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「自由すぎる学校」アメージングカレッジ!時間割がなく子どもの「やりたい!」が授業に&初フェスの情報も

子どもの自己肯定感や思いやり、最後までやりぬく力が養われる、教育の実践研究機関「amazing college(アメージング カレッジ。以下、アメカレ)」が2023年4月に開校しました。子どもたちが自発的に挑戦したいことを決めて実践していき、大人はそれを見守りながら新しい教育の形を模索していくオルタナティブ・スクールで、実際に行われている授業や、子どもたちの様子などを取材しました。さらに、アメカレの普段の様子も見られるアート&オーガニックフェスの情報も!

アメカレとは「子どもがつくる・大人を育てる・未来をそうぞうする」を教育理念に持つ実践研究機関

アメカレは埼玉県東松山市にある教育の実践研究機関で、学校としての法的な位置づけはオルタナティブ・スクール(無認可校)にあたります。ここでは、「子どもがつくる・大人を育てる・未来をそうぞう(想像・創造)する」を教育理念に掲げています。子どもたち1人ひとりの「やりたい!」「ありたい!」を実現していく姿を通して大人が「学び・育つ」ことで、変化の激しい社会でも、よりよい未来のために自ら行動し、みんなとあきらめずに想像し、創造する子どもを育てます。

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amazing college 公式パンフレットより引用

実際にどんな授業が行われているの?

「amazing college」という名前自体、「学校という名前を変えたら、自由すぎる学校になる」という子どもの意見が反映されて命名されています。そんな「子どもファースト」で未来の教育の姿を模索しているアメカレでは、どんな授業が行われているのかを知るため、5月のある日に取材を行いました。校舎は元結婚式場を再利用しているため、外見からして普通の学校とは異なります。

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amazing collegeは冠婚葬祭事業を行う「アルファクラブ武蔵野株式会社」が出資する「一般財団法人まごころ財団」が運営しています。アルファクラブ武蔵野が所有する元結婚式場が校舎になっています。

子どもたちが自分で考えながら、見守り役の大人「ヘルプマン」と進めていく

アメカレには、数学や国語などの科目はなく、その日に行うことを「ヘルプマンアワー」や「ハッピーアワー」「フェスアワー」などで分けています。「ヘルプマン」とは大人たちの呼び名で、学校名と同じく子どもたちの意見で決まりました。取材に訪れたとき、アメカレでは「ヘルプマンアワー」の真っ最中。子どもたちは動画閲覧中に突如映像をジャックした「ミスターX」のミッションに挑戦するところでした…が何やら様子が違います。

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元結婚式場の豪華で広い廊下に大きなホワイトボードが置かれています。ここでミスターXからのミッションを遂行します。年長者の子どもが撮影をしていますが、これは6/18に行うフェスで使うためのもの。同時に大人のヘルプマンも授業の様子を動画で撮影します。

ミスターXが出したミッションは「まず年齢がバラバラの3つのチームに分かれろ」です。ところが同学年の仲良し女の子3人が「同じチームがいい」と主張します。年長者の子どもが「ミスターXのミッションなんだから分けるべき」と伝えたり、年齢を分けることに意図があることを感じて「小さい子ばかりだったら、ミッションの内容によってはできないかも」と言って説得しますが、3人は頑として聞かない様子。こういうトラブルがあったとき、学校では先生が指示したりしますが、ヘルプマンは双方の意見を聞きながら見守ります。

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アメカレでは、教科書作成に携わった教育者を含め、各分野の専門家が集まってカリキュラムを編成してます。校長を務める岩﨑千佳さんは、アメカレを創立する前は国立大阪教育大学付属平野小学校で副校長を務め、新教科「未来そうぞう学科」を設定してオリジナリティーあふれる授業を展開してきた人です。岩崎さんによると「入学から夏までは『一人ひとりの心から湧き上がる声から、本当に必要なものを紡ぎ出していく学び場づくり』を研究の柱にしています」とのこと。

「入学したての4月は、それぞれが自分のしたいことを言って実現させていく『カオス』の時期で、5月からは『個と個の関係性からチームで協力することを学ぶ』タームに入ったところです」と説明があり、それぞれが自分たちの主張をしていくなかで、どうやってその場を収めてミッションを進めていくか、大人たちはじっと見守り、ときどき疑問形で提案を出すものの結論は子どもたちにまかせます。

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20分ほど待ってみましたが結論が出ず、ミスターXが「学年は同じでもかまわない」というLINEを送ってきて(意外に優しい)、ようやく次のミッションに。与えられたのは、3つのチームでホワイトボードに「顔」を描くミッションです。チームごとに順番を決め、くじを引いて出たパーツを描いていくので、自分が想像したものとは違った顔が生み出されていきます。

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チームメイトがパーツを描くたびに「うまい!」や「かわいい!」、「何それ~?」と言った声があがって、とても盛り上がりました

自分一人だとある程度思ったとおりに描けますが、それぞれが違う場所を担当して描くと思っていたものと違うものができあがります。それをおもしろがる子、みんなにほめられてうれしくなっている子、とにかく楽しくしようとする子、思っていたとおりにいかなくて歯がゆい思いをする子、ミスターXが誰なのかを独自の推理で明らかにしようとする子など、子どもによっていろいろな感情や想いがありました。

最後のお題は童話に出てきたキャラクター「シャイニー」のお友だちを描いて、名前や性格も決めるというもの。チームによってはお互いにイメージを伝え合って「こういうキャラクターにしよう」と決めるところも出てきて、短い時間の中でも自分の意見を言う力やコラボレーション力などが育まれていることを感じられた場面でした。

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写真左上にいるのがシャイニー。「シャイニーの友だち」という設定なので、髪型や全体的には似ていますが、頭のところに青いハートが描かれていたりと独自の要素を取り入れています

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シャイニーと一文字違いの「シャイーニー」。羽がついて飛べるようになっています。足元の青色は海で、その上を飛んでいるイメージなのだそう

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描いていくうちに、子どものひとり「こうせい」くんに似てきてしまった「パガニー」。「顔にいたずら描きをするのが好き」なところなど性格の要素も似ています。「人と一緒にいる時間が好き」というやさしい設定も追加されている点にも注目

「ハッピーアワー」では子どもが自分のやることを決める

「ヘルプマンアワー」のあとは「ハッピーアワー」。それぞれが事前に書いていた「amazing collegeでやりたいこと」を実践する時間です。この日は畑仕事やオムライスづくり、トイレ掃除などが予定されているとのこと。

具体的にどんなことをやるかは「やりたいことコースター」が元になっているようでした。ここには、子どもたちやヘルプマンがやりたいことが描いてあるコースターが貼ってあります。自分の希望を書くのはもちろん、アメカレにいるほかの人がどんなことをやりたいのかを知るのも子どもたちのワクワクを引き出します。もともと結婚式場だったので、飲み物の下に敷くコースターがたくさん残されていて、それを再活用しています

やりたいことコースター

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アメカレの裏側には空き地があり、子どもたちはそこを畑として整備したり、側溝をきれいにして遊べるようにしたりしていました。鎌の使い方はヘルプマンに教わったものの、草刈りや開墾などはすべて子どもが担当。自分で「やりたい!」と言って始めたことなので、モチベーションがずっと高いままでいるそうです。

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側溝の中で見つけた「どじょう」を飼うために、空き地の中に小さな池を作ってみたところ、週明けになっても池に水が残っていて子どもとヘルプマンが大喜び! どじょうも無事に泳いでいました。水が流れて行かないように、泥を使って周囲を固めたのも子どもたちのアイデアです。

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畑ではサニーレタスなどの野菜を栽培しています。なんと収穫も子どもが行っているとのことで、畑にやってきた女の子「ふっきー」にサニーレタスの収穫をお願いすると「まんなかにサニーレタスの赤ちゃんがいるから、それをとらないように周りの葉っぱをとります」と採り方を教えてくれました。

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収穫したサニーレタスはお昼ご飯のサラダになります。ドレッシングも手作りなのだとか!

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校舎内に戻るとオムライスづくりの真っ最中。アメカレでは給食はなく、それぞれお弁当を持ってきたり、みんなで作ったりします。ふわとろなオムライスをどう作るかをレクチャー中です。

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うれしいことに最初に作ったオムライスをいただきました。ケチャップの顔は「泣いている顔」と「笑っている顔」から選べます(笑)。チキンライスをやさしく包んだタマゴは、バターの香りがほんのりしてチキンライスやケチャップと相性抜群。チキンライスの味もしっかりしていて、とても美味しかったです。

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庭で遊んでいた子どもたちから「バー」に招待してもらいました。結婚式場のバーがそのまま残っていて、そこを遊び場にしているようです。普通の学校にはないものがたくさんあって、大きな秘密基地にいるみたいでした。

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バーの下にある張り紙に書かれたメニューが味わい深いです。お金がなくてもゆるしてくれるそう。

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照明の関係で色がついているように見えますが、普通のお水です。写真の女の子の手には庭でつかまえたダンゴムシが握られています。バーにあるコップでダンゴムシを飼おうと思ったそうです。

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放課後はヘルプマンが動画で振り返り、学びを得る

「ヘルプマンアワー」の時間は、ヘルプマンがカメラを持って授業の様子を動画で記録しています。これは新しい教育の実践研究機関として記録をするだけでなく、その日の放課後にヘルプマンが録画した映像を見て、あらためて子どもがどんなことにワクワクし、どんな場面で学びを得たのかを振り返るためです。

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動画に撮っておくことで、その場では見逃してしまった表情なども見ることができますし、保護者がアメカレでの子どもの様子を知ることにもつながります。こうして毎日の授業を振り返りながら「次にどうするか?」を考えていました。

校長の岩崎さんによると、4月は時間割もやることも決めないでスタートしてみたら徐々にルールができてきて「ああ、学校ってこういうふうにいろいろなことが決まってできあがったのか」と実感したそうです。でも、ルールを決めきってしまうと「それは普通の学校になってしますし、私たちは普通の学校を作りたかったわけではない」と思い直し、たとえば時間割ができそうになったらサイコロを振って決めたり、授業の時間を抽選で決めるなど「形ができそうになったら壊す」ことを心がけているとのこと。

子どもたちの「やりたい!」を大事にしながら、自己肯定感や仲間意識、しなやかな強さ、最後までやりぬく力を身につけて「自ら創造する実践力」をつけさせることが研究のねらいです。

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振り返りをしていくなかで見つけた「子どもたちの素敵なところ」や「成長したところ」をコースターの裏側に書いて貼っていったのが「みんなのキラリツリーボード」です。すごいと思ったこと、感謝したことがたくさん書いてあり、それを読んだ子どもたちが「自分たちもやりたい」と言い出し、みんなで書くようになると、乱暴な言葉づかいや相手に対してイヤな態度をとる回数が目に見えて減っていったことに岩﨑校長も驚いていました。

一緒に過ごす仲間の「キラリ」を探しているうちに、知らず知らずのうちに自分自身にも変化が訪れたということかもしれません。素敵だと思ったことをその場で伝えるだけでなく、こうして形に残っていることが自己肯定感につながっていると感じました。

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2023年6月18日(日)にamazing collegeでの生活の様子もわかるフェスを開催!

自分でやることを自由に決めていきながら、チームで協力していくことの大切さや楽しさを日々学んでいるアメカレの子どもたちが、フェスに詳しいヘルプマンと一緒に現在準備しているのがアート&オーガニックフェス「JOYLIFE!!」です。ボーネルンドやKEENなどの企業の協力を受けて、アメカレにかかわる大人と子どもが全力で作り上げていくフェスになっています。ここでは、現在公開されている体験の一部を紹介します。

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【「ボーネルンド」からだ遊びエリア】

屋内遊び場や玩具で人気の「ボーネルンド」の特設エリアを用意! エアトラックやサイバーホイールなど、人気の遊具で遊べます。

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【キッズフリーマーケット】

子どもがお店を出し、子どもが購入する「キッズフリーマーケット」も用意。自分で商品の魅力を伝えて販売することや、売上から出た利益でお買い物をするなど、金銭感覚を養う経験にもなります。

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【花育ツリーアート】

お店や結婚式場の装飾からワークショップまで手掛ける大人気のフラワーアーティスト「dodo tokyo」が、光と花で巨大なアートを生み出した「花育ツリーアート」。自然豊かなアメカレで、どんなアートが見られるのかお楽しみに!

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【カラペハリエ】

白い紙に色や模様を自由につけた「カラリエーションペーパー(カラペ)」を使った貼り絵のワークショップです。自分が作ったカラペが誰かの貼り絵に使われたり、誰かが作った貼り絵を作品にすることで「彩(いろ)送り」の連鎖が起こる体験です。

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アメカレの大人と子どもが本気で取り組むフェス!

そのほかにも大人気フットウェアブランドの「KEEN」がサポートする農業体験ワークショップや、女性大工さんによる「木工ワークショップ」、行列ができる占い師さんによる「キッズ占い」、東松山周辺の新鮮野菜がかえる「オーガニックマルシェ」やキッチンカー、地ビールの「COEDOビール」も出店。フィナーレは参加者全員で夜空に光るバルーンを飛ばす「ライトニングバルーン」を実施します。

さらに、今回紹介したように「アメカレがいったいどんなところなのか」を体験できるコーナーも用意。ワークショップなど一部の体験は有料になりますが、入場無料なので気軽にのぞけるのも魅力。

校長先生の岩﨑さんは「最初は大人のスタッフだけでフェスをやる予定でしたが、アメカレを一番よく知っているのは子どもたちなので、一緒にやることにしました。やるからには大人も子どもも本気で最高のフェスにしようと思っています」と意気込みを語ってくれました。打ち合わせに使った黒板を見るだけでも、その本気度合が伝わってきます。日々成長を続けているアメカレの大人と子どもが挑戦したお祭り、ぜひ家族で訪れて一日楽しんでください。

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amazing college 公式サイト
「JOYLIFE!! Art & Organic Festival」イベント情報(いこーよ)

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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