和光小学校 生徒作品

和光小学校の「子どもが主役」な学びとは? 夢中になれる授業の軌跡をたどる展示会レポート&教師インタビュー

東京都世田谷区の和光小学校で、2025年2月28日(金)~3月2日(日)の間「美術と技術の作品展」が開催されました。和光幼稚園から小学校までの9年間で子どもたちが制作した作品が一堂に集まり、創造力あふれる成長の軌跡を展示。自由な発想を大切にする和光の教育が、どのように子どもたちの表現を育んでいるのか。工作技術科を担当する植林先生のインタビューとともに、和光小学校ならではの学びの魅力に迫ります。

「子どもが主役」の私立小学校

和光小学校は「子どもが主役」という教育方針のもと、子ども自身が考え、判断し、選択する力を育むことを大切にしています。知識の詰め込みではなく、知力・感情・身体をバランスよく発達させ、真の生きる力を育てる教育を実践しているのが特徴です。「美術と技術の作品展」は和光幼稚園から小学校までの9年間にわたる子どもたちの成長を、美術と技術の作品を通して感じる場です。展示会は毎年一般公開も行われています。

和光小学校

 

【小学校低学年】日常の情景や物語から想像力をふくらませた絵を展示

子どもが絵を描くことは、「感じとる力」や「ものを見る力」、人との共感を育む機会になります。子どもの絵には生活や感情が込められ、今を生きる姿が表れています。記事では小学校低学年から高学年までの作品を抜粋して紹介します。

和光小学校 生徒作品

まずは1年生の作品。一番左にあるのは「カタツムリの散歩」です。自分や家族、友だちがカタツムリに変身!どんな散歩コースがいいかを考えながら表現しています。中央にあるのは「うちあげ花火」。夜空を彩る花火のさまざまな色や動き、音などを表現しています。

一番右の「せかいに1ぴきのわたしのさかな」は自分だけのオリジナルのさかなを紙版画にしたもの。 手を真っ黒にしながら楽しんで作ったそうです。

和光小学校 生徒作品

小学校1年生から3年生までは物語を読んで、その情景を絵にしています。1年生はウクライナ民話の「てぶくろ」です。寒い冬の森を舞台に、落とされた手袋に次々と動物たちが集まり住み着く、ユーモラスで温かみのあるお話です。生徒たちは動物たちが手袋の中でどのように暮らすのかを想像しながら描いています。

和光小学校 生徒作品

2年生の作品のひとつ「プールの時間」。友だちとプールで過ごしたときの気持ちを思い出して描いています。上から見降ろしたような構図や、友だちと手をつないで泳ぐなど、同じテーマでもさまざまな構成や情景になっています。

和光小学校 生徒作品

2年生は新美南吉による児童文学の短編作品「てぶくろを買いに」がテーマです。親子の愛情や人間との交流を描いた温かい物語で、多くの生徒が子ぎつねの目線になり、手袋を買いに町におりたところや母ぎつねと一緒にいるところなど、印象的な場面を選んで表現しています。

和光小学校 生徒作品

3年生は母鳥の帰りを待ち続けるむくどりの子と、それを見守る父鳥の姿を描いたせつない童話「むくどりの夢」をテーマに描きました。物語がテーマになっているときは、あえて挿絵などは見せずに絵を描いてもらうようにしています。そうすることで生徒の印象に残った場面が自然に表現されるようになります。

【小学校高学年】デザインや自画像、版画など多彩な表現方法を実践

小学校4年生からはデザイン性の高いものや、版画などのさまざまな手法を使った作品を作っています。

和光小学校 生徒作品

この作品は「傘の連続模様」をテーマに、左右対称のデザインやパターンを意識して制作。傘を上から見た形を基に、繰り返し模様や色の組み合わせを工夫し、オリジナルのデザインを描いています。中央から放射状に広がるパターンが傘の形を際立たせ、美しいリズムを生み出します。本物の傘に使えそうな美しいデザインやユニークな形など、個性が際立つテーマです。

和光小学校 生徒作品

小学4年生では、総合学習で多摩川について学ぶ機会があり、美術科では版画を通して表現しています。まずは原画を作るために、多摩川で採集した魚・ザリガニ・カメなどをスケッチ。さらに、虫や鳥、草花、石ころ、風や雲など自然界にあるすべてが一枚の絵をどのように作るかを考えながら、描き足しています。

和光小学校 生徒作品

展示会では原画(下書き)と原版も展示されていました。作り手の変遷が見えるのもおもしろいです。

和光小学校 生徒作品

5年生は色や形、線の組み合わせを版画という形で何パターンも作っています。リノリウム製のゴム版の表と裏に違う柄を彫り、原画の段階から二枚の絵を重ね合わせながら、どんな模様の変化があるのか考えながら描いているそうです。刷る段階に入ると、イメージしていた雰囲気とは違う新たな発見に楽しさがあるとのこと。

和光小学校 生徒作品

版同士を上下反対にして刷ったり、3枚重ね、4枚重ねにしていくと、同じ版を使っていても違う色合いになっていくのがわかります。

和光小学校 生徒作品

6年生は「自画像」を描くのが毎年恒例になっています。低学年の子が作品を見て「6年生になったら、自分もこれが描けるようになるのか!」と衝撃を受けたり、憧れたりするテーマです。授業ではカーテンを開けて教室の電気を消し、陽の光を使って描いていきます。濃さの違う鉛筆を使い分けて濃淡をつけたり、自分の顔に触れて骨格を感じたりしながら手探りでデッサンの仕方を変えていきます。

自画像を描くということは「自分を見つめていく」ということ。全体でみるとわからないパーツの細かい位置、特徴を1mm単位で修正していくことで完成していくそうです。

和光小学校 自画像を描いた生徒の感想

自画像を描いた感想が展示してあるのもユニークな試みでした。毎日見ている自分の顔を絵にするのは「簡単なようで難しかった」や「影で立体感を表現するのが難しい」など、生徒たちの正直な意見が書かれていることに好感が持てます。

3年生から編み物を制作!高学年になると木箱や茶わん、五寸釘ナイフも

編み物をはじめ、太鼓張りの木箱や茶わんなど、学年が上がるごとにさまざまな工作技術を学んでいきます。

和光小学校 生徒作品

3年生が「リリアン」という編み機を使って毛糸を筒状に編んだ作品です。生徒によって選ぶ糸や色が異なり、個性豊かな作品ができあがっています。

和光小学校 生徒作品

3年生ではクラフトテープを割いたものを使って、かごも作りました。縦と横のクラフトテープを組み合わせて作る過程は、じつは糸が縦糸と横糸の規則正しい関係で布(織物)になっていることと同じ。かごを作っていくことで、布がどうやってできているのかを自分の手で学ぶ機会になりました。

和光小学校 生徒作品

4年生が作った「木の車」は厚さ1cmほどの4枚の木の板を接着剤で貼り合わせて作ります。まず、自分でクルマのデザインを決めて外装や内装になるイスや窓の型紙を作り、電動のこぎりを使ってボディを身長に切り抜きます。

最後は全体をていねいにやすりがけをして終了。コメントでは「やすりがけが大変だったけど、楽しかった」という声が多く、仕上げまで行ったことで愛着が沸く作品になりました。
和光小学校 生徒作品

外側と運転席内で違うパーツを作っているのも凝っているところ。さらに自分のクルマがぴったり収まるケースも作っています。サイズを測り、どの辺が何cm必要かを算数のテストのように穴埋め式の問題として出している資料も展示。工作技術の授業ながら算数が役に立つなど、多系統の学びにつながりがあることに気づく授業になっているのもよかったです。

和光小学校 生徒作品

5年生は「太鼓貼り」という手法で、蓋がしっかり閉まる箱を制作。ミリ単位でのこぎりを引く正確さが求められる作品です。 塗装・研磨の仕上げや、箱のふたの模様づくりにもこだわっています。

和光小学校 生徒作品

6年生は「生活のなかの道具」をテーマに、バターナイフと高台があるお茶碗、五寸釘のナイフのカトラリーづくりをしています。バターナイフは銘木を選ぶところから始まり、切り出し小刀で刃先をできる限り薄く削りました。持ち手や刃の部分の長さが違う点に注目。これは、使う人のことを考えてそれぞれが使いやすい形をデザインしているためです。

高台があるお茶碗は、実際に食卓で使うことをイメージして作っています。弁柄(赤褐色の顔料。備前焼などで使われる)や呉須(鮮やかな青色が出る顔料。伊万里焼や有田焼で使われる)で模様を描き、模様が映えるよう釉薬を選んで焼き上げています。

五寸釘のナイフは七輪で熱して赤くなった釘を、1kg以上の金づちで平たく叩いていきます。その後専用の機械で成形をして研ぎ、ひもを巻いてナイフに。また、特別授業の「職人さんから学ぶ」で青梅市の漆器づくりの職人さんをお招きし、漆器づくりのお話をうかがったあと、木エろくろとカンナで作った木の小皿もありました

「夢中になれる学びの場」和光小学校・植林先生が語る子ども主体の教育

和光小学校は、子どもたちが主体となり、自らの興味や関心を深めることができる学びの場として知られています。本校で工作技術科を担当する植林先生に、学校の特徴や教育方針、そして子どもたちの成長についてお話を伺いました。自由な環境の中でどのように個性が育まれるのか、卒業生はどのように学校での思い出を振り返っているのか、和光小学校ならではの学びの魅力について語っていただきました。

和光小学校 植林先生

未来:和光小学校は「子どもが主役」を理念としていますね。それは創立当初(1933年)からの考え方なのでしょうか?

植林先生:そうですね。創立当初からずっとその方針でやっています。それが今の時代にも受け継がれているのはすごいことだなと思います。

未来:校内の雰囲気について、先生が感じていることを教えてください。どんな子どもたちが通っているのでしょうか?

植林先生:和光小学校の子どもたちは、とくに何か一つに秀でているというよりは「自分はこれが好きだからやりたい」といった主体性がある子が多いように感じます。例えば、週に2回、60分のロング昼休みがあるのですが、その時間の過ごし方が一人ひとり違います。図書室で本を読む子もいれば、音楽室で楽器を練習する子もいるし、技術室で何かを作る子もいます。グラウンドでサッカーをする子ももちろんいますし、そういった意味で、自分がやりたいことを自由にできる環境が整っていると思います。

また、卒業生の中には、大学生になってからも学校を訪れてくれる子もいて、その子に話を聞くと「とにかく夢中だった」と振り返っていました。何かを強制されるわけではなく、自分の好きなことに没頭できる環境があったことが、大人になった今でも心に残っているようです。

未来:普通の小学校では、課題として出されたものを作ることが多い印象ですが、和光小学校ではそれとは少し違うように感じます。

植林先生:そうですね。課題はありますが、それに縛られずに自由に試行錯誤する機会も大切にしています。ロング昼休みの時間に自分で電動工具を使って木に穴を開けてみたり、好きな作品を作ってみたりする子もいます。それが普通の小学校とは違うところかもしれません。

未来:安全管理の面ではどのように工夫されていますか?

植林先生:安全管理はとても重要です。僕が公立小学校にいた頃は、休み時間に自由に図工室を使うというのはなかなか難しい環境でした。でも、和光小学校では、技術室を使う際には担当の教員がいれば自由に使えるようになっています。もちろん、僕が不在のときは技術室は使えません。ただ、子どもたちのやりたいことを保証できるように、その時間はできるだけ会議などが入らないようにするなど、学校全体で配慮されています。

未来:和光小学校の卒業生には、俳優やアーティストの方や、そのお子さんも多いですよね。それは学校の教育方針が影響しているのでしょうか?

植林先生:直接的な関係は分かりませんが(俳優やアーティスト向けの)特別な授業をしているわけではないと思います。ただ、学校の中に芸術や表現活動が身近にある環境なので、それが子どもたちにとって特別なものではなく、自然なものとして根付いているのかもしれません。

また、和光小学校では、そうした職業に就いている人が身近にいることも影響しているかもしれません。例えば、友だちの親がアーティストやミュージシャンだと、子どもたちも「そういう職業があるんだ」と自然に意識できます。それが将来の選択肢の一つとして考えられるようになるのかもしれませんね。

それに、和光小学校の子どもたちは、どんな職業の親を持っているかにこだわらず、みんなを対等な存在として接しています。有名な職業の親を持つ子も、特別扱いされることなく、自然に友だちとして関わっています。そうした環境もまた、職業の多様性を当たり前のものとして受け入れる要因になっているのかもしれません。

未来:工作技術の授業について、子どもたちはどのように感じているのでしょうか?

植林先生:毎年、6年生には「3〜6年生の工作技術の授業を通してどう感じたか」を書いてもらっています。「将来、電動工具や紙やすりなどを使うことはないかもしれないけど、それでも小学校で学ぶ意味があると思う?」という問いに対して「こういう力がついたから意味がある」と答える子もいれば「ただ楽しかったから必要!」と答える子もいます(笑)。

でも、それが大事だと思っています。「楽しかった」の中に、知らず知らずのうちに学びが含まれているんですよね。例えばナイフを扱ったことで、切れ味とは何かがわかったり、切りやすい素材が学べたり、使いこなしてものを生み出せるようになったりするけど、それらはつくる活動に集中するなかで、気づかないうちに学んでいることです。

現代は、大人の日常の生活の場面からものづくりの時間が消えつつありますが、将来的に役に立つかどうかよりも、小学生のうちに夢中になれる経験ができることが重要なんじゃないかなと思います。

取材を終えて
低学年の作品にも個性が表れていますが、高学年になると版画や工芸など多様なジャンルに挑戦し、成長が感じられる展示でした。和光小学校の「ロング昼休み」は、好奇心や挑戦する力を育む貴重な機会ですね。植林先生のお話にもあったように、小学校時代に夢中になれる体験をした子は、好奇心や探求心、自己肯定感からなる「自知力」と、目標設定力やポジティブ力、行動力で伸びる「自効力」が育っています。また、職人さんなどに直接教わる体験や、自分で編み物で布がどうできているか、普段使うものがどのようにできているかを知ることは、想像力や感謝、貢献心、尊敬につながって「他尊力」になります。小学校のうちに「生きる力」に必要な三要素をすべて体得できるのはとてもいいですね!(KAZ)

 

和光小学校 植林先生
お話を伺ったのは…植林恭明さん
〈監修者プロフィール〉

公立小学校に5年ほど勤めたあと、2007年から和光小学校に勤務する。和光小学校では工作技術科を担当。

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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