駅前のカフェが大学に?大学×企業×まちで学ぶ「マチカドこども大学®」が広げる探究の輪

駅前のカフェが、ある日「大学」になる。そんな学びの場が、小田急多摩線の駅で開かれています。「マチカドこども大学®」は、学校の教科書を飛び出し、地域を教室に見立てて学ぶ新しい教育のかたちです。
自動運転、観光、防災、心理学。大学で扱うようなテーマを小学生が学び、大学、企業、学生、地域の大人たちが連携してその学びを支えています。
今回は、そんな「マチカドこども大学®」の取り組みと講座の様子をレポートします。

まち全体が教室に!「マチカドこども大学®」とは

「マチカドこども大学®」は、多摩大学と小田急グループの小田急不動産が連携して運営する小学生を対象にした探究型学習プログラム。2022年にプレ開校し、2023年4月から本格的にスタートしました。

会場となるのは、栗平駅前のコミュニティ施設「CAFÉ&SPACE L.D.K.」。カフェとレンタルスペースを併設した、地域の人が自然に集う“まちの拠点”です。料金はサブスクリプション形式(応援金システム)で、保護者も講義の後ろから子どもたちの学びの様子を見守ることができます。
マチカドこども大学®の公式HPはこちら

栗平駅前「CAFÉ&SPACE L.D.K.」でのマチカドこども大学®の様子

栗平駅前「CAFÉ&SPACE L.D.K.」でのマチカドこども大学®の様子

この大学の大きな特徴は三つあります。

1.子どもの好奇心から始まる学び
教科に縛られず、問いを立て、考え、試すことを重視し「主体的に学ぶ力」を育てます。

2.地域自体が教室になること
大学教員だけでなく企業や地域団体の人が講師となり、フィールドワークも交えながら授業を展開。学びを通して地域とのつながりを生み出しています。

3.大学×企業×学生による安心のサポート体制
大学生が授業運営を支え、子どもたちと同じ目線で関わることで、初参加の子も安心して学べる環境が整えられています。

年間の講座数は月に2回で年間約20回。2024年度は22講座に93名が参加し、子ども・保護者ともに「参加してよかった」と感じる声が多く寄せられました。さらに、日本こども学会での研究発表や論文公表など、教育効果の検証と発信にも積極的に取り組んでいます。

「塾や学校とは違う学びを」~樋笠准教授の思い~

この取り組みを中心となって進めているのが、多摩大学の樋笠尭士准教授です。

きっかけは、小田急不動産が栗平駅前で行っていた地域活動でした。多摩大学と連携協定を結び、「地域のために何か一緒にできないか」と考えるなかで、教育を軸にした取り組みとして「マチカドこども大学®」が生まれたといいます。

樋笠准教授が大切にしているのは、塾や学校とは少し違う学びのあり方です。
授業のテーマは、大学でしか触れない分野を小学生に届けること。自動運転やAI、妖怪学など、家に帰ってから家族と話したくなるような内容が意識されています。
また、授業は座学にとどまらず、ワークショップ型が中心です。それは「なぜ?」から始まる双方向のやりとりを通して、考える力を育てたいという意図からきています。

さらに樋笠准教授は、教育を通じて人が循環する沿線づくりも目指しています。
「子ども時代に参加した子が、将来は大学生として戻ってきて、社会人として地域の講師になり、引退後は支える側になる。教育を軸に、人が循環する沿線をつくりたいんです」

多摩大学・樋笠准教授

子どもたちで考える「観光学」ワークショップ

取材当日は、小田急電鉄、日本観光振興協会共催による「小田急子ども観光学講座 in 海老名」が開催され、小学生約30人が6グループに分かれて観光業を学びました。

「小田急子ども観光学講座 in 海老名」の様子

学校で使っている地図帳を使って沿線の観光スポットを知るワークから始まり、今回の講座のために制作されたオリジナルテキストを活用しながら、旅行プランを「旅行価格が高いか安いか」「滞在型か目的型か」という2つの軸で考えるワークでは、「新婚旅行は一生に一度だから高くてもいいのでは?」、「ファミリーは子育てにお金がかかるから節約しつつ、子どもとあちこち行く旅行がしたいと思う」、「インバウンドは日本ならではの珍しい体験をしたそう」、「熟年カップルは年金暮らしだから安くてゆっくりできる旅行がいい」、「今、物価高だから大学生はお金がなさそう」など、多様な旅行客のニーズを想像した意見が次々と飛び出しました。

グループごとに同じ客層でも異なる視点が出され、子どもたちが自分の頭で旅行プランを考えている様子が伝わってきます。
最後は顔はめボードを使って小田急線沿線の観光スポットの魅力を発表し、学びを自分の言葉で表現しました。

顔はめボードで発表する様子

参加した子どもからは「沿線の観光地の新たな魅力を知った」「今日のことを家族に話したい」という声が聞かれ、保護者からも「マチカドこども大学®の他の講座も複数受講しているが、学んだことを家族で話すことが増えた」「学校とは違う学びに触れられた」といった感想が寄せられました。

参加した小学生の親子

当日講師を務めた玉川大学名誉教授・寺本潔先生は、「観光という身近な題材を通して、経済や人とのつながりを考え、多角的な視点を育てたい」と語ります。その講座の狙いは、子どもたちにしっかりと届いていました。

玉川大学名誉教授・名桜大学特任教授 寺本潔先生

取材を終えて
大学と地域、そして企業が一体となり、子どもたちに“本物の学問”に触れる機会を届けているマチカドこども大学®。その取り組みの幅広さと未来を見据えた姿勢が伝わってきました。
大学で扱う学問を身近なテーマに落とし込みながら、社会の仕組みについて考え、「もっと知りたい」と目を輝かせる子どもたち。そのそばで大学生が寄り添い、安心できる雰囲気の中で活発に意見を交わしている様子も印象的でした。
自分の頭で考え、言葉にし、他者と対話する。 そんな力を自然と育んでいくこの学びの場は、これからの時代を生きる子どもたちにとって、かけがえのない体験になるはずです。(Shizu)

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中学受験を経験した辞典体質の高2息子とダンスに夢中な和み系の小6娘の子育て中。仕事モードと同じく、効率とマルチタスクを家族にもつい求めてしまうことを時々反省している。稀に見るほどの方向音痴。日記を毎日書かないと落ち着かないため、いつでも持ち歩いている。

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