「アリとキリギリス」や「ウサギとカメ」、「裸の王様」など名作童話を読み解き、現代にあった新しい解釈をすることで、物事をさまざまな角度から見られるようになる本「10歳からの考える力が育つ20の物語 童話探偵ブルースの『ちょっと違う』読み解き方」(著:石原健次、絵:矢部太郎、発行:株式会社アスコム)」を紹介します。
有名な童話の「教訓」を少し違う視点から読み解く
この本は童話探偵ブルースが、秘書のシナモンと一緒に童話を「ちょっと違う視点」で読み解く物語です。例えば「三匹の子ブタ」は子ブタ側からの視点で描かれていますが、オオカミの視点に立ってみると別の事情があったことがわかります。また「ウサギとカメ」の物語では、勝負の途中で油断して寝てしまったウサギの失敗談として描かれていますが、童話探偵ブルースは、ウサギの挑発に乗ってしまったカメの危うさを指摘。
多くの人が内容を知っている名作童話をテーマに、ブルースとシナモンの会話から導き出される「新しい読み解き」に感心したり、納得したりしていくうちに、自分自身にもさまざまな視点から物事をとらえる「考える力」が育まれていく本です。
少しずつ明らかになる登場人物たちの謎にも注目
作者は「行列のできる法律相談所」や「人生が変わる1分間の深イイ話」の放送作家として知られる石原健次さん。タイトルに「10歳からの~」とあるように、わかりやすい表現を使ったり、すべての文字にルビが入れるなど子どもが1人でも読めるように工夫されています。また、物語を進めていくうちに「ブルースがなぜ童話探偵になったのか」など登場人物の秘密が徐々に明らかになっていき、童話の読み解き以外にも物語としてしっかり読める楽しみもあります。
表紙や挿絵のイラストはお笑い芸人で「大家さんと僕」などのマンガや絵本を手掛ける矢部太郎さんが担当。ブルースやシナモンをはじめ、童話世界の住人たちをコミカルかつ魅力的に描いていています。
「未来へいこーよ」スタッフの注目ポイント
各話の冒頭でのシナモンとブルースのやりとりが、読み解く童話の課題と絶妙にリンクしているのがとても好きです。「童話の新しい読み解きがどんなものか?」と「それを踏まえて各話の問題をどのように解決していくのか?」という1話に2つの楽しみが詰め込まれていて、どの話も読んだあとに少し心が軽くなる内容になっています。そして大人が読んでも「そういう見方があったのか!」と驚いたり「確かにそうだよなあ」と感心できて、大人にとってもよい読書体験になる本です。
1つ1つのお話が5~10分くらいで読めるというのも、子どもの生活に読書を取り入れやすくていいなと感じました。例えば夜寝る前に子どもが読んだり、大人が読み聞かせしたりして、それぞれのお話についての感想を言い合ったりすると、一日の最後にとてもいい時間になるのでは? 対象となっている10歳は小学校4年生なので、もう自分ひとりで寝る子の場合は、晩御飯のときなどに親子で「どう思う?」とお話してもよさそうですね。
10歳くらいになると、できることが増えてきて友だち同士のトラブルなども増えてくる時期。童話をテーマにしたわかりやすい例えで、違う視点に立って物事を考えて見ることや、相手の気持ちを推しはかるなど、この時期に身につけておきたい「生きるチカラ」のヒントがたくさん詰まっている本でした。
子どもへのプレゼントに最適な本ですが、じつは僕自身も読んでいて「このあたりは見習いたいな~」と日ごろの行動を見つめ直したり、とくに後半の伏線回収は泣きながら読んだりと、1つの物語としても素晴らしいです。大人も子どもと一緒に読んだり借りたりして読むのがおすすめです(KAZ)
10歳からの考える力が育つ20の物語 童話探偵ブルースの「ちょっと違う」読み解き方
本体1,430円(税込)、著:石原健次、絵:矢部太郎、発行:株式会社アスコム
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