銭湯に勤務しつつ、「風呂デューサー」として各地の銭湯を巡って取材している毎川直也さんに、大きなお風呂を楽しむだけじゃない「銭湯」のよさを教えていただきました。そして、素朴な疑問、銭湯のお湯がやけに熱い理由も聞いてみました。
オムツが外れる3歳頃から、スーパー銭湯や温泉旅館に行きやすくなりますよね。でも、ご近所の「銭湯」って行っていますか? 大きなお風呂が大好きな子供も楽しがるはずなのに、あまり行かないのはなぜでしょう?
近所にあっても行きづらい?
まずは、銭湯に関する質問をいこーよユーザーに聞いてみました。※回答数610名
Q.銭湯に親子で行く頻度は?
Q.銭湯のイメージについて、どう思いますか? ※複数回答
結果を見ると、親子で銭湯に行ったことがない人が4割を超えています。一方で銭湯のイメージは「大きなお風呂があって気持ちがいい」という好印象の人が多いのもわかりました。
近所なのに行きづらいと答える人もいるようですが、そこには「年配の方に怒られそう」など、親が遠慮をしてしまっている心理もうかがえます。
銭湯は確かに地域密着の社交場。入りにくい雰囲気もあるかもしれません。でも、「お風呂」だけじゃない銭湯のよさを知れば、重い腰が上がるかも?
親子で銭湯にいくメリットとは?
1)必然的に対話が生まれる
「今は食卓にテレビがあったり、食事する時間が違っていたり、じっくり親子で対話する時間が少ない人もいるのではないでしょうか。その点、銭湯に行くと、必然的に対話が生まれます」と毎川さん。
銭湯は「お風呂に入りに行く」わけなので、家のお風呂よりもゆっくり時間が取れますね。
2)和の文化・様式を体感できる
銭湯の中には伝統的建築様式でつくられているところもあり、そういったものを「見学」するのではなく、「使う」機会になります。小さな頃からこういった体験をしておくのは良い機会になります。
3)裸のカラダを観察できる
「親は子供の体の成長を確認できますし、子供は「大人になったらこういう体になるのか」と気づくことができます。また、他人の大人の裸を見るのも他にはない貴重な機会です」
洋服や装飾品などを身にまとっていない素の人間の多様さも見ることができるのが、銭湯なんですね。
4)「いろんな人がいる」を幼少期から経験できる
痩せている人、太っている人など、体型的にもそうですが、外国人もいれば、若い人もお年寄りもいる。いろんな人が世の中のいるんだと「体験」すること。小さいうちはそんなことを思わないかもしれないですが、そんな「環境」に身を置くことの大切さがあります。
5)さりげないマナーから日本の心を学べる
銭湯でのマナーは、例えば以下のようなものがあります。
・桶で湯をかけるときはかがんで行う
→隣の人にお湯がかからないようにするため
・使った桶とイスは戻す
→次に使う人のことを考える
・無駄なお湯は使わない
→水を多く使うのは「もったいない」から
「(上記のような)マナーは細かいことだけれど、思いやりや、もったいないと思う気持ちなど、日本人らしい心を経験の中から培っていけるのではないでしょうか。また、ちゃんと他人の子供を怒ってくれる大人もいます。それをうっとうしく思ってしまう世の中かもしれないですが、そういういい機会なんだと受け止めてもらえれば」
わが子が怒られると、親の自分が悪いことをしたような気がして、他人に怒られないように気を使いすぎてしまいますが、子供が地域の人に育ててもらっていると思う気持ちも大切かもしれませんね。
ちなみに、以下の点も注意したいポイントです。
・脱衣場にびしょびしょのまま出てこない
・湯船などでバシャバシャ水かけしない
・泥など汚れがあるのに、そのまま湯船に入らない
(通常かけ湯だけをして入ることもあるが、外で遊んだあとは体も洗ってから)
・子供はトイレに行ってから
銭湯あるある!「なぜお湯は熱い?」
もうひとつ、親子で銭湯に行く際の不安要素は、湯船の湯温。なかには「罰ゲーム!?」と思うほど熱いことも…。これには理由があるのでしょうか?
「人間は歳を取ってくると温度を感知する能力が下がってくるのかなと思っているのですが、銭湯に通う常連客には年配の方が多く、『熱くないと入った気がしない』という希望に沿っている状態ですね」
「また、大量の湯船のお湯は、ぬるい状態からすぐに熱いは状態にはできないのですが、熱い状態からぬるくするのは簡単なので、熱くしているというのはあります」
また、この銭湯のお湯が熱い問題には諸説あり、
・燃料代をケチっていないという気概の表れ
・今よりも銭湯に多く客が足を運んでいた時代に、客の回転を早めるため
・家に帰るまでの道もシャキッとできるように交感神経優位にさせるため
など、いろいろな理由があるようです。
ただ、親子で行く場合は、なかなかにハードルの高い「熱湯」。どうすればいいでしょうか?
「そういう場合は遠慮せず、水で埋めて大丈夫です! 自分好みの温度で楽しんでください」
大きな湯船の全部はぬるくならないと思いますが、入りやすい部分を選べば大丈夫。子供は大人よりものぼせやすいので、体調管理も気をつけてあげてくださいね。
お話を聞いたのは…
毎川 直也さん
「風呂デューサー」として、東京都大田区の改正湯で勤務しながら、銭湯や温泉を訪ね歩く。銭湯や温泉の素晴らしさを知ってもらうべく、さまざまな活動をしている。サイト記事執筆のほか、雑誌、テレビなどにも銭湯およびお風呂の専門家として出演。
改正湯
※こちらは2014年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。
この記事を読んでいる人は「自立心」に関するこんな記事も読んでいます
・オムツが取れたら行きたい! 「スーパー銭湯」は社会勉強に最適!
・子どもとお風呂を楽しむアイデア満載!「浴育」でコミュニケーションを
・コミュニケーションやお水実験に最適!幼児向けお風呂遊びを紹介!
・乳幼児のお風呂係はパパがおすすめ! その理由と遊び方のコツ
・「子どもだけでお風呂」は何歳から? 安全対策・注意点も紹介!
・【未来へいこーよ】が育むココロのスキル(非認知能力)について