日本トップクラスの研究所である理化学研究所 横浜キャンパスにて、通常は入れない研究施設を見ながら質問会や科学体験などが行えるイベント「かながわサイエンスサマー 理化学研究所特別プログラム」が、横浜キャンパスの一般公開日に開催されました。磁場を利用した分析装置「NMR」装置の研究者、柳澤吉紀さんを講師に迎えて、子どもたちの好奇心や想像力を大きく刺激したイベントの模様をレポートします。
※なお「超電導」と「超伝導」はどちらもsuperconductivityの訳語であり、記事では表記を超電導に統一しています。
「かながわサイエンスサマー」のスタンプラリー完走者が抽選で体験できるプログラム
今回の特別プログラムは、2024年の夏開催される神奈川県の子ども向け科学館イベントを取りまとめた「かながわサイエンスサマー」と連動して行われた、デジタルスタンプラリーの完走者が抽選で選ばれて参加できるものです。
当日は神奈川県にある「三菱みなとみらい技術館」と「はまぎん こども宇宙科学館」「Mulabo!(ムラーボ!)」の3施設を巡って応募してきた科学好きの親子約50名が参加しました。

NMR装置開発のパイオニア・柳澤氏が講師を担当
特別プログラムの講師を担当するのは、理化学研究所生命機能科学研究センター 次世代マグネット開発連携ユニット ユニットリーダーを務める柳澤吉紀氏。
柳澤吉紀氏
分子構造を原子レベルで解析する強力な分析手法であるNMR(核磁気共鳴)装置の開発において世界をリードする研究者です。世界一コンパクトな超1GHzのNMR装置を開発し、従来機と比べて約10分の1の重量にしたほか、液体ヘリウムの継ぎ足しが不要な設計を実現。さらにビスマス系高温超伝導コイル技術を用いて、NMR装置の性能を飛躍的に向上させました。
特別プログラムでは座学と実演の両方に渡って、柳澤先生による解説が行われました。世界トップクラスの研究者である柳澤先生ですが、語り口はとても穏やかでユーモアもあり、参加者の小学生たちにもわかりやすい言葉をスライドを利用しながら説明していて、あっという間に参加者たちの心をつかんでいました。しかも、小学生向けに座学をするのは今回が初めてなのだとか!
磁石によって磁場ができているのを砂鉄で見せる場面では、後方にいる取材陣にも見せてくれるサービス精神も。
NMR装置と超電導のすごさがわかる3つの実験
NMR装置や磁場、超電導(エネルギー損失なしで電流が流せたり、磁気浮上などを引き起こす現象)についての座学が終わったあとは、実際にNMR装置がある施設へ移動。普段は一般の立ち入りができないところに入ることもあって、参加者の親子は緊張した様子でした。
施設内に入ると、内部は木でできているのに驚かされます。これは磁力を使った実験や研究が多く行われるため、鉄などの磁力の影響を受けるものを極力を置かないためだそう。

NMR装置から出ている磁場を「見る」実験
最初は「NMR装置に磁力を通す、薄い棒状のフィルムを近づけるとどうなるかという実験」です。NMR装置は撮影不可でしたが、柳澤先生の左手にNMR装置があります。
1歩、2歩と柳澤先生が装置に近づくたびにフィルムが次々と立ち上がっていき、全体として緩いカーブを描いているのが写真からでも見て取れます。NMR装置から発生している磁場が可視化されているのがよくわかる実験です。
磁場の中で時計はどう動く?
NMR装置の中から磁場が出ていることがわかったところで、「磁場に時計を近づけてみるとどうなるのか?」という実験を行いました。柳澤先生が持っている大きな時計を徐々に近づけていくと…秒針がピタリと止まり、参加者から驚きの声が上がっていました。
写真ではまったく伝わらないですが、見えない磁力のすごさがわかる実験でした
先生が持っていたクオーツ時計は、針を動かすステップモーターという部品が磁気の影響を受け、正常な回転ができなくなって止まることがあります。
超電導で浮き上がる物体を観察しよう!
最後は超電導の特徴である「物質が浮き上がる」ことを体感できる実験です。-196℃まで冷やされると超電導状態になる物質「超伝導体」の上に永久磁石を置いて回すと、宙に浮いたままクルクルと回り続けます。この不思議な現象に子どもたちも思わずくぎ付け!

柳澤先生が永久磁石が入ったパーツを持ち上げると、磁力が及ぶところまで下の磁石も引っ張られるように持ち上がります。予想外の動きに参加者からも驚きの声が上がっていました。
実験のあとは再び講義を行った部屋に戻り、質疑応答の時間。実験を通してNMR装置や超電導、科学への興味関心がさらに深まったようで、参加者から次々に質問が出てきて、イベントは大好評のうちに幕を閉じました。
取材を終えて
世界でも有数の研究者に直に講義を受けたり、普段は入ることができない建物で特別な実験をするということで、子どもも大人も終始ワクワクしていたイベントでした。超電導やNMR装置については小学生ではまだ理解が難しい内容ではありますが、実際に超電導で永久磁石が浮いているのを見ると、この技術がどんなことに利用されているのかなど、好奇心が次々と沸いてくる体験になっていたと思います。「サイエンスかながわ」の企画からスタートした特別プログラムですが、このようなプログラムを体験することで、科学に興味を持つ子どもが増えていくことを期待しています(KAZ)
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