正解のない課題と向き合い「生き抜く力」を育む! 子どもが社長の会社「ジュニアビレッジビジネスプログラム」の人生を変える体験とは?

小学生や中学生が、農作物の栽培から商品開発、販売までを一貫して行う「会社経営」を実際に行い、「食×農ビジネス」で「課題解決力」を育む子ども向けビジネスプログラム「ジュニアビレッジ

静岡県菊川市、浜松市、神奈川県横須賀市、横浜市、東京都三鷹市、宮崎県宮崎市の6カ所で開校しています。

ジュニアビレッジで子ども達は、正解のない地域課題に向き合い、自分たちにできることは何なのかを考え、それを行動にうつす体験を年間通じて繰り返していきます

10代という多感な時期に、それぞれの正解のない問題に向き合った子どもたちは、その後どのような高校生、大学生になっていったのでしょうか?

中学時代にジュニアビレッジに参加した2人の大学生の経験を取材しました。

「ジュニアビレッジ」=地域で自立する部活動

ジュニアビレッジでは、各ジュニアビレッジごとに農業を通じて地域課題を解決するテーマを設定。週末、畑やミーティングなどを行うスペースに集まって活動します。

毎年春に農業生産、商品開発、販売などのチーム作りからスタート! 夏には作物を育てたり市場調査を行い、秋には商品企画を行います。冬には商品販売を行い、3月には一年の活動の事業報告会を行うのが一連の流れです。

菊川ジュニアビレッジ「もっとお茶農家を元気にしたい!」 そんな思いで、地元のために地元の小中学生が、菊川茶にぴったりなハーブを栽培。地元の茶工場と一緒にハーブティーを作っています。
浜松ジュニアビレッジ全国でも有数の農産品の産出都市である浜松。しかし農業従事者の高齢化や耕作放棄地の拡大が課題となっています。子どもたちは地域企業と協力しながらサツマイモを栽培、スイーツやポタージュに加工して農業ビジネスを体験。地域一丸となって未来の農業者を育てています。
横須賀ジュニアビレッジ近年では首都圏レストランなど向けに西洋野菜の栽培にも力を入れている横須賀市。まだあまり知られていないめずらしい「紫にんじん」を栽培し、形にかからわずできたにんじんを無駄なく全部いただける「ドレッシング」を作り販売します。
横浜ジュニアビレッジ地産地消をテーマに木工や、地域のいらないものを集めて堆肥づくりからはじまり、無農薬で作物を育てます。 みんなが感動し、食べ物を大事にしようと思うような商品を作って販売します。

中学で出会った「ジュニアビレッジ」が人生を変えた!
(落合奏楽さん)

現在は浜松学院大学地域共創学部の学生ながら、菊川市協働推進委員も務める落合さん。一時期は菊川駅南商店街の空き店舗を利用した文化拠点「みる」の副店長も務めました。

中学生のときに「ジュニアビレッジ」に参加してから「趣味は地元『菊川』!」と答えるほど菊川が大好き! どのような出会いと悩みのなかで現在の進路を選んだのか聞きました。

【落合さんの進路選択】
中1/菊川ジュニアビレッジと出会う

中2/社長に立候補、大人として扱われるなかで責任感が芽生える

高校時代/菊川ジュニアビレッジのインターンになり、後輩たちとともに活動

大学進学/浜松学院大学地域共創学部へ自己推薦で入学

現在(大学生)/大学で学びながら地域文化拠点「みる」副店長・菊川市協働推進委員

【将来の夢】地元・菊川を元気にする会社を起業したい

未来へいこーよ中学1年生のときに参加した『ジュニアビレッジ』に夢中になった理由を教えてください

落合さん「私が参加した『菊川ジュニアビレッジ』では、茶畑が放棄されたり後継者不足に悩んだりする社会課題を解決するために、子どもたちが会社を作り、茶を栽培してハーブティーをブレンドしたオリジナルティーを販売するプログラムを行っていました」

「私の家でも茶畑を管理しきれず外部の業者に管理をお願いしたり、後継者不足について家庭内で話題に上がることがよくありました。そのため、地元の農業が抱える問題点を認識はしていましたが、ジュニアビレッジに参加することではじめて自分が何かをできる問題として向き合うようになりました」

【菊川ジュニアビレッジの活動】
問題提起:放棄茶畑 後継者不足
解決策:菊川の茶の魅力を知ってもらう
活動内容:小中学生が会社を作り、ハーブの生産、商品開発、販売を行う年間プログラム
売上目標:200万円

みながらも『進んでいく』ことこそが『《正解のない活動の《正解

未来へいこーよ中学2年生のときに菊川ジュニアビレッジの『社長』に立候補してから、見える世界が大きく変わったそうですが、『社長』になる前と後で変わったことはどんなことでしょう?

落合さん社長に立候補するときは、社長はみんなの中心でひっぱっていく楽しい仕事だと思っていたんです。でも実際にやってみたら、社長というのはメンバーがそれぞれの役割を最大限できるように導いていく仕事なんだと感じました。やりたいことがあればあるほど仲間がいなければなにもできないなと感じました。また年下であってもメンバーそれぞれがすごく優秀で、自分で考えて最大限の仕事をしてくれる。このメンバーとやっているからやりとげたいという気持ちになりました」

「各地域のジュニアビレッジは生産、商品開発、販売の主に3つのチームに分かれています。生産チームは畑での栽培を、商品開発はパッケージやマーケティングを、販売は販路の開拓を行いますが、社長になってからそれらのチームの代表者として東京の上場企業との商談をさせてもらうなどの経験をする機会が増え、菊川ジュニアビレッジ全体のために何をすべきか? という俯瞰した視点を持って3つのチームと係わるようになりました

未来へいこーよジュニアビレッジに夢中で取り組んだ理由は何だと考えていますか?

落合さん「ジュニアビレッジは種を買ったり、パッケージを発注したりといった翌年の活動資金の大部分を前年のチームの売り上げで賄います。社会の変化に合わせながら商品開発や販売方法を変え、翌年へ引き継いでいくためにきちんと売り上げをあげなければいけないということを『ジュニアビレッジ』に参加する大人の方たちから、丁寧に教えてもらうことで、その責任を自然と引き受けて、責任をまっとうしたいという気持ちが自分の内側からわいてきたからだと感じています

「私のときには、年間売上目標を200万円と設定し、各地のイベントなどでの販売で賄う計画をたてました。一つひとつのハーブティーの販売を積み上げて200万円を達成するために。販売会の後には反省会を行い、どうやったら購入者に喜んで買ってもらえるか、菊川のお茶の良さが伝わるかをブラッシュアップしていきます」

未来へいこーよ中学生でありながら、『社長』として向き合っていたことがよくわかります

落合さん「ありがとうございます。社会課題に小中学生から全力で取り組んでいる自分たちがかっこいいなと感じることもあり、一つひとつの活動が自信に結びついていく感覚もありました

「また、わたしが社長としてかっこよく商談をさせてもらう前に、メンバーがいろいろな活動をしてくれているからできているということをよく理解するようになったことも、しっかりとした『社長』になりたいと思ったきっかけです」

未来へいこーよこんな風に活動するのに運営の大人の人はどのようにサポートしてくれたのでしょう?

落合さん「ジュニアビレッジの活動を支えてくださる大人たちは、子どもの会社だからこのぐらいでいいよねというのではなくて、大人も子どももなく問題には悩んで向き合うことを教えてくれました。そのなかで、自分たちがやっていることは『正解のない活動』だけれど、こうやって『進んでいく』ことこそが『正解のない活動の《正解》』なんだと感じました。夢中になって活動していくといつの間にか『ジュニアビレッジ』が学校などの場所にいくための第三の居場所、エネルギーを貯める場所にもなっていきました

ジュニアビレッジのプログラムを見る!

ジュニアビレッジで「自分を」見つけ、自分ならではの進路を選択

未来へいこーよ中学時代のジュニアビレッジの経験と、高校生インターンとしてジュニアビレッジに戻り、先輩としてファシリテーションをするようになってから見え方が変わったものはありますか?

落合さん「中学時代と高校時代のジュニアビレッジの活動はまったく異なりました。中学時代は自分たちが全面に出て進むことが大切でしたが、サポート側のスタッフとなった高校時代には、自分の意見はしゃべらずにメンバーの小中学生の意見や力を十分に引き出すことが大切な役割でした。チームがうまく機能するためにはメンバーそれぞれに役割があり、それぞれの役割が合わさって一つの結果を出していくことの大切さを強く感じた経験は、大学の自己推薦入試の面接で、最も高く評価していただいたポイントになりました」

未来へいこーよジュニアビレッジの活動を経て、これから将来どうなっていきたいと考えていますか?

落合さん「ジュニアビレッジに夢中になった中学時代は、自分が生まれ育った場所だから菊川が好きだと思っていましたが、大学生になって推進委員になったり『みる』の副店長になったりして、中学のときにお世話になった市役所や地域おこしの方々と再会することが多くなり、菊川には素敵な人がたくさんいるから菊川が好きなんだということに気づきました。そう気づくと、そこから私も『菊川をよくする素敵な人になりたい』という気持ちが強くなり、今は、菊川のためになるような会社を起業したい! という夢を持っています

未来へいこーよ将来の夢に向けて現在やっていることはありますか?

落合さん「起業のアイデアを集めるために、若者がもっと菊川市に興味をもてるようなイベントを企画しています。Z世代の人が菊川に気軽に来てくれる場所になるようなイベントはこれからも継続的に作っていきたいです」

未来へいこーよ落合さんにとって『ジュニアビレッジ』の活動を一言でいうとどのようなものだったでしょう?

落合さんジュニアビレッジは『自分を見つけた場所』でした。 何が得意で何が好きで、何が苦手なのか 色々なことを経験するなかで、 自分を見つけることが出来ました。 大学の進路選択の時には自分についてよくわかっていたので、自分が本当にやりたいことは何なのか? から考えて進路を選ぶのにとても役に立ちました。ジュニアビレッジに興味を持った人にはぜひ参加してもらいたいです」

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ジュニアビレッジの社長経験で、自分で考えて決断する訓練を積めた!
(西田駿さん)

現在は大学で工学を学ぶ西田さん。大学での勉強と並行して大学生協の学生委員長を務めるなどの活動も積極的に行っています。

中学1から中学2年生までの2年間「ジュニアビレッジ」に参加して、どのような自分と出会い現在の進路を選んだのか聞きました。

【西田さんの進路選択】
中1/菊川ジュニアビレッジと出会う

2/社長に立候補

高校/地元ではない知り合いのいないサッカーと勉強ができる高校を自分で選んで進学

大学進学/神戸大学工学部に入学

現在(大学生)/大学生協学生員会の委員長を務める

【将来の夢】
海外でエンジニアリングの力で世界を変えていきたい

未来へいこーよジュニアビレッジに参加したきっかけを教えてください

西田さん「中1のときに学校で配布されたジュニアビレッジのチラシを見て、両親が参加をすすめてくれました。私自身も『自分たちの村を作ろう!』というジュニアビレッジのチラシのキャッチコピーを、『面白そうだな。行ってみよう』と思ったことを覚えています」

未来へいこーよジュニアビレッジの活動を通じて自分は変わったなと思うところはどんなところでしょう?

西田さん「小学校のころは、勉強もスポーツもやればできるという自信があったので、頑張ればできないことはないという気持ちが強く、ストイックに自分を追い込んで1人で達成しようとする傾向が強い子どもでした」

「ジュニアビレッジに入ってからは、自分一人ではどうしようもないことやできないことがあることを経験することが多く、少しずつ誰かに頼り、誰かに頼ることでよりよい成果につなげるように自分が変わっていったと思います」

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自分1人ではどうしようもない問題と向き合うジュニアビレッジの経験

未来へいこーよジュニアビレッジで経験した一人ではどうしようもない経験とはどのようなものでしょう?

西田さんジュニアビレッジの1年間の活動をほぼ終えて次年度に向けた資料整理をしているときに、『売り上げが足りない! どうしよう!』となった時のことです」

未来へいこーよ学校なら焦って『先生どうしたらいいですか?』と相談してしまいそうですね

西田さん「ジュニアビレッジは売上が足りないから大人に『怒られる』雰囲気の場所ではなく、売上が足りない状況をどうしたらいいのか、この失敗をどうしたら次に生かせるか自分たちで考える経験を積む場所でした」

「問題が起こって大人に相談するときは『どうしたらいいですか?』と一方的に投げかけるのではなく、『こう考えてこうしたいのですが、どう思いますか?』と自分たちで考えてから相談に行くことがジュニアビレッジに在籍している間に何度もありました」

「このときも時間的にはもうできることはないタイミングで、最終的にメンバーや大人の人と相談して次の年へ課題を持ち越す資料をつくり申し送りをして報告をしました」

未来へいこーよほかにジュニアビレッジの活動で、よく覚えているものや、進路を選ぶきっかけになったものがあれば教えてください

西田さん「ジュニアビレッジの生産・企画・販売の3つの仕事のなかでも、販売会の本番が楽しい活動として記憶に残っています」

「販売会では、知らない人に説明して売っていくなかで、自分の考えを整理したり、会話の中で新しい発見をしたりすることが楽しかったです。このような経験から、自分自身を『新しい人や経験に出会う刺激を楽しむタイプ』と分析するようになりました」

「現在は大学の工学部で学んでいますが、授業で学んだ仕組みを実際に図面を引いたり、エンジンを分解したりして新しいことに気づくとワクワクします。これはジュニアビレッジ時代の販売会で第三者から気づきを得る楽しさともよく似ていると思います」

未来へいこーよジュニアビレッジでは社長も経験されました。社長としての経験のなかで進路選択をするときに役立ったと感じているものはありますか?

西田さん「社長という立場なので、ほかのメンバーのことも考えつつ、マルチタスクで動き決断しなければいけないことがたくさんありました。決断をして行動するという経験を積めたことは、自分もこういうことができるんだ! という自信になりました

「高校は、地元から遠いサッカーと勉強が両立できる知り合いのいない学校に進学する決断を自分でしました。これはジュニアビレッジでのたくさんの決断をした経験から、『結果がどうであれとにかくやってみよう』というマインドが身についていたからできたと考えています」

未来へいこーよ西田さんにとって『ジュニアビレッジ』やジュニアビレッジのような活動を一言でいうとどのようなものでしょう?

西田さん「新しい自分を見つける場所だったと考えています。人との関係の中で新しい発見をすることに喜びを感じ、新しいことに挑戦する経験を積むことで自分に自信を持つことができるようになりました」

「また、何か問題が起こったときに、次にいかすにはどうしたらいいか考えよう。問題が起こったことを指摘して怒られと恐れるよりも、次へいかしていこうとするマインドは、大学生の自分の人格の一部になっていると思います」

ジュニアビレッジのプログラムを見る!

ジュニアビレッジで育む「自分を見つける力」「自分で考えて行動する力」

未来へいこーよでは、「自分を見つける力(自知力)」、「自分で考え自分で行動する力(自効力)」、「多様な生き方を尊重できる力(他尊力)」の3つの力が、これからの世の中を生き抜く力であると考えています。

取材したお二人の「ジュニアビレッジは自分を見つけた場所」、「ジュニアビレッジでは、『こう考えてこうしたいのですが、どう思いますか?』と自分たちで考えてから相談に行くところ」、「自分一人ではどうしようもないことがあることを経験し、少しずつ誰かに頼り、そのことでよりよい成果につなげるように自分が変わった」という話を聞き、まさにこの「自知力」、「自効力」、「他尊力」の3つの力が力強く育まれる場所なのだと思いました。

小中学生の時にジュニアビレッジを体験したことがその後の進路選びや決断に大きく影響し、自分を信じる力になっていることもとても印象的でした。

ジュニアビレッジでは、「食×農ビジネス」で、1年という長い期間、子どもたちが会社を運営しながら、さまざまな問題と向き合い解決していくなかで、「生き抜く力」を育んでいきます。

学校でも部活でも塾でもない場所で、小中学生の時期に貴重な体験ができるプログラムは、2023年度も4月から開校されます。ぜひ挑戦してみたいですね。

ジュニアビレッジ

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出版社、教材編集を経て2013年に「いこーよ」へ。小学生の女の子2人のママ。大学院、モンテッソーリ教育教師、華道、ダイビング資格有。ライフテーマは幼児教育から小学校、中学校、高校、大学、社会人へとどのように学びをつなげていくか。特に幼児教育から中学受験への連携に日々奮闘中。
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