普段の仕事では)あまり笑顔を見たことがない講師役の社員が、子どもたちの前で満面の笑みを浮かべていて(笑)。社内報でも写真を載せたのですが、社内への影響は大きかったです。そのほかにも例えば「船が止まるのに400mの距離が必要」のような知識を、講師役の社員が資料に追加していました。子どもたちがイメージしやすいように例を入れながら伝えることで、私たち自身の学びにもつながりました。保護者や子どもたちに「こんなことをやっている会社」と、わかってもらえたのが一番だと思います。

 ――子どもたちや保護者にどのようなことを伝えられたと思いますか?

清水:弊社が海の課題をそのままにしないで「自分たちの本業を活かして解決する努力をしている」ことを伝えられたと思います。

佐藤:子どもに伝えることで、我々の仕事が「社会の役に立っている」とあらためて実感しました。

地域からのうれしい反応

 ――社外からの反応はありましたか?

清水:弊社では職業体験イベントのほかにも出張授業や西宮市の高等学校との連携などの地域貢献活動をしていますが、本社のある西宮市民に向けたオンラインアンケートで、弊社のイメージが「技術研究や技術開発力」「地域に貢献してる」「社会の役に立つ事業を行ってる」ということを答えてくれる人がとても多かったのが印象的でした。私たちが伝えたいことが、地域の方たちに確実に届いてると思っています。

佐藤:今回の職業体験のみでそういう回答になったとは言い切れませんが、子ども向けに「海の課題に向き合っていることを伝えている」ことが、響いているのではないかと思いますね。

養殖など事業に関心を高めてくれた家族

 ――保護者や子どもたちの印象に残った姿はありますか?

清水:保護者の方に必ず「どうすればこの会社に入れるんですか?」と質問されます(笑)。

――会社としての魅力や思いが子どもだけでなく、保護者の方にも伝わって「うちの子入れてみたい」と思ってもらえるのは、すごく素敵なことです。他には何かありますか?

清水:2023年のプログラムは「養殖」がテーマだったのですが「次も養殖がテーマであればまた来たいです」っていうお子さんがいました。お父さんも一生懸命質問してくれて。レポートもしっかり書いてくれました。

佐藤:養殖にすごく興味を示しているお子さんでした。今回のプログラムを募集したら、すぐに申し込みされたと聞いてます。

 ――職業体験プログラムがきっかけで「養殖に携わる仕事をしたい」「そういう学科に行きたい」となるといいですね。

【今後】今後もっとこの活動を拡散していきたい

――海に関する取り組みを精力的に行っている古野電気さんですが、今後の展開を教えてください。

佐藤:弊社のCSR活動である「海を未来にプロジェクト」はまだまだ認知度は低いですが、他社と協力していくことがすごく重要だと思います。1社では難しいこともつながることで、認知も人も広がっていきます。もっとこの活動を拡散していきたいので、今後もご協力できることはしたいです。

清水:今は1年に1回1つのプログラムをするだけで精一杯ですが、もう少しプログラム数を増やして弊社をより知ってもらい、お子さんにとってなんらかのきっかけになればいいなと思います。この活動が社内の文化になってほしいです。ゆくゆくは「ファミリーデー」のように社員の子どもたちも体験できるようにしたいですね。

――弊社の方でも御社の活動も含め広く拡散するお手伝いをできたらと思ってます。今回お話を伺い、本当に深い思いがあるということがとても伝わってきました。

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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