川崎重工

製造業の魅力を伝えたい!川崎重工が子ども向けに造船のお仕事体験を実施【いこーよスイッチ企業事例インタビュー】

アクトインディ株式会社では、子どもたちの生きる力を育む体験プログラム「いこーよスイッチ」を企業様、事業者様と実施しています。今回は2023年8月に川崎重工業株式会社様と実施した「こどもわーく(『本物の環境で、本物の達人に、本物の仕事を学ぶ』がコンセプトのお仕事体験プログラム)」について、プログラムを企画した際の工夫や苦労した点、社内で得られた効果などを川崎重工業株式会社の林智之主事と仲英和工師にお話を伺いました。

Point

■ ねらい
・製造業の魅力を知って、将来なりたい仕事のひとつに加えてほしい
・「子どもたちがワクワクする」機会を作りたい
■ 効果
・参加した子どもから「この道に進みたい」との感想
・学校関係者の方から同様のプログラムを学校向けにやりたいという提案がくるなど活動が拡大
・造船技術を一般の人に公開する機会が復活するきっかけに
・メディア取材が来たり、役員や社内から素晴らしい活動との大きな反響

【課題】子どもの体験を実施した背景・目的

以前のように子どもたちと触れ合う機会を作りたい

――体験プログラムを開催した思いや目的をお聞かせください。

川崎重工 林主事(以下、敬称略):神戸工場では「船」という非常に大きなものを作っています。かつては、工場で建造する船を初めて海に浮かべる「進水式」という式典に近隣の方々をご招待して、お祭りのようににぎやかにお祝いする機会がありました。しかし最近は商船の進水式が行われなくなり、近隣住民や子どもたちに「ホンモノ」を間近でお見せする機会がなくなってしまいました。当社製品のスケールは大きく、その技術や携わる職人のレベルも高いのですが、それを伝える機会がなかなかないので、子どもたちに弊社について知ってもらい「ものづくりはスゴイ」と思ってもらいたいからです。

川崎重工 林氏(写真右)

川崎重工 林さん(写真右)

――子どもたちに会社のことを知ってもらうという、ブランディングやPRが目的だったのでしょうか?

林:会社のPRもありますが「子どもたちにワクワクしてもらいたい」というのが一番の目的です。川崎重工の工場では巨大なものが動いていますし、体験してもらった「アーク溶接」は大きな光や音が出ます。これらは普段の生活ではなかなか見られない光景ですので、子どもたちに新鮮に感じてもらえると思います。さらに体験をきっかけに「大きなものをつくる」製造業の魅力を知っていただき、将来なりたい仕事のひとつに加えてもらいたいという願いがあります。

【体験】船の製造(造船)と、造船に必要な技術「アーク溶接」を学ぶ

国内最先端の造船所で溶接体験!造船現場実習に挑戦しよう

川崎重工業株式会社はグループミッションで『世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する”Global Kawasaki”』を掲げています。同社の協力の下、子どもたちは川崎重工 神戸工場でお仕事に挑戦しました。

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体験内容(2023年)

体験テーマは、「船の製造(造船)とそれに必要な技術(アーク溶接)を学ぶ」こと。船が製造される一連の工程や仕組みを理解しながら、実際にそこで使われている技術を体験できるプログラムです。

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アーク溶接は、一つ一つの鉄の板をつなげていく造船にはなくてはならない技術です。川崎重工神戸工場にある訓練用の実習施設にて、専門家の先生の指導の下、十分安全に配慮された環境で体験しました。

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アーク溶接は、大電流で鉄を溶かすことで接合する技術で、強い光と高い熱が発生します。子どもたちも、安全のために火花や火の粉を通さない装備を身に着けます。目の前が火花でいっぱいになるなか、技術指導の先生と一緒に鉄の板に文字や模様を入れていきました。

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下の写真は、子どもたちが鉄の板にチョークで書いた文字にアーク溶接を施したものです。溶接時は火花でチョークはほぼ見えなくなるため、先生は書かれた文字や模様の場所を溶接前に記憶して正確にトレースしていったそうです。

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次に、船が浮かぶ仕組みについてペットボトルを使った研修を受けました。ペットボトル単体ではもちろん浮きますが、はさみで分解すると一つひとつのパーツは沈んでしまいます。しかし、それらをつなぎあわせることで、再び水に浮かせることができます。船が水に浮かぶためには、鉄などの部品(ブロック)同士をつなぎ合わせるアーク溶接の技術が大切であることを学ぶことができました。

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お昼休憩の後は、特別に船台や工場の現場を見学しました。実際の造船では、いくつものブロックを造り、そのブロックをクレーンで運んで船の形に組み上げていきます。大きな船の場合、1個のブロックがとても大きく、子どもたちはその迫力に圧倒された様子でした!

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最後に修了式を行いました。今日のお仕事に対する”報酬”と、一人前の証としての”名刺”が、一人一人に手渡されました。皆でお互いの名刺を交換し、楽しかった一日を締めくくりました。
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安全でありながら本物に触れる体験を

――川崎重工さんの職業体験は「アーク溶接」です。これは空気や気体の放電現象(アーク放電)を利用して、同じ金属をつなぎ合わせる溶接で、火花がすごく散るため、子どもの職業体験としてはとても挑戦的な内容だと感じたのですが、社内で反対はありませんでしたか?

林:じつは結構反対されました(笑)。そこで子どもたちが安全に体験できるように参加は小学6年生以上にして、子どもたちが着る防護服も社内の規定よりもさらに厳重にするなど、さまざまな部署に協力してもらって細心の注意を払って実現にこぎつけました。

仲工師(以下、敬称略):アーク溶接自体の難易度もピンからキリまであります。今回の「アーク溶接体験」は子どもでもできるレベルで、私が手を持って一緒に行いました。アーク溶接は強い光が出ます。子どもの手を持ちながら操作するのは、ベテランの私も失敗しないよう緊張しました。

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川崎重工 仲さん

――子どもたちはどんな様子でしたか?

仲:緊張していたと思います。操作中は強い光が出るので面で顔を覆いながらやりますが、面にある黒いガラスの「窓」からは手元がほぼ見えない状態です。私が手を持って動かしてあげていたので本人は「気がついたらできていた」感じではないでしょうか(笑)。

――防護服やヘルメットなど装着するものは、子ども用に準備されたのでしょうか?

仲:いえ、すべて我々が使うものと同じものを使っていただきました。手袋も子どもにとっては大きかったと思いますが、実際に使われているものをつける方が体験としてはよいと思いました。防護服の着脱は(川崎重工神戸高等技能訓練校の)訓練生がサポートし、溶接は私と一緒にすることで安全でありながら、本物に触れる体験ができるよう心がけました。

【効果】お仕事体験を実施した効果とは?

メディアで紹介され、役員など社内からも「子ども向けの活動」の意義を再認識

――実際に開催することで、その思いや目的は達成できましたか?

林:これまでは、川崎重工神戸工場では、安全上の理由などから子どもたちの工場見学や体験をほとんど受け入れていませんでした。しかし、2023年の夏に開催したお仕事体験の内容がテレビで紹介されたことも大きなきっかけとなり、役員から「子ども向けの活動は力を入れるべき」という意見が出たのです。いろいろな取り組みを今後も継続していく方針となり、当社の受け入れ体制の大きな舵切りをするイベントとなりました。

――お仕事体験の様子をサイトや広報誌に掲載するなど、社内から発信されましたか?

林:社内の広報誌に僕の笑顔の写真を載せたら、すごく反響がありました。「楽しそうだな~」と言われることが多く、社内報に笑顔で写る人は珍しいので、印象的だったようです(笑)。社内で子どもむけの取り組みをしているという認知度は上がり、いろいろな意味で注目を集めることになりました。

――訓練生はいつも教わる立場なのかもしれないですが、子どもたちに教える立場になりいい刺激になりましたか?

仲:それはありますね。彼らもすごくうれしそうで、とてもいい経験になったと思います。

子どもたちに刺激的な半日を提供

――実際に体験した子どもたちの表情で、印象に残っているものを教えてください。

林:溶接体験のあと、バスで工場見学に行きました。工場見学を終えて帰りのバスで5分ほどの移動時間があったのですが、半分以上のお子さんたちが寝ていたんです(笑)。「今日の体験ですべて出し切ったんだな」と思いました。子どもたちの今までの人生の中でも相当刺激的な半日になったのだと思います。参加者の中で「モノ作りが好きだからこの道に進みたい」という子がひとりいて、そういう子に場を提供できたのは非常にうれしいですね。

【今後】子どもに「ワクワク体験」のプログラムを提供していきたい

――今後の展望をお聞かせください

林:今回の活動を知った学校関係者の方から「同じことをやりたい」という連絡がありました。子どもの成長過程に合わせて、小学生向け、中学生向け、高校生向けなどのプログラムを広げていきたいです。

――職業体験プログラムを開催して「一番良かった」と思うことはなんですか? 

林:お子さんの心を動かしたことです。社内のリソースを惜しみなく使い、当初の目的であった「子どもたちにワクワクしてもらいたい」というのが、体験中の表情やバスで寝ている姿から確信できました。今回の体験で、ひとりひとりに「何か持って帰ってもらったもの」があればうれしいです。

――弊社としても、これからもよりよい職業体験プログラムを作れたらと思っています。ありがとうございました!

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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