近年は記録的な猛暑が続き、今年の夏も厳しい暑さになることが予想されています。「暑いから外はやめておこう」が口ぐせになりそうな季節、子どもの外遊びをどう考えればいいか悩む保護者の方も多いのではないでしょうか? 2026年6月25日、ロッテは暑さで失われがちな夏の体験を取り戻す「クールシェルタープロジェクト」の始動を発表しました。7月下旬から渋谷や江ノ島などに、涼しく過ごせる「涼スポット」が登場します。この記事では、発表会で示されたプロジェクトの内容をレポートするとともに、評議会に参加する東京科学大学・藤原武男教授への取材から「暑い夏も外で過ごせる居場所」が子どもにとってどんな意味を持つのかもお伝えします。
「暑くて外で遊べない」夏に、涼しく過ごせる「居場所」を
あまりに気温が高い日が続くと、外に出かけるのもおっくうになりますよね。熱中症も心配で、子どもを外で遊ばせるのはつい気が引けてしまう。そんな保護者の方も多いのではないでしょうか。実際、ロッテの調査では、真夏の暑さで「外出をやめる・時間を短くする」ことが増えたと答えた人が7割を超えました。

子育て世帯には、より切実な声もあります。子ども連れの親の3人に1人(33.8%)が「お出かけの途中に休める日陰が少なくて困る」と答えています。背景にあるのは、日本の夏そのものの変化です。「春と秋が短くなり、夏と冬だけの二季になりつつある」と言われるほど、夏は長く、厳しくなっています(気象学が専門の三重大学・立花義裕教授によると、この約40年で夏の期間はおよそ3週間延びたそう)。涼しく休める場所があるかどうかは、いまや親子のお出かけのしやすさを大きく左右しているのです。
そんな夏の風景を変えようと、ロッテが2026年から始めるのが「クールシェルタープロジェクト」です。微細氷を使ったアイス「クーリッシュ」「爽」で知られるロッテが、アイスという「商品」だけでなく、涼しく過ごせる「体験」や「場所」そのものを街に増やしていく取り組み。2026年7月23日から、暑さの影響を受けやすい屋外スポットに、大型シェルターやパラソルといった「涼スポット」を展開します。
発表会では、ロッテ マーケティング本部の渡辺和哉さんが、プロジェクトの背景や狙いを説明しました。

第一弾は渋谷・MIYASHITA PARKと江ノ島・片瀬西浜
家族でのお出かけ先として気になるのが、展開スポットです。第一弾は、渋谷のMIYASHITA PARKと、神奈川・新江ノ島水族館にほど近い片瀬西浜海水浴場の2か所です。

MIYASHITA PARKでは、芝生ひろばやスケート場に大型シェルターを設置します(7月23日〜8月19日)。都心のまんなかに、暑さをしのいで休める場所が生まれます。7月24日・25日にはアイスの無償配布(約1万個)も予定されています。片瀬西浜海水浴場では、強い日差しを避けて過ごせるオリジナルデザインのパラソルを有償貸し出しを実施し、利用者にはアイス「クーリッシュ」「爽」を提供します(7月24日〜9月13日)。
このほか、プロ野球・千葉ロッテマリーンズと連携した日よけグッズの展開も。さらに8月からは、大阪・なんばや、暑い町として知られる埼玉・熊谷でも展開予定で、こちらは7月末に詳細が発表されます。木陰のベンチでアイス片手にひと息つく親子の姿が、この夏あちこちで見られるかもしれません。

そしてこの取り組みで注目したいのが、一過性のイベントで終わらせない仕組みづくりです。ロッテは企業・社会団体・専門家が連携する「クールシェルター評議会」を発足し、実証実験やガイドラインづくりを通じて、取り組みの輪を全国へ広げていくとしています。有識者として参加するのが、気象学の立花義裕教授と、子どもの健康を専門とする東京科学大学・藤原武男教授です。

専門家に聞く 猛暑と子どもの育ち 藤原武男教授インタビュー
ここからは、発表会で「発育における外遊びの価値、猛暑が身心に与える影響」について語った、東京科学大学の藤原武男教授のお話です。発表会での講演内容に加えて、終了後に個別取材させていただいた内容を合わせ、インタビューとして再構成しています。藤原教授は公衆衛生学・社会疫学を専門とし、子どもの健康を「社会や環境」という大きな単位で、長い時間軸から見つめてきた研究者です。

藤原教授がこのテーマに取り組む背景には、子どもの貧困や健康格差の研究があります。「もともと、家庭環境が厳しい子とそうでない子の健康の差を研究してきました。そこに気候変動が、社会環境の違いを超えて全員に影響を与えてくる。しかも、暑さによる影響は困窮している層ほど強く受けてしまうんです」。誰にとっても平等に降りそそぐように見える夏の暑さも、その対処にはお金や環境の差が出ます。藤原教授はこれを「環境正義の観点から見過ごせない問題」として捉えています。
外で遊ぶと、子どもにどんないいことがある?
そもそも、子どもが外で遊ぶことには、どんな良さがあるのでしょうか。藤原教授はまず、体への効果を挙げます。「体を動かすので、肥満を防げることはほぼ間違いありません。それから、外で太陽を浴びることは近視の予防につながることも、世界中の研究でわかっています」。
さらに、心の育ちにも目を向けます。「海外のデータですが、外遊びをすることで問題行動が減るといわれています」。ここでいう問題行動とは、すぐに怒ったり手が出たりといった外に向かうものから、強く落ち込んだり不安になりやすかったりという内に向かうものまで含む、幅広い状態のこと。その理由のひとつとして、藤原教授は「1人ではなく、いろんな人と遊ぶこと」を挙げます。「外に出ると、ふだん接する家族以外の人と関わる機会が生まれます。そこで育まれる社会性もあるでしょうし、場所の広さや人数といった制限の中で、どう折り合いをつけて遊ぶか。そうしたことも、外に出ないとなかなか育まれないんです」。
体を動かすだけでなく、外には子どもが夢中になれる「好き」との出会いも転がっています。虫や草花、見たことのない遊び。そうした小さな発見の積み重ねも、子どもの「生きる力」を育てていきます。
「逆境」が子どもを伸ばすには「支え」が要る
外で過ごす経験は、子どもの「生きる力」とも深く関わっています。藤原教授が注目するのは、レジリエンス、つまり逆境を乗り越える力です。これはIQのような認知の力ではなく、たくましく生きていくための「非認知能力」と言われます。「外で過ごす機会が多い子ほどレジリエンスが高い割合が多く、機会が少ないほど低い子の割合が多い、という関係が見えています。これがなかなか強い関係なんです」。
ここで大切なのは、逆境がそのまま子どもを強くするのではなく、それを受け止める「支え」があってはじめて、成長の糧になるということです。「つらい経験そのものが子どもを強くする」と考えると、この大事な前提が抜け落ちてしまいます。子どもにとっての「逆境」には、暑さもあれば、家庭の経済的な厳しさ(困窮)もあります。支えが足りないまま逆境だけが重なると、慢性的なストレスとなって子どもの心と体をすり減らしてしまいます。実際、困窮している家庭の子どもほど、暑さによる緊急入院が多いこともわかっています。経済的な余裕のなさという逆境に、暑さという逆境が重なり、それを和らげる支えも乏しい。そうしたとき、暑さは子どもの健康をより強く損なってしまうのです。
その「支え」とは、信頼できる大人や安心できる居場所、適度な休息のこと。暑さという逆境は消せないけれど、誰もが使える「涼める居場所」を社会の側から用意することは、その「支え」を配ることにつながります。
「暑くて遊べない夏」がふつうになる前に、できること
「暑い時間を避けて遊ばせればいい」と思うかもしれませんが、藤原教授はそこに落とし穴があると言います。「朝7時でも、もう十分暑いですよね。5〜6歳の子がひとりで早朝に遊びに行くのは難しいし、夜遅くに小さな子を遊ばせるのも考えにくい」。そもそも多くの家庭では、子どもは大人の許可や付き添いがないと外に遊びに行けません。「いつ・どこで遊ぶか」を自分では決められず、大人の生活リズムに左右されてしまうのです。
だからこそ、個人の工夫だけに任せず、社会の側に「涼しく遊べる場所」という仕組みを用意することが大切になります。
一方で藤原教授は、子ども自身が持つ力を信じてもいます。「東日本大震災やコロナ禍で子どもたちがどう過ごしたかを長く追ってきましたが、子どもは想像以上にたくましい。仮設住宅が立ち並ぶような場所でも、自分たちで遊び場を見つけて遊ぶ。それが本来の子どもの姿なんです」。必要以上に心配しすぎるのではなく、子どもが力を発揮できる環境を整えること。「暑い時期にはリスクがあることを子どもと一緒に理解しながら、熱中症対策をしたうえで、木陰などで外遊びの機会をつくってあげる」ことが大切だと話します。
あわせて藤原教授は、動画の視聴は1日2時間、長くても3時間以内に、とすすめます。子どものメディア時間については、日本小児科医会も「テレビやゲームなど、すべてのメディアに触れる総時間を1日2時間まで」を目安として示しています。1日24時間から睡眠や食事、園・学校、友だちと過ごす時間を差し引くと、自由に使える時間はおよそ2時間というのがその考え方です。長い動画視聴が外遊びや睡眠、人と関わる時間を押しのけてしまうことへの心配が、藤原教授の言葉からもうかがえます。「外で過ごす時間が増えれば、結果的に動画を見て過ごす時間を減らすことにもつながります」と藤原教授は話します。
地球規模の暑さは、すぐには止められません。それでも、暑さ対策が「当たり前」になる仕掛けをみんなで考えていくことはできます。藤原教授は、クールシェルターのような取り組みが、その小さなきっかけになることを期待していました。子どもが暑さの中でも外遊びの価値を失わずに夏を越えていける社会へ。その第一歩として「涼める居場所」を増やしていく試みに、これからも注目していきたいと思います。
取材を終えて
正直に言うと、僕自身も「これだけ暑いと、外遊びは我慢してもらうしかないのかな」と思っていました。気温が上がりすぎると出かけるのもおっくうになり、熱中症も心配でつい気が引けてしまう。多くの保護者に共通する実感ではないでしょうか。けれど藤原教授の話を聞いて、暑さは誰のせいでもなく、それでも確実に子どもたちから外遊びの時間を奪っていると気づかされました。だからこそ、個々の家庭の頑張りや我慢に頼るのではなく「涼しく過ごせる場所」を社会の側から差し出すという発想に、希望を感じます。この夏、近くにクールシェルターのスポットができたら、ぜひお子さんとの「休憩ポイント」として立ち寄ってみてください(KAZ)。
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