小学生と保護者が一緒に、生成AIを使って「50年後のカルビーポテトチップス」のパッケージをデザインするイベントがカルビー本社で開催されました。身近なお菓子を題材にしながら、子どもたちは未来の味を想像し、親子で相談し合いながらオリジナルのパッケージを作っていきます。生成AIに初めて触れる子もいるなか、どんな学びや気づきが生まれたのでしょうか。当日の様子をレポートします。
親子でつくる「未来の味」AIデザイン体験とは
今回のワークショップの正式名称は「子どもと一緒にタイムトラベル!生成AIでデザインする50年後のカルビーポテトチップス」。会場はカルビー本社(東京都千代田区)で、発売50周年を迎えるポテトチップスをテーマに、参加した親子が未来の味やパッケージの姿を自由に想像し、生成AIを活用して形にしていきました。

主催はアドビ株式会社とカルビー株式会社。使用ツールはAdobe Expressです。色やフォント、写真、イラストを組み合わせながら、「未来にこんなフレーバーがあったら?」というアイデアをパッケージとして完成させる流れで進行しました。
事前アンケートでは、生成AIの利用経験は保護者が約7割に対し、子どもは約3割という結果に。家庭や学校でもAIが少しずつ浸透している一方で、実際に触る経験はまだ限られており、「使ってみることで理解が深まる」という点も今回の取り組みの狙いとなっていました。
講師を務めたのは、イラストレーターでキャラクターデザイナーの北沢直樹さん。「ONE PIECE」「攻殻機動隊S.A.C」のデフォルメワークや、ゲーム「真型メダロット」キャラクター制作など幅広い作品を手がけ、Adobe Community Evangelist 2025としても活動しています。

黄色い帽子がトレードマークの北沢直樹さん。「なおっきーせんせい」と呼ばれていました。
初めてのAIパッケージ制作もAdobe Expressでスムーズに進む
午前中は、まず「練習編」からスタートしました。子どもたちは実際の「カルビーポテトチップス うすしお味」のパッケージをお手本に、Adobe Expressの基本操作を学びます。

練習用のテンプレートを開くと、パッケージの色や「うすしお味」の文字が描かれていないパッケージが出てきます。そこから「背景の色をオレンジに変える」「商品名の文字を入れる」「フォントを変える」「影をつける」ことを北沢さんの説明を受けながら実際に行います。さらに、ストック画像からポテトチップスの写真を検索し、AIの「背景削除」機能で不要な部分を消して配置し直すなど、パッケージづくりに必要な操作を一通り体験しました。

来場者のテーブルにはポテトチップスも置かれていて、食べながらワークショップが進行していったのも「カルビーらしい」試みでした
練習の途中では、生成AIの画像機能も軽くお試ししました。サンプルで出したグリーンサラダの画像に「ブラシ」で塗って追加するエリアを作り、「じゃがいも」「恐竜」などのモチーフを追加したり、「光る恐竜」といった言葉から画像を生成したりしながら、「どんな言葉を入れるとイメージ通りの絵が出てくるか」を確かめていきます。

左側のメニューで生成したいもの(画像では照り焼きハンバーグ)を選択し、それを置きたい場所をブラシで塗ります。グリーンサラダの画像手前の色が変わっているところが、ブラシを塗ったところです

サラダの中に照り焼きハンバーグが出現。候補の中から選んだり、気に入らなければ再生成したりもできます
午後はいよいよ本番。「この50年になかった、新しい味のポテトチップス」と「50年後に流行している未来のパッケージ」をテーマに、親子でアイデアを出し合いながらデザインを作っていきました。

色やレイアウトを変えるのはもちろん、生成AIでイラストや写真を作り、背景を差し替えたり、具材やキャラクターを追加したり。気になる案をテンプレートのページごとに複製し、複数の候補を作ったうえで「これが一番」という一枚を選んで仕上げていきます。

ロングセラーの背景が未来の発想につながった
制作が本格的に始まる前には、カルビーポテトチップスの歴史やパッケージの変遷がスライドで紹介されました。

1975年の発売から「うすしお味」「コンソメパンチ」をはじめとしたロングセラーの誕生、47都道府県のご当地フレーバー、さらにはパッケージの色やデザインがどのように変化してきたのかがわかります。

半世紀の歩みを知ることで、子どもたちは「未来の味を想像する」ための視点を自然と広げていったように見えました。

50年の間に少しずつパッケージも変化。大人が子どもの頃に食べていた懐かしいパッケージを見つけて会場全体が沸きました
昼食を挟んだ休憩時間には、カルビー株式会社の野堀さんによるクイズ大会も実施。「ポテトチップスの食感はどれ?」や「今まで出したことがないフレーバーは?」などが四択問題で出され、正解するとカルビーのお菓子がもらえるとあって参加家族も真剣に取り組んでいました。さらに「野堀さんが好きなカルビーの製品」を当てるクイズでは、正解すると「カルビーポテトチップスコンソメパンチ SUPER BIG」がもらえるとあって、大きな盛り上がりを見せました。
「未来の味」が次々誕生!子どもたちの発表会
完成したパッケージは、最後に全員で発表し合いました。画面に作品を映しながら、一人ずつ「味のコンセプト」と「こだわったポイント」を紹介していきます。

たとえば、ある子は「夜のひととき味」と名付けたパッケージを発表しました。夜のリラックスタイムに食べることをイメージし、ローズマリーのパウダーを使った味に。

写真でマイクを向けられている女の子は、唐辛子のキャラクターを自分でデザインしました。「上の燃えている唐辛子の部分をがんばって作りました」と話し、パッケージ全体で辛さを表現していました。「フルーツチョコ味」を作った子は、フルーツとチョコレートを組み合わせたイラストを背景に大きく配置。「後ろにフルーツとチョコを置いたところをがんばりました」と、レイアウトの工夫を教えてくれました。

ユニークだったのは、「食べた枚数で味が変わる味」という発想です。「食べるたびに甘くなったり辛くなったり、いろんな味が楽しめるようにしました」と本人が紹介してくれました。
ほかにも、生成AIで「古代の魚」を再現した「古代の魚味」、深海で焼肉を食べる様子をイメージした「深海焼肉味」、火星で育てた野菜を使った「火星栽培のサラダ味」、さらには家が中華料理店をしていて、そのお店の味をヒントにした「スーパーラー油味」など、ユニークな視点から生まれた未来のポテトチップスが並びました。

どれも大人では思いつかないような柔軟な発想ばかりで、会場は驚きと笑顔に包まれていました。

初めてのAdobe Expressを体験した小学5年生「言葉選びがカギに」
イベント終了後、「五味」をテーマにデザインした小学5年生の女の子に話を聞きました。

Adobe Expressのようなアプリを使うのは今回が初めてだそうです。
「最初はちょっと難しかったんですけど、慣れてきたら分かるようになってきました」。生成AIで画像を作る工程には少し迷いながらも、背景変更や文字入れなどの作業はスムーズに進んだといいます。
制作中は言葉選びにも工夫がありました。「最初は単語だけで生成していったんですけど、思ったようにできなくて。お母さんに『文章にしたほうがイメージが出るかも』って教えてもらって、少しずつ言葉を足してイメージに近い画像ができました」。
学校でもデジタル制作の経験はあるものの、「今日のほうがいろいろできた」と満足そうに話してくれました。仕上がりについて尋ねると、「もう少し作りこめたかなとは思うけれど、良かったです」と、少し照れた笑顔で答えてくれました。
親が主導しすぎない設計で生まれた創造性
イベント終了後、アドビ株式会社の吉原さんにお話を伺いました。

アドビ株式会社 広報部 広報担当部長 吉原淳さん
今回のイベントは、アドビがカルビーに生成AIを活用したイベントの提案をしたことから生まれました。アドビはこれまでも、日本各地で「クリエイティビティを育む」ことをテーマに、子どもから個人事業主まで幅広い層へ向けたワークショップを行ってきました。
その取り組みの中で吉原さんが重視していたのが、「親子のコミュニケーションとしてのクリエイティブ」。家庭では一緒に過ごしていても、親子で同じ作品をつくる機会は意外と少ないものです。そこで、両方の世代にとって身近な題材として選ばれたのが、長く愛されてきたカルビーポテトチップスでした。
企画にあたり、とくに意識した点を吉原さんに聞くと、まず挙げられたのは「親が先に夢中になりすぎないこと」。吉原さんご自身もそうだったという経験も踏まえて「つい親が主導してしまう場面もありますが、子どものペースに合わせて対話しながら作ることを大切にしました」と語りました。また、分からない部分が出たときに置いていかれないよう、休憩を挟んだり、必要に応じて進行をゆるめたりするなど、安心して取り組める設計にも配慮したそうです。
完成作品への印象を尋ねると、「こちらの想定をはるかに超える作品がたくさんあり驚きました。小さい子ほど『そう来たか』という発想を見せてくれる」と語り、子どもたちの創造性の高さに目を見張っていました。
手描きからAIへ進化した創造体験
さらに、カルビー株式会社の野堀さんにもお話を伺いました。

カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 グループ広報部 部長 兼CX推進課 課長 野堀和哉さん
カルビーではこれまで、30人規模の「カルビーファンミーティング」を全国で継続して実施してきました。その中では、参加者にオリジナルパッケージを手描きでデザインしてもらう企画もあったそうです。
生成AIを使った今回のイベントの感想を野堀さんは次のように話してくれました。
「手描きの良さはありますが、どうしても描ける人とそうでない人の差が生まれてしまいます。でも今回は30〜40分の練習だけで、絵心があってもなくても驚くほど完成度の高いデザインが生まれました。これには大きな手ごたえを感じました」
開催前はPCやタブレットの操作を子どもができるかどうか心配していましたが、スムーズに制作に没頭する様子を見て「本当に今の子は、デジタルネイティブで、生成AIを含めて使いこなせる」ことを実感したそうです。
さらに今回は、ファンミーティングのようにコアなファンだけでなく、日常的に商品に触れている親子が参加したことも、カルビーにとっては挑戦であり、その中で新しい発見もありました。クイズコーナーで自分が好きなフレーバーを当ててもらう問題を出したのは「カルビーの商品を、とくにファンではない人がどれくらい知っているか?」を調べる目的があったのですが、多くの子がフレーバー名を次々と挙げ「これだけ多くの人が商品を知っていることに感激した」と語っています。
また野堀さんは、今回の経験が今後の商品開発にも活かせるのではないかと期待を寄せています。
「自治体と行ったご当地フレーバーなどの共創プロジェクトでは、これまで紙にアイデアを書き、デザイナーが持ち帰って整える流れでした。でもAdobe Expressならその場で共同制作ができ、仕上がりのレベルも一定に保てます。レスポンスが早くなれば、ビジネスのスピードも上げられるはずです」
Adobe Expressや生成AIの活用が、親子ワークショップだけでなく、新たなコラボレーションの手段としても可能性を広げていることが伝わってきました。
取材を終えて
今回、取材しながら自分でもパッケージ制作に挑戦しました。Adobe Expressを本格的に使うのは初めてでしたが、講師の北沢さんやスタッフの方のサポートが丁寧で、操作は想像以上にスムーズ。それでも、短い時間で次々と形にしていく子どもたちの発想力には驚かされましたし、実際子どもたちのほうが優れたデザインを作っていました(笑)。生成AIは「楽をするツール」と思われがちですが、実際は「頭の中のイメージをどう言葉にするか」が鍵になります。Adobe Expressnに搭載されている生成AIはAdobe Stockやオープンライセンスの素材などから学習しているので安全に利用でき、著作権面でも安心。表現そのものに集中できる環境が整っていると感じました。身近なお菓子を題材に未来の味を考える今回のワークショップは、「AIをどう使いこなすか」を体験を通して学べる場でした。家庭でも学校でも、親子で触れてみるきっかけになるといいですね(KAZ)
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