言葉が話せない時期の赤ちゃんとコミュニケーションがとれる育児法として、近年人気となっている「ベビーサイン」。始めてみたいけど、いつ頃、どのように始めたらいいのか分からないお父さんお母さんが多いと思います。そこで、日本ベビーサイン協会でマスター認定講師を務める、いとうあづささんにお話を伺いました。
「ベビーサイン」ってなに?
ベビーサインとは、手話やジェスチャーを使って、まだおしゃべりができない赤ちゃんとコミュニケーションをとる育児法のこと。言語能力が未発達な赤ちゃんでも、手や指を動かすことによって気持ちを伝えことができるのです。
「赤ちゃんにもちゃんと意思があって、いろんなことを理解していて、言いたいことがいっぱいあるのに、伝える手段が分からないからグズリとして出てくるんですよね。
ベビーサインをやっている子は自分の気持ちを伝えられるので、理由なく無駄に泣く子はあまりいないです。私も実際に息子とベビーサインを使ってコミュニケーションをとっていましたけど、子育てでイライラすることはぜんぜんありませんでした。」
赤ちゃんは自分の気持ちを伝えることができるし、お父さんお母さんは子どもがなぜ泣いているのか分からなくてイライラすることが少なくなる。お互いにストレスから解放されることもベビーサインのメリットです。
「赤ちゃんのうちはどうしても育児が一方的になりがちですが、
ベビーサインをとり入れることによって双方向の育児ができるんですね。『どうする?』『どうしたい?』『何がいい?』と、子どもと相談しながら対等に育児が進められます。子どもは自分の意思をどう伝えようかと頭を使うから、脳の発達にもいいかもしれません。」
始め時はいつ? 教える方法は?
では、実際に始めるとしたらいつ頃から、どのように教えればいいのでしょうか?
「腰が据わって、お座りができ、両手が自由に使えるようになる生後6カ月くらいがいいですね。最初は『おっぱい』から始めるといいと思います。6カ月くらいの月齢だと離乳食が始まっている頃なので、『もっと食べる?』と聞くために『もっと』を教えてあげるといいと思います。」
教え方は、普段の生活の中で話している言葉とともにサインを見せることを繰り返すだけ。
例えば、赤ちゃんがおっぱいをほしそうにしているときに「おっぱい飲む?」という言葉と一緒に「おっぱい」のサインを見せると、だんだんと理解していきます。
では基本的なベビーサインを紹介します。
実践! 今日からとり入れられる基本のベビーサイン
「おっぱい」
グー、パー、グー、パーの要領で、手を握って開いてを繰り返す。
「おいしい」
開いた手をほっぺにあてる。
「もっと」
指先でものを掴むような感じで両手を丸めて、爪先と爪先をくっつけて離して、を繰り返す。
「抱っこ」
両手を広げる。
「ありがとう」
投げキッスの要領で、手の平を口にあてて、相手に向かって離す。
焦らず子どものペースに合わせて
教える上でのコツは
「笑顔で楽しみながら、遊びの感覚でやること」と、いとうさんは言います。
「子どもそれぞれの性格によって、早く覚える子とゆっくりの子がいます。ゆっくりの子は時間がかかりますけど力を貯めこんでいるだけ。必ずサインでお話してくれるようになりますから、
すぐにできなくてもOK! 心配しなくても大丈夫です! それから、ベビーサインは勉強じゃないので、教え込まないこと。『なんでできないの!』『サインをやらないとやってあげない』などと子どもにプレッシャーを与えるようなことは避けてほしいですね。」
お父さんお母さんに余裕があれば、0歳児のうちからたくさんのベビーサインを見せてもいいそうです。が、月齢が低いうちはお世話が忙しいので、無理せずに、基本的なベビーサインを使うだけでいいそう。
「焦らずに最初は3つ4つから始めて、余裕が出てきたらいくつでも見せるといいと思います。1歳までに平均で5〜6個のサインができるようになって、1歳を境にどんどん増えていきますよ。私の生徒さんは250〜300個できるようになった子もいます。『ママ、おいしい、もっと』など、だいたいの1歳児が3語以上のサインをつなげられるようになります。」
子どもが成長しておしゃべりができるようになると、自然にベビーサインから話し言葉へと移行していくそうです。ベビーサインを遊びの一環として楽しみながら、親子のコミュニケーションツールとしてとり入れてみてはいかがでしょうか?
お話を聞いたのは…
いとう あづさ さん
2006年に長男を出産。元々手話に興味があったことから独学でベビーサインを経験し、自らベビーサイン育児を実践。その後、より深く学びたいと、日本ベビーサイン協会講師育成プログラムに通い、マスター認定講師の資格を取得。みなとみらい、上大岡、戸塚、横須賀など、主に神奈川県内の各所にクラスを持ち、講師として活動している。
日本ベビーサイン協会
ライター紹介
依知川 亜希子
1973年横浜・元町生まれ。映画雑誌のデザイナー、ファッション誌の編集者を経て、フリーランスの編集&ライターに。2012年5月に長男を出産。休日はマイケル・ジャクソンを敬愛する音楽好きな息子(2歳3ヶ月で卒乳)を連れて、公共交通機関を使ってどこまで出かけられるか挑戦中。安心安全な食事、家族旅行、低予算だけど綿素材でかわいい子どもファッション、第2子どうする? について思いをめぐらせる日々。
※2015年6月にいこーよで公開された記事の再掲です。