「黒板(のプログラム)を写すのは勉強じゃない。よく考えてやってみてごらん」
「思い通りにうごかないとき、悪いのは君じゃないんだよ。イライラしても仕方がない。コンピュータへの『指示』を見直してみよう」
「(先生の指示を待ったり、みんなと同じようにしようと考えすぎないで)アイデアはどんどん考えて、進めていいんだよ」
理科の直列や並列といった電流の仕組みを学ぶキットやプログラミング教材を前にしてとまどう小学4年生に向けて教師のこんな声が響く教室が、川口市の安行小学校にありました。
授業をするのは、20年にわたりSTEAM教育に取り組む埼玉大学STEM教育センターの野村泰朗准教授(教育学部心理・教育実践講座)です。
この記事では、野村准教授が安行小学校で行っている理科教材のモーターやそれを改造して作るロボットをプログラミングで動かす授業から、コロナウィルスによる社会の仕組みが大きく変化するニューノーマルな時代にSTEAM教育がなぜ重要なのか? 子どもの学びを深めるために親ができることは何なのかを紹介します。
※この記事はSTEAM教育特集の一部です。
【STEAM教育特集記事一覧(順次リリース予定)】
Part1 STEAM教育で身につく探求的アプローチと真の学力とは?
Part2 【ロボット&理科】学びを深めるアフターコロナ、ウィズコロナの学習法「STEAM」教育の3つのポイント(この記事)
Part3 【ICT&サイエンス】 STEAMが学べるインターナショナルスクールはなぜ人気なのか?
Part4 【プログラミング&社会】AI社会を生きる子どのためのSTEAM
STEAM教育(スティーム教育)とは?
「STEAM教育(スティーム教育)」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(リベラルアーツまたは芸術)、Mathematics(数学)を頭文字をとったもので、これらの学びを統合的にすすめながら探求的に学ぶ活動のことです。
もともとは「STEM(ステム)教育」として提唱されていましたが最近ではそこにA(Arts)を加えて「STEAM(スティーム)教育」といわれることが多くなりました。日本でも文部科学省を始め頻繁に使われる言葉となってきました。
STEAM教育の取り組みで大切にするポイント1. 学びの向こうに自分たちが変える世界があることを知る
安行小学校のこの日の授業は、野村准教授が取り組む学習支援ロボットについての話からはじまりました。
野村准教授「みんなの周りにも外国から来たお友達がいるよね。外国から来たお友達が日本語を勉強するときに相手をしてくれる『日本語指導支援ロボットの研究』を先生はしています。みんなロボットの先生と人間の先生のどっちがいい?」
子ども「ロボット!」
子ども「ロボットというだけで面白い気がする」
野村准教授「どこが違うんだろう?どこが好き?」
子ども「顔?」
子ども「動き?」
野村准教授「ロボットのいいところは何だろう?」
子ども「文句を言わない! 怒らない!」
野村准教授「ロボットのいいところと、人間のいいところをくみ合わせた社会にかわっていくよ。そんなロボットを動かしているのがコンピュータです。そしてそのコンピュータはこうして欲しいということをあらかじめ用意された命令を並べてプログラミングすることで思い通りに動かすことができます。ほかにも、サッカーの練習を一緒にしてくれたり、読み聞かせをしてくれたり、ロボットのいいところを活かしてみんなの生活に役立つロボットをプログラミングして動かすことができるでしょう」
・同じ本を何度も読んでというとママやパパは大変になってしまう
・人間のコーチに同じコースにボールを蹴ってもらうことはできない
プログラミングとは、そんな子ども自身が普段感じている「困った」を解決してくれるロボットを動かすものだということが、子どもの興味を強くひきつけます。
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