近くの公園や河川敷などで出会える季節の昆虫の世界。昆虫の特徴や飼い方などの基本的な知識があると楽しみの幅がぐっと広がります。
今回は「足立区生物園」の腰塚祐介さんに夏の昆虫採集で出会える昆虫について教えてもらいました。見つかる場所や捕まえ方、飼い方のポイントなどを紹介します。
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☑春の昆虫採集
☑秋の昆虫採集
☑冬の昆虫採集
夏(6月・7月・8月)の昆虫採集で出会える虫を3種類をまずは紹介!
未来へいこーよ(以下、未来)「夏の昆虫採集で子どもが見つけやすい昆虫を教えてください」
腰塚祐介さん(以下、腰塚さん)「夏の虫といえば、セミやトンボなどのように羽化が観察できる昆虫や、アオドウガネ、クロコガネなどの甲虫があげられます」

「セミやトンボは公園などに行けば探そうと思わなくても出会うことができ、アオドウガネ、クロコガネなどもマンションのベランダや階段などでじっとしているところをよく見かけます」
「どれも身近な昆虫ですが、それぞれ食性や特徴が違います。ぜひ家族でじっくり観察してみてください」
【この記事で紹介する 夏の昆虫採集で出会える虫】
・セミ
・カブトムシ・シロテンハナムグリ
・ヤゴ
【子どもが夏(6月・7月・8月)の昆虫採集で出会える虫1】セミ! 羽化を観察しよう! 見つけたら持って帰ってもいいの?
未来へいこーよ「セミの鳴き声が聞こえると『夏が来たな』と感じますが、鳴き始める条件があるのでしょうか?」

腰塚さん「セミは温度が25度以上になると鳴き始めると言われています。また、『暑すぎると鳴かない』、『夜は鳴かない』と言われ、セミの種類によっても鳴きやすい温度帯や明るさがあるとされていて、ミンミンゼミは午前中、ヒグラシは朝か夕方に鳴くと言われています」

「しかし最近では夜もセミの鳴き声をよく聞きくようになりました。温暖化やヒートアイランド現象で夜も暑いからとする説もありますが、因果関係は明らかになっていません」
未来へいこーよ「夏の夕方にはセミの幼虫が夕方から夜にかけて羽化する様子もよく見られますね」

腰塚さん「夏になると足立区生物園でも羽化の観察会を行っています。夕方よりも日が暮れて真っ暗になってからのほうが、セミの幼虫が地面の穴からのそのそとはい出て移動しているところを見つけやすいですね」
「穴から出てきた幼虫は木などにつかまり羽化します。殻から成虫の体が完全に出てくるのに2~3時間ほどかかり、翅が固まって飛べるようになるのは翌朝になります」

「セミが羽化する時期になると、昼間の公園などで地面に穴が開いているところを見かけるようになります」
「この穴はセミの幼虫が羽化をするために開けているもので、穴を見てみると、その日にでてくるかどうか穴の中から様子をうかがっているセミの幼虫と目が合うこともあります」
「昼間にそういった穴を探しておいて、日が暮れた頃にもう一度見に行ってみると観察がしやすいですね。そういった場所は抜け殻も多く見つかるので、それを観察場所探しの目安にしてみても良いかもしれません」


【腰塚さんの昆虫採集ミニ知識】セミの交尾と産卵にタイムラグがある理由は?
「昆虫は一般に数十から数百個の卵を産みますが、卵塊で一カ所にたくさん産むものと、いろいろな場所に卵を1~数個に分けて産むものがいて、セミは後者です」
「昆虫は一部を除き交尾の時にメスのカラダの中の受精嚢に精子を蓄えるという特徴があります。産卵直前に蓄えた精子を取り出し、受精させてから産卵します。そうすることで一度の産卵数が多い少ないに関わらず、産卵から産卵までの間があいても受精卵を産むことができます」
「いろいろな場所に卵を産むパターンをとる昆虫としてチョウなども挙げられます。ぽつり、ぽつりと卵が葉の表面に一つずつ産みつけられるのを見ることがあるのはそのためです」
セミを見つけたらどうする? 飼う? 放す?
「セミの成虫のエサは樹液です。ストローのような口を木の幹に突き刺して樹液を吸います。樹液を用意することは非常に難しいので捕まえて観察したら逃がしてあげましょう」
【子どもが夏(6月・7月・8月)の昆虫採集で出会える虫2】カブトムシ・シロテハナムグリ・アオドウガネ・クロコガネ 似ているけれど餌はいろいろ
未来へいこーよ「夏の昆虫の代表ともいえるカブトムシは都内では出会えるものでしょうか?」

腰塚さん「都内の大型公園の中にはカブトムシの成虫が好みそうな樹液の出ている木などの餌場や、幼虫が増えそうな腐葉土が重なった場所などがあるようです」
「そういった場所は決して多いとは言えなさそうですが、実際に都内でも見ることはできるようです。ただし、それらの個体すべてが自然に生息していたものとは言いきれないのではないかいと私は考えています」

「一方でカブトムシと同じ甲虫である、シロテンハナムグリや、クロコガネ、アオドウガネなどは都心でもよく見られます」
「シロテンハナムグリは大型公園などの雑木林の樹液が出ている木の幹に止まっているのを見た人も多いのではないでしょうか」


「アオドウガネやクロコガネは夏の夜に明かりを頼りに飛んできて、網戸などにつかまっていたり、玄関先に落ちていたりするのがよく見られます。動きがあまり速くないので小さな子供でも捕まえやすいですね」
シロテンハナムグリ・クロコガネ・アオドウガネを見つけたらどうする? 飼う? 放す?
「シロテンハナムグリ・クロコガネ・アオドウガネは形が似ていますが、食べ物が異なります」
シロテンハナムグリ・・・樹液・フルーツ
クロコガネ・・・広葉樹の葉
アオドウガネ・・・広葉樹の葉
「樹液を餌にするシロテンハナムグリはカブトムシの餌として売られている市販の昆虫ゼリー(餌ゼリー)を、クロコガネやアオドウガネは広葉樹の葉を餌として入れれば子供でも十分に飼育が可能です」
「広葉樹の葉は、瓶などに挿して与え、食べる部分が少なくなるか萎れてきてしまったら交換するようにしましょう」

【腰塚さんの昆虫採集ミニ知識】越冬の方法もいろいろ!
カブトムシ、シロテンハナムグリ、クロコガネ、アオドウガネといったコガネムシ科の昆虫の見た目は似ていますが越冬方法や成虫の寿命に違いがあります。
コクワガタなどのクワガタムシ科についても、カブトムシと比べられることが多いですが、生態は異なります。
・カブトムシ・・・幼虫越冬
・シロテンハナムグリ・・・幼虫越冬
・クロコガネ・・・成虫越冬
・アオドウガネ・・・幼虫越冬
・コクワガタ・・・成虫越冬
成虫越冬するものは夏の成虫が冬越しをして長く生きますが、幼虫越冬のものは夏が終わるまでに交尾をして産卵し短い期間で寿命を迎えます。
コクワガタは寿命が少し長く2~3年生きます。子供が自分で昆虫を飼育するときには、どのぐらいの寿命があるのかをあらかじめ調べておくと育てやすいですね。
【子どもが夏(6月・7月・8月)の昆虫採集で出会える虫3】ヤゴからトンボへの羽化を観察しよう! 見つけたら持って帰ってもいいの?

腰塚さん「5月や6月には池や湿地、水路などで終齢時期のシオカラトンボやウスバキトンボ(体長2~3センチメートル程度)、ギンヤンマ(体長4~5センチメートル)などのヤゴを捕まえてみましょう

「ヤゴが羽化してトンボになる様子を観察できます」
ヤゴを見つけたらどうする? 飼う? 放す?
「種類によって体長は異なりますが、ヤゴはカラダの成長によって、自然界ではミジンコからオタマジャクシやメダカなど、少しずつ大きなものを食べることができるようになっていきます」

「終齢に近い2~3センチメートル以上のヤゴであれば、ペットショップや釣り具店で販売されているアカムシを冷蔵庫で保存しながら傷まないように数日で使い切るように少しずつ与えてやると家庭でも育てられます」
「ヤゴが普段より餌を食べなくなり、成虫になったときに翅になる部分(翅芽)がもりあがってきたらそろそろ羽化の準備が整ったと考えていいでしょう」
「羽化できるように水中から登れる棒のようなものを用意し、ヤゴが棒を登り始めたら、羽化を見逃さないようにチェックしたいですね。この時、羽化した成虫の翅が水に触れたりすることがないように長い棒を用いるようにしてください。高さが足りなければ、ケースの蓋を外してしまった方が良いです
「ヤゴは動いている新鮮な餌を好むので、金魚の餌のように乾燥した餌は食べません。育てると覚悟を決めたら、トンボの羽化を見られることを願って頑張りましょう」
「羽化したトンボも肉食ですが、飛び回るための広い空間が必要になります。エサとなる小さな昆虫などを準備するのもとても難しいので、飼育は考えない方が良いでしょう。トンボを放すときには必ずヤゴを捕まえた場所で離しましょう」
6月から8月にかけて関東の公園や草原でよく見られる昆虫を紹介しました。ぜひ親子で楽しく昆虫採集をしてみてくださいね。
【取材をお願いした】足立区生物園

・東京都足立区保木間2-17-1
・月曜日、年末年始(12月29日~1月1日)定休
※休日及び都民の日(10月1日)は開園し、翌平日に休園
・03-3884-5577
・開館時間 9:30~17:00[2月-10月]9:30~16:30[11月-1月]
※入園は閉園時間の30分前まで
※足立区の定める夏休み期間中は17:30まで開園
足立区生物園
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