ペンをはじめ、ハサミや定規、絵具、カッターなどの文房具は生活していくためになくてはならないものです。とくに「書く」「描く」「切る」などの基礎を学ぶ未就学児や小学校低学年のタイミングで、文房具を楽しく使えるようになれば一生の宝物になることでしょう。そこで、文房具のさまざまな魅力を知っている「文房具プレゼンター」のふじいなおみさんに、子どもと一緒に楽しく使えて、子どもの成長に役立つ文房具を紹介していただきました。今回は子どもでも使いやすいカッター「キッター(オルファ株式会社)」です。
世界で初めて「折る刃式カッターナイフ」を作った会社が子どものために開発
ふじいなおみさん(以下、ふじい):今回紹介するのは子どもが安心して使えるカッターの「キッター」です。このカッターを開発したオルファ株式会社さんは、じつは世界で初めて「折る刃式カッター」を発明した会社なんです。
未来:へえ~、そうなんですね。社名の由来が「折る刃=オルファ」からきているというのは知っていましたけど、カッターを最初に発明したのは初耳です。写真で見ると、最初の1本から今とデザインは大きく変わらないんですね。「切れ味が悪くなったら刃を折る」というのが、機能面ではとても革新的で、かつ今でも通用することの表れだとも思います。
ふじい:そうなんです。もっとも、最初の1本が登場したのが1956年、約66年前ですのでカッターナイフは文房具の中でも歴史が新しいものなんです。オルファさんでは1979年に世界初のロータリーカッターを発売したのちも、さまざまな商品を開発しています。そのたくさんのラインナップのなかで「キッター」を開発した理由は、じつは今、20代や30代の親世代でカッターナイフの使い方を知らない方が増えているからなんですよ。
未来:あ~、驚くというよりも「意外にそうかも」と思ってしまいました。大人が使うときも「カッターは刃があって危ない」というイメージはありますし、日常生活においては、どうしてもカッターでなければいけないという場面があまりないので、大人が使わないと必然的に子どもも使わなくなりますよね。
ふじい:私自身もそうですが、今は昔に比べて安全に対する意識がとても高まっていて、大人が子どもに「危険だよ」って言って使わせないようにしているのもあると思います。
未来:僕もカッターはハサミよりは子どもに使わせるのが危ないと思ってしまっています。学校では使う機会があるとは思うんですけど、家で使わなかったら身につかないですね。
ふじい:そこでオルファさんが「子ども用の安全に配慮したカッターを作ろう」と開発したのが「キッター」です。
大人の文房具から子どもが自由に使える「知育道具」に
未来:子どもでも使えるカッターは、どのようになっているものなのですか?
ふじい:コンセプトは「大人しか使えない文房具から、子どもが自由に、安全に使える知育道具にしよう」です。実際に見るとわかるのですが、刃がほとんど出ていない。じつはカッターの刃は、切るときには、ほとんど刃先を使っているんです。
未来:確かに、ほんのちょっとだけしか出てないですね。これならハサミよりも危なくない印象です。
ふじい:切るのに必要最小限の部分だけ出して、あとは触っても大丈夫なように設計してあります。しかも、子どもが一番ケガする原因になりそうな、刃の先の角の部分をちょっと折ってあるんです。
未来:おお~! これは細かいけれどよい工夫ですね。
ふじい:デザインは、刃物を安全に使えるようにしつつも、危険性に気付けるように「商品の見た目を極力シンプルにした」そうです。本体は白一色で統一し、刃の部分はオルファのカラーでもある「黄色」を使っています。
未来:グリップは安全で、刃の部分は危ないので警戒色の黄色になっているんですね。
ふじい:キッターはカッターよりも小さくて、丸みを帯びたデザインになっているので、子どもの手でも持ちやすいようになっています。持ち方は鉛筆持ちが基本で、スライダーの部分に親指がくるようにします。刃を反転してセットすれば、左利き用にもできます。
未来:左利きの人は「ハサミが右利き用になっていて使いにくい」という話を聞いたことがあります。今ではハサミは左利き用のものが売られていますが、右利きと左利き、どちらでも使いやすいのはいいですね。
ふじい:大人と子どもで利き腕が違う場合でも共用できます。それからカッターは使っていくうちに、切れ味が落ちてきます。すると切るときに余計な力が入って危ないので、折って新しい刃に変えます。
未来:刃を折る方式は従来のカッターと同じですね。
ふじい:そうですね。キッターには最初からスタンドにもなる刃折器がセットでついていて、安全に刃を折ることができます。やり方は刃折器の下側にある穴に刃を入れて上下に動かして折るだけ。
未来:折った刃が自動的に中に入るので安全ですね。刃折器はスタンドになるので、いつもキッターとセットで置いておけるのもいい。よく考えられています。
ふじい:替刃も販売されているので、刃がなくなってもあらためて本体を買う必要がありません。キッターは「第27回日本文具大賞2018 ISOT 機能部門」のグランプリを獲得しています。これは文房具としてはなかなか獲れない賞で「キッター」が機能面でとても優れた文房具だということがわかります。
知育道具としてどう遊ぶといい?
未来:キッターが子どもでも安全に使えて便利なことはわかったのですが、実際にどんな場面で使うのがいいのでしょうか?
ふじい:先ほどお話したようにオルファのホームページの中に無料の工作サイト「ツクルト」があります。型紙がダウンロードして使えるほか、準備するものもすべて書いてあるので、夏休みのまとまった時間に工作で挑戦してみるとおすすめです。
未来:「ツクルト」の工作は全体的には難易度がやや高めで小学校中学年から高学年くらいがよさそうですね。このなかでは「母の日」向けのお手伝い券などにもなる「ティアラ」は難易度が低いので、ここから始めるのもよさそう。
ふじい:小学校低学年のお子さんなら、とりあえず色紙や折り紙、新聞紙、広告などの薄い紙をたくさん使って「切る」ことや「思い通りに切り抜く」ことの楽しさを味わってほしいです。色紙をバラバラにして、紙吹雪のようにして遊ぶだけでも楽しいと思います。またオルファさんが「キッター」を使った遊び方を動画でも紹介しているので参考になると思います。
未来:お菓子の紙箱やパッケージに好きなキャラクターがいたら、食べたあとに切り抜いてコレクションしたりするのもいいですね。
ふじい:定規を当てながらキッターを使えば「キレイにまっすぐに切る」こともできますし、ハサミよりも細かいところまで切りやすいのも魅力ですね。キッターが得意な薄い紙を切るのに便利なように、オルファさんには「段ボールが切りやすいカッター」や「模型や切り絵制作に向いたカッター」「梱包資材のテープやバンドが切りやすいカッター」など、用途に合わせていろんな種類があります。お子さんにはまずキッターで「切る」ことの気持ちよさ、便利さを知ってもらって、いろいろなカッターを使って自由な工作ができるようになってほしいですね。
安全で使いやすく「切る」気持ちよさが味わえる
実際に「キッター」で折り紙や色画用紙を切ってみると、それほど力を強く入れなくてもスッと切れるのが気持ちいいですね。刃を折るときは刃折器の穴に入れてから山折りしてから谷折りをすると、刃が自動的に刃折器に入って出てこなくなります。刃を折るときの「パキッ」という音も快感なんです。普通のカッターより「安全に使える」ことは大人が使えばすぐに実感できるので、子どもにも使ってみせたくなりますね。
我が家の息子にはカッターはまだ早かったため、近所に住む小学4年生の男の子にお願いして実際に使ってみてもらいました。カッターは「学校の授業で何回か使ったことがある」という話でしたが、キッターを使ってみると「あ、これ切りやすい! 学校のカッターよりも力がいらないかも」と、用意した紙を難なく切っていました。
折り紙と色画用紙で試しましたが、色画用紙のほうが適度な厚みがあって切りやすいようです。最初は切れ味を試してもらう意味もあってまっすぐに切ってもらっていましたが「○や△などの図形を切り抜いてもらえますか?」とリクエストすると、応えてくれたあとに自分から階段状に切り始めました。自在に使えることがわかって、新しいアイデアがたくさん出てきたようです。
刃折器で刃を折る体験もしてもらいました。やり方を教えただけで、子どもの力でも簡単に折れます。山折り後に谷折りをして、刃折器にカランと入ったあと、刃折器を振っても折った刃が出てこないことに興味津々の様子。あとで見にきたお母さんに「折った刃がここに入ってきて出てこないんだよ!」と教えてあげていました。
終わったあとに感想を聞くと「学校のカッターよりも丸みがあって持ちやすくて、力も入れやすかったし、使っていて楽しかった!」と大満足でした。普段カッターを使わない子どもでも簡単に、安全に工作が楽しめる「キッター」を使って、子どもと一緒にいろんなものを切りながら工作を楽しんでみてはいかがでしょうか。
「キッター」公式サイト
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お話を伺ったのは…ふじいなおみさん 。文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」、 日経BP「日経xwoman DUAL」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。
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