タイムベース インタビュー

時間を管理するのではなく「感じる」ために。親子の暮らしに寄り添う器「TIME VASE(タイムベース)」

つくる人
たゆまぬ努力を続け、生産品に愛情を注ぎ、好奇心や探求心、情熱を常に持って暮らしている「つくる人」にお話を伺い、人として生きていくのに必要なものに迫るインタビュー。

忙しい毎日の中で「もうこんな時間?」と感じることはありませんか。子どもの支度や家事、仕事に追われるうちに、自分のために立ち止まる余裕がなくなっていると感じる人も多いはずです。そんな日常の中で、ふと時間の流れに目を向けるきっかけをくれるのが、株式会社パイロットコーポレーションが開発した「TIME VASE(タイムベース)」です。お湯を注ぐと器の色がゆっくり変わり、やがて元に戻っていく。その変化を眺めながら過ごすひとときは、数字では測れない「時間の価値」を気づかせてくれるかもしれません。

色の変化が「時間の目安」になる。TIME VASE(タイムベース)とは?

タイムベースは、お湯を注ぐことで器の色がゆっくりと変化し、やがて元の色に戻っていくまでの時間を楽しめる新しい器です。変化の時間はおよそ30分から60分ほど。ただし、お湯の温度や量、置く場所などによって元の色に戻る時間や模様が毎回変わります。まるで空の雲が形を変えるように、同じ景色は二度と現れません。

デジタルタイマーのように正確ではないからこそ、「そろそろ終わりにしようか」「もう少し楽しもうか」といった自然な会話が生まれます。親子で一緒に色の移ろいを眺めながら過ごす時間そのものが、この商品の魅力といえるでしょう。

タイムベースを開発したパイロットの未来創造実験室「PILABOT(ピラボット)」とは?

タイムベースが生まれた背景には、パイロットの中にある「未来創造室」の存在があります。その活動拠点が、創造の実験室と位置づけられている「PILABOT(ピラボット)」です。ここでは企業パーパスである「人と創造力をつなぐ。」という考えのもと、筆記具の枠にとらわれない新しい価値づくりに挑戦しています。日常の中の体験や気づきをヒントに、これまでにない商品やアイデアを形にしていく場所。タイムベースは、そんな未来創造室の挑戦を象徴する商品のひとつといえそうです。PILABOT

「PILABOT」公式サイト

子育てで気づいた「時間の余白」の大切さ

未来:タイムベースはどんなきっかけで生まれたのでしょうか。

富谷:子どもが生まれて生活が大きく変わり、それまで何気なく持てていた「ぼーっとする時間」がなくなったと感じたんです。でも振り返ってみると、その時間は心を整えたり、アイデアが浮かんだりする創造的な時間で、自分にとってとても大切な時間だったんだと気づきました。だから「そんな時間をつくるきっかけとなるもの」を作りたいと考えるようになりました。

タイムベース パイロット

富谷大樹さんは、入社後10年間営業を担当し、その後パイロットの未来創造室に配属されて商品企画に携わるように。タイムベースは、初めて深く関わった企画です

未来:そこからパイロットのフリクションのもととなった「メタモインキ(1975年にパイロットインキ株式会社が開発した、温度変化で色が変わる特殊なインク技術)」に着目されたんですね。

富谷:はい。温度で色が変わるインキは、これまで「瞬時に変わる」ことに価値があるとされてきました。でも私たちは、そのあとにゆっくり色が戻っていく時間にこそ、新しい価値があるのではないかと考えたんです。そこには、あいまいさや美しさ、はかなさのような感覚があると思って。時間を正確に測る道具ではなく「時間を感じるきっかけになる存在にしたい」と考えました。

「ゆらぎ」を生む形を求めて。試作の日々

未来:素材や形もかなり悩まれたそうですね。

岩尾:素材選びはかなり悩みました。ステンレスや木材、ガラスなども含めて検討しましたが、「時間の変化を楽しむ」というコンセプトを実現するためには、熱の伝わり方や冷め方まで考える必要がありました。とくに60分ほどの時間をどう表現するかは大きなテーマで、数か月試行錯誤を重ねました。その中でたどり着いたのが磁器です。

タイムベース

カラーバリエーションは2種類。「紺から青磁」は深い紺色に包まれた器で、お湯を注ぐと鮮やかで美しい「青磁(せいじ)色」がゆっくりと姿を現します。陶磁器の中でも歴史が深い青磁は、その神秘的な美しさで古くから親しまれてきた代表的な釉薬色です。水をたたえた静かな湖の水面が太陽の光に照らされ美しく輝きだすような、静かに色づき揺らぐ、神秘的な変化が楽しめます。

未来:その「時間の長さ」も、設計のポイントだったんですね。

岩尾:はい。タイムベースの色の変化はおよそ30分から1時間くらいで進んでいきます。開発の中では「日常の中で無理なく取り入れられる時間ってどれくらいだろう」と何度も考えました。例えば読書をしたり、親子で遊んだりする時間の目安になるような、そんな感覚的な区切りをつくれたらいいなと思って設計しています。

タイムベース パイロット

「闇に朧月」は夜の雲に覆われた月が、時の流れとともにぼんやりとその美しい姿を現す様子を表現。柔らかな黒色で覆われた器が、お湯を注ぐとまるで朧月のように濃淡のある墨色へ変化していきます。色づき揺らぎ、やがてまた闇に覆われるまでの風情あるひとときが流れていきます。

未来:素材として有田焼にたどり着いた理由はどんなところにあったのでしょうか。

岩尾:有田焼は「あいまいさや美しさ、はかなさ」といった情緒的な表現ができる工芸品でもあり、このプロダクトの世界観に合うと感じました。

タイムベース パイロット

未来:デザイン面でとくに苦労した点はどこだったのでしょうか。

岩尾:やはり形ですね。色の変化を楽しんでもらうためには、どんな形がいいのか本当に悩みました。四角い形や花瓶のように細長い形などさまざまな試作を重ねましたが、角があるとそこから色の変化が始まりやすく、景色が単調になってしまうことが分かりました。

岩尾:丸い形にすることで全体にゆらぎが生まれ、見るたびに違う表情を楽しめるようになりました。この商品の魅力を引き出すうえで、形はとても大きなポイントだったと思っています。

富谷:注ぎ口を中心から少しずらしているのもポイントです。器内の蒸気の流れが変わり、より複雑な模様が生まれます。

タイマーではなく景色で時間を伝える

未来:子育てをしている家庭ではどんな使い方ができそうでしょうか。

富谷:例えば、子どもと遊ぶ時間の目安として使うのもいいと思います。「色が戻ったら終わりにしよう」という約束なら、タイマーより自然に時間を伝えられるのではないでしょうか。読書をしたり、一緒に何かを作ったりする時間の区切りとしても使えると思います。

タイムベース パイロット

ほぼ同じ時間に入れたものでも、色の付き方や戻り方が異なる。もともとの器の温度や室温、湿度などによっても模様が変わるので、使うたびに異なる模様が生まれていく

未来:寝る前の時間にもよさそうですね。

富谷:そうですね。例えば寝る前に動画やスマートフォンを見る代わりに、タイムベースを置いて、色が変わっていく様子を眺めながら過ごすのもいいかもしれません。「元の色に戻ったからそろそろ寝ようか」といった形で、自然に切り替えるきっかけになると思います。

岩尾:この商品が「変化に気づくきっかけ」になってほしいと思っています。タイムベースを見たあとに外に出て、「今日は風が強いね」「空の色が昨日と違うね」といった会話が生まれたらうれしいですね。日常の小さな違いを楽しめるようになると、時間の感じ方も変わってくると思います。

未来:例えば休日の午後に、親がコーヒーを飲みながら、子どもが本を読んでいるような時間の中で、ふと器の色の変化を一緒に眺めるというように、互いに違うことをしていても、同じものを共有することができるのがいいですね。

富谷:そうですね。何かをしながらでも、ふと目に入ってくる存在になってくれたらいいなと思っています。色の変化をきっかけに、自然と会話が生まれるような時間になればうれしいです。

未来:リラックスタイムにも合いそうですね。

岩尾:そうですね。例えばエッセンシャルオイルを入れて、アロマポッドのように使うこともできます。香りと一緒に色の変化を眺めていると、自然と気持ちが落ち着いていく感覚があります。忙しい毎日の中で、少しだけ自分の時間をつくるきっかけになればうれしいですね。

タイムベース パイロット

「Deep Breath(深呼吸)」というテーマで、オリジナルエッセンシャルオイルを開発(2500円相当)。 現在販売中のMakuakeでは そのオイルとタイムベースをセットでお得に購入できます

富谷:時間を正確に管理するための道具ではなく、心の切り替えを助ける存在として使っていただけたらと思っています。

タイムベースが届けたい「時間」の価値

未来:一方で、お湯を使うプロダクトなので、安全面で気をつけることもありそうですね。

富谷:そうですね。熱いお湯を入れて使うので、小さなお子さんが倒したり、触ってしまったりしないように、置く場所には注意していただきたいと思います。例えば手の届きにくい位置に置いたり、大人と一緒に使う時間にしたりといった工夫をしてもらえるとうれしいです。

岩尾:使い方としてはとてもシンプルなものですが、そのぶん生活の中に自然に置かれる存在になると思います。安心して楽しんでいただけるように、私たちも形状や安定感には配慮して設計しています。

未来:最後に、このタイムベースを通してどんな価値を届けたいと思っていますか。

富谷:まだ世の中にないような新しいプロダクトなので、まずは実際に使ってもらいながら魅力を感じてもらえたらうれしいですね。時間の過ごし方や感じ方について、何か気づきが生まれるきっかけになればと思っています。

岩尾:毎回違う表情が現れるので、「今日はこんな変化をしたね」と楽しみながら使ってもらえたらいいですね。生活の中で、少し立ち止まる時間をつくる存在になれたらと思っています。

タイムベースはクラウドファンディングサイト「Makuake」にて数量限定で販売中!

取材を終えて
取材時に実際にタイムベースを実演していただいたのですが、同じタイミングでお湯を注いでも、それぞれ違う色の変化が現れる様子がとても印象的でした。じんわりと色が変わっていくので、いつまでもじっと見ていられます(笑)。焚き火を見ているのに近い感覚です。子どもと一緒に使ってみて、ときどき一緒に色の変化を見ることができたら、それは時間にしばられない、豊かな時間だなと思いました。そういう意味で、親子で過ごす時間が変わる可能性がある商品だと感じました(KAZ)

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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