この絵本は、パイロットインキが身近な筆記具や玩具に用いられている特殊なインキ技術を活用したもので、触れることで色が変わる仕掛けが子どもの好奇心を刺激します。開発に携わった安井さんにも同席いただき、背景や想いを伺いました。(パイロットインキ株式会社から献本いただきました)
「いろがかわってあそべるえほん」とは
ふじいなおみさん(以下、ふじい):今回、「いろがかわってあそべるえほん」を紹介したいと思ったのは、この絵本シリーズが単なる仕掛け絵本ではなく、開発にあたってさまざまな工夫や熱い想いが込められていることを知ったからです。そのため、開発にたずさわった安井さん(パイロットインキ株式会社)にもお声がけさせていただきました。
未来:ふじいさん、安井さん、よろしくお願いします。「いろがかわってあそべるえほん」シリーズは、現在2冊発売されているんですね。
パイロットインキ安井氏(以下、安井):はい。「いろがわりえほん ふれてみてシリーズ®」として、「はなくそほじほじかぞえうた」と「ともだちいろいろ」を発売しています。
ふじい:タイトルからして気になっていると思いますが(笑)、まず「はなくそほじほじかぞえうた」は、「お出かけしようとしたら、はなくそがついていたから、こすって消そう!」という、遊び心満載の設定になっています。

「はなくそほじほじ かぞえうた」
著者:たかいよしかず 発行:パイロットインキ株式会社
定価:1,650円(本体:1,500円+税10%)
※商品公式ページより引用
ふじい:実際に、鼻の下の黒い点(はなくそ)を指でこすると消える仕組みになっています。ページが進むにつれ、はなくその数が増えていきます。かぞえ歌になっているので、「ほじほじ♪ほじほじ♪」と好きなリズムでたのしく歌いながら数を覚えることができます。

※商品公式ページより引用
ふじい:もう1冊は「ともだちいろいろ」。カメレオンのメレオくんがともだちと出会い、あいさつをしながら仲良くなっていく絵本です。

「ともだちいろいろ」
著者:たかいよしかず 発行:パイロットインキ株式会社
定価:1,650円(本体:1,500円+税10%)
※商品公式ページより引用
ふじい:メレオが出会う友達にタッチするとその色に変化していきます。例えば、いちごちゃんのページでは赤く、ゾウさんページでは水色に変わります。

※商品公式ページより引用
未来: ページごとに変わる色が違うんですね。
ふじい: 最後のシーンでは、みんなで集まってレインボーカラーになるんですよ。背表紙にも仕掛けがあります。
未来:2冊に共通している「さわると色が変わる」という不思議な仕掛けは、手のあたたかさで変わるのでしょうか?
安井:はい、どちらも体温や摩擦熱などの温度変化で色が変わる特殊なインク「メタモカラー®」を使用しています。これは、1975年に開発された技術で、消せるボールペン「フリクション®」や、おもちゃの「メルちゃん®」などにも使われているんです。
仕掛けにはあの有名ペンにも使用されている特殊なインキ技術が
ふじい:パイロットインキさんは「フリクション®」などの筆記具のイメージが強いのですが、今回、どうして絵本の制作に至ったのでしょうか?
安井:弊社は、(株)パイロットコーポレーションの万年筆インキを製造する名古屋工場としてスタートし、その後、パイロットインキ(株)として設立されました。もともと「メルちゃん®」などの玩具事業も弊社で行っていたのですが、玩具事業は現在、事業継承されています。

こすると消える「フリクション」 パイロットインキHPより引用
安井:この「メタモカラー®」という特殊なインキ技術は、「フリクション®」だけでなく、マグカップやお菓子のパッケージなどさまざまな製品に応用されています。
私たちのチームは、いろいろな分野の業界にこのインキ技術を使ったOEM(他社ブランドの製品を製造する事業)を提案しております。そんな中、小学館さんと一緒に「ポケモンはみがき」という絵本を制作する機会があったんです。歯を磨くと汚れが落ちていくという、まさに「メタモカラー®」の技術を活かしたこの絵本はとても好評で、その経験を基に、「自社でも絵本を制作できないか?」と考え始めました。

発行:小学館 絵/カナヘイ 文/とづかみほ 監/日本歯科医師会 小学館HPより引用
未来:自社としての絵本制作で、大変だったことはありますか?
安井:まず、チーム全員が「絵本を出版する」ということが初めての経験だったので、一から出版業界を勉強し始めるところからのスタートでした。社内プレゼンを経て承認をいただいた時点で一度嬉しかったのですが、そこからが大変で、9人のチームで企画から制作、編集、営業まですべてを担当することになりましたね。
未来:大変なチャレンジですね。
安井:すごく大変だったのですが、そのぶんとてもエキサイティングな1年でした。我々の技術とアイデアと、作家さんの表現力が合わさって、この2作が出来上がったという感じです。
安井:絵本という商材はある意味、技術の「原点回帰」みたいなところがあります。「フリクション®」や「メルちゃん®」が生まれる前は、印刷物で商品を展開していました。我々としては、原点に立ち帰って、もう一度印刷物でこの技術を活かした表現ができないか考え、令和のこの時代に「絵本」に辿りついたんです。
絵本が生み出す温かみとワクワク
安井:OEM事業がきっかけでしたが、私自身、絵本の文化的価値にとても魅力を感じていました。直接触れる本の温かみや質量感が、文化を支えている行為そのものなんじゃないかと思います。その文化的価値と、パイロットの技術を合わせて、新しい価値を届けられるような絵本にしたいと思いました。
ふじい:私、この絵本を見たときに、どこかすごく懐かしい気持ちになったんです。昔、マンガ雑誌に「おでこに当てると色が変わる」みたいな付録があったことを思い出しました。この絵本は、すごく新しい取り組みをしているけれど、色が変わるという技術はなんだか懐かしいなあと感じたんです。
安井:デジタル時代で出版業界全体は右肩下がりの状況と聞きますが、絵本や児童書は堅調に成長し続けているそうです。やっぱり絵本は、デジタルではなく、直接さわることのできる紙の本に価値があるという共通認識があるんだと思います。
未来:そうですね。実際に自分の手にとることが、体験として思い出にも残りやすくなると思います。
安井:アナログな「もの」をさわっている時間は、きちんと何かを共有している感覚があると思うんですよね。だから、「ふれてみて」という言葉を、コンセプトとしました。
ふじい:親子で一緒にふれることでコミュニケーションも生まれますしね。
安井:はい。絵本は、自分が読んでいたものを次の世代の子どもたちにも読んでほしいと思いますし、未来へのワクワクみたいなものが詰まっていると思います。
ふじい: 帰省のときなどに、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に読んで、コミュニケーションを育むのにもぴったりです。
サイズは14cm×14cmなので、持ち運びしやすく遠出などにも適しています!
ストーリーは数やあいさつが楽しみながら学べる内容に
ふじい:絵本には細かい工夫がたくさんあります。例えば、女の子やお母さんは、はなくその形がお花型になっている点などこだわりを感じました(笑)。
安井:はい、そこは配慮をしっかり。「はなくそがかわいい」っていうのも、なんか変ですけどね(笑)。
ふじい:お母さんの服が、じつは出かけるときには赤から黄色に変わっているところも、「自分の準備は後回しでみんなの準備を先にうながしていたんだなあ」と、設定の細かい気配りを感じました。
安井:そうですね。仕掛けだけではなく、絵本が持つ本来の楽しみ方も大事にしたいと思ったので、作家さんと話し合いながら、ストーリー性や細かい設定にはこだわりました。また、かぞえ歌は、歌詞をなるべくシンプルにして、自然と歌いたくなってしまうようなリズムを意識しています。
ふじい:「ともだちいろいろ」では、色の学びのほか、登場人物の表情や、あいさつ言葉もたくさん出てくるところもいいなと思いました。
安井:はい。あいさつはコミュニケーションの入口で、「ありがとう」「ごめんね」は、とても大事な言葉だと思っています。人と触れ合う一歩目でもある「あいさつ」の大切さも学べる絵本にしたかったのです。また、私も作家さんも関西出身なので、「なす」を「なすび」と表現したり、カエルが「けえろ~」とダジャレを言う部分もしょうもないこだわりポイントです。
未来:最後にメレオくんがレインボーになるのも素敵ですね。
安井:虹色って無条件にみんな好きなんですよね。この特殊インキの特徴とカメレオンという動物の特徴がとても合っているなと思いまして、メレオくんというキャラクターが生まれました。
大人も子どもも不思議を感じ楽しめる絵本
未来:絵本の反応はいかがですか?
安井: 店頭でのデモ販売を3カ所ほど行ったのですが、反応はとても良かったです。絵本を実際にさわってもらうと、みんな「すごい!おもしろい!」と驚いていました。小さな子だけでなく、親御さんも楽しんでくれていました。とくに、中学生の女の子がすごく興味を持ってくれて「おもしろいから買う!」と買ってくれたのは印象的でしたね。大人も楽しめる要素があるので、幅広い年齢層に受け入れられていると感じています。
ふじい:少し年齢が高いお子さんには、「なんで色が変わるんだろう?」という仕掛けに疑問を持ってもらえればいいですね。その疑問が科学への興味につながっていくと思います。
安井: そうですね。この絵本は、30℃で色が消え、25℃以下で自然に色が戻る温度設定になっていて、何度でも繰り返し遊べるようになっています。夏のとても暑い日などは、こすらなくても色が消えているときもあります。冬場は少し消えにくかったり。ただ、一人ひとりの体温も違ったりするので、「指先冷えてるね」「今日は暑いね」と相手を気遣えるコミュニケーションのきっかけにすらなれば嬉しいなと(笑)。もちろん夏場は一度冷やしたり、熱い場所での保管は避けたりと、注意は必要です。
未来: こすりすぎて、インクがかすれてなくなることはないですか?
安井: 絵本には表面にラミネート加工を施しインクを保護しているので、通常の使用ではそういった心配はありません。ただ、爪やコインなどの硬いもので強くこすると、ラミネートが傷ついて破損の原因になるので避けてください。絵本の裏面に注意事項を記載しているので、見ていただければと思います。
未来:今後、シリーズ展開される予定はありますか?
安井:会社として新しい挑戦でもあるので、今後も企画を進めていきたいと思っています。
未来:楽しみですね! 私も子どもと一緒に手に取りたくなりました。
安井: 私は、まずは大人が楽しんでいる姿を子どもに見せることで、子どもが育っていくというか、明るい未来につながると思っています。だから、この絵本を通して、家族や友達と一緒に楽しんでもらう中で、まずは大人が率先して楽しむ。これを面白がってもらって、みんなで笑いあうワクワクする時間がたくさん生まれればうれしいです。
お話を伺って
お話を聞いた後日、実際に子どもたちと一緒に読んでみると、娘も息子も「すごい!」と驚きの声をあげていました。「今手がつめたいから、めっちゃこすらないと色が変わらない!」などという発見も。「ママの手貸して!」と一緒に手を合わせているときは、なんだかしみじみとあたたかい気持ちになりました。「パパが帰ってきたら、パパにもやってもらおう~」とウキウキしながら待つ子どもたち。一緒に手に取り、一緒にふれる絵本は、きっと子どもたちの記憶に残ってくれると思います。(osa)
『いろがかわってあそべるえほん』
「はなくそほじほじかぞえうた」詳細はこちらから
「ともだちいろいろ」詳細はこちらから
※「メタモカラー®」はパイロットインキ株式会社・株式会社パイロットコーポレーションの登録商標です。
※「フリクション®」は式会社パイロットコーポレーションの登録商標です。
※「メルちゃん®」は株式会社パイロットコーポレーションの登録商標です。
※「いろがわりえほん ふれてみてシリーズ®」はパイロットインキ株式会社の登録商標です。
お話を伺ったのは…安井祥悠(やすいよしひさ)さん
〈監修者プロフィール〉
2019年4月パイロットインキ株式会社入社。
開発製品部(現在の部署)にてメタモカラー®のOEM事業の営業を担当。
出版事業立ち上げに携わり、2024年10月に「いろがわりえほん ふれてみてシリーズ®」の発売を開始。
主に全体進行、編集と製作、PRを担当。
お話を伺ったのは…ふじいなおみさん
文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。
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