アクトインディ株式会社では、子どもたちの生きる力を育む体験プログラム「いこーよスイッチ」を企業様、事業者様と実施しています。今回は2023年7月に行われた株式会社伍魚福様の子ども向けの職業体験実施から半年経ち、プログラムを実施した際の工夫や苦労した点、社内で得られた効果などを株式会社伍魚福のお客様繁盛推進本部 統括部長 大橋弘樹様にお話を伺いました。

幕張メッセで行われた「スーパーマーケットトレードショー」に出展中の大橋統括部長にお話を伺いました。
■ ねらい
・子どもたちに「おつまみを知ってほしい」「将来こういう仕事がしたいと思ってもらいたい」
・若手社員に「自分たちの仕事のおもしろさを再確認してほしい」
■ 効果
・若手社員の「仕事に対する理解」が深まった
・社員全体が「社会の役に立つすばらしさを実感」できる体験になった
・お客様や取引先に対しても「伍魚福らしさ」を表現する機会となった
・今後のビジネスに向けてのヒントを得ることができた
【課題】子ども向けの体験を実施した背景・目的
子どもと若手社員の育成のため活動に参加
――体験プログラムを開催した思いや目的をお聞かせください。
伍魚福 大橋統括部長(以下、敬称略):「こどもわーくin神戸( ”本物の環境で、本物の達人から、本物の仕事を学ぶ” がコンセプトのお仕事体験プログラム)」を開催した理由はふたつあります。ひとつ目は子どもたちに、おつまみ=珍味というものを知ってほしいからです。そこから(伍魚福のお仕事体験を通して)お子さんに「将来こういう仕事がしたいな」と思ってもらいたい、というのが大きな目的です。
――子どもたちに、おつまみを知ってほしいという思いがあったのですね。もうひとつの目的はなんでしょう?
大橋:ふたつ目は、子どもに自分たちの仕事の面白さを伝えることで、若手社員に「自分たちの仕事の面白さを再確認してほしい」というねらいがありました。
こども時代に「おつまみ」を知ってもらいながら、若手社員の教育の場にもしたい
――開催したのは「子どもや若手社員に向けて」とのことですが、その理由をお聞かせください。
大橋:一般的におつまみ(珍味)は、50代60代の方に「あたりめ」や「さきいか」として好まれていますが若い世代にはなじみがありません。加えて「おつまみ」の代表格であるイカは、近年値段が世界的に上がり、高価なものになってしまいました。また、若い世代がお酒を飲むときは、スナック菓子やスイーツなども選択肢に入ってきていて、珍味を手に取ることが少なくなっています。若い方に認知されるためには、子ども時代に珍味という存在を知ってもらい、「おつまみって美味しいよ」と友だちに口コミで広げてもらうのがいいのではないかと考えました。
――若い世代よりさらに下の子どもたちに目を向けたのですね。
大橋:若手社員に向けては、日々忙しく働く中で「お客様や身近な人の笑顔のために働いている」ということや「社会の役に立つために働いている」ことを、頭の片隅にありながらも薄れがちなのが課題に感じていまして、子ども向けに職業体験プログラムを作ることで、社員にとっても理念を実感できる教育の場になるのではと考えました。
【体験内容】子どもたちに伝えるには?試行錯誤して見えたこと
「海や地域の素材を生かした美味しい”おつまみ”の企画デザインに挑戦!」
今回手掛けたプログラムは「オリジナルのセット商品」を企画し、商品を多くの人に届けるための工夫について学ぶことです。商品を買ってもらいたい人(ターゲット)を考えるところから始まる、伍魚福の本格的な商品企画を体験するとともに、POPや商品棚への配列など、商品を手に取ってもらうための工夫も学びました。

まずはじめに社長から、仕事をする上での重要な考え方について説明を受けました。伍魚福がどんな会社なのか、社員として心がけることは何かなど、普段なかなか聞くことができないお話に子どもたちは真剣に耳を傾けていました。
先輩社員の皆さんから今日実際に取り組むお仕事についても説明してもらい、子どもたちもとてもワクワクしている様子でした。
いよいよ商品企画のお仕事に挑戦! 今回は、伍魚福で扱っている様々なおつまみを組み合わせるセット商品を考えました。どんな人に買ってもらいたいか、どんな商品があったらその人が喜んでくれるか、など、自分の食べたい、作りたいというだけではない視点から、商品を考えることができる貴重な体験となりました。
次に、商品化が決まったセット商品のPOPを作成しました。POPは、お客様に「商品を買おう!」と思ってもらうため、お店に掲示するものです。色紙やマーカーなどを使いながら、一人一人カラフルで個性豊かなPOPを作り上げました。
今回のお仕事体験参加者の中には、当日作ったPOPやコンセプトシートを夏休みの自由研究に活用してくれた子もおり、発展学習にもつなげやすい学びのあるプログラムとなりました!
最後に修了式を行い、今日のお仕事に対する”報酬”と、一人前の証としての”名刺”が、一人一人に手渡されました。もらったお給料でお買い物をしたり、皆でお互いの名刺を交換したりして、楽しかった一日を締めくくりました。

子ども扱いせずに「伝えることは伝える」姿勢
――今回の活動以外にも子ども向けたイベントや企画をした経験はありますか?
大橋:はい。弊社は兵庫県の大切な食文化でもある「いかなごのくぎ煮」の商標を預からせていただいています。そのご縁で「いかなごのくぎ煮コンテスト」で詩や俳句を書いてもらったり、小学生から大学生まで、食育につながる話、経営全般、商品企画やPOPの作成など、さまざまな授業や講義を実施したりしています。子どもたちに「兵庫県の食文化を守る」会社であるということを、広く知ってほしいという思いから会社の活動としてやっています。
※2022年に実施した職業体験では「いかなごのくぎ煮」を使ったレシピ開発も行いました。
――職業体験で最初に会社のクレド(従業員が心掛けるべき信条や行動指針をまとめたもの)を話す時間があったのが特徴的でした。これは、どのような意図からでしょうか?
大橋:クレドに関しては「小学生には難しいかもしれない」という杞憂はありました。しかし「仕事体験」ということで短い時間でも「伍魚福の社員として迎える」という思いがあったため「伝えなあかんことは伝える」というスタンスでプログラムに入れたのです。
――子どもたちの反応はどんなものでしたか?
大橋:社長から弊社のクレド、理念を伝えると、子どもたちはとても素直に聞いてくれました。その後の商品POPに反映されていたので、学んだことが活かされているなと感じ、参加した子どもたちの感性の高さを感じました。大人はつい「これは上司に褒められるかな」「まわりからどう思われるだろう」など考えてしまいます。しかし、子どもは感性に任せて、ストレートにスイスイ描くんです。
【効果】お仕事体験を実施した効果とは?
小学生にわかるレベルで伝えると本質が見える
――今回の職業体験を開催してよかった点を教えてください。
大橋:「小学生に教える」ことは私たちにとって、ものすごく勉強になりました。会社の理念や「社会の役に立つ」という話は、抽象的になってしまいがちです。それを小学生でもわかるレベルで伝えようとしたとき、それまで難しい言葉を使っていたところをわかりやすく置き換えたりしますよね。わかりやすい言葉にしていくうちに社員が(理念の)本質にたどり着いて、理解することにつながるんだと思います。
「自分たちもこんな風に仕事を楽しまないとあかんな」
――体験プログラムを開催するにあたって社内の仕事の調整は難航したのでしょうか?
大橋:それはなかったです。むしろ社員はみんな喜んで協力してくれました。これは弊社の理念「神戸で一番おもしろい会社になろう」が浸透しているからだと思います。若手社員からは子どもたちの素直さや楽しんでいる様子に触れ「自分たちもこんな風に仕事を楽しまないとあかんな」という、うれしい答えが返ってきました。私自身も仕事を終えて家に帰ったときに「疲れた」とは絶対言わずに「今日の仕事も楽しかった!」と言うようにしています。大人が家に帰ってきて疲れた顔をしていると、子どもも「仕事って疲れてしんどいもの」と思われてしまうので、それを社内から変えるひとつのきっかけをもらいました。
――体験では売り場での販売もありましたが、お客様や取引先の方の反応はいかがでしたか?
大橋:社外からの反応もよかったです。弊社のお客様は本当にいい方たちばかりで、子どもが商品の説明するのをちゃんと聞いてくれていました。取引先の方からも「伍魚福さんらしい。おもしろいことやってるな」と思ってもらえたようです。
――お客様も取引先の方も、普段から伍魚福さんが大切にしているものをわかってくれているのですね。
半日のプログラムでも子どもの成長に気づく
――子どもたちや保護者の、エピソードがあれば教えてください。
大橋:2022年のエピソードになるのですが、実際の店舗で売り子体験をして頂いたときのことです。始めは内気で恥ずかしそうにしていた子が、段々と声が出るようになり最後にはすごく声が大きくなっていました。それを見た保護者が「息子のこんな姿見たことない!」と言われて…。わずか半日ほどのプログラムで、成長を感じられたのはうれしいですね。
――それはうれしいですね。他にはありますか?
大橋:後日談ですがプログラムを体験した子どもたちから、お礼の手紙をもらいました。子どもの字で、お礼の言葉が書いてあるとグッとくるものがあります。2カ月に1回即売会を開催しているのですが、体験に参加した親子でずっと通ってくださる方もいます。

伍魚福の社長・山中さんのブログに掲載された、参加者からの御礼の手紙
――伍魚福さんのねらいの「子どもたちにおつまみを知ってもらう」が浸透していますね。
【今後】商売のヒントや若手育成にもつながる活動
――伍魚福さんの今後の展望を教えてください。
大橋:じつは今回の体験で商売のヒントもいただきました。小さなマーケットですが「お客さまと一緒に商品を出す」というニーズがあることがわかったのでおもしろいキャンペーンを企画したいです。

後日、子どもたちが考えたセットを直営店の「伍魚福オツマミドコロ 神戸三宮店」で販売。POPをデザインに起用し、多くのお客様にご好評いただきました。
――この取り組みから、商売につながる発想が出たのはうれしいです。他にはありますか?
大橋:若手社員には、会社の幹部が「こう決めたからやる」ではなく社員ひとりひとりが「世の中の役に立っている」と実感できるようになってほしいです。これからも積極的に「こどもわーく」に協力したいなと考えています。
――こちらこそ今後もご一緒できるとうれしいです。本日はありがとうございました。
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