「おままごと」や「ヒーローごっこ」など、子どもたちが大好きな「ごっこ遊び」。実は、ごっこ遊びはコミュニケーション能力や言語力が育まれるそう。そこで、ごっこ遊びのメリットと親がいっしょに遊ぶときの注意点を専門家に聞きました。
ごっこ遊びは子どもが他人との関わりを学ぶ場
「ごっこ遊びは、それまで人形やおもちゃを使って1人で遊んでいた子どもが、人との関わりを学ぶ大切な遊びの一つです。」
こう話すのは、谷町こどもセンター(大阪市)で所長を務める、臨床心理士の日下紀子さん。1人ではなく、お友達と一緒にそれぞれの役割を演じることが、社会性の基礎を育てると言います。
「例えば、お店屋さんごっこでの『どうぞ』『ありがとう』というやりとりも立派なコミュニケーション。ヒーローごっこで誰かを助けたり、逆に助けられたりといったやりとりでは、思いやりも育まれます。さらに、お友達とイメージを共有して遊ぶことで、団結して何かをする楽しさも覚えるのです。」
コミュニケーションの楽しさを覚えることが、社会性の構築につながっていくのだそうです。
想像力や観察力、表現力の向上も
さらに、想像力や観察力が豊かになるのも、ごっこ遊びの特徴だと日下さんは話します。
「何かになりきるためには、まずは観察力が必要。さらに、自分の中のイメージを人に伝えるには表現力も必要です。どう表現すればうまく伝わるのか想像しながら役を演じるので、そうした力も育まれていくのです。」
想像力が豊かになれば、「ああしてみよう」「こうしてみよう」と、いつものおもちゃの新しい遊び方だって発見できるかも。子どもたちの遊びの世界がぐんと広がりそうですね!
子ども同士のやり取りで言葉もぐんぐん育つ
そうして想像力が豊かになってくると、そこから生まれるひらめきやいろいろな感情を「言葉にして表現したい!」という思いが湧いてくるのだそう。その思いが言語力の向上にもつながると日下さんは言います。
「空想をめぐらせて、いろんなことを想像したり感じたりすることは、子どもの心を豊かにします。こうした豊かな心が言葉の種を増やし、芽吹かせていくのです。」
ほかにも、一緒に遊んでいるお友達の言葉を取り入れたり、言葉の音を気に入って何度も口にしているうちに、言葉がどんどん育つのだとか。
「心豊かに遊ぶためには役になりきって楽しく遊ぶことが一番。我が子がどんな役が好きなのかを知って、楽しく遊べるようにサポートしてあげてほしいですね。」
「どうして戦ってるの?」子どもの想像力が膨らむ質問を
では、ごっこ遊びをもっと楽しめるように、親ができるサポートにはどんなことがあるのでしょうか?
「子どもの想像力が膨らむような声かけをしてあげると良いと思います。」
例えばヒーローごっこなら、
「どうして戦ってるの?」
「誰を守ってくれているの?」
「どこから来たの?」
「その武器は誰でも使えるの?」
など、少し考えるような内容の質問をしてあげると良いそう。そうすると、子どもが自分でストーリーや設定を考え、より想像力が豊かになっていきます。
「展開に詰まったときなども、こうした質問をする良いタイミング。想像を広げるきっかけを作ってあげてくださいね。」
ごっこ遊びの展開を遮らないで
では逆に、親が関わるときに注意したほうが良いことは?
「子ども自身の発想を促すためにも、ごっこ遊びがどう展開していくのか見守ってあげてほしいですね。『そんなのおかしいよ』などと展開を遮ると、自由な表現を妨げてしまいます。」
あまり口を挟まず、見守るほうが良いとのこと。ただし、お友達が嫌がることをしているときには、親のサポートが必要な場合も。
「例えばヒーローごっこでお友達を叩いてしまったときは『◯◯マンが痛いって言ってるよ』など、ごっこ遊びを通じて注意してあげれば、比較的すんなり聞いてくれると思います。ポイントは、叱るのではなく、教えてあげること。お友達が嫌がっていると気づくことで、自分でいきすぎ・やりすぎをコントロールできるようになっていきますよ。」
子どもの「理想の大人像」をちょっぴりのぞける
最後に「子どもたちが演じる役柄にも注目してほしい。」と日下さん。
「子どもたちは、憧れの大人を演じようとする傾向があります。ですから、演じる役柄で、どんな大人になりたがっているのか少し覗けるのです。」
ヒーローごっこなら、人を引っ張っていくリーダーなのか、リーダーをサポートする役柄なのか、我が子が「かっこいい」と思う理想像がわかるということ。おままごとで優しいママを演じていたら「ママみたいに優しい大人になりたい」という子どもからのメッセージかもしれません。
そんな、子どもの夢もちょっぴりのぞけるごっこ遊び、ぜひママもいっしょに楽しんでみてはいかがですか?
お話を聞いたのは…
日下 紀子さん
臨床心理士。教育学博士。精神科の診療所で臨床心理士として活躍後、親子のカウンセリングを行う「谷町こどもセンター」(大阪市)へ入所。現在は所長として、12名の臨床心理士と共に、日々親子の成長をサポートしている。
谷町こどもセンター
ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。
※2015年11月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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