今回は、子どもがお年玉などのお金を気づいたら全額使ってしまっていることに悩んでいるパパからの相談です。子どもにお金の勉強をさせたいがどうしたらいいのかわからないというお悩みについて、専門家にアドバイスしてもらいました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
柳沢幸雄先生東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。
Q.子どもにお金の使い方を教えたい
小学4年のお金の管理やお小遣いについて相談です。 最初は息子にお年玉などを半分預けて「大事な時に使いなさい」と伝えましたが、全額をいつの間にか使ってしまいました。自由にとは言いつつも一気に使っていたので、今後はお小遣いにしようと思っています。小学4年なので400円といった感じで。何か良い方法はありますでしょうか。学校ではお金の勉強はしないので、なるべく教えてあげたいです。
(小4男子&3歳男子&1歳男子のパパ)
A. お小遣い制にして自分にとっての「リスクとベネフィット」を考える機会に
お金の管理を学ぶというのは、「有限なもので自分の喜びを最大限にする」仕方を学ぶということです。自分の要求の優先順位をどのように付け、欲求をどれだけ抑え、そのために有限なものをどう配分していくか…これらの経験を培うために、ぜひお小遣い制にしてみましょう。月額を決めたら月初めに先渡しにし、1カ月間、決められた範囲内で上手く使えるようにすることで、お金に関する判断力やマネジメント力が、次第に身に付いていきます。
「お金を管理しながら自分の欲求を楽しむ」という感覚を、子ども自身が身につけることが大事なんですね。お金を使うことによって得られる満足感や楽しみを十分に経験することで、将来、お金を稼いで自分の欲しいものを手に入れたいという、働くことへの意欲にも繋がっていくからです。
日本には、お年玉や最近はお盆玉など「まとまったお金」をもらう機会がありますが、私は賛成できません。でも習慣に逆らえないなら、貯める事を覚えさせ、お小遣いが足りなくなったときや、まとまったものが欲しいときに使うようにしましょう。
最近では、お金を「貯める」ことの他に、「増やす」マネーリテラシーも学ばせたいと思う親御さんもいらっしゃいますね。昔は、預貯金をすると利子が付いて資産が増えましたが、現在は、預貯金をしているだけでは利子がほとんど付かず、経済が成長していけば目減りしてしまう。お金を増やすためには投資という方法がありますが、高いリターンを得るためには、回収不能になるリスクを負う「リスクマネー」を考える必要があります。この仕組みは、お金の話だけではなく、人生にも当てはまります。生きる上にはリスクが必ずあり、ベネフィット(恩恵・便益)を得るために、どういうリスクだったら耐えられるか。チャレンジをするときリスクを最小にするのがいいのではなく、「リスクとベネフィット」の扱いを学ばせたり、子ども自身に考えさせていくことが重要なんですね。
日本人が投資を苦手とする理由の一つとして、日本にはリスクがほぼない終身雇用制度があったことが挙げられます。頑張って良い学校や会社に入りさえすれば、安泰だと思い込んできた。ところが、現在、海外の大企業を見ても創業30年経って全く危機がなく生き残っている会社はほとんどありません。つまり、誰しもが働いている間に、大きな社会変化がやってくるリスクがあるということです。
そういう変化の中でもちゃんと生きられる子どもを育てるためには、「手に職(稼ぐことができる自分が得意なこと)を持つ」ことが大切です。自分に得意なことがあれば、次の働き口も見つかりやすく、生きていくことができます。
そのために、子どもが「好きなこと」や「私はこれができる!」と言い切れるものを育ててあげてほしいですね。つまり、それが自分の好きなことややりたいことである、自身の「ベネフィット」なんです。
好きなことをしている心地よい時間を持つことは、自分の人生にとって一番望ましい人生の過ごし方です。子どもが興味を示したことは、「心地いい好きなこと=ベネフィット」になる可能性があるので、様々なことに触れさせてあげてほしいと思います。子どもの知識は非常に限られているので、好きなこともコロコロと変わるけれど、それは新たな知識を得てその面白さが分かったという素晴らしいことなんです。無駄だったなという経験も積めば、その無駄をしなくなり、また一つ成長します。
いろいろなことを体験や経験をすることで、人生の中で、自分にとっての「リスクとベネフィット」は何かを考える訓練にもなります。お金の管理の仕方もその中の一つ。何が必要で、ベネフィットのためにはどんなリスクならとってもいいのか、日ごろから身近なお小遣いを通しても考えていきましょう。
子どもへのお金の教育は、学校ではほとんど教えてもらえないので、保護者も頭を悩ませるポイントですよね。お小遣いは、お金の使い方を学ぶだけでなく、やりくりすることで、人生における「リスクとベネフィット」を考えることにも繋がるとは驚きでした。お小遣いの始めどきなども迷われる方も多いかと思いますが、ご家族で相談して、子どもの様々な経験の一つになると良いですね。今回も貴重なお話を、ありがとうございました。
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者。ハーバード大学大学院の准教授・併任教授を経験したこともあり、教育分野に熱心に取り組む。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。『「頭のいい子」の親がしている60のこと』『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』など、子育てに関する多数の著書がある。
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