日野学園 SDGs 講演

小学生が自らSDGsのアイデアを出しまくるカードゲーム!物事には両面があることを学ぶ【日野学園講演レポート】

「未来へいこーよ」では、東京都品川区にある日野学園の特別講演として、SDGsについての講演を2023年1月に実施しました。2021年と2022年に引き続き、3回目となった今回はSDGsの考え方を楽しみながら学べるゲーム「かけアイ サステナブル」の企画・プロデュースを手掛けた金丸美樹さんを講師に招き、小学生がゲームを楽しみながらSDGsについて自然に考えられる講義を行いました。小学生ならではの大胆なアイデアが飛び出し、自分ができることを考えるきっかけづくりにもなった講演の内容をレポートします。

「かけアイ サステナブル」を開発した金丸さんはどんな人?

今回講師を務めていただいた金丸美樹(かなまる みき)さんは森永製菓に入社したあと、お菓子の商品開発や広告を手掛けて「アンテナショップ」の立ち上げなどの新規事業を担当し、社内起業で株式会社SEE THE SUNを立ち上げました。SEE THE SUNでは「テーブルを創るすべての人を幸せに」をテーマに、遊びゴコロを大切にしながら社会課題に楽しく向き合う事業を展開。SDGsの考え方を楽しく学べる「かけアイ サステナブル」も、そのひとつです。
日野学園 SDGs講演 SEE THE SUN 金丸美樹

2つのお題を掛け合わせて自由にアイデアを出しあおう!

「かけアイ サステナブル」とは、SDGsのゴールにちなんだ目標カードと業種カードを組み合わせた「お題」にあう「持続可能なアイデア」をみんなで考えて楽しむカードゲームです。例題では「ケンカや暴力、争いがなくなる」と「文房具」をかけあわせて「ケンカが始まるとネコちゃんパンチが飛んでくるペン」などのアイデアが紹介されていました。日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

アイデアには正解も不正解もなく、すぐに実現できないような突拍子もないアイデアでもOKです。というのも、このゲームで表彰されるのは「実現できそうなもの」や「正解」ではなく、みんながアイデアを出し合ったあとに引く「賞カード」のお題にあったアイデアだからです。アイデアを出す段階ではどんな方向性のアイデアが表彰されるかわからないので、どんなアイデアでも書いて出すのがゲームのポイントになっています。

日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

まず最初のお題になったのは「国同士が仲良くなる」×「食べ物」です。生徒たちは4~5人でグループを作り、互いに相談しながらアイデアを付箋に書いて出していきます。

日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

日野学園の5年生の生徒たちは、開始してすぐに付箋に何やら書き始めました。金丸さんが「大人より、子どものほうが柔軟なアイデアが出やすいです」とお話していたのもうなづけます。付箋に書かれた「土地という食べ物」など、早くもどんなものか気になるアイデアが出ています。

日野学園 SDGs 講演

「同めいチョコ」は食べると国同士が仲良くなれるチョコのようです。イラストまで描いているところにびっくり!

日野学園 SDGs講演

どんなアイデアでも「賞カード」で表彰されるチャンスがある!

アイデアがある程度出たところで、今回の賞カードの発表! 賞カードは「スケールでかすぎで賞」です。グループ内でそれぞれが出したアイデアを話しあい、どのアイデアを出すかを決めます。各グループで出たアイデアのなかで「同めいチョコ」も選ばれていました。

日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

賞に選んだアイデアをグループで発表したあとは、そのアイデアに「サステナブル(続けられる所)」と「アンサステナブル(続けるのが難しい所)」も考えてもらいます。先ほどの「同めいチョコ」の「サステナブル」は、食べたら心が広くなる。「アンサステナブル」は食べると太ってしまうことでした。ほかにも大きなバナナ自体が国の懸け橋になる「国をつなぐバナナ」や、食べたら思わず感謝の気持ちを言ってしまう「ありが糖」などのアイデアが出てきました。

日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

次のテーマ「森や森林が守られる」×「学校・塾」では「笑えるで賞」が表彰されるアイデアに。「森を散歩する学校」や「きになる学校(気になる、木になるをかけている)」、「学校が森林」「木の中に学校を作る」などのアイデアが生まれました。

休憩をはさんだあとに実施したのは「年をとっても仕事を続けられる」×「アミューズメントパーク(遊園地などの施設)」。賞カードは「よくわからないけど、発想が天才っぽいで賞」です。ここでは「お年寄りによるお年寄りのための遊園地」や「老人がゲートボールで遊ぶと遊園地が動く(電力などになる)」、「健康パーク(仕事をしている間も健康グッズが置いてあって健康でいられる)」「眠りながらでも働ける遊園地」などのアイデアが誕生。

生徒たちも回数をこなしていくことで、アイデアを出すコツが身についてきたようで、付箋に書き込むペースが明らかに早くなっていきました。ダジャレをベースにしたり、「サステナブル」や「アンサステナブル」で大胆なオチをつけたりと、想像力を活かしたバラエティに富んだアイデアが出てきています。

一般的にアイデアを出す場面は「正しいこと」や「役に立つこと」が求められることが多く、それがかえってアイデアを出すことの障壁になっていることがあるのですが、その障壁を取り払ったことで数々の自由なアイデアが生み出されていました。

こちらは休憩時間中に撮影したものですが、アイデアを書いた付箋が連なって長いレシートのようになっています(笑)。これも子どもたちがたくさんのアイデアを自由に書いた証といえるでしょう。

日野学園 SDGs 講演

グループ内で賞カードにあうアイデアを話し合うときも、お互いのアイデアを聞いて笑ったり、サステナブルとアンサステナブルの要素について真剣に考えるなど、生徒同士のコミュニケーションで考えが深まっていく様子が見てとれました。

日野学園 SDGs 講演

物事には両面があることを知り「楽しくやる」ことが重要

「かけアイ サステナブル」で楽しい時間を過ごしたあと、講師の金丸さんから「サステナブルとSDGs、持続可能のうち、どんなことを知っているか30秒くらい考えてみてください」と生徒たちに語りかけます。今回のお題にあった「国同士が仲良くなる」や「森や森林が守られる」「年を取っても仕事が続けられる」はいずれもSDGsのゴールと関連したもので、それに気づいた生徒も多くいたようでした。

「今日の講義でもみんなでSDGsについて考えましたが、プラスチックが海を汚している、森林が伐採されているなどいろんな課題がありますが、じつは大人よりも子どものほうがSDGsについて知っていたり、考えていると言われています。SDGsは大人も子どもも世界のみんなで解決しないといけないことです。でも、世界にはいろんな文化や価値観、たくさんの考え方を持った人がいます。大阪と東京でも違うし、アメリカと中国、日本など国によっても違いがあります。いろんな考え方の人が力を合わせて、世界を変えていけないといけない。1人1人が世界を変えるメンバーなんです」とお話されました。

日野学園 SDGs 講演 かけあいサステナブル

金丸さんが今回の講義で伝えたかったことは、大きくわけて2つあります。1つは「物事には両面がある」こと。「一見いいことに見えても、別の角度から見るとよくない面がある。海外に行くと日本では常識だと思っていたことが全然違うということもよくあります。『かけアイ サステナブル』でもサステナブルとアンサスティナブルの両面を考えてもらいましたが、物事すべてに両面があることを知ってもらいたいです」とお話されていました。

そしてもうひとつは「人を責めているだけだと進まない」ということでした。「誰が悪いと言っているだけじゃなくて、今日のように目標に向かってみんなでアイデアを出していく。楽しくやることが重要なんです。SDGsは世界的な大きな目標なので『こうしないと!』と決めつけてしまうと続かない。だから、みんながハッピーな状態で続けていくことが大事です」と解説。「かけアイ サステナブル」では確かに楽しくハッピーな時間でSDGsに向き合うことができていました。

金丸さんは「考え方を1つに絞らず、両面も違いも楽しみましょう。違う考えにイラッとしてしまうのではなくて『あぁ、そういう考えもあるんだ』と思いましょう。人生100年時代なのだから、楽しく続けていくことがSDGsにとって大事なんだと思います」とまとめていただき、大きな拍手で講演は締めくくられました。

日野学園 SDGs 講演

「SDGsのことを考える」というと難しいイメージがありますが、カードゲームをみんなで行う「楽しい体験」から、自由かつユニークなアイデアがたくさん出てきて、両面の違いを意識することで自然にSDGsについて考えられる講演でした。また、自分では荒唐無稽だと思ったアイデアでも、誰かに話すことで「それって実現できるよ!」となったり、別の新しいアイデアが生まれるきっかけになることもあります。そういう意味でも、子どもたちが想像力を発揮して自由で楽しく、学びにつながる時間になったようでした。

講師 金丸美樹さん プロフィール
食にまつわる社会課題の解決の場の創出に努める「株式会社SEE THE SUN」代表取締役社長。世界を持続可能にするためのアイデアを、かけあわせで考える「かけアイ サステナブル」企画・プロデュース。
株式会社SEE THE SUN公式サイト
「かけアイ サステナブル」公式サイト

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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