近くの公園や河川敷などで出会える季節の昆虫の世界。昆虫の特徴や飼い方などの基本的な知識があると楽しみの幅がぐっと広がります。
今回は「足立区生物園」の腰塚祐介さんに冬の昆虫採集で出会える昆虫について教えてもらいました。見つかる場所や捕まえ方、飼い方のポイントなどを紹介します。
《昆虫採集の他の季節の記事をチェック!》
☑春の昆虫採集
☑夏の昆虫採集
☑秋の昆虫採集
冬(12月・1月・2月)の昆虫採集で出会える虫を3種類をまずは紹介!
未来へいこーよ(以下、未来)「冬の昆虫採集で子どもが見つけやすい昆虫を教えてください」 腰塚祐介さん(以下、腰塚さん)「昆虫は変温動物で冬の寒さが苦手な上に、エサになる植物や昆虫が少なくなるため、冬はなるべくエネルギーを使わないようにじっとしています」 「冬越しの方法は成虫以外に蛹(さなぎ)、卵、幼虫などの形態が見られますが、冬は草木が枯れて見つけやすく、夏のように素早く活発に動くことはすくないので、子どもでもつかまえやすいですね」
【この記事で紹介する 冬の昆虫採集で出会える虫】
・カマキリの卵鞘(らんしょう)
・テントウムシの成虫での冬越し
・モンシロチョウのサナギや幼虫/ミノムシ等
【子どもが冬の昆虫採集で出会える虫1】カマキリの卵鞘 見つけたら持って帰ってもいいの?

(PIXTA)
腰塚さん「小さな子どもでも特に見つけやすいのがカマキリの卵です。カマキリの卵は、たくさんの卵がスポンジ状の物質で覆われており、『卵鞘(らんしょう)』と呼ばれています。」 「秋の昆虫採集の記事でも紹介しましたが、カマキリは9月~11月ごろに野原と林の境の隠れやすく、エサのチョウやバッタがよくやってくる場所で見られます。秋にカマキリを見かけたことがあれば、まずはその周辺を探してみましょう。ススキやセイタカアワダチソウなどの枯れた草の茎に産み付けられた卵鞘が見つかります」

オオカマキリの卵鞘(PIXTA)
「産卵が行われるのは10月~11月ごろです。カマキリはオスよりメスのほうが大きく、メスのカマキリがお腹を空かしていると、交尾後または交尾しながらオスを食べてしまうこともあり自然の厳しさを感じます。うまく逃げおおせたオスも、産卵したメスも冬になる前に寿命を迎えて死んでしまいます」

チョウセンカマキリの卵鞘(PIXTA)
「産み付けられる卵鞘の形はカマキリの種類によって違うのも面白いですね。オオカマキリは丸っぽい釣鐘型形の卵鞘を、チョウセンカマキリは細長い形の卵鞘を産みます」 「オオカマキリの場合、4月の終わりから5月ごろになると一つの卵から多い時は300匹前後の幼虫が一気に出てきます。300匹ほどの幼虫の中から立派な成虫になるのはごくわずかとされています。状況によっては1匹も成虫になれない可能性も考えられ、自然の厳しさを感じます」
【腰塚さんの昆虫採集ミニ知識】昆虫の卵と冬の関係を知ろう! 「卵で冬越しをする昆虫の卵は、孵化に一定期間の寒い冬(低温)を経験する必要があるものや、温度が一定以上の時間(日)数経験することで孵化するもの等があります」 「オオカマキリの場合は後者です。暖かい室内に持ち込むと早めに孵化してしまうので注意してくださいね。また、前者についても冬に入ってからしばらく経っている(一定期間の低温を経験している状況)のであれば暖かい場所に移動させると孵化してしまう可能性がありますので気をつけましょう」
カマキリの卵を見つけたらどうする? 飼う? 放す?
未来「冬に見つけたカマキリの卵は家に持ち帰ってもいいのでしょうか?」

(PIXTA)
腰塚さん「12月から2月ごろに見つけた卵は持ち帰っても暖かい室内には置かないようにしてください。『足立区生物園』にも冬になると『室内に置いておいたカマキリの卵が春が来る前に孵ってしまったのですが、どうしたらいいでしょう』と問い合わせをいただくことがあります。カマキリの幼虫は成虫とほとんど同じ姿をしており、エサも成虫と同じように小型の昆虫です」

アブラムシを食べるカマキリの幼虫(PIXTA)
「孵ってしまった幼虫のために小型の幼虫をつかまえてやれればいいのですが、冬はエサの昆虫を捕まえるのも難しいものです。卵が孵化する春が近ければ、共食いさせながら様子を見ることも検討できますが、やはりそれはかわいそうです」 「カマキリの卵を見つけると子どもは持ち帰りたいという気持ちになりますが、ぜひ大人がその結果どのようなことが起こるのか話してあげてほしいですね」
【子どもが冬の昆虫採集で出会える虫2】成虫で冬越しするテントウムシ

ナミテントウの冬越し(PIXTA)
腰塚さん「12月~2月にかけて東京近郊の公園でも吹き溜まりに溜まった落ち葉をめくったり、木の幹の割れ目をのぞくと、いろいろな模様のナミテントウが集まって越冬しているのを見つけることがあります」

春のナミテントウ(紅型)(PIXTA)
「黒地に赤い丸が2つついた『二紋型』、四つついた『四紋型』、たくさんの赤い斑点がついた『斑型』、赤地にたくさんの黒い斑点がついた『紅型』などのいろいろな模様があるため、違う種類のテントウムシのように見えますが、これらはナミテントウという一つの種類のテントウムシで、どの模様になるかは遺伝子によって決まります」

春のナミテントウ(二紋型)(PIXTA)
「越冬のために集まっているテントウムシは、指で触っても手足をぐっと縮めて動きません。冬眠が終わるのは4月頃。冬眠を終えてエサのアブラムシをたっぷりと食べたテントウムシは産卵し、次の世代へ命をつないでいきます」
【腰塚さんの昆虫採集ミニ知識】温度変化が少ない場所が昆虫が冬越ししやすい場所 「テントウムシに限らず昆虫の多くは冬越しをするときに㏠を通して温度変化が少ない場所を好みます。昆虫にとって厳しい冬を乗り切りやすい場所はどのようなところだろうか? と推理しながら子どもと探してみましょう」
冬越し中のテントウムシを見つけたらどうする? 飼う? 放す?

春のナミテントウ(四紋型)(PIXTA)
未来「冬に見つけたテントウムシは家に持ち帰ってもいいのでしょうか?」 腰塚さん「冬眠をしていても、暖かい環境に移動させると活動を始めてしまいます。テントウムシも冬の間はエサになるアブラムシを見つけてやることが難しいので、見つけてもそっと観察するだけにしておくのがおすすめです」
【子どもが秋の昆虫採集で出会える虫3】チャミノガ、モンシロチョウ

オオミノガのミノムシ(PIXTA)
腰塚さん「広葉樹の葉っぱが落ちた枝や、壁の壁面に、ミノムシと呼ばれるチャノミガやオオミノガの幼虫が小枝や木の葉で作ったミノの中に入っているのを見つけることができます。冬になるとミノの入り口を閉めて冬眠しますが、春になると入り口を開けてエサを食べます。メスは一生をミノの中で過ごし、ミノの中に卵を産みますが、オスはミノを出て飛びまわりミノの中のメスと交尾します」

モンシロチョウの越冬サナギ(PIXTA)
腰塚さん「アブラナ科の植物の近くの木やコンクリート塀にモンシロチョウのサナギがついているのもよく見られます」

モンシロチョウの幼虫(PIXTA)
「また、キャベツなどの葉には冬が来る前にサナギにならなかったモンシロチョウの幼虫が、幼虫のままなんとか冬越しをするのを見つけることがあります」 「蛹や幼虫で冬を越したモンシロチョウは春になると羽化します。モンシロチョウは春から秋までの間に数回代がわりをしながら長く見られる昆虫です。寒い冬の時期には蛹の姿で数カ月過ごしますが、暖かい時期の蛹の期間は数週間というのも面白いですね」
【腰塚さんの昆虫採集ミニ知識】寒い時期はカラダの中の血液の成分を変えて冬越しする昆虫も! 「チョウの幼虫はカラダが凍らないように、体内の血液を糖分が高いものにおきかえてじっとしています。冬越し中のサナギや幼虫を暖かい室内に持ち込むと、冬越ししていた昆虫が春がきたと勘違いして止めていた成長を再開してしまいます」 「春になったと勘違いした昆虫を再び屋外に出しても、またもとのように凍らないようにカラダを変えるのは難しく、エネルギーを消費して死んでしまいます」
冬越し中のモンシロチョウのサナギや幼虫を見つけたらどうする? 飼う? 放す?
腰塚さん「寒い冬の屋外から持ち込んだモンシロチョウのサナギも屋内の暖かいところに置いておくと、春と勘違いして羽化してしまいます」 「羽化したモンシロチョウに脱脂綿にポカリスェットやアクエリアスのスポーツドリンクを染み込ませて与えることで育てることもできます。しかし、羽が傷ついたりと個体が消耗してしまいますので、家庭で育てるのは難しいと考えた方が用意です。冬の昆虫採集で見つけたサナギは、見つけた場所で観察し、なるべく持ち帰らないのがおすすめです」 12月から2月にかけて関東の公園や草原でよく見られる昆虫を紹介しました。ぜひ親子で楽しく昆虫採集をしてみてくださいね。
【取材をお願いした】足立区生物園

・東京都足立区保木間2-17-1 ・月曜日、年末年始(12月29日~1月1日)定休 ※休日及び都民の日(10月1日)は開園し、翌平日に休園 ・03-3884-5577 ・開館時間 9:30~17:00[2月-10月]9:30~16:30[11月-1月] ※入園は閉園時間の30分前まで ※足立区の定める夏休み期間中は17:30まで開園 足立区生物園
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