昔話「ももたろう」と「鬼に育てられたももたろう」の2つのお話を通して、他者への共感や多様性について考える機会になる絵本「ふたりのももたろう(著:木戸優起、絵:キタハラケンタ、発行:株式会社ドリームインキュベータ)」を紹介します。(株式会社ドリームインキュベータから献本いただきました)
異なる視点の物語で違う立場から物事を考えられるように
「ふたりのももたろう」は、いわゆる一般的な「おにたいじ(鬼退治)のももたろう」と「おにのこ(鬼の子)ももたろう」の2つの物語が読めます。一般的な「おにたいじのももたろう」は強くて、やさしくて、立派な少年。都で暴れる鬼がいることを知り「おじいさんとおばあさんを守るため」に鬼退治に出かけます。
一方の「おにのこももたろう」は「もしも、おばあさんが桃に気づかなくて鬼がいる島まで流れ着いたら」という設定。自分が好きなことを活かして平和な世界を目指していく、一般的な「ももたろう」とは違う個性が光る主人公のお話です。

2つの物語を繰り返し読み比べをしていると、立場が違うことで物事の見え方が違うことがわかります。それによって子ども自身が考えたり想像したりして共感力が育まれることが絵本の狙いです。

じゃばら構造の仕掛け絵本で読むこと自体が楽しい!
「ふたりのももたろう」は絵本自体の仕掛けもユニーク。最初は普通の絵本のように「おにたいじのももたろう」を読んで、最後のページまでいくと「おにのこももたろう」の表紙が出てきます。裏表紙をまとめて反対側に折り返すと「おにのこももたろう」の絵本に変形! 1冊の本なのに「表と裏」があるじゃばら構造になっている仕掛けが子どもの好奇心を刺激します。

「未来へいこーよ」スタッフの注目ポイント
「ももたろう」のお話って、あらためて絵本で買う必要はないと思っていました。その理由は、テレビや紙芝居、劇などで「ももたろう」の物語は、小学校低学年以上ならだれもが大まかなストーリーを知っているからです。例えば、大人なら寝かしつけのときに子どもに「何かお話して」と言われたら、「ももたろう」のお話は誰でもスッと話せるでしょう。
でも「ふたりのももたろう」は、それだけ超メジャーな物語を下敷きにしつつ、「もしも」な設定のももたろうのお話が用意されています。そして、ただ聞くだけでなく最後に考えさせるようになっているのが、とても「今」らしいと思いました。基本となる物語を知っているからこそ、そこを土台にして、考えたり想像したり思いやったりする「一歩先の体験」に足を踏み出しやすいのです。
また、基本となる「おにたいじのももたろう」も、僕が昔読んだものと少し違っていました。記憶の中にあった「ももたろう」は鬼を退治しておじいさんやおばあさんの元に金銀財宝を持ち帰り、都に取り立てられる、というお話でした。育ててもらった恩返しと故郷に錦を飾って立身出世するという意味合いがあったのではないでしょうか。「おにたいじのももたろう」では鬼を改心させて、迷惑をかけた人にあやまりに行かせます。そして改心した鬼から「まだ鬼が住む島がある」と聞いて、鬼退治の旅を続けます。これはこれで現代的な物語の締めくくりだと感じました。
一方の「おにのこのももたろう」は、はじめは自分の頭にツノがないことで仲間はずれになった気持ちでいましたが、鬼たちから「違っていてもいいじゃないか」と言われて、「みんなと違うところが自分らしさなのかも」ということに気がつきます。ももたろうは自分の得意なことを活かして、まだ名前がなかった島を「にじがしま」と名付けて、島の外の人に来てくれるようにアピールをしていきます。
好きなことや自分ができることをうまく使って、周りの人が喜んでくれるという「おにのこももたろう」のお話は、読み聞かせをしながら「キミならどうする?」と問いかけながら読んでも盛り上がりそうです。また、描かれている絵をよくよく見ていくと、じつは「おにたいじのももたろう」とリンクしているところがあり、何度も読んでそういうところを発見するのも、読み聞かせしていておもしろいところだ思います。
単にお話を読んで終わり、ではなく続きを考えたり実生活に置き換えて考えられるのが「ふたりのももたろう」の魅力。内容の深さを考えると、小学校低学年くらいからにおすすめです。とはいえ、じゃばら構造の仕掛けがおもしろく、厚めの紙を使ったしっかりした絵本なので幼児期のお子さんにプレゼントして長く楽しんでもらうのもいいと感じました(KAZ)
ふたりのももたろう
本体1,980円(税込)、著:木戸優起、絵:キタハラケンタ、発行:株式会社ドリームインキュベータ
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「ふたりのももたろう」公式サイトはこちら
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