一般的に普及しているSNSの多くは、その対象年齢が13歳以上に設定されていることをご存知でしょうか。一方で、多くの小学生や幼児がスマートフォンなどのデジタル端末を日常的に使い、また利用規約に違反しながらもSNSを利用しているというのが現状です。そんな中、株式会社4kizは、12歳以下の子ども向けのSNSアプリ「4kiz(フォーキッズ)」を開発し、5月から7月にかけてクローズドβ版のテスト運用を行ってきました。
7月13日の一般リリースを前に、株式会社4kiz代表取締役CEOの本山勝寛さんにインタビューし、4kizの内容や安全面の機能、また子どもが運営に携わるという独自の取り組みについてお話を伺いました。
こどもの、こどもによる、こどものためのSNS「4kiz」
未来:子どもたちのSNS利用を制限するのではなく、あえて12歳以下の子どもを対象としたSNSを新しく作ろうと思ったのはなぜですか?きっかけなどありましたら教えてください。
一つは、私自身の子どもたちが、コロナ禍をきっかけにタブレットを使うようになったことでしょうか。たとえば、今小学6年生の長女は、お絵描きアプリを使って、デジタル上で絵や漫画を描くのですが、親バカながら結構上手で「面白いな、シェアできたらいいのにな」と思っていました。しかし、私たち大人が使っているSNSは、13歳以上しか使えないということを知り「それなら自分で作ろう」と思ったのがきっかけですね。そうすることによって、子どもたちが刺激し合い、好きなことでつながれるようになりますし、もっとアウトプットしたい、と創作意欲をかき立てられるのではないかと思ったのです。
前職の日本財団では、子どもたちの居場所となる施設を展開する取り組みをしていたのですが、コロナ禍によってオンラインのプログラムがスタートし、そこに可能性を感じたこともきっかけです。子どもたちが空間を超えてつながり合い交流できるというのは、素晴らしいことですし、学びの観点からもとても大事なことです。子どもたち同士が直接つながり合うことができ、しかもそれを安全にできるようなプラットフォームを作りたいなと思いました。
未来:実際には、どのように使えるのでしょうか?
まずは安全に使えることが大事なので、いじめや誹謗中傷につながるような書き込みはできないような機能があります。また、ユーザーの個人名や顔写真は入れず、名前はニックネームを設定し、プロフィール用のアイコンには自分でアバターを作るなど、楽しみながらセキュリティーを高めるという形に設計しました。
さらに、今の子どもたちは、学校でも塾でもインプットの時間が多いと感じているので、子どもたちにもっとアウトプットの機会を提供し、それらを共有し合うことで、お互いの創造性を刺激するというような場にしたいと思い、そういった工夫も行いました。
具体的には、例えば「キャラクターを作ってみた」や、「絵の具で絵を描いてみた」、「クッキーを作った」、「折り紙を折ってみた」、「ヤモリを発見した」など、作ったり発見したりしたことを動画としてシェアするという形で、実際に今子どもたちに使ってもらっています。
動画なので、小さい子どもでも文字を打たなくても声で説明を入れられます。また、プレゼンテーション能力やコミュニケーション力などを高める機会にもなるかなと思っています。
投稿には、「いいね」やコメントをすることができます。コメントについては、「みんな」と「家族」という二つの種類がありまして、家族からのコメントは家族しか見られないという仕組みもあります。家族や親戚からのコメントに対して「恥ずかしい」と感じる子どももいると思いますが、こうした仕組みのおかげで、家族でも気兼ねなくコメントし合うことができます。家族間のコミュニケーションの活性化にもつなげたいなと思っています。
未来:アプリには、親や親戚などの大人も入ることができるのでしょうか? 親側ができることと子どもができることの違いについて教えてください。
まずは親が親用のアカウントを作っていただき、それに紐づく形で子ども用のアカウントを作ることができます。親は子ども用のアカウントの管理と閲覧、そしてコメントなどの反応をすることはできますが、投稿はできません。逆に子ども用のアカウントは制限設定などの管理はできませんが、投稿はできます。
親側のアカウントでは、子ども用アカウントのアクション(「いいね」を押す、コメントする、友達を作るなど)の可否や、投稿前の親の確認の有無、利用時間などを設定できます。
未来:使用にあたり、費用はかかりますか?
基本的に無料でご利用いただけます。
未来:実際にβ版を体験された親子の反応はいかがですか?
子どもたちからは「自分が元々あまり興味のなかったものに対して、他のユーザーの投稿がきっかけで関心を持った」という感想をいただきました。
また、技術的なことですが「(UIが)使ってみてわかりにくかった」というご意見もいただいており、サービスの改善につなげています。
未来:4kizには、一般ユーザーだけでなく専門家の公式アカウントも用意されるということですが、具体的にはどんな方が参加される予定なのでしょうか?
現時点では、Minecraftカップさん(ゲーム「Minecraft」を使用した作品コンテスト)やスプリンギンさん(プログラミングアプリ)など、子どもたちの間で話題性があり、教育的価値のある企業や団体に入っていただく予定です。
また、絵本作家さんや連携している子ども環境情報紙のエコチルさんなども入っていただく予定です。今後もどんどん増やしていきたいなと思っています。
会社のCIO=最高ソウゾウ責任者は小学生
未来:この度、株式会社4kizのCIO(最高ソウゾウ責任者)および副CIOとして小学5年生の瑞希(みずき)さんと小学6年生の晏理(あんり)さんが選ばれたということですが、CIOの役割やどんな基準で選任されたかについて教えていただけますか?
2022年4月から2023年3月までの1年間の任期で、毎月のこどもSNS企画会議に参加し、4kizのさまざまな企画やアイデアの提案、発信などを担当してもらいます。その意見は、企画だけでなく経営方針にも反映させていきます。
選考基準としては、まず4kizの目指す世界観に共感しているか、そして実際に「やりたい」という気持ちがどの程度あるのかということが大きかったです。最高ソウゾウ責任者なので、創造性と想像力を兼ね備えていることに加え、コミュニケーション力というのも大事な要素として選考させていただきました。
未来:実際にCIOと副CIOを起用されてみて、どんな印象を持たれましたか?
二人とも大人にはない発想を持っていますし、ユーザー目線での声をダイレクトに届けてくれるので、とても良かったと実感しています。
例えば公式キャラクターについて考えていた時、私としては好きな動物をキャラクターとして選んでくるのかなと思っていたのですが、実際は想像上の生き物を考えてきてくれて、その特性なども考えてくれました。また、CIOだけでなく他の子どもたちとも企画会議を行ったのですが、アイデアのみならず意思決定の方法に対しても意見が出たりしました。
未来:本山さんご自身は4kizを今後どのようなものにしていきたいと考えておられますか?
世界中の子どもたちにこのアプリが使われ、その世界中の子どもたちがつながり合い、そして想像力豊かにお互いの創作品をシェアし合うようなプラットフォームにしたいと思っています。
そしてそれが、子どもたちの楽しい学びの革命に繋がったらいいなとも考えています。現状では、子どもたちは大人から既存の知識を教えられ、それを覚えることに大変な時間を費やしています。本当は学ぶことはすごく楽しいことですし、そういう楽しい学びを自分で考えて実際に手を動かして作り出すことによって、もっと学びたいという意欲につながるとも思います。楽しい学びの革命が、子どもたちの中から生まれていくためのプラットフォームに、この4kizがなれば良いなと思っています。
未来:今後、リリース後に予定されていることがあれば教えてください。
リリースとほぼ同時に夏休みに入りますので、まずは自由研究の企画を考えて準備しています。「#つながる自由研究」という企画です。自分の取り組んだ自由研究をこのハッシュタグをつけて4kizにアップしてもらい、みんなの自由研究を互いに見ることができるようにしたいと考えています。また、ちょっとしたコンテストも企画しています。
未来:子どもたちの自由研究に対するモチベーションが上がりそうですね! 学校だけではなく、全国の子どもたちとつながれるのって、とても素敵なことですね。
私自身、mixiに始まり、FacebookやTwitter、InstagramなどさまざまなSNSを使ってきましたが、楽しく便利だと感じる反面、ついやりすぎてしまうこともあり、子どもはできるだけSNSから遠ざけておきたいとネガティブに捉えていた部分がありました。今回4kidsさんの取り組みについてお話を伺ったことで、SNSとの付き合い方について、ただやみくもに避けるのではなく、親子で一緒に試行錯誤しながら程よいバランスを探していくという方法があることに気が付きました。
お話を伺ったのは…本山 勝寛さん
株式会社4kiz代表取締役CEO。教育イノベーター。独学だけで東京大学やハーバード大学院に合格。アジア最大級の国際NGOである日本財団で、教育や福祉、NPO支援に携わり世界中を駆け回っている。「学びの革命」をテーマに言論活動を行い、「16倍速勉強法」や「最強の独学術」「好奇心を伸ばす子育て」など著書多数。自身が5人きょうだいで育ち、現在は13歳、11歳、9歳、7歳、4歳の子どもを育てる5児の父。これまで育児休業を4回取得し、独自の子育て論も展開している。
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