昨今、様々な体験をすることが子どもの成長を促すと言われています。それでは、なぜ体験活動が子どもの成長にいいのでしょうか。また、どのような体験がいいのでしょうか。私たち大人は、体験活動において子どもたちにどんな接し方をしたらいいのでしょうか。
子どもの発達を促す「体験活動」について理解を深めるために、独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長の青木康太朗先生に詳しくお話を伺いました。
この記事は、前回の「子どもに体験活動が必要な理由~子どもの年齢別に最適な体験内容とは~(第2回)」に続き、子どもにとって効果的な体験となるために、大人がどのように関わればいいのかについて聞いた第3回の記事です。
褒められることも叱られることの両方が子どもの心の成長には大事
未来:子どもが体験をしているときは、大人はどのように関わったらいいでしょうか。
青木先生:大人は子どもたちの体験の環境づくりという意味でとても重要な構成要素の一つです。体験で「これやって」「次にあれやって」と指示して終わりということではなく、体験をやっている過程で大人が子どもの悩みを聞いたり、褒めたり励ましたりすることがとても大事なのです。
悩みというのは長期的に関わらないと出てこないものです。一週間のキャンプなどに参加すると、子どもから悩みなどを言いやすくなるということがあります。その際も、子どもの悩みを解決することが大事なのではなく、聞いてくれる「相手がいる」ということが大事です。「ああそうか、それは大変だよね」「辛いよね」「どうしたらいいだろうね」と一緒にその思いに共感をしてあげたり、寄り添ってあげたりということが大切です。子どもそれぞれの家庭の事情などもあるので、第3者が悩みをすべて解決することは難しいかもしれません。でも、思いに寄り添うことはできます。

子どもががんばっている姿を見たら「君、すごいがんばっているね」と言ったり、ちょっとうまくいかないときも「こうやればうまくいくから、もう少しやってみて!」とコツを教えてあげたりという言葉かけによって、子どもは元気をもらったり勇気づけられたり、自信を持つことができます。大人が子どもの心の成長を促すような声かけ、働きかけというのがとても大事で、それが子どもの気づきに繋がるのです。
一方で、ただ褒めたり、いいねと言うだけではなく、叱ることも大事です。例えば、我々キャンプをしていると、子どもたちは間違ったりよくないことをしたりすることがあります。それを見て見ぬふりをすることが一番いけない。褒めることと同じように、叱ることもしないといけないんです。叱るというのは怒鳴ることではなく、間違っていることは正してあげるということです。
以前、大人になって自己肯定感が育まれている人は子どもの頃にどんな体験をしているのかということを調査したことがあります。調査項目として、子どもの頃に「どれだけ褒められたか」「どれだけ叱られたか」ということを聞き、これを4つのグループに分けて分析しました。
一つ目のグループは「褒められた経験も叱られた経験も両方が多かったグループ」、二つ目が「褒められた経験は多かったが叱られた経験は少なかったグループ」、三つ目が「褒められた経験は少なかったが、叱られた経験が多かったグループ」、四つ目が「褒められた経験も叱られた経験もどちらも少なかったグループ」です。
その結果、大人になってから自己肯定感が高かったのは、大人に「褒められた経験も叱られた経験も両方が多かったグループ」だったのです。調査する前は、「褒められた経験は多かったが叱られた経験は少なかったグループ」で自己肯定感が高い人が多いだろうと思っていました。でも、そもそも叱られるというのは間違ったことや迷惑をかけていることに、「それはよくないよ」「ちゃんとしないとだめだよ」と言われることです。子どもが悪気なくやっている場合は、言われないとその子はわからないわけで、言われてやめることで褒められる機会が増え、自己肯定感が高まるのではないかと解釈しています。

反対に、自己肯定感が最も低かったのが「褒められた経験も叱られた経験もどちらも少なかったグループ」だったということも注目すべき点です。褒めることも、叱ること、つまり大人がちゃんとした価値観の中で、子どもときちんと向き合い、「それは違うよ」と言ってあげることも大事なのです。
そして、一回で子どもが劇的に変わるわけではなく、積み重ねていくことが大事だと思います。
学校の学びと体験活動、その先の社会とを子ども達の中でつなげる大人が求められている
未来:以前、東北大学の瀧先生に自然体験について取材させていただいた際に、バーチャルとリアルの体験を行ったり来たりすることがとても重要なんですよとおっしゃっていました。(瀧先生のインタビュー記事「知的好奇心が高いと学力が上がる! 伸びる子どもの共通点とは?」)その時の例は、図鑑(バーチャル)と自然体験(リアル)だったのですが、学校で習ったこととリアルな体験活動というのも、まさにバーチャルとリアルを行ったり来たりしてるのと同じだなと思いました。

青木先生:よく「学校の勉強は何の役に立つんですか?」ということを言われるのはそこなんですよね。学校での勉強って本当に大事じゃないですか。でもその学校の学びと社会とが結びつけられてないから、「なぜ学校の勉強が役に立つのですか」という質問になるんです。
学んだ知識がそのまま社会に役立つわけではないんです。学んだ知識を社会に役立てていくためには、学んだものの見方や考え方を働かせて実社会で使いこなしていくことが必要なんです。それを伝えられる大人、学びと実社会を結び付けて説明できる大人がいるのが理想的ですね。
体験活動は、いろいろな大人の価値観に触れ、家族の絆を深める場
体験の場はいろいろな人たちと出会って交流する場でもあります。そこで出会った人たちに褒められたり怒られたり、同じくらいの年齢の子どもに「お前すごいな」、「お前センスあるぞ」と認められたりすると、「そうなんだ」と自分のよさに気づくということもあります。
いろいろな職業や価値観、生き方に触れて「こういう仕事があるんだ」とか、「こういう職人技があるんだ」などと感じることは、子ども達にとってとてもよい機会になります。
家族の絆を深める機会になることも体験のメリットです。例えば、親子でスポーツの教室などに参加することは、親が子どものよさを知るいい機会になります。スポーツをがんばっている子どもの姿を見て、「この子はこんなにがんばることができるんだ」と普段は見えていなかった子どものよさに気づいたり、子どもを褒めるよいきっかけになったりします。

今、子どもの居場所づくりが課題となっているのですが、体験活動は子どもの心の居場所にもなります。単純に物理的な居場所があればいいのではなく、そこにいる「人」がとても重要です。スタッフと交流するのが楽しい、いろいろな人たちが自分を受け入れてくれるのがうれしい、相談できる頼れる大人がいて安心できる、「あぁ、生きていてよかったな」と子どもが思えるような場所かどうかが大切です。
青木先生のお話を伺って
体験の中で褒めるだけでなく、叱ることも大切というお話が印象的でした。また、子どもが持っている知識とまさに今やっている体験の内容とを結びつけてあげるとより体験の意義が高まるというお話に、大人の理解力や寄り添い力がとても重要だとも思いました。
知識と実践が結びつくのはなかなか難しいことですが、それが結びついたときの感動が、時に大人にとっても更なる好奇心につながっていくのだろうと思います。
青木康太朗(あおきこうたろう) 独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長
<監修者プロフィール>
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。
この記事を読んでいる人は「自立心」に関するこんな記事も読んでいます
・子どもに体験活動が必要な理由~「なぜだろう?」と思う感性の大切さ~(第1回)
・子どもに体験活動が必要な理由~子どもの年齢別に最適な体験内容とは~(第2回)
・子どもの生きる力が育つ「原体験」とは? 学び&体験場所も紹介
・子どもの好奇心&自己肯定感が育つ! 自然体験が親子に最適な理由
・正解のない課題と向き合い「生き抜く力」を育む! 子どもが社長の会社「ジュニアビレッジビジネスプログラム」の人生を変える体験とは?
・【未来へいこーよ】が育むココロのスキル(非認知能力)について







