子どもを褒めて伸ばしたいけれど、日々の生活の中で「子どものことを叱ってばかりいる…」と悩む親は多いですよね。そこで今回は、子どもを褒めて自己肯定感を高める子育てについて、北鎌倉女子学園学園長で東京大学名誉教授の柳沢幸雄先生に教えてもらいました。
子どものことをうまく褒められない、叱ってばかりいるという場合は、親自身の自己肯定感が低いことに原因があると話すのは、2020年3月まで開成中学校・高等学校の校長を務め、「男の子の『自己肯定感』を高める育て方」や「ほめ力」などの著書で知られる柳沢先生。「褒めて伸ばす子育て」に大切なこととは?
叱る時間が多いのは親の自己肯定感が低い証拠!?
未来:子どもの自己肯定感を育むためにも子どもを褒めて伸ばしたいと考える親は多いですが、実際には子どもを叱ってばかりいる…という声も。日常生活の中でたくさん子どもを褒めるコツはありますか?
「まず子どもを褒められないというのは、親自身の自己肯定感が低いことに原因があります。褒めるより叱っている時間の方が多い親は、自己肯定感が低いということです」
未来:それは耳が痛い…というより自覚のない親も多そうですね。
「人のことを認めて褒めるという行為は、まず自分自身のことを認めていないことにはできません。子どもの自己肯定感を高めたければ、まず親自身の自己肯定感を高めることが大切なんです」
未来:なるほど。とはいえ、自己肯定感は人から褒められたり認められたりする経験から育まれるような気がしますが、親が自身の自己肯定感をあげたいと思った場合、どうすればよいのでしょうか?
「やはり自分のいい所や得意な事を伸ばすことです。自分に自信を持つことが自己肯定感に繋がるのは、子どもも大人も同じです。仕事をして収入を得られているということは、自分のしていることが評価されているということですよね。素晴らしいことです」
「専業主婦の場合でも、子育てをしながら家事をして家族を支えている。いずれにせよ、人の役に立つことをしているということは素晴らしいことです。それだけで自分を認め、自己肯定感を高めていいんです」
未来:大人の場合、人から褒められることが減るので自己肯定感を高めるのが難しいように感じますが、まずは自分で自分を認めてあげるということが大切なんですね。
「物事を肯定的に見ることが大切です。私がおすすめしているのは、7割満足主義。なんでも7割で満足する癖をつけるのです。これは他人に対しても同じです。たとえばご主人に対して、脱いだ靴下をきちんと洗濯カゴに入れてほしいと思っていたとしますよね。本当は裏返しを直して入れて欲しかったとしても、床に脱ぎっぱなしだった靴下がカゴに入っていれば7割は合格です。ここで、まだ裏返しが直っていない…と思うのか、カゴに靴下が入っていることに満足できるのかで大きく変わってきます」
「人に対して7割で満足できるようになると、褒めることが圧倒的に増えます。褒められた人はうれしいので、もっと努力したり、自身も人のことを褒めたりできるようになるんですね。こうしてお互いを認めて褒め合うことで、ポジティブな循環がうまれどんどん自分に対して自信が持てるようになります」
未来:家族の中で互いを褒め合う環境ができていれば、子どもを褒める機会も自然と増えそうですね。
「家庭環境で言えば、家庭の中ではどんどん子どもに喋らせた方がいいです。私は親子の会話量は『1対2の原則』が良いと説明しています。親が喋る量は子どもの半分以下でいいんです。親が話を聞いてくれることで、子どもは安心して自分の意見を言えるようになります。親は子どもが喋るのを待って、発言させることが大切です」
「誰かに話をして何かを伝えるには、頭の中の概念をまとめるという作業が必要なんですよね。日本語を使い始めてまだ数年しか経っていない子どもが、自分の考えをまとめて話すということは想像以上に難しいことです。ですから、子どもが何かを話したら親は質問役に徹してください」
未来:どんなことを質問すればよいのでしょうか?
「子どもの話に6つの疑問詞(5W1H)で質問すればいいんです。たとえば子どもが今日の出来事を話したとしたら、誰と?どこで?何をしたの?など。答えが返ってきたら、それを繋げて文章にしてあげます。今日○○ちゃんと公園で鬼ごっこをしたのが楽しかったんだねという風に。そうすることで、子どもは論理的な話し方を覚えます。読解力も身につくので、家庭でできるこれ以上の勉強法はないと思いますよ」