目の前に広がるのは、整備中の巨大な飛行機。「ANA Blue Hangar Tour」は、普段は立ち入れないハンガー(格納庫)の中で、飛行機の整備現場を見学できる特別なツアーです。エンジンの迫力や機体のスケールを体感しながら「空の安全」を支える仕事を学べます。子どもも大人も思わず声が出る75分。その様子を取材しました。
ANA Blue Hangar Tourとは?
ANA Blue Hangar Tourは、ANAの整備士が実際に働いている格納庫に入り、飛行機の整備現場を見学できる体験ツアーです。普段は立ち入ることのできない空間で、巨大な機体を間近に感じられるのが最大の魅力。整備士が作業を行う様子をその場で見ながら、飛行機の安全を支える仕事について学ぶことができます。

さらに、展示ホールでは一等航空整備士になるまでの道のりや、整備の仕組みをパネルや映像で紹介。実物のタイヤに触れたり、ビジネスクラスの座席に座ったりと、体験要素も充実しています。

今回は、「未来へいこーよ」編集部が実際のツアーに一般のお客様と一緒に参加し、その様子を取材しました。
会場は東京都大田区の羽田空港そばにあるANAコンポーネントメンテナンスビル。東京モノレールの新整備場駅からは徒歩約15分(開催時刻に合わせた専用バスも運行)、羽田空港第一・第二ターミナル到着口から京急バスで約5分(西新整備場で下車、徒歩4分)の場所にあります。ツアーの所要時間は約75分。対象は「満6歳以上かつ小学生以上」で、どちらの条件も満たしていることが参加条件です(未就学児は参加できません)。開催は月曜を除く平日と土曜日で、1日5回実施されています。参加費は無料で、予約は公式サイトから行えます。
個人利用目的の写真撮影は可能ですが、動画や音声録音は禁止されています。ストロボ撮影が制限される場所もあるため、見学担当者の指示に従う必要があります。なお、HPやブログなどで公開する場合は、投稿予定の写真を事前に問合せ先へ送り、許可を得る必要があります。他社機が写っている写真や、他のお客様・整備士・ガイドスタッフが写っている写真などはSNS掲載不可とされています。
出発前に学べる展示&お話し会
受付カウンターは、空港のチェックインカウンターを再現したものになっています。ここで受付を済ませると、チームカラーのストラップを受け取ります。この色が、このあと一緒に行動するグループの目印になります。

受付後は、ツアー開始まで展示ホールを自由に見学できます(ツアー体験後も30分間見学可能)。ここではANAの整備部門の取り組みや、一等航空整備士になるまでの道のりが紹介されています。機体の定期的な整備には長いもので約3カ月かかるといい、安全に飛ばすためにどれほど多くの人が関わっているのかがよくわかります。

実際に使用されている飛行機のタイヤも展示されています。タイヤのサイズは乗用車(直径約60~80cm、幅約20~30cm)よりも2倍ほど大きく(直径約1.2~1.5m、幅40~50cm以上)、固さ(空気圧)はクルマの5~8倍くらいあります。展示ホールでは、実際にメンテナンスで使われる専用の器具で溝の深さを測る体験も可能です。パネルやタッチモニター、映像も充実していて、子どもでも理解しやすい内容になっています。

その後はお話し会場へ移動します。ここでは整備士の仕事を紹介する映像を視聴しますが、会場にはもうひとつ大きな見どころがあります。ハワイ路線で使用されているエアバスA380型機のファーストクラス座席が実物展示されているのです。

全520席のうち、ファーストクラスはわずか8席。2席分ほどのゆとりある広さに、32インチの大型モニター、フルフラットになるベッドシート。仕切りを閉めれば個室のような空間になります。映像が始まる前には、実際に座ることも可能です。子どもたちは目を輝かせながらシートに腰かけ、ボタンを触ってリクライニングを試していました。

ファーストクラスのテーブルを中央に配置すると、家族や恋人と向かい合ってお茶やコーヒーを楽しむこともできます。
さらに、日本の航空会社で初めて導入された「ANA COUCHii」も展示されています。レッグレストを上げればベッドのように使えるシートで、家族旅行にもぴったりの仕様です。整備の話を聞くだけでなく、「飛行機に乗る楽しさ」も体感できる時間になっています。

写真左側が「ANA COUCHii」シート。ベッドのように使えるので、赤ちゃんや小さい子どもを寝かせられるのは大きなメリット。写真右側はプレミアムエコノミーのシートで、こちらも座り心地を確かめられます
映像を見終えると、いよいよ整備エリアへ。ここでヘルメットを着用します。ヘルメットの色は入館時にもらえるカードと連動しており、グループごとに分かれます。少人数に分かれていくことにより、多くの人が一か所に集まるのを避け、スムーズに見学できるようになっています。
ヘルメットをかぶった瞬間、いよいよ“本物の現場”に入るという緊張感が高まりました。
巨大な飛行機が目の前に!整備現場の迫力
まずは格納庫がある建物の入口で、携行荷物を含めた保安検査を受けます。このルールは社員も同じとのこと。危険なものを持ち込まない体制が徹底されており、安全管理の厳しさが伝わってきます。
社内の通路を抜け、格納庫への扉が開くと、まず案内されたのは3階部分にあたるエリアです。そこから格納庫全体を見下ろします。目の前に広がるのは、天井の高い巨大な空間。ツアーの参加者たちから思わず「広い!」「すごい…!」という声がもれます。上から見ると、飛行機の翼の広がりや機体の長さがよくわかり、そのスケール感に圧倒されます。

階段で少しずつ下へ。近づくにつれて、整備の現場の空気がよりはっきりと感じられるようになります。格納庫の室温は外気と同じなので、取材時は2月だったので上着は必須です。取材時には、偶然にもジェットエンジンにある一番前の羽(ファンブレード)を取り外して点検している場面を見ることができました。エンジンのすぐ近くまで寄って見学できるのは、このツアーならではです。

中央には渦巻き模様が描かれており、エンジンが回転しているかどうかが一目で分かる仕組みになっていると説明を受けました。

格納庫の床には「センターライン」と呼ばれる線が引かれています。飛行機はこの線に沿って停止しますが、ガイドスタッフによると線上にピッタリで止めているとのこと。あの巨大な機体を正確に操るトーイング(牽引)の技術にも驚かされます。

そして見学も終盤に差しかかったころ、ひときわ存在感を放つ大型機が目に入ります。ボーイング777です。

間近で見上げるその姿は圧倒的でした。参加者からは自然と「大きい!」「すごい」という声が上がり、多くの人が足を止めて写真を撮っていました。大人も子どもも、その迫力に見入っている様子が印象的でした。
さらに最後に案内されたのが、「ANA Technical Training」と書かれた訓練用の機体です。この機体は実際に空を飛ぶことはありませんが、整備士の訓練に使用されています。実機を使って何度も練習を重ねることで、現場で求められる確かな技術を身につけていきます。飛行機が安全に飛ぶ裏側には、こうした日々の積み重ねがあるのだと実感しました。

整備士一人ひとりには専用の工具箱があり、名前が記されています。この工具箱に入っているのは基本的な工具です。交換する部品によっては、特殊な工具が必要となるため、それを管理している専門の部署もあるそうです。ガイドスタッフからは「部品がひとつでも不足すると飛行機は飛ばせない」と説明を受けました。整備士は自分の工具を責任を持って管理し、厳しくチェックされています。その様子から、現場で働く人々の緊張感がひしひしと伝わってきました。

格納庫の隣には滑走路があり、飛行機が着陸する様子を見ることもできます。整備され、再び空へ向かう飛行機。その循環の一部を目の前で見られる、まさに本物の現場でした。

おみやげ選びも楽しみのひとつ
体験ツアーの入口近くにはショップがあり、ここでしか買えないオリジナルグッズを購入できます。マグカップや模型のほか、整備士が使うものと同じタイプの工具箱が販売されているのも印象的でした。開始前や終了後の時間に立ち寄るのがおすすめです。

キーホルダーやエコバッグ、タオル、帽子などオリジナルグッズがたくさん!

飛行機のおまけつきお菓子やカレーなどのオリジナル商品も置いてあります

実際に使われている工具箱と同じデザインの工具箱も販売。ミニサイズもあり、ペンケースや小物入れにも使えます

実際の飛行機の窓から作った垂直尾翼の模型。飛行機ファンならぜひとも欲しいアイテムです

ぬいぐるみなども売っており、よい記念やお土産になりそう

キーホルダーは、デザイン性の高いものはもちろん、暗いところで光を反射するリフレクター素材のキーホルダーといった実用性を備えたものも用意
【スタッフインタビュー】整備現場を案内する立場から見た、このツアーの魅力
今回取材に同行して案内してくださった市川さんにインタビューを行いました。
市川さんはアテンド歴1年半。もともとグランドスタッフとして働いていた経験があり、その経験を活かせる仕事だと話します。「お客様ととても近い距離で接することができるのが、この仕事の魅力です。喜んでいる表情を直接見られるのがうれしいですね。『さすがANAですね』『整備をここまで見せてくれるんですね』という声をいただくこともあります」
子ども連れで参加する際のポイントは?
「格納庫内では走らないこと、飛行機や部品、工具に触れないことをお願いしています。実際に整備作業が行われている現場なので、安全第一です。ただ、その“本物の空気”を感じられるのがこのツアーの魅力でもあります」
どんな年代の子どもにおすすめですか?
「小学生以上であれば年齢は問いません。将来、航空業界で働きたい、整備士になりたいと考えているお子さんにはとくにおすすめです」。低学年の子どもは、まず飛行機の大きさや迫力に驚くことが多いそう。一方、高学年になると質問の内容も変わってくるとか。
「例えば『翼の中には何が入っていると思う?』と聞くと、低学年のお子さんは『水』と答えることもあります。でも高学年になると『燃料』と正解を答えたり、燃料の種類まで話が広がることもあります」
子どもが特に興味を持つ見どころは?
「やはり飛行機に近づけることですね。とくにエンジンを正面から見ると、その大きさに驚かれます」
親子で楽しむコツはありますか?
「質問はいつでも歓迎です。事前に親子で『どんなことを聞いてみたいか?』を考えていただけると、より楽しめると思います」
整備の仕事で大切にしていることは?
「整備では指差呼称を行い、節目ごとに確認をしています。作業でのミスを防ぐためです。ひとつでも部品が不足していれば飛行機は飛ばせません」
予約のコツは?
「見学希望日の30日前の9時30分から予約が開始されます。そのタイミングを狙うのがおすすめです」
【参加者インタビュー】実際に参加した親子の感想は?
実際にツアーを体験した親子2組にお話を伺いました。まずは小学校6年生の男の子とお父さんです。

お父さんは「息子が飛行機が好きなので、実際に整備の現場を見せてあげたいと思って参加しました」と話してくれました。男の子は、機体の種類や見た目がとくに好きなのだそうです。「いろんな機種を見るのが好きなんです」と教えてくれました。
実際にハンガー内で機体を見た感想を聞くと「写真で見るよりも、実物は迫力が全然違いました」と笑顔に。印象に残った機体については「ボーイング777がすごかった。大きくて、シュッとしていて、間近で見られたのがよかった」と話してくれました。
男の子は、整備の様子についても「細かすぎて、こんなのよく整備できるなと思いました。できるようになるまで相当時間がかかると思う」と真剣な表情。普段は“乗る側”として見ている飛行機ですが、支える側の仕事を知ったことで、新しい発見があったようです。
将来について明確な職業はまだ決めていないそうですが「整備もやってみたい」と興味を示していました。
お父さんも「部品の多さや作業の複雑さに驚きました。これだけの手間がかかっているから安全なんですね」と話します。親子で同じ場面を見て、同じように感動している様子が印象的でした。
続いて、小学3年生の男の子とお母さんにお話を伺いました。

こちらはお子さんの誕生日のプレゼントとして参加。お母さんは「もともと乗り物が好きで、最近は飛行機に夢中なんです。将来の夢がパイロットなので、誕生日に何か特別な体験をさせてあげたいと思って予約しました」と話してくれました。
男の子は少し照れながらも「飛行機がいっぱいあって楽しかった」とにっこり。とくに印象に残ったのはやはりボーイング777。「一番大きいやつがすごかった!」と笑顔で答えてくれました。飛行機に対する気持ちが変わったか聞くと「(知っていたものより)もっといろんな飛行機があるんだなと思った」と一言。実物を見たことで、図鑑や写真だけでは分からない発見があったようです。
お母さんも「こんなに間近で見られるとは思いませんでした。迫力があって、ついてきてよかったです」と話します。将来の夢に向かうきっかけになるような、特別な誕生日になっていました。
取材を終えて
工場見学や職業体験は、現在でもかなりの数がありますが、見学用に用意されたコースではなく、実際に働いている現場で飛行機を間近で見られるというのは、想像以上にワクワクしました。体験ツアー内では落雷したとき電気を逃がす機構が備わっていることや、翼の中に燃料が入っていることなど、実物を見ながら知らなかったことを解説してくれるのもよかったです。整備士さんの仕事についても自然と興味を持つようになっているのもいいですね。もちろん、飛行機が間近で見られるだけでも子どもは感動すると思います。飛行機に興味を持ったら、ぜひ参加してみてください。
この記事を読んでいる人は「好奇心」「想像力」に関するこんな記事も読んでいます
・小学生がお菓子メーカーの研究員をお仕事体験! あめりか芋のスイーツづくりで味覚評価に挑戦
・「SDGsってなに?」が解消! 子どもと遊んで「できること」を考えるカードゲーム
・「好き」が未来をつくる!「スキシャリスト」という生き方
・岸壁幼魚採集家・鈴木香里武さんが語る「好きなことに夢中になっている子どもに本当にかけるべき言葉」とは?
・自ら学び続ける子どもになる! 社会を生き抜く「非認知能力」の育て方
・【未来へいこーよ】が育むココロのスキル(非認知能力)について







