今回の相談者さんは、6歳の女の子を育てるパパ。子どもを見ているとついつい口出ししてしまうものの、あまり干渉せずに「見守る子育てがしたい」という相談者さんのお悩みについて、専門家の先生に答えて頂きました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
柳沢幸雄先生
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。
Q.子どもの判断はどこまで尊重すべき?
6歳の女の子のパパです。「どこまで子どもの判断を尊重すべきか」で悩んでいます。子どもの幸せを考えたとき、何が幸せかは子ども自身にしかわからない(子ども自身が見つける、判断する)ことなので、理想としては自分で考えて、判断できる子どもになって欲しいと思っています。自分で考えて判断できる子どもになるには、たくさん自分で物事を決め、失敗も成功もたくさん経験するのがいいのかな?と思い、子どもがやりたいと言ったことはなるべくチャレンジさせています。
ただ、親として見守っていると、「あー、その判断で本当にいい? あとで後悔するんじゃない?」みたいな、ついつい口を出してしまいたくなる事がたくさんあります。なるべく子どもに干渉しない子育てを目指したいものの「干渉しないことを徹底することが正しい子育てなの?」とも考えてしまうのです。
例えば先の話ですが、高校進学のときに「やりたい事を見つける為に日本横断の旅に行ってくる」と言ってきた場合、子どもの意見は尊重したいものの、親としてはやりたい事が見つかってないなら、とりあえず高校に進学しておけば、やりたい事探しもできるのでベターなアプローチでは?と考えてしまいます。とはいえ、失敗するのも大事な経験。そのときのダメージは大きいですが、どこかでその失敗が活きる可能性もあります。それを考えると、人生の大きな選択の場面でどこまで子どもの判断を尊重すべきか、悩んでしまうのです。先生には、子育てにおいて「どこまで子どもの判断を尊重すべきか」のアドバイスをお願いしたいです。
(6歳女の子のパパ)
A:子どもの意思は100%尊重すべき!
どこまで子どもの判断をどこまで尊重すべきか…この答えは、ズバリ100%です。当然子どもは大人と比べて知識量や経験が少ないので、大人とは違う判断をすることが多い。さらに、子どもはその時々で瞬間的な判断をするものです。その判断に対して、大人は「YES but か YES and」で対応するのが理想です。つまり、まずは子どもの判断を受け入れる(YES)こと。そして、そこにちょい足し(but か and)することなんです。
[YES but]とは「それ面白そうだね(YES)、この部分もう少し工夫するともっと面白くなるかもしれないよ(but)」、 『YES and』とは「それ面白そうだね(YES)、こういう方法も加えてみるともっと面白くなるかもしれないよ(and)」。子どもがなにかに興味を持ったり、考えたりすることは瞬間的なものかもしれないけれど、そこを土台に何かを足してあげる、そして見守るというのが大切です。「チョイ足し」したことで子供の目が輝き、夢中になっている姿を見る事は、親として子育ての最大のの醍醐味なのではないでしょうか。
「高校進学のときに~」とありますが、これはかなり仮定的な話ですよね。私は、この発想自体が不要だと思います。何に対しても、親が先回りをするのは絶対にいけません。子どもを育てるときに大切なことは「転ばぬ先の杖を与えない」ということ。子どもを危険から回避するのは親の務めですが、あきらかに命に係わる危険なこと以外は大人が口出しすべきではないのです。親が死んだあと、先回りして子どもを守ってくれる人はいないわけですから。子どもは自分で危険を察知し、それを回避する術を身につけていかなければなりません。親が先回りばかりしていては、子どもの自立を妨げることになります。だからこそ、子どもの判断は100%尊重し、ちょい足ししたり見守ることが親の役目だと思います。
子どもが将来~したら…など、まだ見ぬ未来を想像して色々と心配する親御さんも多いと思いますが、親が先回りして対処することで子どもの自立を妨げる可能性が高く、この発想自体が「転ばぬ先の杖を与える」ことになりかねないということですね。子どもが何か主張したら、まずは受け入れるという所から始めていきたいですね。貴重なお話、ありがとうございました!
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者。ハーバード大学大学院の准教授・併任教授を経験したこともあり、教育分野に熱心に取り組む。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。『「頭のいい子」の親がしている60のこと』『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』など、子育てに関する多数の著書がある。
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