発達障害の人が見ている世界

小学生なのに「順番が待てない」…発達障害の患者を多く見ている精神科医のアドバイスは?【連載第5回】

「人の話が聞けない」や「片付けられない」など日常生活における困りごとがある「少し付き合うのが大変」な人たち。その原因のひとつとして、脳にある特性が原因となっている「発達障害」が挙げられます。しかし、発達障害の患者を診る精神科医によると、こうした困りごとは「定型発達と呼ばれるいわゆるごく普通の人にも当てはまる」と言います。発達障害の人がよくある「困りごと」から発達障害の人が見ている世界を知り、我が子が同じような場面に出会ったときにどう対処や声がけをしたらいいのかを知るインタビュー連載第5回です。今回紹介する困りごとは「行列や順番を待つなど、日常生活でのシンプルなルールが守れない」です(株式会社アスコムさまより献本していただきました)。岩瀬利郎先生

行列の最後に並んで順番を待つという、シンプルなルールが守れない子どもにはどうしたらいい?

未来:先生の著書「発達障害の人が見ている世界」から今回紹介する例は「8歳の女の子が公園の遊具を使う順番が守れずよくお友達と喧嘩になってしまう。行列や順番待ちを守るように何度も説明しているのに、その時は理解できても数日経つと忘れてしまう」です。

岩瀬先生はASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如・多動性障害)の場合で「行列と順番待ちのルールをしっかり説明し、すぐに忘れても根気よく伝える」とアドバイスをされています。順番を守るということは単純なルールなので、これを根気よく伝えるのは保護者としては結構しんどいと思いますが…。

岩瀬先生:この困りごとに関しては、発達障害の子の特性上、言葉で何度か伝えてもそれだけでは理解がなかなか進まないので、できれば視覚的な情報として「このように並びましょう」というパネルを用意して毎回そのパネルを提示することで、口で何度も注意するよりもルールを理解しやすくなると思います。

未来:なるほど、パネルを作る手間はかかりますが、1回作ってしまえばそれを毎回見せるだけでよくなります。口で言うよりも保護者のストレスは減りますね。

岩瀬先生:視覚的な情報にして提示する方が、伝える方もストレスが少ないので良いと思います。

未来:例えば脱いだ衣服は洗濯機に入れるなど、順番待ちの他にも生活していくうえでルールがいろいろあると思うのですが、それらも1つ1つ視覚的な情報に移して対応していくとよいのでしょうか?

岩瀬先生:まず、脱いだものを洗濯機に入れるということは生きていく上でそんなに大したことではないのかと思っていて、そんなことでいちいち怒るのかなという気が私としてはあります(笑)。

未来:(笑)。うちの子どもは何度言ってもできないしやらないことが多々あり、もう言い続けて何年も経っているのですが、どうやったら分かってくれるのか悩みながらずっと子育てをしています。先生のおっしゃる通り、洗濯する衣服を脱いだら洗濯機に入れることは命に関わることではないのでどちらでも良いのかもしれないのですが(笑)、そうではないことも含めて何回言っても直らないものはどうやって解決すれば良いのかと思っています。根気強くその子が分かる形で説明していくということなのでしょうか?

岩瀬先生:それも必要なんですが、やはり健常発達の人でも脱ぎ散らかしている人はたくさんいますよね。なので、そこまで解決しないといけない問題として思えませんし、1人暮らしするようになれば、脱ぎ散らかしていたら誰も片付けないのでそのままになっているだけで、あとで自分で片付けないといけなくなります。ですので、お答えできるのは1人暮らしするようになれば直りますよということですね。

未来:今、しつけておかないと大人になって汚部屋に暮らす人になってしまうのではないかと心配しながら日々説明したり怒ったりしているのですが(笑)。やはり、それも見守るということなんでしょうか。

岩瀬先生:人間は怠惰な生き物ですので必要性がないと学ばないと思います。もし必要性がなくても繰り返し教示すれば必ずみんな学習できるのだとすれば、英語はこれだけ長いこと勉強しているわけですから、みなさんは英語がペラペラでないとおかしいはずですよね。ですが、英語がペラペラな人ってあまりいません。みなさん押し並べて大学卒業したけど英語が喋れなくて、会社に入って海外へ行く時に最初は全然喋れなかったけれども、そこで必死になって徐々に喋れるようになったという体験をおっしゃる方が多いですよね。

発達障害の人が見ている世界

環境が変わると、それまでできなかったことができるようになることもあります。

このように「自分ががんばらないと生きていけない」という状況にならないと、繰り返し教示されても人間の認知の性格からいって身に付かないと思います。例えば、シンガポールやマレーシアの人は日本人よりも英語ができる人が多いです。裏を返せば、そのような国では英語がしゃべれないと生活できないからです。日本国内にいる限り英語がまったくできなくても生活するのにほとんど困りませんし、そのような環境の中で英語をいくら繰り返し勉強しても身に付きにくいので、必要に迫られないと身に付かないことは(脱ぎ散らかして片付けないことと)共通していると思います。

岩瀬先生のお話を伺って

「人間は怠惰な生き物」というのは、精神科の先生が言い切ると本質的だなあと思いました(笑)。順番を守らない話と洗濯物を洗濯機に入れるかどうか、やはり他人に迷惑をかけることでいうなら、前者のほうが直したほうがよく、後者はできていなくても(一人暮らしになったら困るけど)大きな問題ではありません。岩瀬先生は「人間は怠惰な生き物」ということを踏まえて「困りごと」のなかでも優先順位をつけて対応してくださっている印象があります。子育てをしていると、ついあれもこれもできるようになってほしいという気持ちから口うるさくなってしまいがちですが「これくらいはできなくてもいいか」という心の余裕を保護者のほうが持っているほうが、お互い生きやすいのではないかと思いました(KAZ)

岩瀬先生の著書「発達障害の人が見ている世界」を抽選で5名にプレゼント!

発達障害の人が見ている世界

記事でもエピソードを紹介している「発達障害の人が見ている世界」は、発達障害の人やその保護者が抱えている日常の困りごとを「なぜそうなるのか?」と「どうしたらいいのか?」をやさしく丁寧に解説している本です。今回は、この本を抽選で5名にプレゼント! 以下のフォームにメールアドレスとお名前、記事の感想を書いて応募してください。締切は12月8日(金)まで。たくさんのご応募、お待ちしております。

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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