今回は、子どもが辛い、辞めたいといっている習い事を続けさせるかどうか悩んでいるママからの相談です。子どもは辞めたいといいながらも上手になりたいと努力もしているので、辞めさせる方がいいのか続けさせる方がいいのかわからなくなってしまったというお悩みについて、専門家にアドバイスしてもらいました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
柳沢幸雄先生東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。
Q.「やりたい」と「辞めたい」で揺れる、とても辛そうな習い事を続けさせてもよい?
小学2年生の娘が年中から新体操を習っています。2か月前から、選手を目指すクラスに参加するようになりました。新体操の素質があるタイプではないのですが、仲の良いお友達と一緒にレッスンを受けたい、来春の市大会で入賞したいといって通っています。
クラブチームの選手予備軍なのでコーチの指導は厳しく、楽しい習い事の域を超えています。運動神経のよいほうではない娘は、人一倍努力をしないと先生に目をかけてもらうことができずに悔しい思いをしているようなので、できそうな技や柔軟を一つずつできるように家でも練習しています。その甲斐あって、この2か月で娘なりにできることが増え、親としては成長を喜ばしく思っています。
とはいうものの、ザ・体育会系のコーチの指導に傷ついている娘をみていると、オリンピック選手を目指すわけでもないのに、こんなに小さな頃から、辛い思いをさせてよいのだろうか?運動神経のよいお友達と自分を比べて卑屈になってしまわないだろうか?などと思ってしまいます。
本人はコーチに厳しいことを言われるとすぐ辞めたいと言い出すのですが、上手になりたいという気持ちはあるようで、練習は一応していて、できなかった技ができるようになると嬉しそうにしています。
ゴールデンエイジのピークが終わる小学校6年生くらいまでは新体操を続けてもらいたいと思っているので、彼女の自己肯定感を失わないように、できるだけ練習の見学をして「きょうは〇〇ができたね」「この間より〇〇がよくなってたよ」「次は〇〇ができるようにがんばってみようよ」と声をかけ、「お母さんは頑張ってるのを知ってるよ」と伝えるようにはしているのですが、果たしてこれが正解かがわかりません。娘の自己肯定感を損ねないように、もっと得意なこと(娘はお絵描きや工作が得意です)だけをやらせたほうがよいのか悩んでいます。
(小学校2年生の女の子のママ)
A. 子どもが行きたがっているなら行かせてよし。もう無理となったらやめるよりは休む
結論から言えば、お子さんが行きたいと言っている限り行かせればよいと思います。
このお母さんは、非常にお子さんをよく観察されていますね。子どものことを思って、状況をよく把握している親の目は非常に大事なことです。ただ、続けさせてもいいのだろうかという悩みは自身の心の内におさめておいて、親としては一歩下がって考えた方がよいでしょう。
まずは、普段のレッスンの子どもの様子などを親からコーチに直接聞いてみましょう。子どもを通してのワンクッション置いた話ではなくて、直に大人同士で話をしておくのが重要です。お母さんの目から見るとすごく厳しいコーチで子どもが辛そうと思うかもしれないですが、コーチと直にお話をしてみたらお子さんの素質に対するコーチの評価はお母さんが把握しているものと違うかもしれません。コーチは、この子なりにすごくいいところがあるとか、見込みがあるといった評価をして、厳しい対応しているのかもしれません。スポーツクラブにしても、学校や塾などにしても、子どもが過ごしている24時間の中でその子どもを見ている親としての目と、それ以外のコーチや先生などからの目とでは、評価の基準が違うことは結構多いんですよね。
そして、子どもの成長の段階というものは、あるとき、急にジャンプすることがあります。お母さんはそう思わなくても、もしかするとオリンピック選手になる可能性だってあるかもしれません。
非常に注意深く子どもを見守ることは大事だけれども、自分の見方だけで先回りしすぎないことも大事になります。
さらに、コーチや先生などに家庭での様子をインプットしておいてもらうことも大切です。コーチたちは家庭の中での様子は知らないので、家での様子や親から見る子どもの性格を伝えておくと、その子に合った、コーチが一番よいと思う練習法や進め方を模索していってくれるかもしれません。
それでも、本当にしんどそうなときは、辞めるのではなく少し休ませてみましょう。これだけ細かくお子さんを見ているお母さんだから、十分子どもの変化も分かるかと思います。子どもにとって精一杯で、判断力もまともにつかなくなってしまう前に、「ちょっと休んでみる?」と一言投げかけてみましょう。長いこと一つのことをしていると誰しも燃え尽きるもので、休んで回復する場合もあれば、そのままの状態が続くこともあります。やっぱり行きたいとなればまた行けばいいし、それを繰り返してもいい。「お友達とまた一緒にレッスンを受けたい!」など、本人が行きたいと思ったタイミングで再開しましょう。
これらのことをしても、コーチ自身が子どもの気持ちに寄り添う対応をしてくれないようなら、心の中でその組織に対してネガティブな評価をとりあえずしておいて、何か決定的な出来事があったときに、最終的に親が辞めさせるなどの判断をするとよいでしょう。その基準は、親の感じ方や勘を頼りにしたらいいと思います。お子さんの意見を尊重しながら、親権を持っているのは親ですから、親としての判断を優先させましょう。
東京大学名誉教授、環境化学者、工学博士。シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者。ハーバード大学大学院の准教授・併任教授を経験したこともあり、教育分野に熱心に取り組む。2011年から開成中学校・高等学校の校長を9年間務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長に就任。『「頭のいい子」の親がしている60のこと』『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』など、子育てに関する多数の著書がある。
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