【子育て人生相談】SNSで知らない人と交流していた娘にどう対応?

子育て人生相談
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今回は、子どもが親の知らないインスタアカウントで知らない人とやりとりしていてショックだったというママからの相談です。子どものSNSをどう管理していったらいいかというお悩みについて、専門家にアドバイスしてもらいました。

このお悩みにアドバイスをくれたのは…

柳沢幸雄先生
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。

Q.SNSで知らない人と交流していた娘にどう対応?

中2の娘がインスタグラムで親が把握しているアカウントとは別に趣味の(アニメが好き)アカウントを作っていて、知らない人と交流をしていたことが発覚しました(グッズを交換しようとしていて、送ろうとしていたものが部屋にあったことから発覚)。 知らない人とネットでやり取りをしてはいけないと話してはきたのですが、このご時世でネットから切り離す生活はなかなか難しいので、今後の対応に悩んでいます。

私自身も趣味でインスタグラムをしていて、いいね!を押したりコメントが入ったりすることで嬉しい気持ちになることも知っています。ただ、「まだ娘は中学生で判断能力もまだ成熟してないこと、親に相談がなかったことが良くない」と本人とは話しました。今後どこを落しどころにすればいいのかなと悩んでいます。たとえば、親の知らない新規のアカウントは作らない、趣味のアカウントはやってもいいけど、ダイレクトメールなどで直接相手と交流はしてはいけない、アプリを削除するなど…。 もう思春期で彼女も考えるところもあると思うので、彼女の意思も考えてやりたいとは思うのですが…なにが正解なのかわからず、ご意見等聞かせてもらえたら嬉しいです。
(中2女の子のママ)

A. 「リスクの教育」が大切! 子どものSNSは親の了解のもと使用させるべし

例えばの話なんですが、お風呂に入る時、服は脱衣所で脱ぎますよね。でも道路の真ん中で服を脱ぐことはないですよね。つまり、「人の生活には内と外がある」ということです。内の世界では、服を脱いでお風呂に入りますが、それを外の世界でしてしまうと、大ごとになってしまいます。普段人は、内と外の行動を意識してきちんと分けており、内側にいる自分と外側にいる自分とでは行動を変えているんです。

ところが、現在は、内である自分の家の中から、外と直接繋がる道具を手に入れてしまったことがとても厄介なんです。SNSというのは、今まで我々が経験したことないくらい「広い外」で、発信すれば、一瞬にして地球の裏側まで届いてしまいます。自分がSNSで行動するときは、その「広い外」に向かってきちんと服を着ている状態でいるのかを考えて行動するようにしましょう

そう考えると、子どもがSNSアカウントを持ってはいけないわけではなくSNSで発信しているときの意識が、「外」にいるように服を着ている状態なのか、あるいは「内」である家の中でお風呂に入る前に自分が服を脱いだ状態なのかの違いなのです。

子どもにとって、電話番号や住所や個人名など、外に出して良い情報なのか判断が難しい場合もあるでしょう。それも、子どもと何回も話をすることが大事になります。個人情報をSNSに載せるということは、例えば、自分の髪の毛に自分の住所や名前・生年月日・パスワードなどを付けて街を歩くことと同じ、もしくは、それよりももっと広い範囲にまで広まってしまいます。「デジタルタトゥー」という言い方もするように、一度ネット上に発信した情報は、半永久的に消せなくなります。だからこそ、SNSに関して、折に触れて様々な事例を出して子どもに話をする「リスクの教育」が大切です。

親がどのくらい子どものスマホやSNSのアカウントを管理するかについてですが、相談者のお母さんが子どもに、「親に相談がなかったことが良くないと話した」ことは正しいと思います。世の中には、経験の浅い子どもを騙そうとする悪い大人もいます。大人である親は、子どもが知らない人とダイレクトに交流しているやり取りを見ることによって、その人がどんな人なのかを識別することができます。子どもには、まずは、SNSで誰かとやりとりしていることを親に話し、やりとりしていいかの親の了解を得なくてはいけないことを伝えましょう

加えて、親は子どものプライバシーを守るため、子どものスマホやPCのパスワードを把握し、いつでも見られるようにしておきましょう。子どもにもプライバシーがあるという人もいますが、プライバシーを守るというのは自立して自分の世界に責任を持つ大人の世界で言うことであり、子どもにいうことではないのです。親権者のもとで育っている子どもは、基本的な自由が制約されるものであり、スマホの使い方もそのひとつです。

では、子どものスマホをいつまで大人が管理するのかですが、18歳を超えたら法律的には大人でもあるので、例えば子どもが大学生になったら、アルバイト等でスマホの費用をすべて自分で支払うようにさせて、使う権利を部分的に子どもに手渡していってもいいと思います。自分ですべて賄うようになれば、スマホに関してすべて自由にできるようになります。料金プランについて考えたり、課金をしすぎて自分の懐が傷むリスクを経験したりもして、お金のマネジメントを実践で学んでいきます。人は、失敗して自分の財布か心か身体か、どこかが傷まないと学ばない生き物で、身をもって経験することで、起こりうるリスクに対して対応できるようになるのです。

子どもは、もともと不自由なものなんです。私の子どもの時の話だけれど、家庭の中は親父が中心で食事も親父の好きなものばかりだったり、晩酌時のおつまみを子どもはもらえなかったり(笑)。なので、早く大人になりたいと昔は思っていました。だから、大人になって飲み屋に行って好きなようにおつまみを食べられた時は、あぁ大人になったなあ…と思ったものでした。不自由から自由になるのが、大人になるということSNSやスマホの付き合い方も、子どものうちは不自由なものだと心得えて、親の了承のもと、内と外をわきまえて行動させましょう

今の時代の子どもたちには避けて通れない、ネットやSNSの世界。現実の世界と全く別物の感覚にもなりがちですが、「服を着た状態かそうじゃないのか」や「髪の毛に住所や名前を付けて街を歩くか」といった事例が分かりやすく、子どもにもSNSの世界が想像できるのは大切なことだと感じました。画面上でのやり取りなので聞き耳をたてることができない分、折を見て普段の会話からもSNSの近況を報告し合えたり、楽しさやそれに伴うリスクについてなど、何でも話せる環境づくりもしていけたら良いですね。大変貴重なお話を、ありがとうございました!

お話を伺ったのは…柳沢幸雄先生
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者。ハーバード大学大学院の准教授・併任教授を経験したこともあり、教育分野に熱心に取り組む。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。『「頭のいい子」の親がしている60のこと』『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』など、子育てに関する多数の著書がある。

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小学生と幼稚園児の男の子2人のママ。猪突猛進な自由人の長男と、几帳面でパンダ好きな次男の子育てを中心に、ライターとしてお料理やインテリア、ファッション、子育てなどの記事を執筆中。趣味は、旅行・シュノーケル・インテリア・カフェめぐり・音楽鑑賞・ドラマ鑑賞。子どもと行きたい旅行先は、南伊豆ヒリゾ浜。

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