文房具の秘密に驚く!失敗から生まれたアイデアとは?「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典」【子育て文房具】

文房具のさまざまな魅力を知っている「文房具プレゼンター」のふじいなおみさんに、子どもと一緒に楽しく使えて、子どもの成長に役立つ文房具を紹介していただくこの企画。今回は、子どもから大人までみんなで楽しめる文房具のひみつが大集合した「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典(講談社)」をご紹介いただきます。著書のヨシムラマリさん、講談社編集部の澤さん、ふじいなおみさんをお招きし、制作秘話やおすすめのポイントなどを伺いました。子どもの好奇心や探究心を大事にしたいと思わせてくれるお話です。(講談社さんより献本いただきました)

「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典(講談社)」 著書:ヨシムラマリさん
ライター/イラストレーター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身。子どもの頃から絵を描くのが好きで、身近な画材である紙やペンをきっかけに文房具にハマる。主な守備範囲はノートとペンと事務用品。文具・オフィス用品メーカー大手の元社員で、現在は フリーランスとして活動中。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ」がある。

イラストやふりがながあって低学年でも読みやすい

ふじいなおみさん(以下、ふじい):先日著者のヨシムラさんとお会いする機会があって「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典」についてお話を聞いていたところ、「未来へいこーよ」さんのコンセプトにぴったりだと思ったのでぜひご紹介したいと思いました。今回は、著書のヨシムラマリさんと講談社編集部の澤さんにも同席いただき、お話させていただこうと思います。

「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典」(講談社)    著:ヨシムラマリ 監:高畑 正幸

ヨシムラマリさん(以下、ヨシムラ):著者のヨシムラです。よろしくお願いします。

講談社 澤さん(以下、澤):編集を担当いたしました講談社の澤です。よろしくお願いします。

ふじい:小3の娘にも読んでもらったのですが、自分が今まで使ったことがある文房具が載っているので、とても興味津々に楽しく読んでいました。特に羽根ペンの話が驚きだったようです。一つのエピソードが2ページ程で完結していて、子どもにとっても読みやすい分量でした。

未来: イラストがあるのもすごく分かりやすかったです。

ふじい:イラストも全てヨシムラさんが描かれてるんですよね。

ヨシムラ: はい。文章もイラストも全部私が手がけています。

未来:昔から絵を描くのはお好きだったんですか?

ヨシムラ: そうですね。 じつは、子どもの頃は漫画家になりたかったんです。でも、架空のお話を作るのが得意ではなくて(笑)。現実にあった話を書いていくのも面白いなと思って、今はこのような形になりました。

ふじい: 対象年齢は小学3年生ぐらいからですが、この本は漢字全てにふりがながあるので、低学年の子でも手に取りやすいと思います。

「ざんねん」と「びっくり」

ふじい:本のコンセプトはどのように決まっていったのですか?

ヨシムラ: 最初から明確なコンセプトがあったわけではなく、私と澤さんが交流会で知り合ったことがきっかけ でした。澤さんが児童書の担当で、私は元文具メーカーの広報で 絵も描けたので、「子ども向けの文房具の本を作れないか?」という話になったんです。私は 「○○の秘密」みたいな本が好きで、身近なものの成り立ちや進化に興味があったので、それを文房具で表現できないかと考えました。そこに、今の子どもたちが昔のものを見て「変だな」や「すごいな」と感じるエピソードを取り入れてコンセプトができました。これは澤さんのアドバイスも大きかったですね。

ふじい: 本の中で「ざんねん」と「びっくり」という2つのポイントを挙げられていますね。それぞれどういう基準で分けられたんですか?

澤: 文房具をテーマにした子ども向けの本って意外と少ないんです。でも文房具は子どもたちにとって身近な道具。せっかく本にするのであれば、好奇心を育んだり、学びの要素を付加したいと思いました。

最初は「ざんねん」だけで進めていましたが、どうしても「ざんねん」とは言えないけれど絶対に掲載したいトピックが出てきたんです。そこで、「びっくり」という要素も加えて、2本柱にすることにしました。「ざんねん」は、今見ると不便だったり「どうしてこうなった?」とツッコミを入れたくなるようなもの。「びっくり」は、純粋にすごいと思うものです。

必要不可欠だった「文具王」の存在

ふじい: トピック選びの過程はどのように行われたのでしょうか?

ヨシムラ:この本は、文具王こと高畑 正幸さんに監修をしていただきました。最初は、高畑さんと私でとにかくたくさんのアイデアを出していきましたね。その中から全体の構成やバランスを見ながら、澤さんがまとめていってくれました。

澤 : 私は単純に面白いかどうかを基準に選びました。ヨシムラさんや文具王は文房具の知識に詳しすぎて、一般の人が知らないことでも常識のように思っているので(笑)。視点が専門的になりすぎないよう、一般的な感覚で判断しました。

監修:高畑正幸(たかばたけ・まさゆき) 文具王
文房具デザイナー・ 研究評論家。1974年香川県丸亀氏生まれ。千葉大学工学部機械工学科卒業、同自然科学研究科(デザイン心理学研究室)博士課程前期修了。テレビ東京の人気番組「TVチャンピオン」の「全国文房具通選手権」で3連続で優勝し 「文具王」と呼ばれる。サンスター文具にて13年間、 商品企画・マーケターを経て独立した。文房具の デザイン、執筆・講演・各種メディアでの文房具解説のほか、トークイベントやYou Tube等で人気。著書は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)など多数。
文具王プロフィール詳しくはこちら

 

ヨシムラ: 文具王のすごいところは、現代の文房具に詳しいだけでなく、その歴史や成り立ちにも精通しているところです。実物や当時のカタログ、特許情報まで持っていて、今回の監修をお願いしたのもそうした裏付けをしっかり持っているからです。

ふじい:歴史的背景を調べるのもすごく大変だったとお聞きしました。

ヨシムラ: そうですね、それは文具王が(笑)。この本は、参考文献がたくさんあるんですが、文具王はその参考文献の内容が正しいかどうかまで確認するんです。

未来 : 事実確認もすごく大変そうですね。

ヨシムラ: はい、講談社の校閲部と文具王で二重チェックが行われました。文房具って、私が以前勤めていた文具メーカーを例にとっても、1万品番以上ある商品が毎年少しずつ入れ替わったりするので、じつはメーカーに記録が残っていないことも多いんです。ロングセラー商品でも発売年が分からないケースなどもあるんですね。だから、文具王のような人はすごく貴重なんです。

失敗が成功につながった?ポスト・イットの秘話

未来: 「ざんねん」というトピックがあることで、「失敗もある」というメッセージが自然に伝わるのがいいなと感じました。

ヨシムラ: 前職で、学生向けの文房具を扱っていたこともあり、子どもの調査や話を聞く機会が多くありました。それで、今の子どもたちは、けっこう慎重派で、「失敗を恐れやすい」という話を聞いたことがあったんです。

今の世の中は、文房具にしても何にしても、すごすぎるものが当たり前にあるし、SNSなどで世界のトップクリエイターみたいな人に身近に接することだってできる。でもそういう環境が、「自分には何ができるんだろう」と自信をなくすことに繋がっているのかなと思って。だから、「今当たり前にあるものは、最初からそうだったわけじゃない」ことを伝えたかったんです。

「巨人の肩に乗る」という言葉もあるように、必ずしもイチからすごいものを作る必要はなくて、「ちょっとここが使いにくいな」とか「もうちょっとこうだったらいいな」と改良されていったものがたくさんあるんですよね。

ふじい: 私はポスト・イットの話がとても好きなんです。強力な接着剤を作ろうとしていたけれど、反対に「貼ってもはがせる」という弱い接着剤ができてしまった。でもその失敗作の接着剤が「付箋」という新しい製品を生み出したという、まさに「失敗から学ぶ」「失敗してもいい」ということを伝える良い例だと思います。付箋が「最初は剥がせないもの」として存在していたという話も興味深かったです。

ヨシムラ: イノベーティブなものも、いきなり生まれるわけではなく、必ず何か踏み台になるものがあるんですよね。

未来:ポスト・イットを発明しても、すぐには売れなかったというところまで描かれていたのもすごくリアルでした。

ヨシムラ: そうですね。私も広報やマーケティングを経験してきたので、その苦労は身に染みているところです。画期的な製品ができたとしても、使い方がわからない人が多いので、けっしてすぐに売れるわけではない。例えば、スマホが発売された直後も「これ必要なの?」という反応も多かったと思います。使いやすさや便利さを広める人がいて、それもやっぱり努力が必要だし、大事なんですよね。

子どもの探究心を信じる

ふじい: ヨシムラさんは、以前大人向けの文房具本文房具の解剖図鑑(エクスナレッジ)』を執筆されていますよね。今回、子どもにターゲットを当てたということで、書くときに大変だったことや何か違いはありましたか?

ヨシムラ: 子ども向けに執筆をすること自体が初めてだったので、最初は感覚がつかめなくて苦労しました。澤さんに添削してもらいながら、徐々につかんできた感じです。

自分の中でわかったこととしては、あまり子ども向けだと思いすぎないこと。最終的に気をつけたのは語彙や漢字だけです。例えば、大人向けなら「製造」と言うところを「作る」と言い換えたり、小学56年生でも習わない漢字は別の言葉に置き換えました。それ以外は、大人に話すのと同じ気持ちで書けばいいと思うようになりましたね。自分も子どもの頃、100%理解できなくても面白い本は面白いと感じていましたから。自分が知らない人物が出てきても調べればいいと思うし、子ども向けだからといって、自分の目線を下げすぎるのは違うと思います。子どもを信じようと。それが心のストレッチになるというか。

未来: 子どもの「探求心」を大切にされたんですね。

ヨシムラ: そうですね。私も子どもの頃はわからないことがあれば、親に聞いたり、百科事典で調べたりしていました。わからないことがあるのが次の興味につながっていくので、最終的には子どもが自分でなんとかしてくれると信じて書いていきましたね。

苦手をポジティブに捉えて大成功

ふじい: ヨシムラさんの好きなトピックを、1つあげるとしたらどれですか。

ヨシムラ: 私は、42ページにある修正液のお話です。

ふじい:「ミスにもめげない女性が作った」というお話ですね。

ヨシムラ: 私、(修正液を作った)ベティさんのマインドがすごく好きなんです。ベティさんはタイピスト(タイプライターを打って印字する職業の人)で、じつは結構ミスが多い方でした。ミスが多いと日本人だと「間違えないように練習しよう」となりそうなところですが、彼女は「間違えるのはしょうがない」と捉えて「だったら白く塗りつぶせばいい」と考え、修正液を開発。結果的に会社を作ってお金持ちになりました。つまり修正液は、ミスをしない優秀なタイピストだったら発明できなかった商品だと思うんですよ。

苦手なところがある、自分に足りないところがあるからこそ、それを補うために発明できた。「私が間違えるってことは、みんなも間違える。じゃあ、需要がある」という発想で、最初は自分用に作ったものが、どんどん「いいね」となって、周りの人に広がっていきました。結局、苦手なことと得意なことは表裏一体で、考え方次第なんですよね。ベティさんの、ポジティブで自分の弱点を強みに変えるストーリーがすごく好きですね。

文房具史における本当の「ざんねん」

ふじい: 澤さんはどのエピソードが印象に残っていますか?

澤: 私は最後の項目、「戦争中に代用文房具が生まれた」というエピソードですね。この本の締めくくりとしても良い終わり方だと思いました。

この本のコンセプトって単純に文房具を紹介するだけじゃなく、その人々の試行錯誤の結果とか、人類の道具の発展史みたいなものがあります。それを語るときに、どうしても「戦争」というのは切り離せません。この本にはたくさんの「ざんねん」がありますが、最後の「ざんねん」だけは、それまでのユーモラスなニュアンスとは異なる、本当の「ざんねん」なんです。

ふじい: 私も最後の「(戦争を)2度と繰り返してはいけない」という言葉で、なんだかすごく自然にまとまった感じがしました。けっして押し付けがましいという感じはなく、大切なことをこの本から学んだ気がしたんです。

ヨシムラ: 文房具のこと以外でも、インターネットやドローンなど、戦争と技術の発展は不可分に進化しているという事実があります。そこに対しては無関心ではいられないと思っています。子どもたちは大人が思っている以上に戦争のことを、今ならウクライナやガザ地区のことなどについて敏感に感じ取っていると思うんです。やっぱり、日本も無関係ではない時代があったという事実は伝えるべきだし、これからを担っていく子どもたちに、同じことを繰り返さないためにはどうすればいいかを考えてほしいという気持ちはありました。あまり押し付けがましくならないように、最後に、ちょっとだけ入れたんです。

「これは?」の興味をどんどん広げて

ふじい: 「文房具ひみつ事典」は、電車や新幹線など移動中でも読むのにちょうどいいサイズです。内容は、子どもだけでなく大人も興味を持つものになっているので、気になったエピソードひとつを話すだけでも親子や友達との会話のきっかけになると思います。
そして、普段当たり前に使っている文房具が作られるまでには、じつは失敗や苦労がたくさんあることを知ることができます。文房具はリーズナブルな価格で販売するお店で手に入るようにもなりましたが、値段にも意味があると考えているんです。この本を通じて、文房具の良さやこだわりを発見して、ぜひ自分のお気に入りの文房具を見つけてもらいたいなと思いますね。

ヨシムラ:そうですね。作った人がいるということに思いをはせてもらえると、物を大事にしようとか、選ぶ時に気をつけようとか、そんな気持ちになってくれると嬉しいです。

未来: 最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

ヨシムラ: この本を読んでみて、例えば、鉛筆に興味を持ったら、鉛筆についてもっと詳しく書かれた本を探してみるなど、気になったものは自分でどんどん調べてみてほしいと思います。文房具に限らず、世の中のものにはこういった裏話があるので、たとえば「スマホは誰が作ったんだろう?」といった風に、子どもたち自身で興味を広げていってもらえるといいですね。

お話を伺って

私自身知らないことばかりで、とても興味深く、驚きと発見がたくさんある本でした。失敗が成功につながるエピソードは、大人の私でも背中を押されましたし、ほんの小さなことでも「こうだったらいいな」という気持ちや気づきは大事にしていこうと思わされました。日々の仕事や、家族や友達との生活の中でも、問題や悩みは次々と出てきます。でも失敗しても、うまくいかなくても、気持ちを取り直して「こうだったらいいな」「こうしたいな」を忘れずに持ち、それを実現していくにはどうしたらいいかを考えて日々過ごしていきたいなと、なんだか深い、大事なことを教えてもらった気がします。(osa)

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お話を伺ったのは…ふじいなおみさん
〈監修者プロフィール〉
文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。

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2人の子育てに奮闘中。レコード会社、タイ古式マッサージセラピスト、PR代理店勤務と様々な業種を経験する。子どもとのおでかけや旅行を楽しみに日々過ごしている。子どもから「ママの特技は怒ること」と言われ、反省することも多々…。

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