サンシャイン水族館

中村元さんが語る「常識は間違っている」から始まる新しいアイディア

つくる人
たゆまぬ努力を続け、生産品に愛情を注ぎ、好奇心や探求心、情熱を常に持って暮らしている「つくる人」にお話を伺い、人として生きていくのに必要なものに迫るインタビュー。
「自分の短所は克服しちゃ絶対ソン!長所もがんばって伸ばしたらアカン」。唯一無二の“水族館プロデューサー“中村 元さんは、厳しい条件があったからこそ逆転の発想でユニークなアイディアを出し、様々な水族館を大人気水族館に再建、リニューアルしてきた。「常識は間違っていると思うことから始める」と話す中村 元さんは、どのように奇跡のアイディアを生み出してきたのか。原点となる子ども時代にまで遡って話を聞いた。(後編/全3回)

常識の裏口を探す。裏道を作ったら、常識はひっくり返るから!

未来:新しいアイディアはどこから思いつくんでしょうか。

鳥羽水族館の時は水槽作りからやってたんだけど、生き物のことをいかに魅力的に見せるかだけでなく、小学校時に絵がちょっと得意だった延長で空間のことを考えたりするのも得意だったから、どうしたら限られたスペースで水槽を大きく広く見せられるか、とか考えてね。

ところがすごく困ったことがあって、良い感じにレイアウトできたと思っていた水槽が、いざ水を入れると、ペターっと奥行きがなくなっちゃう。奥行がガクンと7割くらいになってしまう上に、水の中で光が拡散するから影ができなくなって、離れているはずの岩同士がみんなつながって見えて益々奥行きがなくなっちゃうんですよね。

「それは屈折だから仕方ない」って上司や同僚は言ってました。でも、僕はどうしても広く見せたいわけ(笑)。

常識には裏があるから、裏道作ったら常識はひっくり返るって思ってね。子どもの時に九九を覚えられなかった時と同じ。何か裏道があるはず。

そんなとき「オペラ座の怪人」の舞台を観に行ったんです。初めて演劇を観て、うわーー!!すごい奥行き!!!って感動しちゃって、ストーリーそのものより、もう舞台の奥行きとか空間の作り方ばっかり見てました。どうやってこの奥行きを作ってるんだろう?あんなに狭い舞台なのに!って。

そのあと、演劇を4つくらい見に行きました。どんな内容だったのかタイトルすら覚えてないですけど(笑)。そこから奥行きがある水槽や、どうやったら水槽の色がブルーに見えるのかを考え始めました。ホリゾント(舞台やスタジオで使われる背景用の布製の幕や壁、それを照らす照明のこと)を使った水槽とか、今では常識になってきた水槽の壁を濃いブルーに塗ることとかから始まって、サンシャインラグーン水槽の照明の色や遠近法まで使った水槽までいろいろ考えましたね。水槽の後ろ側はただの壁じゃない、照明はただの灯りじゃない、全てが水中世界を再現するためのキャンバスなんだ!って思って。

サンシャイン水族館

(写真提供:中村元さん)

常識は間違っていると思わないと。むしろ「よっぽど」の弱点こそがいい

未来:弱点は認めたほうがいいとおっしゃってましたが、それって勇気がいりませんか(笑)。

そう思うのは常識に囚われてるからですよ!強みや弱点なんて常識の上での基準です。だから常識は間違ってるぞ、とまず思う。弱点だと思っていることは、非常識世界では強みにできるんです。弱点そのものを強みにするんですよ。

北海道の北見市にある北の大地の水族館のプロデュースをすることになって。ところがその条件が、貧乏リニューアル、山の中、淡水、人が少ない、そして寒すぎるという過酷な条件(笑)。とにかく、北見市の関係者がそろって、ここは北海道の中でも特別寒いところでそれが大きな弱点だと言うんですよ。それも人が死んじゃうくらいの寒さ。マイナス20度とか。そんな日が年間20日くらいあるんです。

こういう時、これを克服しようとしたらいけない。温かいドームをまず作ろうとか。そんなことしようとしたらドームだけで3億円くらいかかります(笑)。それにドームで克服してもどうしたって沖縄には勝てないんですよ(笑)。

それで、寒いということを使ってどうしたらいいかを考えました。住んでる人にとっては寒いだけかもしれないけど、外からきたお客さんには冬の北海道の最大の特徴で魅力です。東京から来た人はね、その寒さの中で濡れたタオルを振り回して棒みたいに凍らせたいんですよ(笑)、寒すぎて鼻がツーンとなるのがいいわけ!

それで世界初の凍る水槽を考えました。冬になると自然に水面に氷がはる。その下に魚がいる。お客さんはそれ見に来るわけ。寒いということを弱点だと思わない。寒いのを長所にして見せれば、それを面白いと思う人がいるんだから。しかもね、ただの弱点よりもよっぽどの弱点の方が得なんです。その地域や特徴を象徴した存在になれるから。それにほどほどの弱点だと他にマネされるから。「よっぽどの弱点」がいいんです。

次ページ>「弱点だからこそ、他にはない強みが生まれる」へ

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中学受験を経験した辞典体質の高2息子とダンスに夢中な和み系の小6娘の子育て中。仕事モードと同じく、効率とマルチタスクを家族にもつい求めてしまうことを時々反省している。稀に見るほどの方向音痴。日記を毎日書かないと落ち着かないため、いつでも持ち歩いている。

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