今回は、小学1年生の息子さんについて悩むママからのご相談です。お子さんが何かにつけて反抗的な態度を取り、「お父さんがいい」「お母さんのせいだ」と言い返してくることに悩んでいるとのこと。子どもの気持ちの裏にある背景や、親としての関わり方について、専門家にアドバイスをいただきました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
青木康太朗(あおきこうたろう) 独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長
〈監修者プロフィール〉
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。
<相談内容>
小学1年生の男の子への対応で、困っていることがあります。
その子が何かをしてしまった際にしかると、決まって「お母さんが〇〇したからだ!」と私のせいにしてきます。そして、何かにつけて「お父さんがいい。お父さんと一緒に〇〇する!」と父親の方が良いと言い、私の言うことに耳を貸しません。なんでもかんでも怒る反応を私に返してきます。
先日お風呂に入っているときも、私が「お風呂を早く出ないとTVが観られなくなっちゃうからそろそろ出たら?」と言ったら、「今、おもちゃを片付けてるのに煽ってこないで! TVが観られないのはお母さんのせいだ!」と怒って返してきました。
いつも怒って返すことに、こちらはもう悲しいやらヘトヘトです。どう対応すれば宜しいのでしょうか?
小学1年生の「中間反抗期」を理解する
小学1年生の時期は、「中間反抗期」と呼ばれる時期にあたります。第一次反抗期(2~3歳頃)と第二次反抗期(思春期)の間に位置する、子どもの自立に向けた大切な成長段階です。
この時期は、小学校という新しい環境で、自分でやらなければならないこと、できることが増えてきます。そのため「自分でやりたい」という気持ちが強くなり、干渉されることを嫌がるようになります。子どもが自分の力で何かをやろうとしているときに、親が先に口や手を出すと「今やろうとしてたのに!」と感じてしまうのです。
こうした反応を単に「反抗的」と捉えず「自立に向かう姿」と理解することが大切です。子どもは親の管理から少しずつ離れ、自立への歩みを進めているのです。
反抗的な言葉は本心じゃない?
反抗的な態度や言葉は、子どもの本心とは限りません。反抗期に、口応えをしたり都合が悪いことを人のせいにしたりするのは、よくあることです。「お父さんの方がいい」という言葉も、感情的になってしまい、単に引き合いに出しているだけかもしれません。
とくに男の子は、夢中になると周りが見えにくく、集中しているときに指示されると強く反発することがあります。

また、学校で「いい子」でがんばっている子ほど、疲れが溜まり、家では感情を素直に出してしまうということも。家庭が安心できる場所だからこそ、ストレス発散や甘えの場になっているのでしょう。
対応のポイント:子どもの自立心を尊重する
では、お子さんのこうした言動にどのように対応すればよいのでしょうか。ポイントをいくつかご紹介します。
1. 子どもを一人の個人として尊重する
最近では「子どもを一人の個人として尊重する」ということが言われていて、とくに こども基本法が施行されてからは「子どもの権利」が重視されています。
日本の親子関係は比較的「ウェット」で、親が子どもの責任をすべて負うと考える傾向があります。しかし、その中でも子どもが自立していくことは大事なことです。親の言う通りにさせることが子育てではありません。子ども自身の意思やがんばりを認めて、尊重してあげることが大切です。
2. I(アイ)メッセージで伝える
伝え方としては、Youメッセージではなく、Iメッセージで伝えるとよいです。
「私はこう思う」というIメッセージは、その言葉をどう受け取るかは相手の判断に委ねられます。一方で「あなたはこうしなさい」というYouメッセージは、相手の行動を制限する言い方に聞こえてしまいます。
例えば、お風呂の場面では「早く出たら?」ではなく、「お母さんは時間が気になって声をかけちゃったよ」といった声かけがよいと思います。
また、子どもが反抗的な言葉を返してきても、その言葉自体には直接反応せず、肯定的に返すことも効果的です。「自分でおもちゃを片付けていたのね。お母さん驚いたよ。助かるわ」などと、子どもの行動の良い部分を認めると、子どもは自分の考えが認められたと感じます。
3. やろうとしていることは見守り、必要なサポートを見極める
子どもが自分でやろうとしていることは、たとえ非効率でも見守ってください。親から見ると「まだ難しいかも」と思うことでも、子ども自身がやろうとしているのなら、その気持ちを尊重します。
例えば、靴ひも。下手でも自分で結んで「できた!」と子どもが満足そうにしているなら、それでいいのです。すぐにほどけたとしても、「お母さん、結んで」と頼ってばかりいるより、自分でがんばる経験の方がずっと成長につながります。
ただし、できることと手助けが必要なことの見極めも大事です。子どもが困っていたり悩んでいる様子が見られたら、一緒にやってみたり、コツを教えたりなど適切なサポートをしてあげましょう。
お子さんの反抗は信頼の証
お母さまは日頃からお子さんをよく見て、とてもがんばっていらっしゃると感じます。子どもへの愛情、子育ての責任感が伝わってきます。
ご家庭の詳しい背景はわかりませんが、お母さまはお子さんの細かいところに気がつき声をかけることが多いのに対し、お父さまは比較的大らかに接することが多いのかもしれませんね。「お父さんの方がいい」と言われて傷つくこともあるでしょうが、家庭内では役割とバランスが大事です。
どちらの親からも細かく言われすぎると息が詰まってしまいます。かといって誰も何も言わなければ、子どもはわからないことが増えて困ってしまう。だから、お母さまはしっかりとご自身の役割を果たされていると感じます。
お子さんが反抗的な態度を見せるのは、お母さまに甘えて信頼しているからこそです。子どもの成長を見守りながら、ほんの少し伝え方を変えるだけで、よい親子関係が築けていくと思いますよ。
お話を伺って
「Iメッセージで伝える」という方法は、子育てだけでなく、パートナーや友人との関係でも実践していきたいコミュニケーション術だなと感じました。
私にも小2の息子がいますが、つい先回りして手や口を出してしまうことがあります。ときに反抗的な言葉に傷ついたり、イライラすることもありますが、今回のお話を思い出すと、少し気持ちが楽になりそうです。
子どもの反抗は「自立への一歩」。この視点を頭において、「この子もがんばってるんだな」という温かい気持ちで、日々の子育てを前向きに楽しんでいきたいですね。
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。
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