子どもに体験活動が必要な理由~子どもの年齢別に最適な体験内容とは~(第2回)

昨今、様々な体験をすることが子どもの成長を促すと言われています。それでは、なぜ体験活動が子どもの成長にいいのでしょうか。また、どのような体験がいいのでしょうか。私たち大人は、体験活動において子どもたちにどんな接し方をしたらいいのでしょうか。
子どもの発達を促す「体験活動」について理解を深めるために、独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長の青木康太朗先生に詳しくお話を伺いました。
この記事は、前回の「子どもに体験活動が必要な理由~「なぜだろう?」と思う感性の大切さ~(第1回)」に続き、どのような体験が子どもの心を育むのかについて聞いた第2回の記事です。

自然体験は「なぜだろう?」と思う感性を育む!

未来:自然体験が子どもにいいと言われているのはなぜでしょうか。

青木先生:自然体験がよい、とくに幼児期によいと言われているのは、自然は人間が作り出したものではないからです。人間が作り出したものは、元となる設計図があり答えがあります。でも、自然は判明できていないことがたくさんあります。

自然を体験していると、「不思議だな」と思うことによく出会います。ズボンに種がくっついていたり、蓮の葉っぱに水溜まりができていたりするような「不思議だな」と思うことは、子どもの好奇心や探究心を生み出すきっかけになります。

蜘蛛の糸はどうやって作られているかということについても、未だにわかっていないこともありますし、同じ蜘蛛の巣でも同じ形、同じ色のものがない。だからこそ、とても魅力的だし、なぜだろうという疑問が湧いてくるわけです。

体験活動を通して、子ども達が豊かな感性を育まれるということがとても重要です。なぜなら、AIが目覚ましい発達してきている今、人間がAIに勝る部分は感性だからです。

例えばチャットGPTなどのAIは、人間が問いを出せば答えを出してくれます。でも人間が問いを出さない限り、AIから問いを出すことはないですよね。なぜかというと、何が課題でどう解決したいのかということをAIは作り出せないからです。それを作り出すのは人間なのです。

その問いを自分で作り出していくためには、誰かに教えてもらうのではなく自分で気づいていかないといけない。自分で気づく力は何かというと感性なわけです。

感性というアンテナを高くして、自分自身でいろいろな課題に気づいていくためには、作られた環境や限られた環境の中で生活していくだけでは無理です。自然が生み出すものなどに触れることで、視野が広がり、感性が豊かになっていきます。

面白い、楽しい、鳥肌が立つような「体験の質」が重要

未来:自然体験ではないのですが、いこーよの革工房のお仕事体験に職人さんが皮製品に円状にミシンをかける過程がありまして、職人さんはミシンのかけ終わりで最初にかけ始めたところにピッタリミシンの穴を重ねてかけるんですよ。それを見て子どもたちが「すごい!」とよく衝撃を受けているのですが、そういう経験も体験活動ならではですよね。時間が一日程度の短い期間の体験だったとしても意味はあるでしょうか。

青木先生:もちろんです。家でゲームばかりしていたり何もしないでいるよりも、いろいろな体験をしているということに意味があります。要は偏った体験しかしてないというのが子どもの成長にとってあまり好ましくないのです。

今後は、学んだ知識がそのままでは通用しないような時代になってきています。得た知識をこれからの社会に活かしていくためには、感性を高く持ち、自分の持っているものをうまく社会に生かしていくことが必要です。そのために実践の場である「体験活動」の場数をどんどん踏んでいかないといけないんです。

長い期間の体験が必要なのではなく、「すごい!」「楽しい!」と思うような「体験の質」が重要です。たとえ3時間くらいの短い体験だったとしても、鳥肌が立つような思いをしたのであれば、その経験に勝るものはないんです。そのような経験をたくさんすると、「それについてもっと知りたい」、「他はどうなっているんだろう」と思うことにつながります。

自分に合う体験や興味があるものは、その体験を1回やっただけでは分からないこともあります。いろいろなものにチャレンジする中で自分が興味を持てるものを見つけていったらいいでしょう。

幼児期は安心できるよく知っている近場の自然体験がいい

未来:どのような体験がいいということは成長のステージによって変わりますか?

先生:はい、それぞれの成長ステージに応じた体験活動が必要です。

幼児期(3~5歳程度)については、家族と一緒での身近な自然体験や外遊びがいいと思います。自然体験と言っても、幼児はそれほど遠くに行かなくても、子どもが落ち着いて遊べる近くの自然でいいんです。子どもによっては、知らない場所はよくわからないし不安に感じることもあるからです。自分の知っている近場は遊び慣れていて安心できますし、主体的に遊びこなすことができます。幼児は同じことを何度も何度も繰り返して遊びますし、子どもなりにその小さい環境の中でも十分楽しめています。

未来:そういえば、我が家の子どももよく近所の公園で割りばしを使ってクモの巣をからめとって綿アメを作って遊んでいました。そこら中のクモの巣をからめとって大きな綿アメを作っていたのですが、1週間ぐらいするとまた何ごともなかったように元のクモの巣ができてるんですよね。クモには大変申しわけないのですが、一生懸命作っただろうその巣をまたからめとって綿アメにしていました…。

巣の中にクモがちゃんと生きていて、壊してしまっても1週間経つとまた巣が元に戻っているということを同じ場所で遊んでいるからこそ学んでいたんでしょうね。

青木先生:それが面白いんですよね。人間が作ったものは1回壊しちゃうともうそのままですけど、自然のものって壊してもまた戻るんですよね。そういうことを不思議だなと、面白いなと感じます。

幼児の場合、逆にプログラムを作り込みすぎても全然ノッてくれなかったりします。園の先生が子どもたちと一緒に一生懸命遊んでいて、子どもたちも盛り上がってるからよかったと思っていたのに、あるとき子どもがパッと来て「先生この遊びが終わったら本当に遊んでいい?」と聞いてくるという話も聞いたりします(笑)。

未来:(笑)。

青木先生:先生は子どもたちが楽しんで遊んでいると思っていても、実際は子どもにとっての本当の遊びにはなっていない。とくに幼児期の遊びというのは主体性がとても重要で、子どもを「解き放つ」ことがとても大事なんです。解き放ったときに、子どもたちがやりたいことができる環境を作っておくこと、例えば、穴を掘りたいと思えばスコップがある、虫を捕まえたいと思えば虫カゴがあるなど、子どもが自分で考えていろいろなことをやれる環境を整えておくというのがとても大切です。

そして、答えを見つけること自体ではなく、自分で答えを見つけていこうとする「経験」をしていくことが大事なんです。

小学生は子ども達が自分で工夫して面白いと思う体験が学びにつながる

未来:小学生の子どもの体験についてはどうでしょうか。

青木先生:小学生以上でも自由時間はとても大事なので、ある程度自由度を持たせるというバランスを持たせつつも、ただ自由にやっているだけでは学びにつながらないので、狙いに沿ってある程度作られた環境にすることも大事です。

でも、教えられてやらされるだけの体験というのは身につかないので、その中で自分たちが何か工夫をしたり、考えたり、なにか気づけたりする場面を作っていくことが大事です。誰かに教えられるのではなく子ども自身が自分で答えを見つけていけるような工夫をしておくといいです。

自分で考えて答えを導き出すためには正しい「知識」も必要になってきます。その知識を使って自分でたどり着いた答えややり方に「なるほど!」とか「いい考えだよね!」などと言われたりすると、子どもは嬉しいんですよね。

子どもの成長とともに、親元を離れた集団の体験や社会を知る体験なども

青木先生:小学校以上になったら体験の幅を少しずつ広げていったらいいでしょう。低学年のうちは幼児期と同じように自然体験を中心としつつ、日帰りや泊まりのプログラムに参加するなど集団で活動できるような機会を作っていくといいと思います。

さらに高学年になったら、自然体験だけでなく、伝統・文化体験や科学体験などさまざまな種類の体験をするといいです。長期間継続する体験などもできるといいですよね。

体験は子どもの自立を促す

青木先生:体験活動は自立を促す場という意義もあります。「自立」というと、幼少期では自分で自分のことができることですが、小学校高学年ぐらいになると「自立」とは「個(自分)」としての成長や人との関係作り、他者と協力して生活をできるかという内容になっていきます。

小学校高学年くらいになったら親と離れて体験するといいと思います。親など頼る存在がいない中で仲間と協力をして、自分のことをきちんとできるようになっていく。それはもう一つの社会生活なんです。親元を離れて体験活動をする意味はそこにあります。

さらに中学生くらいになってきたら、職業や地域との繋がりを感じられたり、地域に貢献できたりするような体験へとより幅を広げていくことが大事だと思います。そうすることで体験したことを地域や仕事、自分の人生などにより結びつけていけるようになります。

子どもの集団遊びが少なくなってきていることも、親元を離れて体験活動をした方がいい理由の一つです。塾や習い事で忙しくて公園で遊ぶ子どもが少なくなっていますし、公園で遊んでいたとしてもゲームをやっていたりする子もいたりします。 

でも、子どもから言わせると「僕らが公園で遊んでいたら、学校に通報される」こともあるそうです。公園で子どもたちが鬼ごっこなどでして盛り上がっていると、近所の人が「うるさい、おたくの生徒が公園で騒いでるからなんとかしてよ」と学校に言うわけです。学校は地域の方に言われたら対応しないといけないので、次の日に呼び出されて「昨日公園で遊んでいたのか?」「公園であまり騒ぐな」と言われ、結局公園でゲームしかできなくなる。子どもが自由にのびのびと遊べる場所もずいぶん減ってきてしまいましたね。

昔のように子ども同士の遊びの中でルールを作ったり、人間関係を学んだりする機会が減っている今、いろいろな場面でそれができる機会を作ることが大事だと思います。

青木先生のお話を伺って

幼少期には身近な自然の中で遊びから学ぶ体験、小学校低学年には子どもが自分で工夫できたり集団でできる体験、小学校高学年には社会体験や長期間の体験などに幅を広げ、中学生には体験したことを仕事や自分の人生などに結びつけていく体験など、子どもの成長に従って体験の内容も成長させていくことが大切ということがわかりました。
では、そのような体験で大人はどのように関わっていけばいいのかについては、「子どもに体験活動が必要な理由~効果的な体験にするための大人の関わり方~(第3回)」に続きます。

お話を伺ったのは…青木康太朗(あおきこうたろう) 独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長
<監修者プロフィール>
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。

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中学受験を経験した辞典体質の高2息子とダンスに夢中な和み系の小6娘の子育て中。仕事モードと同じく、効率とマルチタスクを家族にもつい求めてしまうことを時々反省している。稀に見るほどの方向音痴。日記を毎日書かないと落ち着かないため、いつでも持ち歩いている。

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