子どもの好奇心を育むためには、子どもが興味を示すもの、好きなことを見つけてそれを伸ばしてあげることが大切です。とはいえ、我が子が何に興味を持っているのか、どんなことが好きなのかわからないという親も多いのでは?
今回は、「子どもの『好き!』の見つけ方」がテーマ。教えてくれたのは、前回の記事で子どもの「自己肯定感の育み方」について教えてくれた北鎌倉女子学園学園長で東京大学名誉教授の柳沢幸雄先生。自己肯定感を高めるためにも大切な子どもの好きなことを見つけて伸ばす方法、子どもの好奇心の育み方について教えてもらいました。
子どもの興味に「ちょい足し」が親の役割
未来:前回の「子どもの自己肯定感を高める方法」についてのお話では、他人と比較せずその子自身の成長や得意なことを褒めて伸ばすことが大切だという話もありましたが、そもそも子どもの得意なことがわからないという親も多いと思います。
「得意なことというのは、子どもが好きなことです。やっぱり本人の興味関心が高いものは、それだけ夢中になってやるので伸びます。それがサッカーでも恐竜でも、なんだっていいんです。何か一つ『これなら人に負けない!』というものがあれば、子どもの自信に繋がります」
未来:子どもが何に興味を持っているのかわからない場合はどうしたらよいでしょうか?
「それは親の観察力が足りないだけです。子どもは好奇心の塊です。小さな子どもは世の中のことを何も知りません。知らないものばかりだから、自分が興味のあるものを本能的に見つけようとするんです」
「だから子どもが小さなうちは親が子どもをよく観察して、どんな時に夢中になるか、どういうことで楽しそうに遊んでいるかを見極め、その子に合ったおもちゃを与えることで個性を伸ばすことが大切です。全盲のピアニスト・辻井伸行さんは、子どもの頃にCDから流れるクラシック音楽を聞いてリズムに合わせてバタバタと動かしたそうです。それを見たお母さんが『この子は音楽に興味があるのかもしれない』と気づいて、ピアノの音楽を流しながらおもちゃのピアノを渡したところ夢中で弾き始めたとか。子どもの興味関心を見極めてそれをピンポイントで与えたことで、才能を引き出した良い例ですね」
未来:子どもがなにかに興味を示したら、そのタイミングでその興味が広がりそうなものを与えるのが大切なんですね!
「そうですね。大人の役割は『ちょい足し』すること。子どもが興味を持つものを見つけて、そこにちょい足ししてあげる。そうすることで子どもが夢中になれるものや得意なことを伸ばし、広げることができます」
未来:ちょい足しするときのポイントはありますか?
「子どもが知識を身につける際には、実態と抽象、記憶の3つの要素があります。たとえば男の子は動くものに興味を持つことが多いですが、電車が好きだった場合に電車を見に行ったり、実際に電車に乗ったりする体験が『実態』。家に帰ってから電車の写真や路線図を見たりするのが『抽象』。実態と抽象の体験を繰り返すことで、記憶となり定着するのです」
未来:なるほど、動物が好きな子どもなら動物園で実際に動物を見たり触れあったりする実態の体験と、図鑑や写真などで動物の知識をつける抽象の体験をかけ合わせるとよいということですね。
「そうですね。家庭の役割としてとくに大きいのは実体験を与えることです。料理でも昆虫採集でもなんだっていい。小学校に入学する前に、できるだけたくさんこういった体験をしておくことが大切だと思います」
未来:就学前にこうして子どもの好奇心を育むことができれば、小学校に入ってからも子どもが自ら意欲的に学習するようになりそうですね。
「知的好奇心が高い子どもは、放っておいても勝手に知識を積んでいきますからね。東大生は子どもの頃に親から勉強しろと言われたことがないという人が多いですが、その代わりに親がよく話を聞いてくれたと言います。子どもの話をよく聞いて興味関心を引き出し、ちょい足しすることで好奇心を育んだ親御さんが多いのだと思います」