Pieces of milk chocolate stacked on a white plate with a blue diamond pattern on a wooden table

カカオを使わないチョコ風味のお菓子「チョコか?」が子どもに手渡す、未来の美味しい選択肢

つくる人
たゆまぬ努力を続け、生産品に愛情を注ぎ、好奇心や探求心、情熱を常に持って暮らしている「つくる人」にお話を伺い、人として生きていくのに必要なものに迫るインタビュー。

「これ、本当にひまわりの種で作っているの?」と思わず聞きたくなるトップバリュの「チョコか?」は、チョコレートの主原料であるカカオ豆を使っていないのに、まるでチョコレートのような味わいが楽しめるお菓子です。ひまわりの種からできていると知って食べても、その味には驚かされます。当たり前が少しずつ変わっていくこれからの時代に、美味しさを未来へつないでいく新しい選択肢として生まれたお菓子です。開発を担当したイオントップバリュの江崎妙子さんに、誕生の背景と、子どもたちへ手渡したい想いを伺いました。

江崎妙子さん
イオントップバリュ株式会社 江崎妙子さん プロフィール
トップバリュの輸入商品の企画・開発を担当。海外の展示会で出合った原料をもとに、ひまわりの種由来のチョコレート代替品「チョコか?」シリーズの開発を手がけた。

カカオを使わないのにチョコレートのような味「チョコか?」とは

「チョコか?」は、2025年6月にトップバリュから発売されたお菓子です。原料で主に使われているのは、ひまわりの種。チョコレートの主原料であるカカオ豆は、一切使っていません。

トップバリュ「チョコか?」ブロックタイプ

トップバリュ「チョコか?」ブロックタイプ。ひまわりの種由来の、新しい選択肢です

「ひまわりの種と、一部にグレープシード(ぶどうの種)パウダーを使っています。それを発酵させて焙煎し、細かく粉砕して、ココアパウダーのような濃縮した原料にしていきます。その技術がこの商品の核になっています」と江崎さんは説明します。細かな工程は原料供給元の企業秘密とのことですが、この原料のおかげで、カカオを使わずにチョコレートのような味わいが生まれます。

ラインナップは、板チョコのような「ブロックタイプ」のプレーン・ヘーゼルナッツ・シリアルパフに、ビスケットと合わせた「ウィズビスケット」。実際に口にすると、ひまわりの種からできているとは思えないほど、なめらかでまるでチョコレートのような味わいが広がります。

きっかけはカカオの価格高騰、海外の展示会での出合い

そもそも、なぜイオンはカカオを使わない代替チョコを作ろうと思ったのでしょうか? その背景には、近年のカカオをめぐる状況がありました。

「2024年ごろから、カカオ豆の価格高騰が続いていました。原因のひとつは天候不順です。日本のチョコレートは主に西アフリカのガーナなどのカカオ豆を使っていますが、その産地で天候の問題が起き、豆が十分に取れなくなってしまいました。そこから価格がぐっと上がってきたんです」

しかも、カカオの木は新たに植えても、豆を収穫できるまでに3〜4年かかるといいます。チョコレートが気軽に楽しめなくなる日が来るかもしれない。そんな課題意識を抱えていたときに、江崎さんは海外の展示会で、ひまわりの種から作られた、まるでチョコレートのようなお菓子と出合いました。

「『これは新しいんじゃないか?』と、感じてスタートしました」と江崎さん。原料を提供しているのは、ドイツ・ミュンヘンの企業「Planet A Foods(プラネットA フーズ)」です。同社が手がける、ひまわりの種由来のチョコレート代替原料が「ChoViva(チョビバ)」。カカオ豆を使わず、発酵と焙煎でチョコレートのような風味を生み出す、この分野のパイオニアです。オーツ麦やそら豆など、さまざまな原料で代替チョコを作る動きがあるなかでも「ひまわりの種がいちばん、チョコレートと言ってもいいと思えるくらい近かった」と江崎さんは振り返ります。

決め手は「味」、お菓子として日本の食卓に届くか

新しい原料と出合っても、それがそのまま商品になるわけではありません。江崎さんが何よりも神経を使ったのは「お菓子として美味しいか」という一点でした。

「原料が珍しいだけでは意味がありません。お菓子として成り立ったときに、日本のお客さまにも楽しんでもらえるか。原料だけでなく、できあがった製品として魅力があるかどうかに、いちばん気を配りました」

海外で売られているチョコレートには、甘みが強いものも少なくありません。いっぽう日本では、チョコレートを少しずつ味わって楽しむ人も多いもの。そうした好みに寄り添えるかどうかを、江崎さんは大切にしました。ナッツを加えたり、シリアルパフを合わせたり、ビスケットにかけたり。カカオを使っていないのに食べたときに違和感のない一枚を目指して、開発には1年近くをかけました。

「1年後の価格」を読んで決めた、ちょうどいい値段

「チョコか?」は、一般的なチョコレートと比べると少し高めの価格です。斬新な挑戦だけに、社内でも発売前は価格を気にする声があったといいます。ちなみにブロックタイプは1枚80g。「一般的な板チョコが50gほどなので、一回り大きいサイズです」と江崎さん。少し高めでも、食べごたえのある大きさになっています。

それでも江崎さんは、価格の「落としどころ」を慎重に見極めていました。開発には1年近くかかります。だからこそ発売時ではなく、1年後の日本でチョコレートがいくらで売られているかまで想像して値段を決めたのです。

「カカオの価格がどこまで上がるのか、想像しながら開発していました。初めて手に取っていただくにしても、あまりにも高いと意味がなくなってしまう。手に取りやすいところで、ちょうどよく届けられるか。そこの設定は本当に考えました」

相場の先を読み、多くの人が手に取れる価格に収める。そこには、作り手としての確かな判断が込められています。

「チョコか?」という問いかけと、遊び心のある形

「チョコか?」というネーミングにも、思わず引き込まれます。チョコレートではないけれど、まるでチョコレート。あえて言い切らないこの名前にした理由を、江崎さんに尋ねてみました。

「『チョコなのか?』と気になって、ちょっと見てみたくなる。そんな気持ちを持ってもらえたら、という思いがありました」

イレギュラーな形のチョコか? ブロックタイプ

パッケージを開けると現れる、遊び心のあるイレギュラーな形

パッケージを開けると、ブロックタイプはきれいな長方形ではなく、少しランダムでイレギュラーな形をしています。分けやすい長方形のデザインが多いチョコレートのなかで、この形はどこから生まれたのでしょうか?

「ヨーロッパでは最近、こうしたイレギュラーな形が流行っていて。新しい商品でもあったので、楽しさを感じてもらえるように取り入れました」

見た目の楽しさだけではありません。ランダムな形は手で割りやすく、家族や友だちと分け合って食べやすいのも、うれしいポイントです。

発売8カ月で100万個、若い世代に広がった理由

「チョコか?」は、発売から8カ月で100万個を突破しました。当初の想定の、およそ2倍のペースだといいます。

「まずは『珍しい』というところがきっかけでした。発売したときにはSNSでいろいろな方が話題にしてくださって。データを見ると、とくに『まいばすけっと』では若い世代のお客さまの構成比が上がっていました」

「まいばすけっと」は、イオングループが首都圏などで展開する都市型の小型スーパーです。新しいものや変わったものへの興味を、若い世代がすくい上げ、SNSを通じて広がっていったのでしょう。トップバリュといえば、これまでは「手頃な価格で美味しく」というイメージが強かったと江崎さんは言います。そのイメージを超えた斬新な挑戦は、社内の後押しも受けながら、新しい提案として送り出されました。

子どもが「考えるきっかけ」になる、未来のお菓子

取材のなかでいちばん印象に残ったのは、江崎さんが「チョコか?」を「未来のお菓子」と呼んだことでした。

「今、気候変動でこれまでの作物が育たなくなったり、ヨーロッパがとても暑くなったり、いろいろな変化が起きています。今まで当たり前に手に入っていたものが、手に入らなくなる日が来るんじゃないかと思っています」

チョコレートも、これまではカカオが当たり前でした。けれど、ひまわりの種でもチョコレートの味を楽しめる。それは「がまんではなく、新しい選択肢」だと江崎さんは考えます。

「きっかけは価格高騰でしたが、いちばんのポイントはそこではありません。新しい切り口、新しい選択肢だということ。未来に向けて楽しんでいけるお菓子なんです」

この選択肢は、子どもたちにとって「考えるきっかけ」にもなります。家庭で「これ、ひまわりでできているんだよ」と伝えると、子どもは「えぇっ!? わからなかった!!」と驚く。その小さな驚きが、食べものやカカオ、地球の変化について考える入口になるかもしれません。

「今の子どもたちが大きくなるころには、いろいろなジャンルでこうした動きが進んでいくかもしれない。そう想像したときに、子どもが考えるきっかけを、『チョコか?』を食べることで作れたらいいなと思っています」

美味しく食べながら、未来のことを少し話してみる。そんな食卓の会話まで運んでくれる商品です。

作り手として大事にしていること

最後に、作り手として大事にしていることを聞きました。江崎さんが挙げたのは、代替原料ならではの工夫でした。

「代替原料は、まだお手本になるレシピが少ないんです。だからこそ、どんな素材と組み合わせれば、お菓子として美味しく仕上がるか。そこをいつも、いちばん大事にしています」

その工夫は、商品の一つひとつに表れています。ヘーゼルナッツやシリアルパフを合わせたり、ビスケットにかけたり。ひまわりの種の風味を活かしながら、お菓子としての美味しさを追求してきました。さらに「チョコか?」は溶かして使うこともでき、バレンタインの手作りチョコのように、お菓子づくりにも活用できます。

前例の少ない原料と向き合いながら、組み合わせや使い方を一つひとつ確かめて「美味しい」に近づけていく。その積み重ねの先に「チョコか?」は生まれました。

取材を終えて
ご紹介を受けてお話を聞き始めたときは、開発者というよりも、世界中を飛び回りながらよい商品を探す「目利き」の方、という印象でした。ところが話を聞くうちに、その印象はいい意味で変わっていきました。江崎さんの言葉の芯にあったのは、当たり前が変わっていく未来を、がまんではなく新しい楽しみに変えて、子どもたちに手渡したいという想いです。カカオの価格高騰という重いテーマを「未来の美味しい選択肢」に変えてみせる。それはこれからの時代を生きる力そのものだと感じました。今度スーパーで見かけたら、子どもと「これ、何でできていると思う?」と話しながら、未来のことまで語り合ってみたくなる。そんな商品です。(KAZ)

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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