森永製菓 研究所

「子どもがいるからこそ行ける」ロックフェスへ。UNLOCK ROCK FESを生んだ2人の原体験

スキシャリスト
「スキシャリスト」とは、“好き”のスペシャリスト。「好き」を大切に育て、それを軸に行動し、向き合い続けながら自分の人生を切り開いている人たちのことです。その歩みには、子どもが「好き」を見つけ、信じ、伸ばしていくヒントが詰まっています。多彩なスキシャリストへのインタビューを通して、お子さんの「好き」と向き合うとき、親御さん自身が一歩踏み出したいときに、そっと背中を押してくれる物語をお届けします。

「子どもが生まれてから、ライブやフェスに行かなくなった」そんな声を、子育て世代からよく耳にします。音量や周囲への気遣いなどを考えると、好きだった音楽から少し距離ができてしまうのは、それほど珍しいことではありません。そんな中、「親子で一緒にロックを楽しめるフェス」を本気で形にしたのが、森永製菓の研究員として働く月足さんと山田さんです。音楽との出会い、研究員という仕事、そして自分たちの「好き」をどう育ててきたのか。UNLOCK ROCK FES誕生の背景には、子育て中の親にも重なる視点がありました。

UNLOCK ROCK FESとは? 「親子向けロックフェス」という新しい選択肢

UNLOCK ROCK FES

UNLOCK ROCK FES(アンロック・ロック・フェス)は、「親子で楽しめるロックフェス」をコンセプトにした音楽イベントです。ロックフェスと聞くと、大音量で長時間、子ども連れでは参加しにくいイメージを持つ人も多いかもしれません。しかしUNLOCK ROCK FESは、最初から子どもと一緒に来場することを前提に設計されています。

会場の音量や雰囲気にも配慮され、途中で席を外しても音楽を感じられる休憩スペースが用意されているのも特徴です。泣いたり、騒いだりする子どもの声も「フェスの一部」として受け止める空気づくりが大切にされています。「子どもがいるから無理」ではなく、「子どもと一緒だからこそ楽しめる」。そんな新しい選択肢を提示するフェスです。

「UNLOCK ROCK FES」イベント情報ページ(いこーよ)へ

生音の衝撃が、原点だった。音楽との出会いと子ども時代

森永製菓 研究所

写真左:山田章文さん 写真右:月足元希さん。

未来:まず、おふたりがロックを好きになったきっかけを教えてください。

月足元希(以下、月足)さん:音楽自体は中学生くらいからよく聴いていました。当時はiPodに曲を入れて、Mr.Childrenなど、ドラマとタイアップしている音楽が中心でした。まわりの友だちが聴いているものを一緒に聴いている、という感じだったと思います。

未来:その頃から、いわゆる「ロック少年」だったわけではないんですね。

月足さん:そうですね。ロックに強くハマったのは大学2年生のときです。SHISHAMOのライブを初めてライブハウスで観て、生の音の迫力に衝撃を受けました。それまでギターはリズムを刻む楽器というイメージだったのですが「こんなに複雑なメロディを弾けるんだ!」と驚いて。CDで聴く音楽と、実際にその場で体に響く音はまったく違うんだと実感しました。そこから他のバンドのライブやフェスにも行くようになって、気づいたらどんどんロックが好きになっていました。振り返ると、音楽にハマるタイミングとしては、わりと遅かったほうかもしれません。

月足さん

森永製菓株式会社 研究所 健康科学研究センター月足元希さん。

未来:子どもの頃は、音楽のほかにどんなことが好きでしたか?

月足さん:遊戯王のカードゲームをしたり、サッカーやドッジボールをしたり、わりと普通の子どもだったと思います。塾にも通っていて、勉強も嫌いではなかったですね。どんどん詳しくなっていく自分が、ちょっと好きだった記憶があります。

未来:ご両親にはいつもどんなことを言われていましたか?

月足さん:きょうだいがいるんですが、「お兄ちゃんなんだから」と言われることはあまりなくて、親も優劣をつけないタイプでした。弟も自由にやっていて、おさがり文化もほとんどなかったですね。興味の対象も違っていて、弟は仮面ライダーが好きでした。

未来:山田さんはいかがですか? ロックとの出会いについて教えてください。

山田さん:僕は正直、はっきりしたきっかけは覚えていません。中学生くらいから音楽を聴き始めて、TSUTAYAでCDを借りて、流行りの曲を一通り聴いていました。その中で、自然とロック寄りの音楽をよく聴くようになった感じです。

未来:どういうところに惹かれていたんでしょう?

山田章文(以下、山田)さん:歌詞ですね。自分の気持ちを代弁してくれているように感じる曲が多くて、感情をメロディに乗せて歌ってくれているところに共感していました

山田さん

森永製菓株式会社 研究所 第二商品開発センターキャンディ開発グループ 山田章文さん

未来:子どもの頃は、どんなお子さんでしたか?

山田さん:外で遊ぶのが好きでした。公園で野球やサッカーをしたり、放課後はドッジボールをしたり。塾にも通っていましたが、勉強が好きというよりは、習い事の一つという感覚でした。両親には「どう思う?」とよく聞かれていたのを覚えています。何かあるたびに、自分がどう感じたか、どう思ったかを聞かれていました。当時は正直、ちょっと面倒くさいなと思うこともありましたが、今振り返ると、子どもの意見を尊重してくれていたんだなと感じます

未来:その経験は、今につながっている感覚はありますか?

山田さん:ありますね。自分の考えや感覚を大事にすることが、自然と身についた気がします。音楽の好みもそうですし、後々、仕事や選択をするときにも影響していると思います

日常の「美味しい」が原点。研究員になった理由

未来:おふたりが森永製菓の研究員を目指した理由を教えてください。

月足さん:僕は理科が好きで、小学生くらいから「サイエンス(科学)っていいな」と思っていました。技術で世界の人々の暮らしを変えることに憧れがあって、野口英世の伝記を読んで影響を受けたのも覚えています。

ただ、自分の将来の仕事を何にするか考えていく中で「人の楽しい時間に関われること」を大事にしたいと思うようになったんです。受験勉強の合間に、友だちとお菓子を食べる時間があって、それがすごく居心地のいい時間でした。張りつめていた気持ちがふっと緩むような感覚があって、「こういう時間を生み出せる仕事っていいな」と感じたんです。

未来:特別な出来事というより、日常の中の何気ない時間が大事だって気づいたんですね。

月足さん:そうですね。そのときは、人生を変える出来事だなんて思っていませんでした。でも、あとから振り返ると、あの時間があったから食品メーカー、その中でもお菓子の会社を目指すようになったんだと思います

未来:山田さんはいかがですか?

山田さん:僕は食べることや料理が好きだったのが大きいです。小学生の頃に、お寿司屋さんで「こぼれイクラ」を食べたことがあって、それが本当に衝撃でした。それまで持っていたイクラのイメージが、一気に覆されたんです。「食べる」という体験で、ここまで感情が動くことがあるんだ、と初めて実感しました。その体験がずっと記憶に残っていて、こういう驚きや感動を、人の生活の中に届けられる仕事がしたいと思うようになりました

未来:その瞬間は、まさか将来の仕事につながるとは思っていなかったのでは?

山田さん:まったく思っていなかったですね。ただ「すごい体験をした」というだけでした。でも今振り返ると、あれが自分の価値観をつくった一つのきっかけだったんだと思います。

未来:おふたりの話を聞いていると、人生を動かすような発見は、いつ、何がきっかけで起きるか分からないものなんだなと感じますね。

「子どもが生まれると行けない」を変えたかった

未来:研究員として働く中で、なぜロックフェスをやろうと思ったのか、きっかけを教えてください。

山田さん:一番大きかったのは、フェスに一緒に行っていた先輩たちが、子どもが生まれたタイミングで「今年は行けないんだよね」と話すようになったことでした。ロックが好きで、音楽を楽しんできた人たちが、ライフステージの変化で、その場所から離れていくのが、なんだかもったいないなと感じたんです。

未来:「仕方がない」と受け止めることもできそうですが、そこに違和感があったんですね。

山田さん:そうですね。子どもが生まれるなどライフステージが変化したら、自分の趣味をあきらめていく、というのが当たり前になっている状況に、引っかかりがありました。

月足さん:ちょうどその頃、僕たち自身もいろいろなフェスに足を運んでいました。その中で、会場の近くのコンビニで森永製菓の商品を手に取ってくれている人たちを見かけることがあって。「音楽が好きな人たちと、商品を通じてはつながっているけれど、体験としてはあまりアプローチできていないな」と感じたんです。

未来:音楽と仕事が、そこで少し重なった感覚があったんでしょうか?

月足さん:そうだと思います。その違和感を抱えたまま、社内で新規事業のアイデアを募集していることを知って、「じゃあ一度、形にしてみようか」と話しました。

未来:かなり思い切った決断だったのでは?

山田さん:正直、勢いもありました。新規事業の締め切りまであまり時間がなくて、「やるなら今しかないよね」と。ただ、その時点では、答えが見えていたわけではなかったです。

未来:まずは「やってみる」ところからだったんですね。

山田さん:はい。最初から明確な形があったというよりは、ありたい姿・理想の形を言葉にしながら、一歩踏み出した、という感覚に近いです。

親子フェスを“事業”にするためにやったこと

未来:そこから実際に形にしていく過程では、どんなところが大変でしたか?

月足さん:一番大きかったのは、「本当にやる意味があるのか?」という問いに向き合い続けることでした。フェス自体は楽しいけれど、それが事業として成立するのか、この会社(※森永製菓株式会社。運営は子会社のSEE THE SUNで実施)でやる必然性があるのか、という点は何度も議論になりました。

未来:かなり根本的なところから問われたんですね。

月足さん:そうですね。だからこそ「フェスをやりたい」という気持ちだけでは足りなくて、なぜこのフェスなのか、誰にどんな価値を届けたいのかを、何度も言葉にし直す必要がありました。

山田さん:その過程で大事にしていたのが、コンセプトをぶらさないことでした。親子で安心して楽しめることを軸に、音量や会場の雰囲気など、すべてをそこから逆算して考えていきました。

未来:会場選びなども、その考え方が影響しているんでしょうか。

山田さん:はい。会場については、かなり慎重に考えました。まず大前提として、親子で安心して来られること。そのうえで、音楽フェスとして成立する空間であることを大事にしました

具体的には、キャパシティが大きすぎないことや、ホワイエのように一度外に出て休めるスペースがあることは、重要なポイントでした。子どもが途中で疲れてしまったり、少し音から離れたくなったりする場面は必ずあるので、「離れても、また戻ってこられる」構造があるかどうかは意識しました。休憩中でもフェスにきていることを感じられるように、廊下に出たときでも、音楽が聞こえるようにする工夫も盛り込む予定です。

神田明神ホール

フェスの開催場所は神田明神境内にある「神田明神ホール」。JR御茶ノ水駅から徒歩7分ほどでいけるアクセスの良さも魅力です。

未来:親子向けならではの視点ですね。

山田さん:そうですね。いわゆるライブハウスや屋外フェスだと、どうしても音や動線の面でハードルが高くなってしまうことがあります。その点、今回の会場は屋内なので、天候に左右されないという安心感がありました。雨の日でも予定を変えずに来てもらえる、というのは親子連れにとって大きいと思います。それに、駅から歩いて来られる距離にあることも重要でした。子どもと一緒に移動することを考えると、アクセスのしやすさは欠かせません

音の面でも工夫しています。ロックフェスではありますが、今回はアコースティックライブの形にしているので、いわゆる「大きすぎる音」は出ません。音楽をしっかり楽しみつつ、子どもが驚きすぎない、親も安心できる。そのバランスが、この会場なら実現できると感じました

未来:社内では、どんなサポートがありましたか?

月足さん:企画段階から、いろいろな部署の人に壁打ちをしてもらいました。「ここはもっとこうしたほうがいい」「この視点は足りていない」といったフィードバックをたくさんもらえたのは大きかったです。

山田さん:最初の資料は、今思えばかなり粗かったと思います。でも、「ダメ出し」ではなくて、「どうしたら良くなるか」という前向きな意見をもらえたことで、少しずつ形にしていくことができました。

未来:大変さの中にも、手応えを感じる瞬間はありましたか?

月足さん:ありましたね。コンセプトが整理されていくにつれて、話を聞いてくれる人の反応が変わってきたのを感じました。「それなら意味があるよね」と言ってもらえたときは、少し前に進めた気がしました。

親子に届けたい「最初の衝撃」と「思い出」

未来:準備や調整が大変な中でも、「やってよかったな」と感じた瞬間はありましたか?

月足さん:やっぱり、音楽関係者の方々が、このフェスのコンセプトに共感してくれたときですね。親子向けフェスというと、最初は意外に思われることもありましたが、「それ、いいですね」と前向きに受け止めてもらえたときは、すごくうれしかったです。自分たちが考え抜いたことが、ちゃんと相手に伝わっていると感じられる瞬間でした

山田さん:僕は、当日の景色を想像している時間もワクワクしていました。「このバンドが出たら、子どもたちはどんな反応をするんだろう」「親御さんはどんな表情で音楽を聴くんだろう」と考えるのが楽しくて。フェスって、音楽だけじゃなくて、その場に流れる空気や、記憶も含めて体験なんだと思うんです。

未来:フェスを通して、子どもたちにはどんなことを感じてほしいですか?

月足さん:まずは、音楽に触れるきっかけになったらうれしいです。好きになるかどうかは分からなくても、「生の音を聴いたことがある」という体験が、どこかに残ればいいなと思っています。

僕自身、生音をちゃんと意識したのは中学生の頃でしたが、もしもっと早く出会っていたら、また違う選択をしていたかもしれません。そう考えると、体験のタイミングって本当に分からないなと思います。

山田さん:親御さんにも、音楽ともう一度つながる時間になってほしいですね。子どもが生まれてから、音楽から少し離れてしまった人も多いと思うので。親と子が、上下関係ではなくて、横に並んで同じ音楽を楽しむ。そういう時間が、あとから振り返ったときに、「楽しかったね」と言える思い出になったらいいなと思います。

未来:子どもたちの声や動きがある空間で音楽を聴く、というのも、このフェスならではですよね?

月足さん:そうですね。泣いたり、騒いだりする声も含めて、その場の空気だと思っています。静かに聴くことだけが正解じゃなくて、子どもなりの反応が、そのままフェスの一部になる。

そういう体験を通して、「好きなものに出会うって楽しい」と感じてもらえたらうれしいです。

未来:このフェスが、誰かの人生の中で、あとから意味を持つような体験になるかもしれないですね。

山田さん:そうなったら最高ですね。何がきっかけで、その人の価値観や進路につながるかは分からない。でも、振り返ったときに「あのときの体験があったな」と思い出してもらえるような場になればいいなと思っています。

未来:そのときは何気ない一日でも、あとから振り返ると「あれが始まりだったのかも」と思える体験って、ありますよね。このフェスも、そんな記憶の一つになるのかもしれません。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!

行く前にチェック!親子で楽しむためのポイント

インタビューを聞いてわかるのは、UNLOCK ROCK FESが「ロックフェス」でありながら、親子で過ごす時間そのものを丁寧に設計しているということです。

会場は屋内のため天候に左右されず、駅から歩いて来られる距離にあります。音楽はロックですが、アコースティックライブ形式を採用しているため、音量も過度に大きくなりません。子どもが途中で休めるスペースがあり、泣いたり動いたりすることも前提にした空間づくりがされています。

日時や出演アーティスト、チケット情報など、イベントの詳しい概要は、「いこーよ」のイベント紹介ページにまとめられています。参加を検討している方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。

「UNLOCK ROCK FES」イベント情報ページ(いこーよ)へ

取材を終えて
月足さんと山田さんは、子どもの頃から特別な存在だったわけではありません。本人たちが語るように、遊戯王で遊び、外で体を動かし、塾に通う、ごく普通の子ども時代を過ごしてきました。それでも今、二人はロックフェスを企画しています。ただロックが好きだからではなく、音楽を通じて受けた衝撃や心が動いた体験を、次の世代にも手渡したいという思いからです。「子どもが生まれるとフェスに行けなくなる」という、どこか当たり前のように受け止められてきた状況への違和感を出発点に、多くの人の手を借りながら形になったのが、「子どもがいるからこそ」参加できるUNLOCK ROCK FESです。親が「好きだったもの」を手放さずにいること自体が、子どもにとっての新しい体験につながるのかもしれません(KAZ)

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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