子どもたちの心の不調が増加していると言われている昨今、子どもの心の不調をデータで可視化し、不調になる前の段階で児童生徒の心の変化を捉え、適切なケアプランにつなげていこうとする試みがあります。
横浜市がスタートした、横浜市、大学、民間企業の連携で子どもの心の変化をとらえ、安心な学びの環境をつくる「横浜モデル」についてご紹介します。
横浜市「横浜モデル」の記者発表資料はこちら
「横浜モデル」とは
「横浜モデル」とは、横浜市立の小学校、中学校の児童生徒を対象に、学習タブレットなどを活用して、子どものこころの変化をデータ可視化し、こころの不調をいち早く把握することで子どもたちのケアを行っていくという取り組みです。
「横浜モデル」の3つの特徴
①データで子どものこころの変化を捉え、不調を軽減する取り組みは日本初
②約26万人の児童生徒が対象
③リアル(学校現場)、オンライン、バーチャル(仮想空間)の三層空間を横浜St☆dy Naviでつないで、どこにいても同じように見守り、支援できる仕組みを横浜から発信する
生徒は学習用タブレットなどの児童生徒用ダッシュボードから、毎朝、自分の健康や心の様子を「よい」「すこしよい」「ふつう」「すこしわるい」「わるい」の5段階で評価、入力します。そのデータを学校現場の先生だけでなく、横浜市立大学が医療の専門的知見から分析し、子どもの心の不調を軽減するケアを行うのが「横浜モデル」です。
子どもへのこころのケアは、リアル(学校現場など)だけでなく、横浜St☆dy Naviを使ったAIチャット相談や、アバターを活用したバーチャル相談などでも行われます。
この取り組みを進めるため、横浜St☆dy Naviがアップデートされ、子どもの心の状態をより精微にとらえられる「こころの温度計」と、子どもの心の状態を診断し医療につなげるアンケート機能「こころの定期診断」が追加されました。
一つ目の機能の「こころの温度計」では、児童生徒は数値を入力するのではなく、ダッシュボード上でマークを0~100のスケールの間で指で動かして心の状態を毎日回答します。数値を入力するより、正確に自分の状態を回答できる効果があるとの説明がありました。
「こころの定期診断」では、月に1回の頻度で、幸福度や抑うつ状態を把握するための20問程度の質問に回答し、子どもの心の状態を可視化します。学年ごとに不調の子どもの割合などがわかることで、必要なケアの体制を整えるなどの対応などに活かしていきたいとのことでした。
この機能を使い、横浜市立獅子ケ谷小学校と横浜市立瀬谷中学校をモデル校として11月22日から2025年1月までデータ収集が行われます。
現代では子どもが自分の生き方を自ら考える力が問われている
2024年11月21日に開催された横浜教育データサイエンス・ラボでは、横浜市教育委員会と横浜市立大学との共同研究契約が締結されました。さらに横浜市教育委員会と横浜St☆dy Naviを開発する株式会社内田洋行、横浜市立大学の教授による鼎談や、横浜市立の小学校や中学校の教諭の方を交えたグループディスカッションなどが行われました。
鼎談では、2020年以降、学校に行きたくない、勉強しようという気持ちがわかないという傾向が小中高全部で広がっているという現状が報告されました。
また、学びと言えば知識をつけることが大事だった親世代とは大きく社会環境が変わってきていることに触れ、現代では子どもたちが自分とは何かを自ら意識し、どのように学び生きていくかが問われていること、そしてその問いに応えていくためには学校現場だけでなく、より多くの人たちの知恵と力の結集が必要という話などがされました。
会場では、実際に自分の健康や心の様子を毎朝回答している子どもの声として、「スタディナビをやって、心は毎日変化があるんだなと思った」「自分の体調の変化に気づく機会になっている」などの感想が紹介されました。
子どもの頃からこころの変化を意識するメリット
また、小学校、中学校の教諭の方々が参加したグループディスカッションでは、「子どもの頃から自分の心の様子の変化に気づく経験をすると、大人になってからも自分の不調に気づきやすかったり、誰かに相談するなどの対応がとりやすくなるメリットもあるのでは?」という意見や、「経験の浅い先生でも子どもの心の変化に気づきやすくなる」という期待感、「低学年の子どもは体調が悪いのが風邪などの体の不調だからなのか、心の不調からの体調不良なのかが区別がつかないので、低学年の子でもわかりやすいような設問にしてほしい」などの希望が意見として出されていました。
また、「毎日のデータとして記録に残ることで、心の不調がいつ、どのくらいの頻度で出ているかを過去にさかのぼって把握でき、不調の原因や深刻度を探りやすい」という、データとして可視化するからこそのメリットもあげられていました。
ラボの最後に、「もう一度、月曜が楽しみな学校を作りたい」というビジョンが紹介され、私たち大人が様々な知見を持ち寄って子どもたちの成長支援や心のケアを行い、子どもたちが安心して学べる環境を整えていくことの大切さが改めて共有されました。
子どもたちのこころのケアを大人たちが連携しながらどのように行っていくのかについて、今後も様々な取り組みをレポートしていきます。
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