子ども時代に出かけた美術館や博物館の面白さは子どもにとって一生ものの体験です。親子でぜひ訪れてほしい美術館や博物館のイベントを紹介します。
第14回で紹介するのは、2022年11月20日(日)にオープンした「I’Museum Center(市原歴史博物館)」。(市原歴史博物館の展示会に招待されました)
首都圏からもアクセスしやすく、歴史の探究過程をビジュアルを通じて体験しながら、市原市で発見されたり出土したりしたものを通して日本の歴史を身近に感じられる博物館です。


博物館の見どころを35年にわたり市原市の文化財にかかわってきた鷹野 光行館長に、併設する歴史体験館のポイントを忍澤成視さんに聞きました。



【見どころ1】「王賜」銘鉄剣を360度見られる! 最古の有銘鉄剣の「王」とは誰か? 検証過程をプロジェクションマッピングでドキドキ追体験!

鷹野光行館長「市原市で発見された旧石器時代から現代までの歴史遺産から日本の歴史を知ることができる『常設・企画展示室』の見どころの一つが『王賜』銘鉄剣(おうしめいてっけん)です」

「鉄剣と言うと、埼玉県の稲荷山古墳から出土した獲加多支鹵大王(ワカタケル大王)と刻まれている『金錯銘鉄剣』(きんさくめいてっけん)を思い浮かべる方が多いかと思います」
「この『王賜』銘鉄剣が発見された稲荷台1号墳(山田橋)で一緒に出土した遺物から、金錯銘鉄剣よりさらに古い5世紀の中頃のものと考えられ、国産の銘がある鉄剣としては現在発見されているなかで最古のものと言えます」

「そこで立ち上がってくるのが『王賜』の『王』とはだれなのか? この古墳の主にこの鉄剣を『賜った』『王』とはだれなのか? という疑問です」
「博物館では、この疑問を考古学的に検証し一つの答えを導きだすまでの過程を、プロジェクションマッピングとパネルで紹介しています」

「国産最古の有銘鉄剣を360度あらゆる角度から間近に見ながら、歴史を探究するドキドキのドキドキの過程を追体験できる特別な展示です」
【見どころ2】五大力船の現存する唯一の舵と動画で、江戸時代から昭和初期の海運の歴史を体験!

鷹野 光行館長「市原の海や里山での暮らしを支えた道具の数々を紹介する民俗展示室の中で一際目をひくのは、3.5mもある五大力船の巨大な『舵』です」
「五大力船とは、江戸時代から昭和初期まで上総地域と江戸東京や神奈川を往復して米や薪炭、日用品などを運んでいた貨客船のこと」

「船の長さは最大20mに及び、海船でありながら船底が浅く作られているため、水深の浅い河口や港にも直接入ることができ、 大量の物資を運ぶことができましたが、昭和の時代にはトラックなどの陸上交通が発達し次第にすたれていきました」

「実際の巨大な舵にプロジェクションマッピングを投影し、映像を使って船の構造や仕組み、市原の歴史に与えた影響、今も市内各地に残る海運の痕跡を紹介します」

「周囲には、五大力船の部材や船大工道具、鍛冶職人の道具や、塩づくり、海苔づくりの道具をその歴史を交えて 紹介し、日本の歴史の中での市原の産業の移り変わりをリアリティを持って感じながら学ぶことができるようになっています」
【みどころ3】併設の歴史体験館での発掘&貝輪・泥めんこ・まが玉などの制作体験で、博物館での学びをさらに定着!



忍澤成視さん「博物館で多種多様な歴史に思いを馳せた後は、市原市に実在した発掘現場、竪穴建物、古墳、納屋風建物を再現した『歴史体験館』で発掘や貝輪・勾玉づくりなどの体験をすることで、博物館で学んだことをより記憶に残すことができます」

「歴史体験館でできるたくさんの体験のなかでも、プレオープンに訪れた小学生の人気を集めたのが、市原市内の西広貝塚から発掘された、縄文時代の竪穴建物跡の遺構を再現した発掘体験場です」

「この遺構の発掘では普通の遺跡では見られないオスのイノシシの頭、ベンガラを塗った貝殻、穴に埋められた土器の中から赤ちゃんの骨などが見つかりました。発掘体験では、実際に発見した場所にこれらの遺物の写真を埋め、この遺構から出土した実際の縄文土器の破片などを掘り出す体験ができます」
「私事ですが、実際にこの遺構を大学時代に掘り衝撃を受けました。全部ひっくるめて考えたときに、これは何かが起こった場所に違いないという想像力と探究心に火が付いたためです。あのときの興奮を訪れた人たちにもぜひ体験してほしいと趣向をこらしています」
「歴史体験館では『目指せ未来の考古学者』という掲示を行っていますが、単なる宝探しではなく、発掘現場で発掘のときに何を大切にしているのかなども併せて伝えていく予定です」






「博物館の縄文時代のブースには、この西広貝塚から出土したものが数多く展示されています。また、貝輪、泥めんこ、勾玉づくりなどの体験プログラムも、博物館の展示とリンクさせることでより深く楽しめます」
「博物館の後に歴史体験館を訪れ、また博物館へ戻るなどしながら、1日じっくり楽しんでもらえたらと思います」
I’Museum Center(市原歴史博物館)・歴史体験館・フィールドミュージアム3つを土台にワクワクしながら歴史に触れる!

鷹野 光行館長「『I’Museum Center』という名称は、『歴史をつなぐ、人をつなぐ』博物館を目指す『市民を、主人公に。』という博物館のコンセプトをこめたもので、博物館と歴史体験館の他、市民と一緒に市内の歴史遺産を選定して作った散策コースを中心とするフィールドミュージアムを加えた3つの施設を組み合わせることにより、歴史を身近なものに感じてもらうように計画されました」

「博物館のロビーではフィールドミュージアムの立体マップを配置し、持ち歩き出来る地図も配布しています」
「今後は、共に歴史を学んだ市民の方々にフィールドミュージアムや博物館のガイドなどをお願いしながら、訪れた方たちがさらに歴史を身近に感じられるようさらにプログラムを進化させていく予定です。市原の歴史はもちろん日本の歴史の新しい魅力に出会える『I’Museum Center(市原歴史博物館)』に、ぜひ一度出かけてみてください」
【展覧会タイトル】:『I’Museum Center(市原歴史博物館)』
オープン:2022年11月20(日)
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(ただし祝日の場合、翌平日)・年末年始
場所:千葉県市原市能満1489
観覧料:一般300円(団体200円) 高校生200円(団体100円) 中学生以下無料※団体は20人以上
問い合わせ先:0436-41-9344
I’Museum Center(市原歴史博物館)
【子どもと行きたい・美術館・博物館一覧】
第1回/「鉱物展」の楽しみ方/角川武蔵野ミュージアム
第2回/「体験型美術展」の楽しみ方/びじゅチューン展
第3回/「ゴッホ展」の楽しみ方/東京都美術館
第4回/「好き」を見つける展覧会の楽しみ方/君も博士になれる展
第5回/「絵本原画展」の楽しみ方/柚木沙弥郎 life・LIFE展 PLAY!MUSEUM
第6回/「北斎展」の楽しみ方/すみだ北斎美術館
第7回/「バンクシー展」の愉しみ方
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※内容は予定です。都合により変更する場合があります。