子ども時代に出かけた美術館や博物館の面白さは子どもにとって一生ものの体験です。家族でぜひ訪れてほしい美術館や博物館やアートイベントを紹介します。

第10回は東京ミッドタウン(港区赤坂)で開催されている「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022」。(東京ミッドタウン主催のイベントに招待されました)
「DESIGN TOUCH」とは“デザインを五感で楽しむ”をコンセプトに2007年から開催されている2022年で15回目になるイベントです。
2022年のテーマは「環る(めぐる)デザイン -Design for Sustainable Future-」。
国内外で活躍する著名なクリエイターが制作した「環る」をテーマにしたインスタレーション(空間全体を体験するアート)がミッドタウンの館内やミッドタウン・ガーデンに設置されており、家族でお散歩をしながら楽しめます。
クリエイターそれぞれが、「環る(めぐる)デザイン -Design for Sustainable Future-」というテーマを、どうとらえて制作したのか? 聞きました。
Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022
うみのハンモック/建築家・永山祐子/芝生広場

今回の展示のなかで最も大きなインスタレーションである「うみのハンモック」。
「LOUIS VUITTON 京都大丸店」「ドバイ国際博覧会日本館」などの設計でも知られる、永山祐子さんが設計しました。

「世界の海を漂流するプラスチックは1.5万トンといわれ、なかでも漁具の糸は自然分解されにくいと言われます。海の波のように見える『うみのハンモック』は、廃棄された漁網をアップサイクルした糸を利用してハンモックやブルーとホワイトのタープを作り約36m×12mの巨大な波をつくりました。
波の下にもぐったりよじ登ったり、自由に休んだり遊んだりして楽しんでほしいですね」(永山祐子さん)

海のない場所に海を作り出し、波型のハンモックを登ったり、波の下から空を見上げながら、海の環境問題をリアルに考える時間を持たせてくれるのは、インスタレーションならではの魅力です。
as it is. -equilibrium flower-/TAKT PROJECT(代表:吉泉 聡)/ミッドタウン・ガーデン

ミッドタウン・ガーデンには、中にLEDライトが入った約2,000個の花のようなオブジェが設置されたエリアもあります。

「環境に配慮するデザインと言うと、自然素材をつかって制作する事が頭に浮かびやすく、『プラスチック』と聞くだけでネガティブなイメージがあると思います。
ですが、たとえば車に軽量で丈夫なプラスチックを使うことで、燃費が上がり、トータルでは環境負荷が低くなるという見方もできます。
今回のインスタレーションでは、熱を加えると硬くなる特殊な化学繊維で作ったオリジナルの生地で、花のようなオブジェを作り、ミッドタウン・ガーデンの植物で草花染めをほどこしました。 熱を加えていない部分は柔らかく、風にそよぎ、水の上ではかなく揺れます。この土地の草花で染めることで、均一化された無機質な製品ではなくこの土地と深く結びついたプロダクトとなりました」(吉泉 聡さん)

ガーデンを散歩しながら、人工物と環境の共存をテーマについて考えるきっかけになるインスタレーションです。
F.A.R.M.-Future Agricultural Rights for Mankind-/建築家集団/デザインユニット・ENERGY MEET/ミッドタウン・ガーデン

ミッドタウン・ガーデン内を散歩する家族連れや子どもたちがのぞき込んで、長い時間滞在していたのが、水耕栽培や点滴栽培、魚が泳ぐアクアポニックス、ソーラーパネル、LEDなどの木製キューブを組み合わせて、農業循環システムを簡単に構築できるようにデザインし再構築する可能性や未来について考えるインスタレーションです。
構想や展示を建築家集団/デザインユニット・ENERGY MEETが、循環システムのパーツとなる栽培実験を新渡戸文化高等学校、城北埼玉高等学校が担当しています。

「農業栽培の技術を解体しユニット化して組み合わせ可能なキューブにしました。キューブは木製のフレームとアクリルの水槽で構成し、マインクラフトやレゴブロック(R)のように組み合わせて農業を独自にパーソナライズして都市型農業の可能性を切り開く未来を提案しています」(建築家集団/デザインユニット・ENERGY MEET)

水を点滴して最小限の水分量で植物を栽培する実験、水を下から上へ循環させる仕組みなど、使われている技術のそれぞれをそれぞれを専門チームが担当し、それぞれの実験結果や技術を組み合わせることで新しい仕組みの実現性を高め、新しい社会を作り出していくイメージを体験できる展示です。
Life Beat/CORNER(若田勇輔・金澤佐和子・田羅義史・岩﨑有紗・長屋弘)/ガレリア2F

ミッドタウン内のガレリア2Fに展示されたLife Beatは、テーブルの上に置かれた3Dプリンターで作られたさまざまな動物のインスタレーション。テーブルに人が近づくとセンサーが反応し、動物たちが心拍のリズムで少しずつ光り出します。やがてテーブル全体の動物たちがそれぞれの心拍のリズムで光始める美しいインスタレーションです。

「テーブルに人が近づくことでセンサーが反応して動物たちが光出すのは、生き物単体では生命の循環は難しく、さまざまな生き物が関わることで命が巡ることを伝えています」(CORNER)
ひとたび動き出した生命の光はセンサーから離れてしばらくするまで止まることがありません。生き物の関係性のつながりは一度進めてしまうとコントロールができず、関係が途切れると徐々に循環も止まってしまうということを体感できます。
series 『sea』/デザインユニット・ambi&STUDIO RELIGHT/ガレリア2F

東京ミッドタウン館内のガレリア3Fには、デザインユニット・ambiと金沢のガラス工房・STUDIO RELIGHTによるリサイクルガラスを素材に制作されたプロダクトシリーズ「series 『sea』」が展示されています。


「廃棄される蛍光灯のガラスをリサイクルする特殊技術を持つ金沢のガラス工房『STUDIO RELIGHT』の貴重な技術とコラボレートした作品です。
リサイクルされた廃蛍光灯のガラス特有の淡いブルーと気泡から『海の水』をイメージして作り上げています」(デザインユニットambi)

海の水が引いた後に砂浜に残されたタイドプールをイメージした小物置、海の水をキューブにして固めたペン刺しや花入れ、波を表現したソープディッシュなど、海の水の美しさを家庭で楽しめる作品です。
” FLOW ”/山本大介/ガレリア2F

明るい光が差し込むガレリアに並ぶ軽量鉄骨で作られたテーブルや椅子” FLOW ”。制作した山本大介さんは、国内外で家具やショーセットなどを手掛けるインテリアデザイナーです。

「東京の商業建築は約5年サイクルでビルドアンドスクラップされています。その都度大量の内装が廃棄されますが、廃棄される内装は内装下地材LGS(軽量鉄骨)の上にパテなどが塗られているため、リサイクルが難しく産業廃棄物となっています。
この点に注目して設計段階からマテリアルの純度を高く保つ素材活用や構法を採用し、解体後は家具へ生まれ変わらせる取り組みから生まれたのが” FLOW ”です」(山本大介さん)
再利用までを含めた設計を提案することで、今では9割の素材のリサイクルが可能になっています。この取り組みを知ることで、持続可能な社会について考えさせられます。
PLAY SPACE./ソニー/アトリウム

2022年冬にソニーがJAXAや東京大学と一緒にすすめている超小型人工衛星打ち上げプロジェクト「STAR SPHERE-space inspiration project」。
宇宙への熱い思いを持つソニー社員が机の下活動で初めた勉強会からJAXAや東京大学とつながり、約10年以上の時間を経て打ち上げに至った共同プロジェクトです。

JAXAや大学が開発した衛星では、撮影の操作を数値や文字式を入れて行うことが多いなか、このソニーの衛星では、手元のコントローラーで専門技術がない人でも直感的に操作ができるような仕組みに計画されています。

「PLAY SPACE.」では、衛星を使って宇宙から地球を撮影するシミュレーション体験ができる「Space Shooting Lab」をはじめ、宇宙をテーマにしたさまざまなコンテンツのプロトタイプが体験できる空間です。
好きなものをつきつめた取り組みが環になって会社や社会とつながって、宇宙をテーマにした新しい産業や文化へ発展していく未来の体験を楽しめます!
東京を代表するデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022」へ行こう!
環境問題やサステナブルな未来を考えるというテーマのこのインスタレーションは、見て、聞いて、触って、考える楽しい体験イベントです。
ぜひ家族ででかけてみてください。
【展覧会タイトル】:Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022
会期:~2022年11月3日(木・祝)
会場:東京ミッドタウン
Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022
※詳細は公式サイトをご確認ください。
【子どもと行きたい・美術館・博物館一覧】
第1回/「鉱物展」の楽しみ方/角川武蔵野ミュージアム
第2回/「体験型美術展」の楽しみ方/びじゅチューン展
第3回/「ゴッホ展」の楽しみ方/東京都美術館
第4回/「好き」を見つける展覧会の楽しみ方/君も博士になれる展
第5回/「絵本原画展」の楽しみ方/柚木沙弥郎 life・LIFE展 PLAY!MUSEUM
第6回/「北斎展」の楽しみ方/すみだ北斎美術館
第7回/「バンクシー展」の愉しみ方
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