今回は、姉弟の喧嘩がひどいことに悩んでいるパパからの相談です。弟が泣き叫ぶまで暴力をふるう姉に腹が立ち疲れ果てているというお悩みについて、専門家にアドバイスしてもらいました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
柳沢幸雄先生東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。
Q.喧嘩が頻繁で弟が泣き叫ぶまで暴力をふるう姉に腹が立ち疲れ果てています
兄弟喧嘩がひどく困っています。 9歳の姉が些細なことで直ぐに7歳の弟を叩いたり、引っ掻いたり、つねったりしてその度に弟は泣き叫びます。泣きながらやり返そうと互いに叩き合い収拾がつかなくなります。 毎度の喧嘩で直ぐに手を出す姉の方に腹が立って仕方がありません。場所も選ばす、人前でも、車中でも、浴室でもところ構わず…。 9歳にもなり、何度言っても手を出す姉が情けなく共感も出来ず、なぜ手を出すのかと叱ってばかりです。愛情不足なのでしょうか。
この先、姉の横暴さがエスカレートしていきそうでとても怖いです。 喧嘩の内容を聴き、共感してあげるべきなのでしょうが、喧嘩が頻繁過ぎて疲れ果てています。精神的な余裕がありません。 姉の味方をして共感をすれば2人の関係も変わっていくのでしょうか? 今後どう仲裁や声掛けをしたらいいかわかりません。どうかご指導宜しくお願い致します。喧嘩の無い平和な時間が欲しいです。
(小3女子&小1男子のパパ)
A.カウンセラーなど専門家にご相談を。子どもの心の奥底にあるものを探りましょう
子どもは何かによって感情を抑えつけられているとき、ストレスの発散として暴力が出てしまうことがあるんですね。心の奥底に今まで言えなかった何か、深い部分で満たされなかった何かを抱えている可能性があるかもしれません。
例えば、上の子は生まれてから一人天下だったけれど、下の子が生まれると、どうしても下の子が注目されやすいですよね。そのため、上の子は疎外感を持ち、無意識に赤ちゃん返りをすることがよくあると言われています。赤ちゃんになることで下の子と同じように、親の目線や愛情が自分にも注がれるだろうと思うからなんですね。
そういう時期に、お家の方がどのように対応してきたかが大切になってきます。例えば、「あなたは、お兄ちゃん(または、お姉ちゃん)だから優しくしてあげなさい」とか「あなたは弟だから」、「あなたは男の子だから」などの理由で、我慢を強いられることがあったとしたら、子どもにはストレス以外の何ものでもありません。生まれ持ったきょうだいの順番や性別は、子どもが自分では変えられないことであって、納得できるはずもありません。もし、そのような対応が長くされてきたとしたら、上の子にとって下の子が憎しみの対象でしかなく、「下の子がもし生まれていなかったら、僕(私)の天下だったのに…」という思いになるかもしれない。
弟さんとの喧嘩の直接的な原因を聞くのも一つの手段ですが、どうしても手が出てしまうということは、そんな単純な話ではないと思うんですね。小さな頃からの積み重ねで、表面に出てきていない何かがあるのかもしれません。お姉ちゃんの心の底には何があるのか、原因はどこにあったのか、臨床心理士やカウンセラーなど子育ての専門家の方に聞いてもらい、解きほぐしてもらって、それに応じた対応をするのが良いのではないかなと思います。
兄弟姉妹の関係というのは、兄弟姉妹の人数によって状況がまったく違ってきます。一人っ子は、親と一対一で過ごす時間が長いため、こういうトラブルの経験をあまりせずに育ってくることが多いと言われています。ただ、兄弟との関係を経験していないことで、社会に出て複雑な人間関係を初めて体験し、驚くこともあるでしょう。三人兄弟は、大概2対1に分かれ、派閥ができます。そこで子どもは、自分自身が生き残るためには何をしたらいいのか、どういう組み合わせの、どういうグループに属した方がいいのか、本能的に感じ取って行動すると言われています。では、2人兄弟の場合なのですが、これがなかなか、難しい。今回のご相談のようなことが起きることもあるんですね。
子どもが小さくて、おもちゃなどの取り合いになったとき、基本は子ども同士で、じゃんけんやかわりばんこに遊ぶなどして解決していくようにしましょう。そのとき、親は裁定しないこと。これは我が家の話だけれども、取り合いの喧嘩になったときには、親は裁定せずにジャンケンをさせました。子どもたちでルールを作り、じゃんけんで決めていました。10回勝負などじゃんけんの回数を増やして決めるようになったりして、負けても納得できるようになるんですね。自分たちでルールを作って、自分たちなりに自然と決着を付けて解決していく…段々としこりの残らない決め方が、子どもたちだけでできるようになっていきます。
また、成長に伴って、下の子にも知恵がついてきます。下の子は、だいたい融通が利いて活発な性格の子が多かったりするけど、我が家の場合は…例えば、上の子は好きなものを最後に食べる性格で、反対に下の子は好きなものを最初に食べて、途中で手を出して上の子の好物も食べちゃうんです。そういうとき、親は「ダメだよ」と制裁するのではなく、上の子の好物を最初から取っておいて、追加でそっとあげたりしてました。だいたいそういう展開になる予想がつくから、親もそういうきょうだいの性格の違いや様子を観察して、子どもの気が済むような対応を、そっとやってやることも大切なのではないかなと思います。
『専門家に相談に行くことに抵抗感があったり、子どもが精神的に病んでいると思われてしまったりしたらどうしよう…と思われる保護者の方もいらっしゃるかもしれない、そんな場合はどうしたらいいでしょうか…』と伺ったら、『そのように思うのはニュートラルに子どもを育ててないということかもしれませんね。今この瞬間の子どもにとって、何が必要かってことを考えたときに、それに対して行動してあげるということが、一番子どもを愛している親の行動なのです』と先生がおっしゃっていたことが非常に心に響きました。子どもにとって何が必要か、何をしてあげられるかを考えることこそが大切ですよね。子どものことを第一に思うということはどういうことなのかについて深く考えさせられました。今回も、貴重なお話をありがとうございました。
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者。ハーバード大学大学院の准教授・併任教授を経験したこともあり、教育分野に熱心に取り組む。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。『「頭のいい子」の親がしている60のこと』『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』など、子育てに関する多数の著書がある。
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