夏休みのある日、東京・浅草にあるバンダイ本社に、小学生18人が“記者”として集まりました。取材をするのは「おもちゃがどうやって生まれているのか?」です。子どもたちは記者として、プロの新聞記者から取材のコツを教わり、たまごっちの企画開発担当者に質問し、最後は自分だけの新聞を作ります。わずか2時間半で、新しいたまごっちたちの検討から新聞づくりまで手がけた取材体験イベント「あつまれ!バンダイこども記者」の一日を、未来へいこーよがレポートします。
「あつまれ!バンダイこども記者」とはどんなイベント?
「あつまれ!バンダイこども記者」は、株式会社バンダイと株式会社BANDAI SPIRITSが主催する取材体験イベントです。子どもたちが“記者”となって両社の事業を深く取材し、楽しみながら新しい発見をすることで、想像する力や発信する力を育てることを目指しています。
このイベントは、両社の企業スローガン「夢・クリエイション」を未来につなぐためのサステナビリティプロジェクト「未来・クリエイション」の一環です。「子どもたちへの体験価値の創出」という想いのもとで開かれ、協力には、東京新聞の「東京すくすく」も加わっています。対象は小学4年生から6年生と保護者。会場はバンダイ本社で、参加は無料です。記念すべき初回のこの日、18人の子ども記者が集まりました。
まずはプロに学ぶ、取材の心得「見て、聞いて、書く」
最初の時間は、取材の心得の講義です。教えてくれたのは、記者歴20年の東京新聞の記者。子どもたちに、こう語りかけます。
「取材とは、材料集めです」
料理がどんなに上手な人でも、冷蔵庫が空っぽでは何も作れません。それと同じで、新聞も材料となる情報がなければ書けない。だから取材が大切なのだ、という話です。やることは3つ。しっかり見て、しっかり聞いて、しっかり書く。どれも学校や習い事で普段から使っている力で、特別な才能はいらないと、記者は子どもたちの背中を押しました。
質問のコツも教わりました。「びっくりしたときが、質問のチャンスです」。頭の中に「!」が浮かんだら、それが質問の種になる。それでも聞きにくいときは「もっと詳しく教えてください」という、便利な魔法の質問を使えばいい。メモは他人に見せるものではなく、あとで自分が思い出すためのものです。とくに忘れやすい「数字」と「名前」は、しっかり書きとめておく。プロの技が、やさしい言葉で子どもたちに手渡されていきました。
この日は子ども記者18人に、先生役の記者3人を加えた21人が、ひとつのチームとして取材に臨みます。
バンダイヒストリーミュージアムで「本物」に触れる
心得を教わったら、まずは2階のバンダイヒストリーミュージアムへ。歴代の商品やバンダイの歴史が、ずらりと並んでいます。子どもたちは展示ケースをのぞき込み、気になったことをさっそくメモにとっていきます。教わったばかりの「見て、聞いて、書く」を試す、最初の時間になりました。本物の商品を前にすると、子どもたちの表情も引きしまります。

30周年の「たまごっち」は、どうやって生まれるの?
会場に戻ると、たまごっちの企画開発担当者から、おもちゃが生まれるまでの話を聞きました。たまごっちは1996年の発売から、今年で30周年。長く愛されてきたおもちゃが、どんな道のりで作られているのか? 担当者は、その裏側を丁寧に教えてくれました。

(左から)たまごっちの企画開発担当者のひなたさん、ゆいさん、ゆゆさん
まずは「世界観づくり」から始まります。たまごっちが暮らす場所や、食べるもの、遊びの中身までを細かく想像して決めていくと、まるで本当に生きているように感じられるのだそうです。そこから新しいたまごっちや遊びのアイデアを出し合い、良いものを選び、見た目や性格を一体ずつ考えていきます。
次にたまごっち本体の試作を作って色や形、持ちやすさを何度も確かめ、安全のチェックを重ね、店頭で手に取ってもらうためのパッケージまで作り込む。ひとつのたまごっちが子どもたちのもとへ届くまでには、本社だけで約30人以上、海外や工場のスタッフも入れると約50人以上が関わっていると聞き、子どもたちからは驚きの声があがりました。
パッケージのデザインも、大切な仕事のひとつです。棚に並んだときにひと目で「たまごっちだ」と伝わり、世界観が感じられるように、色やたまごっちたちの見せ方を工夫していると教えてくれました。

作るのにかかる時間も、商品によってさまざまです。カラー液晶機種のたまごっちなら約1年から1年半、ぬいぐるみなら8〜9カ月ほど。長い時間をかけて、たくさんの人の手を通って生まれてくることが伝わってきます。
担当者が繰り返し語ったのは、変えるものと変えないもののバランスでした。卵のような丸い形と、3つのボタン。この「たまごっちらしさ」は守り続けながら、遊びや驚きは新しく更新していく。だからこそ、30年ものあいだ愛され続けているのだといいます。
いよいよ取材。「新しいたまごっち」を3チームで考える
企画開発担当者の話を聞いたあとは、いよいよ子どもたち自身の取材の時間です。子ども記者たちは、企画開発担当者に自分から質問をぶつけます。考えてきたアイデアを話して、ほめてもらう子もいました。プロと同じ目線で、おもちゃづくりに向き合っていきます。

続いて、6人ずつ3つのチームに分かれて、「新しいたまごっち」を考えます。相談しながら、世界観を描き、名前をつけていく。同じテーマでも、チームや人によって出てくるアイデアはまったく違います。

デザインのヒントにと、Tamagotchi Paradiseの試遊機も一人ひとりに配られました。手にとって動かしてみると、どんな動きをするのか、何ができるのかがよく分かります。しばらく夢中になっている子もいました

発表の時間には、それぞれのチームが考えたたまごっちを見せ合いました。本体のカラーは、みんなで相談して決めます。時間が限られているので、並んだ色を見ながら、全体に合いそうなものをみんなで指さして投票。候補を2つほどに絞って、もう一度投票する。短い時間でも、話し合って一つにまとめる経験ができました。

集めた材料を、自分だけの新聞に
いよいよ、この日の締めくくりとなる新聞づくりです。ここでも記者が、記事のまとめ方を教えてくれました。

ノートには今日の体験での気づきがたくさん書かれていました
最初にやることは「思い出す」こと。メモを見返しながら、今日どんなことがあったかを振り返ります。次に「何を書くか」を決めます。家の人や友達に「こんなことがあったよ」と話したくなること。その中から、自分がいちばん伝えたいものを選びます。
見出しには2つの役割があると教わりました。ひとつは、読みたいと思わせる「インパクト」。もうひとつは、事実をしっかり確認する「正確さ」です。書き出しのリードは、記事全体を短くまとめた文にする。もし難しければ、映画の予告編のように「これからこんなことが書いてありそう」と思わせる書き方でもいい。記者は、それを「予告編リード」と呼んでいました。
制限時間の中で、最後まで新聞を仕上げられたのは数人でした。間に合わなかった子は、宿題として持ち帰り、後日あらためて新聞を送ります。短い時間で完成させた子のがんばりには、目を見張るものがありました。子どもたちの新聞は、バンダイや東京新聞の紙面やサイトに載る予定だそうです。
「バンダイこども記者」認定式と、子どもたちの声
すべてのプログラムを終えた子どもたちには、「バンダイこども記者」の認定証が手渡されました。さらに、記念品のプレゼントも。子どもたちの笑顔が広がりました。

参加した さくらこ さんは、歴代のたまごっちを参考にした新しいたまごっちを考えるワークと、質問コーナーを入れた新聞づくりが「おもしろかった」と話してくれました。自分で内容を考えて形にできたことが楽しく、友達にも話したいそうです。イベントはSNSで見て知り、応募したとのこと。将来は、声をかけたりするのが得意なので、ものを売ったり伝えたりする仕事に興味があると、はきはきと答えてくれました。おもちゃが好きという入口から、自分の得意や将来まで、考えが広がっていく。一日の体験が、子どもの世界をぐっと押し広げていました。
たまごっちが30年、愛され続ける理由。企画開発担当のひなたさんに聞く
イベントのあと、たまごっちの企画開発担当のひなたさんに、あらためて話を聞きました。ひなたさんは、子どものころからのたまごっちファンです。

「たまごっちの企画開発に携わりたくて、この会社に入りました」
小学4年生から6年生のころ、友達が少しずつたまごっちから離れていっても、ひなたさんはずっと遊び続けていたといいます。では、30年ものあいだ支持され続ける秘密は、どこにあるのでしょう? ひなたさんの答えは、シンプルでした。
「大事に守り続けているもの、たまごっちが愛されているポイントをちゃんと理解して、変えずにやってきた。それが、長く愛され続けている理由だと思います」
その上で、驚きは常に新しくしていく。だから新しいファンも入ってくるのだと続けます。たまごっちの魅力はどこにあるのか? そう聞くと、ひなたさんは「友達みたいな感覚」と表現しました。
「たまごっちごとに、好きな食べ物やお庭の変化に個性があるんです。この子にはこれをあげると喜ぶんだ、と試しているうちに、生きている一人の子なんだと感じられて、より友達に近い存在になっていきます」
この日、子どもたちから「これ知ってる」「これ遊んだよ」と声をかけられたことが、うれしかったといいます。普段はユーザーと直接触れ合う機会が少ないぶん、自分たちの作ったものが子どもたちの手元に届いていると実感できた。「がんばってきてよかった」と、ひなたさんは笑顔で振り返りました。
取材を終えて
2時間半という短い時間に、取材の心得、ミュージアムの見学、企画開発担当者への取材、新しいたまごっち制作、新聞執筆と盛りだくさんの一日でした。聞いた話をメモにとり、限られた時間で自分のアイデアを形にして、緊張する発表の場でも自分の意見を言うなど、子ども記者たちの真剣で一生懸命な姿がとても印象に残りました。大人から見ても相当に頭を使ったはずですが、終わった後の彼らを見ると、晴れやかな顔をしている子ばかりでした。本物のおもちゃの企画開発担当者と新聞記者の「プロ」に出会って質問し、自分の考えを認めてもらえた経験は、教室の中ではなかなか味わえないものです。子どもの「知りたい」と「伝えたい」が動き出す瞬間を、間近で見せてもらいました。(KAZ)
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©BANDAI
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