家族が同じ部屋にいても、それぞれが自分の画面を見ている。そんな時間が増えたと感じることはありませんか? 体を動かして一緒に笑う時間は、たとえ短くても家族の記憶に残ります。コントローラーを持たず、体の動きだけで遊ぶゲーム機「Nex Playground」。世界で100万台以上を販売し、2027年に日本での発売を予定しています。広告もゲーム内課金もなく、カメラの映像は本体の外に出さない仕組みです。東京ゲームショウ2026の会場で開発元Nexの経営陣3人に、誕生のきっかけと、子どもが安心して遊べる設計へのこだわりを伺いました。

Nex 共同創業者兼CEO デイビッド・リーさん プロフィール
Apple でシニアエンジニアリングマネージャーを務め、iWork for iCloud などWeb版の仕事効率化アプリの開発チームを率いる。それ以前には自ら創業したオンライン表計算サービス EditGrid を Apple に売却。Nex では「HomeCourt」「Active Arcade」「Party Fowl」「Starri」などのモーション体験を世に送り出してきた。

Nex プレジデント兼インターナショナル統括 トム・カンさん プロフィール
経営戦略、事業開発、トラスト&セーフティ、海外展開などを統括。Nex 参画以前は Walmart でバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとしてイマーシブコマース事業を牽引し、Amazon Games、Amazon Web Services、Disney Interactive でも要職を歴任した。

Nex 日本法人ゼネラルマネージャー 山本恵美子さん プロフィール
株式会社セガでゲームデザイナー兼ディレクターとしてキャリアをスタートし、ディズニーのゲーム「アイラブミッキーマウス ふしぎのお城大冒険」などを手がける。ウォルト・ディズニー・ジャパンではスクウェア・エニックスとの協業を主導して「キングダム ハーツ」の誕生につなげ、同シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務めた。直近は Amazon Games でアジア太平洋地域のパブリッシングと事業開発を統括。
「パパ、できたよ」娘さんのフルコンボが原点
Nex Playgroundは、テレビにつないだ小さな本体のカメラがプレイヤーの動きを読み取るゲーム機です。ジャンプする、手を伸ばす、投げる、踊るといった体の動きが、そのままゲームの操作になります。
共同創業者でCEOのデイビッド・リーさんは、プレゼンテーションの冒頭で自身の原点をこう語りました。
「Appleより前、Nexより前に、僕には『SLAM DUNK』がありました。この作品を見て育ったから、こんなにバスケットボールが好きなんです。身長は宮城、フリースローは三井、ハートは桜木。そんな感じですね」
子どものころの夢は、NBAの選手になることでした。背の高さとバスケットボールの腕前ではそこまで届きませんでしたが、リーさんは技術の力でNBAに近づいていきます。2018年にはAppleのステージに立ち、バスケットボールの練習アプリのために作ったモーショントラッキング技術を披露しました。その1年後、NBAはNexのパートナーであり出資者になっています。
開発を進めるうちに、この技術はもっと大きなことができると気づき、ゲームの道へ舵を切りました。そのころよく思い浮かべていたのが、「ロールモデル」と呼ぶ2人です。スティーブ・ジョブズさんからは、大きく考えることと細部まで気を配ること。任天堂の岩田聡さんからは、ゲームはみんなのためのものだということを学んだといいます。
「岩田さんはWiiで、子どもとお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんを一緒に遊ばせたんです」
では、Nex Playgroundそのものはどんな場面から生まれたのでしょうか? 自身のお子さんと遊ぶなかで原点になった瞬間を尋ねると、リーさんは2人の娘さんの話をしてくれました。
「Nexを始めたとき、娘たちは6歳と1歳でした。今は15歳と10歳です。目を閉じると、製品のあちこちに娘たちとの思い出が刻まれているのが見えるんですよ。たくさんのものを、彼女たちのために作ってきました」

なかでも忘れられないのは、下の娘さんと音楽に合わせて遊ぶゲーム「Starri」をしたときのことです。一度もミスをしない「フルコンボ」で曲を終えた娘さんは、とても誇らしげな顔で言いました。
「パパ、できたよ」
「子どものことを誇らしく思える瞬間を、お父さんやお母さんに届けられる。それがこの製品のすばらしいところだと思っています」
話の途中、リーさんは「HUNTER×HUNTERを読んだことはありますか?」と問いかけてきました。作中には、主人公ゴンのお父さんが仲間たちと作ったゲーム「グリードアイランド」が登場します。プレイヤーが自分の体ごとゲームの世界に入り込み、ゲームの目的の達成を目指すというものです。ゴンたちはその中で修業を重ね、強くなって現実の世界へ戻ってきます。ゲームの中で身につけた力が、そのまま現実の自分の力になっているのです。
「これは、僕にとってのグリードアイランドなんです」
お父さんが、わが子のために作ったゲーム。Nex Playgroundには、娘さんたちのためにたくさんのものを作ってきたリーさんの思いが重なっています。
ソファから立ち上がって、家族みんなで遊ぶために
プレゼンテーションのスライドには、リビングでくつろぐ家族が、みんなそれぞれタブレットやスマートフォンを手にしている様子が映っていました。

「今の娯楽は座りっぱなしで、どんどん一人で楽しむものになっています。しかも心と体の健やかさより、夢中にさせることを優先して作られているんです」
そこでNexが掲げたミッションは、体を動かす遊びで家族と友だちをつなぐこと。WiiやマイクロソフトのKinectが切り開いた「体を動かして遊ぶ」ジャンルを受け継ぎながら、ソファに座っている家族を立ち上がらせ、一緒に遊ぶ時間を作ろうとしています。
ゲームは一人で遊ぶものというイメージもあるなかで、なぜ家族で遊べることにこだわるのでしょうか? その理由を尋ねると、リーさんは「その市場には、まだ十分な選択肢がないと考えています」と答えました。
「子ども、きょうだい、お父さんお母さん、親戚、おじいちゃんおばあちゃん。みんなが一緒に遊べるものを作りたい。僕たちが作りたいのは、そういうゲームです」
ねらいは、小さな子どものいる家族の3世代です。子どもは思い切り体を動かし、お父さんお母さんは運動を続けられる。操作がシンプルなので、おじいちゃんおばあちゃんも一緒に楽しめます。カンさんによると、Nexのコミュニティで最も年上のプレイヤーは96歳。ひ孫と一緒に遊ぶ動画を送ってくれたそうです。
手のひらにのる本体、つなぐのは電源とHDMIだけ
取材の最後に実機で遊ばせてもらい、まず驚いたのは本体の小ささでした。一辺7.6cmほどの立方体で、手のひらにのるくらいの大きさです。テレビ台に置いても場所を取りません。パステルカラーのかわいらしい見た目も、リビングになじみそうです。
「家族にとっては、シンプルであることが大切です。つなぐのは電源とHDMIだけで、すべてがこの1台に入っています」とリーさん。

本体から1.5mほど離れて立つと、すぐに体の動きを読み取ってゲームが始まりました。床に置いても動きの読み取りはスムーズです。メニューを選ぶときなどには、リモコンのようなコントローラーも使います。
試遊した「Fruit Ninja」では、画面に映る自分の影を動かして、飛んでくるフルーツを切っていきます。ソニックが登場するゲームでは、ジャンプしたり、手を挙げてパワーアップしたりしながら遊びました。
ゲームのデータは本体に入っていて、保存容量は64GBです。たくさん遊ぶと足りなくならないか聞くと、リーさんはこう説明してくれました。
「あまり遊ばないゲームはこちらで管理して本体から外しています。遊びたくなったらWi-Fiでいつでも入れ直せるので、容量を気にする必要はありません」
試遊しながら、山本さんは「日本の人は、いつも下の階の人を気にしますよね。だからジャンプしなくていいんです」と話していました。ソニックのゲームのようにジャンプを使うものもありますが、ジャンプしなくても遊べるゲームもそろえられています。
楽しさの正体は「自分で決める」「うまくなる」「つながる」
スマートフォンを見る時間も、座ってゲームをする時間も、それぞれに楽しいものです。そのなかで、体を動かす楽しさをどう考えているのでしょうか? リーさんに尋ねると、答えの手本はやはりバスケットボールでした。
「スポーツもゲームなんです。バスケットボールは人と関わり、体を使い、とにかく体を動かして楽しめる。どうプレーするかを自分で決められる自由があって、続けるほど上達していく手応えがある。そしてチームメイトと一緒にプレーしながら、つながりも生まれていきます」
リーさんはこの3つを「オートノミー(自分で決める)」「マスタリー(うまくなる)」「コネクション(つながる)」と呼び、Nexにとっての楽しさの定義にしています。バスケットボールのようなスポーツの精神を、どうすればリビングに持ち込めるか。それを考えながらゲームを作っているといいます。
好きなことを自分で選び、夢中で続けるうちにうまくなり、その楽しさを誰かと分かち合う。この3つは、子どもが自分の「好き」を育てていく道のりにも重なります。

ゲームの中で踊ったり投げたりしたことをきっかけに、本物のスポーツや習い事へ世界が広がった例はあるのでしょうか? そう聞くと、リーさんは「それこそが開発の意図です」と答えました。
「僕たちのスポーツゲームは、興味と自信、そして技術を育てるために作っています。逃げ込むための世界ではありません。子どもたちが現実の世界でスポーツをする準備を整えるものなんです」
プレジデントのトム・カンさんによると、北米のプロリーグであるNFL(アメリカンフットボール)やNHL(アイスホッケー)がNexと組んでそれぞれの競技のゲームを出し、NBA(バスケットボール)のゲームも予定されているのは、同じ理由からです。
「すべての子どもが、道具や公園、コーチに恵まれているわけではありません。でもリビングなら、その競技を体験して学べます。少し大きくなったら本当にやってみたくなるかもしれないし、試合を観たくなるかもしれない。リーグとしても、自分たちの競技にふれる人を増やしたいんです。だから彼らは、私たちの大きなパートナーになってくれています」
リビングにカメラを置いても大丈夫? 映像は本体の外に出さない
かわいらしい見た目とはいえ、カメラの付いた機器をリビングに置いたままにするのは、少し気になる保護者もいるのではないでしょうか? カメラカバーを標準で付けた設計の背景と、日本の保護者に伝えたい安心の根拠を尋ねました。答えてくれたのはリーさんです。
「すべては本体の中で動いています。ゲームは本体の中にあって、クラウドとやりとりする必要がありません」
リーさんはプレゼンテーションでも「子どものいる家族のための製品にとって、土台になるのは信頼です。AIも本体の中で動き、映像もすべてここで処理しています。クラウドに送られるものはありません」と話していました。

Nexの資料によると、モーショントラッキングのデータ処理はすべて端末内で完結し、全モデルにカメラカバーが標準で付いています。
もう一つの柱が、閉じた仕組みです。
「このシステムは閉じているので、ほかの会社のアプリを入れることはできません。いろいろなアプリを入れられるプラットフォームでは、プラットフォームが安全を保証しきれなくなります。私たちはどんなアプリも中に入れません。だからNexが全責任を持って、安全を保証できるんです」
遊べるゲームは、すべてNexが選んだものです。子ども向けサービスの安全・プライバシー認証「kidSAFE+」やアメリカの「COPPA(児童オンラインプライバシー保護法)」、ヨーロッパの「GDPR」に準拠し、家族のオンラインの安全に取り組む団体「FOSI(Family Online Safety Institute)」にも加盟しています。
リーさんが安心の理由としてもう一つ挙げたのが、ビジネスモデルでした。
「私たちのビジネスモデルはサブスクリプションです。この仕組みだから、保護者と同じ方向を向いていられる。広告は売りませんし、ゲーム内の課金もしません。シンプルで、誠実で、それでいて続けていける。私たちはこのビジネスモデルをそう呼んでいます」
アメリカでの参考価格は、本体がゲーム5本付きで299ドル。すべてのゲームで遊べる「Play Pass」は、3カ月49ドルまたは1年89ドルです。日本では、本体とサブスクリプションのどちらも日本向けの価格を用意する予定です。
「やりたくないことはやらない」山本恵美子さんが日本に届けたいもの
日本での展開を担うのが、日本法人ゼネラルマネージャーの山本恵美子さんです。キャリアの始まりはセガでした。
「セガの時代は、女性のクリエイターがほとんどいなかったころで、本当に2人しかいないうちの1人でした。開発の現場でディレクターをして、ディズニーのゲームを作っていたんです」
その後ディズニーにスカウトされ、スクウェア・エニックスとの協業を主導して「キングダム ハーツ」の誕生につなげました。カンさんとは、ディズニーでもAmazonでも長く一緒に仕事をしてきた仲です。ハードコアなゲームより、誰もが楽しめるタイトルを作るのが得意だったと山本さんは振り返ります。
「未来へいこーよ」では、好きなことを突き詰めて仕事や生き方に活かしている人を「スキシャリスト」と呼んでいます。仕事を選ぶときに「好き」は大切でしたか? そう尋ねると、山本さんはすぐにこう答えてくれました。
「ものすごく重要です。私、やりたくないことはやらないタイプなんです。やりたいと思ったから転職してきました」
「保証された道ではないので、なぜそのキャリアに進むのかと言われることもよくあります。それでも、やりたい、おもしろいと思ったほうへ舵を切ってしまうんです」
その山本さんが今、力を注いでいるのが日本での発売準備です。カンさんによると、アメリカで2024年に店頭販売を始めた当初は約1,000店舗だった取り扱いが、2026年には7,000店舗を超えました。数千の店舗には、実際に遊べる体験版を置いてきたそうです。リーさんによると、2025年11月にはアメリカでの販売台数でXboxを上回り、新しいブランドのゲーム機として20年以上ぶりにトップ3に入りました。
日本での発売にあたっては、本体とサブスクリプションの価格を日本向けに設定し、アメリカと同じように売り場で実際に試せる場も用意する予定です。ゲームでは、日本のキャラクターや作品(IP)およそ10件と話を進めていて、日本の音楽も取り入れます。こうした日本のIPを使ったゲームは、日本の開発会社と一緒に作っていく計画です。
「日本向けの商品をきちんと作ることも大事ですが、日本で開発したものを世界に持っていく仕組みにもなっています。そこは、私のこれまでの経験が生かせるところだと思っています」
カンさんは「日本は簡単な市場ではありません。だからこそ、日本のお客さまが日本版のNex Playgroundに何を求めているかを大切にしながら、敬意を持って参入したいと考えています」と話します。
「私たちは今、スタート地点に立ったところです。日本の家族にふさわしい製品を届けるために、長い目で取り組んでいきます。日本の家族が何を好きで、何をもっと求め、何を控えめにしてほしいと感じているのか。その声から学び続ける、長い旅の始まりだと考えています」
箱を開けたら、最初の一言は「一緒にやろう」
最後に3人へ、ひとつの場面を想像してもらいました。日本で発売されたNex Playgroundを家に持ち帰ったとき、保護者は子どもにどんな言葉をかけたらいいでしょうか?
「Nex Playgroundは、子どもの成長に寄り添う存在でありたいんです。友だちのように、いつでも行ける場所のように感じてほしい。だから、まずは『これが君のはじめてのゲーム機だよ』と言ってあげてください」とリーさん。
カンさんは、伝えてほしい言葉を2つ挙げてくれました。
「1つ目は『このシステムは信頼できるよ。知らない人は入ってこない。いるのは友だちと家族だけだから、安心してね』。2つ目は『一緒にやろう』です。お父さんやお母さんが『一緒にStarriやFruit Ninjaをやりたいな』と子どもに言う。おじいちゃんおばあちゃんも一緒です。家族をひとつにするものなんです」

リーさんは「安全で、健康的で、体を動かせる。だから保護者の方が『いつでも遊んでいいよ』と言えるものにしたい」と続けました。
山本さんが思い出したのは、子どものころの家族の光景でした。
「父がドンジャラを買ってきてくれて、家族みんなで『やろうやろう』って遊んだんです。ゲームって、セットアップとかちょっとハードルがあるじゃないですか? これはそれがまったくなくて、すぐに遊べる。だから、あのときと同じようなことが起きるんじゃないかと思っています」
娘さんの「パパ、できたよ」から始まった小さなゲーム機は、家族がリビングで顔を見合わせて笑う時間を、日本の家庭にも運んでこようとしています。
画像提供:Nex
取材を終えて
実物を前にして、まず本体の小ささに驚きました。短い時間で体を動かして楽しめるタイトルが多そうで、何時間も付き合うのは大変な大人にとってもうれしい方向性です。スポーツやエクササイズのゲームは、大人の運動不足やストレスの解消にも役立ちそうです。印象に残ったのは、広告が出ず、子どもが一人で遊んでも安心な内容のゲームを選べるサブスクリプションの仕組み。スマートフォンのゲームは内容がよくても、見せたくない広告が出てくることがあります。小さな子どものゲームデビューにも向いていると感じました。家族が同じ部屋にいても、それぞれが自分の画面を見ている。それは確かに感じているところです。少しの間でも一緒に遊んで笑い合えたらいいなと思います。日本での発売が楽しみです。(KAZ)
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