「人の話が聞けない」や「片付けられない」など日常生活における困りごとがある「少し付き合うのが大変」な人たち。その原因のひとつとして、脳にある特性が原因となっている「発達障害」が挙げられます。しかし、発達障害の患者を診る精神科医によると、こうした困りごとは「定型発達と呼ばれるいわゆるごく普通の人にも当てはまる」と言います。発達障害の人がよくある「困りごと」から発達障害の人が見ている世界を知り、我が子が同じような場面に出会ったときにどう対処や声がけをしたらいいのかを知るインタビュー連載第6回です。今回紹介する困りごとは「ネットゲームにはまりこんでいて寝食忘れてゲームばかりしてしまっている」です(株式会社アスコムさまより献本していただきました)

何かにはまると我を忘れてしまい生活が荒れ放題になってしまう子どもにはどうしたらいい?
未来:今回紹介する岩瀬先生の著書「発達障害の人が見ている世界」からの困りごとは「ネットゲームにはまりこんでいて寝食を忘れてゲームばかりしてしまっている」方です。
「慢性的な睡眠不足にもなって過集中とも言われる状態で家族も心配しています。定型発達の人であれば『これ以上は明日に差し障る』や『食事は摂らないと健康に悪い』などと考えてセーブしますが、この子の場合はこの瞬間しか見えていません」という相談でした。岩瀬先生は「ASD(自閉症スペクトラム障害)の人が何かにはまったら、無理にやめさせようとすると反発を生むだけになりがちなので、話し合うのは落ち着いているときにしてください。頭から否定せず、応援する気持ちを見せながら、日常生活を送れる範囲内で『好き』と向き合う方法を一緒に考えましょう」とアドバイスをされています。

岩瀬先生:発達障害の人は、ひとつのものに対する没入の仕方が常軌を逸しているように見えることがあるので、周囲の人は、その没入の仕方が周りが見えなくなって迷惑を及ぼすのではないかと考える人が多いです。ですが、その見方にはあまり賛成できません。ひとつのものに没入して寝食忘れるほど集中できるということは、決して悪いことではないのです。むしろ「悪いことではない」ということを周囲の人が態度で示したほうが、本人の自己肯定感が高まります。
未来:本にも「何かに没頭する特性は、専門分野でスペシャリストになる可能性にも通じます」とおっしゃっていますね。保護者の立場から言うと、何かに没頭するにしても、これはいいいけど、これはやって欲しくないというものがあるように思います。例えば、昆虫が好きで昆虫採集に夢中とか、魚が好きで魚を飼ったり釣りに行くことに夢中でそれらの知識が増えるようなことは、没入してもよいと思われやすそうです。ですが、例えばゲームやYouTubeの動画などにずっと没入しているのを見ると不安になります。親としては、これはゲーム依存症になっているのではなどと心配になると思うのですが、どのように区別すれば良いのでしょうか?
岩瀬先生:なかなか難しいところではあります。そういう子どもは、興味を持っていることに関しては集中できますが、興味がないときは、まったく集中ができないという特性があります。なので、ある程度はいたしかたないと思います。興味を持っている子を変えるのは非常に難しいので保護者の意識を変えていくことが大切だと思います。
未来:保護者の意識を変えることが大切なのですね。それでも、食事を摂ることも忘れるくらいずーっとゲームをしていたらゲーム依存症なのではないかと心配になるのですが、どうとらえたら良いのですか?
岩瀬先生:ゲーム依存症と発達障害との合併は非常にたくさんあると言われているので、それは合併の可能性があります。ですから、ゲーム依存症は依存症なので本人に対する対応の仕方でなんとかできるレベルの問題ではないので、医療機関を受診していただいて診断を受けたうえで考えましょう。ゲーム依存症の診断が降りなければ単にゲームが好きなだけということになると思います。
未来:ゲーム以外のことで依存症になりうるものは他にありますか?どのような場合に医療機関に行ったら良いか区別が難しいです。
岩瀬先生:アルコール依存も発達障害との合併が多いと言われていますし、薬物をたくさん飲みたがる子もいます。
未来:まず第一歩として、発達障害に関係なく依存症といわれているようなものに関してはまってしまっている場合は依存症の疑いがあると考えて良いのでしょうか?
岩瀬先生:依存症を特別な状態だと一般の人は考えがちですが、我々一般人でもコーヒー依存やチョコレート依存をもつ方がたくさんいらっしゃいます。依存症は問題だと言われていますが、一般の人も依存の方がいらっしゃいますから、「依存症」であると特別視せずに日常生活ではまっているものの延長線上にあると考えると良いと思います。
未来:人の嗜好性があるものには依存があり、いきすぎてしまうと依存症になる可能性があるということでしょうか?
岩瀬先生:依存症の線引きは非常に難しいのですが、一般の人でもお酒を控えるように注意してもなかなかやめられないですよね。ですので(紹介した例のゲーム依存の話に)話が戻りますが、親御さんからしても発達障害があると何か病的な状態と思ってしまい、その病的な状態を排除しようと考えるから不安になるのだと思います。そうではなくて自閉症に関しては(正式名称が)自閉スペクトラム症とある通り、「スペクトラム(正常との境界がグラデーションになっているという意味)」と考えられているわけですから、程度問題で誰にでもそのような症状の傾向があると受け入れていただくことが大事だと思います。
未来:理解しました。ありがとうございます。
岩瀬先生のお話を伺って
今回の相談は常軌を逸するほどはまりこんでしまう人のお話でした。我が家の知的障害を持つ自閉症の息子は鉄道がすごく好きで、実際に乗ったり見たりするのはもちろん、おもちゃや動画、タブレットのアプリなど電車に関連するものが家にたくさんあります。ですが、幸い寝食を忘れるほどはまってはいません。鉄道のおもちゃを片付けるときには「車庫にしまおうね」などと声をかけると比較的スムーズにしまってくれます。また、なくしやすい小さな人形のおもちゃを寝室まで持っていったりするので、対応策としてチャックで閉まる袋に「サンライズ瀬戸(寝台列車)」と書いて、寝る前に入れるようにしたら、素直に従ってくれました。このように好きなことを起点にして、片付けやお手伝いに波及できるようにうまく誘導できるといいですね。
今回のゲーム依存症のお話では、岩瀬先生が著書で「ゲームの先輩など、本人がはまっている分野の人に『ゲームの時間は自分でコントロールしよう』と発信してもらえると、聞く耳を持つ確率が高くなるでしょう」とお話されていました。第三者の意見を冷静に伝えるのも効果がありそうです(KAZ)
岩瀬先生の著書「発達障害の人が見ている世界」を抽選で5名にプレゼント!

記事でもエピソードを紹介している「発達障害の人が見ている世界」は、発達障害の人やその保護者が抱えている日常の困りごとを「なぜそうなるのか?」と「どうしたらいいのか?」をやさしく丁寧に解説している本です。今回は、この本を抽選で5名にプレゼント! 以下のフォームにメールアドレスとお名前、記事の感想を書いて応募してください。締切は12月8日(金)まで。たくさんのご応募、お待ちしております。
応募フォームはこちら(受付は終了しました)
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