小学生の「子ども記者」がパラ陸上大会とアスリートに取材! 達成感と学びに満ちた1日を密着レポート

小学3年生~5年生の子ども記者が、パラ陸上のアスリートが集う日本最高峰の大会を取材! 子ども記者はプロのアドバイスを受けながら、事前に質問を考えるなどの準備を重ねて、パラ陸上のアスリートにインタビューを行いました。今回は子ども記者の1日に密着。競技するアスリートの真剣勝負や、子どもたちが記者として体験したり、学びにつながったところをレポートします。

パラ陸上の日本代表が決まる大会を子ども記者が取材!

子ども記者が取材するのは、兵庫県の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われる「WPA公認 第34回日本パラ陸上競技選手権大会(主催:一般社団法人日本パラ陸上競技連盟)」です。この大会は「パリ2023世界パラ陸上競技選手権大会」の日本代表の選考会でもあり、日本最高レベルのパラ陸上選手が世界大会の切符をかけて挑戦する場です。

「パラ陸上とは?」

パラ陸上とは、障がいを持つ人が行う陸上競技です。競技は100mや走り幅跳びなど、通常の陸上競技とほぼ同じですが、障がいのある部位や種類によって、細かくクラス分けがされており、選手が同じクラスのなかで平等に競いあえるルールになっています。クラスについての詳細はパラ陸上競技公式ガイドブックをご覧ください。

©日本パラ陸上競技連盟 「パラ陸上競技公式ガイドブック」より引用

オンラインで記者の仕事や取材について学ぶ

子ども記者に選ばれたのは、兵庫県神戸市などの小学3年生と5年生4人です。当日、子ども記者は保護者に見守られながらプロのライターと共に行動。パラ陸上選手に取材をします。

とはいえ、いきなりパラ陸上のアスリートを目の前にして質問をするのは大人であっても難しいこと。そこで子ども記者は事前に、オンラインで記者の仕事はどんなことをするのか、取材をするために必要な考え方などを学び、実際にインタビュー相手を想定して質問を考えました。

質問を考えるのにまず大事なのは、選手を知ること。インターネットを使い、パラ陸上選手がパラ陸上を始めた理由や今までの大会の結果、取材記事やSNSでの発信などを調べていきます。

「選手のすごいところ」「好きなところを見つけ、そこから質問を考えよう」と、スタッフに教えてもらい自分の言葉で質問を考えていきました。その後、考えてみた質問を持ち寄ってもう一度オンラインで打ち合わせ。計2回のオンライン打ち合わせで質問内容を固めて、本番にのぞんでいます。

若生裕太選手(やり投げ F12 写真左)を取材する、はばら やまと記者(写真中央)と つじた まそら記者(写真右)。やまと記者はパラ陸上選手のことを調べるうちに、その選手のことが好きになって折り紙でお花を作ってきました。

記者と競技を応援

取材当日、勝利者の像前に集合して説明を受けたあと、いよいよ観覧席へ。子ども記者たちは全員、パラ陸上を生で観るのは初めてとのこと。今までパラ陸上選手が出ていた大会をネットで見ていたため、生で観戦できることを楽しみにしている様子でした。

勝利者の像前で説明を聞く子ども記者

観覧席に座って取材する選手への質問を確認したり、カメラの使い方を教えてもらったり。女子走り幅跳びが始まると、子どもたちの視線はフィールドのパラ陸上アスリートに釘づけになりました。

パラ陸上のアスリートたちが力を出し切っている姿に、身を乗り出して拍手をする姿も。「みんな違う飛び方をしている」「義足の人も足がある人に負けないくらい、練習していたのが伝わってきた」と話していました。

いよいよパラ陸上選手へ取材

子ども記者のインタビューは、競技を終えた選手がほかのメディアのインタビューや取材を終えて帰るところに声をかけます。取材するパラ陸上選手のスケジュールの都合上、2人ひと組で2つのチームを作り取材をすることにしました。取材する選手の競技を観戦したら、競技を終えたパラ陸上選手が出てくる関係者しか入れない場所へ移動します。

三本木優也選手(100m T45 写真右)を取材しているのは、おおしまかなみ記者(写真左)と きのした こうき記者。早く走るための練習方法を教えてもらいました

パラ陸上選手が姿を表すと、「子ども記者です。取材をお願いします」と声をかけるところからスタート。次に「子ども記者の〇〇です」と自分の名前を伝えます。質問の前に選手の競技を見てすごかったところや、事前に調べた中で「すごい」と思ったところを伝えてから取材を進めていきました。

井谷俊介選手(100m T64 写真左)を取材する、きのした こうき記者(写真中央)と、おおしまかなみ記者(写真右)。

パラ陸上選手たちは競技を終えたばかりの疲れも見せず、子ども記者のどんな質問にも気さくにやさしく、真摯に応じてくれました。質問に応じて義足をはずして触らせてくれるシーンも。子ども記者は初めて見る義足にとまどい驚きながらもさらに質問を重ねていました。

前川楓選手(走り幅跳び T63 写真左)を取材する、きのした こうき記者と、おおしま かなみ記者。

どのパラ陸上選手も子ども扱いせず真剣に目を見て答える姿勢に、子どもたちも背筋が伸びる思いだったようです。選手の答えにメモを取ったりさらに質問をしたり、現場でしか味わえない空気感を存分に味わった様子。サポートするスタッフもびっくりするほど堂々とした受け答えをしていました。短時間の中にも選手との触れ合いから学ぶことは大いにあったように感じます。

突然のスケジュール変更にも臨機応変に対応!

実際の取材現場では当日のスケジュール変更はよくあること。子ども記者の取材も例外ではありませんでした。事前に調べていた選手の取材がキャンセルになり、急遽違う選手を取材することに。スタッフから「この選手を取材することになったよ」と伝え、スマホで情報を集めると、すぐに質問を考えることができていました。

オンラインで事前に取材の仕方を学び、考えるベースができていたからこそ短時間の間に質問を考えることができたのでしょう。学んだことをすぐに活かせるのは素晴らしいことですね。

待つのもお仕事のひとつ

取材を終えると忘れないようにすぐに、メモを取ります。

競技を終えた選手が出てくるのを待つことも記者の仕事のひとつ。待っている間は撮影の練習をしたり、質問の内容を再確認したりして過ごします。

日本パラ陸上競技連盟の増田明美会長から激励も!

競技を終えたパラ陸上選手が出てくるのを待っていると、一般社団法人 日本パラ陸上競技連盟の会長で元マラソン選手としても知られる増田明美さんから激励が!

子ども記者の質問が書かれたシートを見た増田会長には「いい質問だね」、さらに「選手たちもみんなに取材されると元気が出たよ。ありがとうね」と声をかけていただきました。子ども記者たちは誇らしい表情になっていました。「来年の世界選手権の取材にもきてね」と声がかかり、子ども記者への期待の大きさが感じられました。

バックヤードツアーで大会を運営する人たちの仕事を見学

競技がすべて終わってから特別にバックヤードを見学する時間を設けていただきました。普段は見ることができない競技場の下へいくと、大勢の大人が片付けをしていました。

大会を成功させるために、観覧席から見えないところで仕事をしている人がたくさんいます。記録をとる人、全体の進行を見て安全に競技できるように考える人、選手の車椅子を預かる人など、多くの人の支えがあって大会は運営されていることを知ることができました。

選手たちが競技していたトラックにも入ることができました。広いトラックに立つと思わず走り出す姿も。子ども記者の元気いっぱいの姿にまわりの大人から笑顔がこぼれます。

みんなでパラ陸上を観にいこう!

取材は10時〜15時までの長丁場ではありましたが、最後まで見ること聞くことすべてに興味を持っている様子が印象的でした。一緒に過ごすうちに子ども記者同士も仲良くなり、わきあいあいとした雰囲気になるのも子ども記者ならではの光景でした。

今回、パラ陸上を見た子どもたち。走り幅跳びの観戦では踏み切り板をはみ出してしまうと赤い旗が出て記録が残らないことを知り、赤い旗が上がると「あー!」と、まるで自分が選手になったかのように悔しがる姿も。選手が全力でがんばる姿に心動かされている様子が伝わってきます。前のめりに観戦する姿に、テレビやネットでは味わえない生の迫力を味わっていることを感じました。

パラ陸上アスリートに取材するときは、物怖じせず堂々と質問し事前に準備していなかった質問も飛び出していました。競技が終わり、いろいろな思いを抱えている選手から笑顔を引き出せたのは子ども記者ならではだと思います。

大人のサポートを受け、大役を終えた子ども記者たち。普段感じることができない雰囲気や、パラ陸上のアスリートとの触れ合いがこれからの人生の中で輝くものとなってほしいです。

2024年の5月17日(金)~25日(土)には、東アジアで初となる神戸2024世界パラ陸上選手権大会が行われます。日本のみならず、世界中のパラ陸上選手たちによる世界最高の競技が日本の神戸で見られるのはとても大きなチャンスといえます。

「未来へいこーよ」では、子ども記者がインタビューした記事も掲載しています。まずはこちらでパラ陸上選手の人となりや競技の魅力を知っていただき、神戸2024世界パラ陸上選手権を観に行きましょう! 事前に出場する選手や競技を調べていけば、大会がより楽しめること間違いなしです!

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