乳幼児のおもちゃを無料で修理する「おもちゃ病院」とは?

子どものお気に入りのおもちゃが壊れてしまって、困ったことはありませんか? ママパパでも直せない大事なおもちゃをなんと原則無料で修理してくれる「おもちゃ病院」というものがあるそうです。

子育てやお出かけの疑問を編集部が実際に体験・調査する「調べてみた企画」の第10回は、実際に「おもちゃ病院」を取材し、想いと裏側を紹介していきます!

「おもちゃ病院」は全国で開催されているイベント

おもちゃ病院は、ボランティアのおもちゃドクターが、児童館や市民センターなどさまざまな場所でイベント的に開催しているものです。おもちゃドクターによる全国的な団体「日本おもちゃ病院協会」によると、定期的に開催されているおもちゃ病院のイベントは全国で600カ所以上にのぼります(2018年11月現在)。

今回取材したのは、東京都新宿区にある「東京おもちゃ美術館」で毎月第1・第3土曜日に開催されているおもちゃ病院のイベント。ここは全国のおもちゃ病院の基幹病院ともいえる場所で、ほかのおもちゃ病院で直せなかったおもちゃが持ち込まれることもあるとのこと。この日も10人以上のおもちゃドクターが熱心におもちゃを修理していました。

そのなかで、今回は日本おもちゃ病院協会の会長・三浦康夫さんに話をうかがいました。

——おもちゃを無料で修理してくれるとのことですが?

三浦さん:はい。原則無料で修理しています。ただ、パーツの交換等が発生してしまったときには、部品代のみいただいてます。ここのおもちゃ病院では受付時に修理費用の上限を確認していますので、予想外に高くつくようなことはないので安心してください。
※編集部注:「東京おもちゃ美術館」のおもちゃ病院については美術館の入館料(中学生以上は800円、6カ月〜小学生は500円)が別途必要。

——どんなおもちゃも直してもらえるのでしょうか?

三浦さん:私としては、持ってくる方が「これはおもちゃです」と言うものならなんでも、という気持ちでいます(笑)。ただ、協会のルールとして、エアガン、ガスガン、電動ガン等や、浮き輪・浮き袋、AC100Vに直結するようなおもちゃ、法的に規制があるものは安全面への配慮からお断りしています。

また、アンティークなど骨董的・工芸的価値のあるものは価値を保証できないため、お引き受けしていません。協会としては「壊れる前と同じように遊べること」を目指して修理しますので、まったく元通りになるとは限らないからです。

欠けてしまったプラスチックの部分も金属の板に置き換えて修理してしまう(写真中央の部分)

——技術的に修理が難しいおもちゃはありますか?

三浦さん:電気回路が得意な人は多いのですが、コンピュータが壊れた原因だった場合は修理が難しいですね。人形なども、例えば服を作り直したりするのが意外と難しいんですね。ただ、得意な人を紹介することもできますので相談してください。

——おもちゃを持ち込む前に、電話で修理可能か確認したほうがよいでしょうか?

三浦さん:実際に現物を見ないと直せるか判断が難しいので、まずは持ってきていただければと思います。ただ、イベントの開催日時が急きょ変更になる場合もありますし、事前予約制のおもちゃ病院もありますので、そのあたりは確認をおすすめします。

——修理にかかる時間はどのくらいですか?

三浦さん:おもちゃの修理内容にもよりますが、長くても1時間くらいですね。すぐに直せない場合はお預かりして修理することもできます。ここのおもちゃ病院の場合、開催は土曜日ですが修理したおもちゃの受け取りは平日でも大丈夫です。
※編集部注:受け取りのみの場合は入館料は不要。総合受付で受け取れます。

——おもちゃを持ち込むときの注意点は?

三浦さん:どう動くのが正しいのかわからないといけないので、説明書があるといいですね。また、壊れてしまった部品のかけらがあったらお持ちください。

——自宅でおもちゃを大事に使うためのコツを教えてください。

三浦さん:おもちゃに電池を入れっぱなしにしていることが多いと思いますが、液漏れが発生して壊れることが多いので、遊ばないときは取り外すようにしてください。

それとおもちゃによっては充電池が使用不可なものがありますので注意してください。モーターは供給電圧が1.5ボルトでないと力強く回転しませんが、充電池は電圧が1.2ボルトと低いんです。

実際におもちゃの修理をお願いしてみた!

お話をうかがったところで、いよいよおもちゃを実際に修理もらうことに。今回は2つのおもちゃを用意しました。

その1:プラレールの車両

三浦さんも「持ち込まれることが多い」と語るプラレール。電池を入れても動きません。今回は、おもちゃドクター歴6年の高村国雄さんが修理してくれました。

あれよあれよと車体からモーターユニット(白い部分)を外してしまった高村さん。よくある症状とのことで、付着しているゴミを丁寧に除去してから電気を通すと、なんと普通に動き出しました! あっさり修理完了かと思ったら、モーターユニットを分解して中のモーターをクリーニングしてくれるとのこと。

これがモーターのカバーを開けたところ。整流子(写真のオレンジ部分のすぐ右側、軸の黒くなっている箇所)が真っ黒になっており、汚れと錆を落として、電気の通りが元通りにすることが必要になります。

カバーの裏側の汚れを掃除。

整流子の汚れと錆をやすりで磨いてくれました。

分解のために外したハンダを付け直してクリーニング完了!

写真だと全然わかりませんが、ギュインギュインと動くようになりました! 時間にして15分程度。かかった費用は0円!

もともとは機械メーカーで営業マンをされていたという高村さんは、ラジオでおもちゃ病院のことを知っておもちゃドクターに興味をもったとのこと。おもちゃドクターの魅力をうかがうと、「直ったときの達成感ですね」と答えてくれました。

その2:プラレールの大きな駅

大きなおもちゃも修理してもらえるのかと思って用意したプラレールの大きな駅。レバーとボタンの操作で流れるはずの音が出ません。こちらは三浦さんに直していただきました。

駅の裏側を開けてみると、「うわ、これはひどいね」と三浦さん。電池ボックスの端子部分が錆びて緑色に…。交換が必要ということでスペアのパーツを出してくるのかと思いきや、三浦さんが手にしたのはリン青銅という金属の板!

細長い形に切り出して、錆びた端子と交換するとのこと。

切り出した板を交換する端子と同じ形にテキパキと加工していく三浦さん。さらにネジ止めするための穴をドリルで開けます。

手前2つが自作した端子です。見事な出来栄え! このあと壊れていたヒューズも交換してくれました。

電源を入れてみると…見事に音が鳴るようになりました! と思ったら、「この電車を止める装置、ちょっと動きがおかしいな…」と三浦さん。完璧に直さないと気がすまない性分とのことで、熱心に調整を繰り返してくれました。

そして完璧に修理が完了! 端子の自作・交換など大手術となりましたが、それでも1時間で修理完了となりました。費用は交換したヒューズ代50円のみ!

こんなレトロなおもちゃも修理してくれます

「自分で直し方を考えて、部品を作って、見事修理できたときの達成感が最高なんです」という三浦さん。「ある意味、持ち込まれたおもちゃで遊ばせてもらっているようなものなんです。だから、絶対に直すという気持ちでやっています」との言葉どおり、協会に登録されているおもちゃ病院の修理完了率は9割以上に達するそうです。

動かなかったおもちゃが動いた瞬間は、大人でも思わず「おおっ!」と声が出てしまいます。子どもならなおさら驚くこと間違いありません。意外と身近で開催されていることも多いおもちゃ病院。「日本おもちゃ病院協会」のサイトに全国のおもちゃ病院一覧がありますので、ぜひ子どもと一緒に利用してみてください。

「東京おもちゃ美術館」も親子で楽しめるスポット!

今回、おもちゃ病院の取材で訪れた「東京おもちゃ美術館」は、国内外のさまざまなおもちゃの展示するスポット。見るだけでなく、温かみのある木製おもちゃを中心に、実際に遊ぶことができます。

0歳児でも遊べるものから世界のボードゲームまでそろい、幅広い年代が楽しめます。「おもちゃこうぼう」ではリサイクル素材を使ったおもちゃの手作り体験も。おもちゃを修理に出したあとは、修理完了まで美術館で楽しい時間を過ごせますよ。

ライター紹介
渡部 秀
茨城県某市から2時間かけて出社しているプチ出稼ぎ編集者。長男長女の子育てに右往左往する日々です。

※2018年11月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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