スマホやAIに聞けば、たいていのことはすぐに答えが返ってきます。便利になった一方で、自分の頭で空想する時間は少しずつ減っているのかもしれません。そんな今、子どもが思い描く“かいじゅう”を鋳造技術で本物の立体像にしてしまう、ユニークな企画が始まりました。静岡県の木村鋳造所が創業100周年を記念して立ち上げた「ぜつめつしそうな 妄想かいじゅうずかん」です。応募は2026年9月30日まで。
「妄想かいじゅうずかん」ってどんな企画?
「ぜつめつしそうな 妄想かいじゅうずかん」は、2027年に創業100周年を迎える木村鋳造所の記念プロジェクトのひとつです。
全国の子ども(18歳以下)が自由な発想で描いた「妄想かいじゅう」のイラストを募集し、特設サイト上で図鑑として公開します。さらに、鋳造業界でシェアトップクラスを誇る木村鋳造所が、その絵をもとに立体像を作り、展示まで行います。

頭の中にすんでいる“かいじゅう”を、自由に描いてみよう
紙の上に生まれた空想の生き物が、鉄の立体になって目の前に現れる。想像するだけでわくわくしませんか? 木村鋳造所は、発泡スチロールの型に溶かした鉄を流し込む「フルモールド鋳造法」や、いち早く導入した3Dプリンタなど、確かなものづくりの技術で知られています。その技術が、子どもの妄想を形にしてくれます。
木村鋳造所はこの企画を「考えなくても、答えがでる。こんな時代に、妄想する時間はどんどん失われていく」という問題意識から立ち上げたといいます。
この企画のTVCMで映像演出を手がけたアートディレクターの清水貴栄さん(映像作家・コラージュ作家)は、こんな原体験を語っています。
「子どもの頃、共働きの両親の帰りを待ちながら、リビングで天井の木目をぼんやり眺めていました。年輪の線を目で追っていると、魚や怪獣など、いろいろな生き物に見えてきました。大人になってキャラクターデザインの仕事をする今、あの時間が想像力を育ててくれたのかもしれないと、このプロジェクトを通して感じます」
ぼんやり眺める時間や、答えの出ないことを考える時間。効率だけを見ると無駄に思えるそんなひとときが、子どもの想像力をそっと育てているのかもしれません。
世界にひとつの“かいじゅう”を応募してみよう
まずは、子どもの頭の中にすんでいる“かいじゅう”を描いてもらいましょう。「どんな見た目をしているのかな?」「なにを食べて、どこにすんでいる?」と親子で会話しながら描いていくと、その子だけのかいじゅうが少しずつ姿を現してくるかも?

描いた絵は特設サイトから投稿。図鑑として公開されます
| 募集期間 | 2026年7月8日(水)〜9月30日(水)予定 |
|---|---|
| 対象 | 全国の子ども(18歳以下) |
| 内容 | 自由な発想で描いた「妄想かいじゅう」のイラスト |
| 応募方法 | 特設サイトから投稿 |
用意されている賞
うれしいのは、木村鋳造所賞に選ばれた3人は、自分が描いた“かいじゅう”が本物の立体像になること。ほかにもさまざまな賞が用意されています。
| 木村鋳造所賞(3名) | 賞状/受賞作品の立体像/妄想かいじゅうずかんグッズ/こども商品券10,000円分 |
|---|---|
| 特別賞(14名) | 賞状/妄想かいじゅうずかんグッズ/こども商品券5,000円分 |
| 参加賞(先着500名) | 妄想かいじゅうずかんオリジナルポーチ |
賞のあるなしにかかわらず、描いた“かいじゅう”が図鑑に並ぶこと自体が、子どもにとってうれしい思い出になりそうです。
同時に公開されたTVCMやプロジェクトムービーも見どころです。子どもたちが頭の中にしかいない“かいじゅう”を妄想し、実際に体で演じてみるという、正解のない世界を楽しむ内容になっています。応募の前に親子で見てみると、妄想がふくらみそうです。
ほかにも「バナナかいじゅう」篇や「アイスたべすぎ」篇など、短いCMも公開されています。企画の詳細や応募方法は、「妄想かいじゅうずかん」特設サイトから確認できます。
専門家は「妄想」をどう見ている?
この企画には、造形教育や美術教育の専門家がプロジェクトアドバイザーとして加わっています。
聖心女子大学 名誉教授で、絵本学会会長・美育文化協会理事も務める水島尚喜先生は、子どもが妄想する意味をこう話します。
「この現実世界に存在する無駄やナンセンスを原資として妄想し、多様なイメージを生み出す子どもの姿の中に、人類の創造力の秘密が埋め込まれているのです」
静岡大学 教育学部教授で、美術教育やホビー研究を専門とする芳賀正之先生は、企画の広がりに期待を寄せます。
「木村鋳造所の技で命を吹き込まれた妄想の生き物たちが立体となって飛び出し、ふと私たちのまちに現れるかもしれません」
ワークショップや展示会へと広がっていく
「妄想かいじゅうずかん」は、募集だけで終わりではありません。今後は次のような展開が予定されています(いずれも予定で、変更となる可能性があります)。

学校でのワークショップでも、子どもたちが思い思いのかいじゅうを考える
- ▶ 2026年7月 小学校での妄想ワークショップ開始(学校からの募集も検討)
- ▶ 2026年8月 グラフィック公開、CM第二弾公開、簡易レポート公開
- ▶ 2026年10月 教材化に着手(完成後に公開)
- ▶ 2027年2月 プロジェクトムービー第二弾公開。2月以降、展示会を実施
学校での授業や展示会へと広がっていく予定で、応募した“かいじゅう”に、これからも出会える機会がありそうです。
この夏、家庭で「妄想」する時間を
正解のない問いに、じっくり向き合う時間。それは、これからの時代にこそ大切にしたい時間なのかもしれません。子どもが思い描く“かいじゅう”に、正解も不正解もありません。うまく描けなくても大丈夫です。自由に描いた一枚には、その子の「好き」やその子らしさがにじみます。この夏、子どもの妄想にそっと耳をかたむけて、その世界を一緒に楽しんでみませんか? もしかしたら、その一枚が立体像になって、まちのどこかに現れる日が来るかもしれません。
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