発達障害の人が見ている世界

「小学校の授業で座っていられずにウロウロしてしまう」子どもへの精神科医のアドバイスとは?【連載第4回】

「人の話が聞けない」や「片付けられない」など日常生活における困りごとがある「少し付き合うのが大変」な人たち。その原因のひとつとして、脳にある特性が原因となっている「発達障害」が挙げられます。しかし、発達障害の患者を診る精神科医によると、こうした困りごとは「定型発達と呼ばれるいわゆるごく普通の人にも当てはまる」と言います。発達障害の人がよくある「困りごと」から発達障害の人が見ている世界を知り、我が子が同じような場面に出会ったときにどう対処や声がけをしたらいいのかを知るインタビュー連載第4回です。今回紹介する困りごとは「授業中でもじっとしていられなくて、ウロウロ、ソワソワしてしまう子どもにどうしたらいい?」です(株式会社アスコムさまより献本していただきました)。

岩瀬利郎先生

授業中でもじっとしていられなくて、ウロウロ、ソワソワしてしまう子どもにどうしたらいい?

未来:岩瀬先生の著書「発達障害の人が見ている世界」から紹介する今回の相談は「学校でも授業中に教室を歩き回るなど、多動性・衝動性が強くてじっとしていることができない。刺激や興味にすぐ反応してしまい自分で脳内の欲求にブレーキをかけることが苦手」というお子さんです。先生は「無理やりじっとさせると、むしろ不安感や緊張感が強く出てしまうので、積極的に体を動かす時間をつくってあげましょう」とアドバイスされています。

具体的には「家庭では窓拭きや犬の散歩、学校ではプリント配りや体育準備係など体を動かす役割を与えてあげることでエネルギーが発散されるだけでなく、体のコントロールを覚えることにつながります。」また、「食事中は『半分まで食べ終わったら一度歩いてもいいよ』といったちょっとしたルールを定め、その範囲内で動くことを許してみましょう」と書かれています。

前回と同様に保護者の意識の問題だと思うのですが、学校生活の際に子どもがウロウロ、ソワソワしてしまったり授業を聞かずに歩き回ってしまったりすることは、保護者としては心配なこと。授業や他のお子さんの邪魔になっているのではないか、集団行動をできるようにするためにどうしたいいかすごく悩んでいると思います。そのような保護者に対して他の子の迷惑にならないように過ごすためには、どうしたらよいと思われますか?

岩瀬先生:まず、ただ座っていることが難しい子ども向けに、運動しながら座ることのできる環境を作ってあげている学校があります。授業中に机に座りながら自転車のペダルの部分を取り付けたデバイスを使って自転車を漕いでいるような動作ができます。

未来:なるほど、座っているだけで体が動かせると子どもは落ち着いて座っていることができるという仕組みですね。

岩瀬先生:あとは、ペン回しは行儀が悪いとおっしゃる先生もいますが、ペン回しをしているほうがADHD(注意欠如・多動性障害)的な特性のあるお子さんは何もしないでいるよりは集中できます。

未来:やはり、先生に子どもの特性や状況を理解してもらい、学校で配慮してもらうことが重要なんですね。

発達障害の人が見ている世界

岩瀬先生:はい、学校によってはそのようなシステムを取り入れているところはありますし、日本ではまだそこまで多くはないものの外国の学校ではよくあります。

未来:保護者も物怖じせずに、先生と相談しながらその子にとって何が一番良い環境かを作ってあげることが大事なんですね。

岩瀬先生:はい、そうだと思います。

未来:わかりました。ありがとうございます。もう一つ質問なのですが、発達障害の傾向がある子どもは大人になってもその傾向が続くということですか?

岩瀬先生:基本的に発達障害は大人になっても治癒するものではないと考えられていますので、当然大人になってもそのような傾向は継続されると思います。ただ、症状は神経系の成長ともに弱まってくると思います。

未来:わかりました。ありがとうございます。

岩瀬先生のお話を伺って

「子どもの困りごと」への対応をする際、子ども自身を変えるのではなく、周囲の環境や道具などを使って解決させる方法もあることを、この連載を通して学びました。今回のお話も子どもの衝動を抑え込むのではなく、その衝動を「役割」などの別の形に変えて利用したり、常に体を動かせるようにして環境面で解消させたりするアイデアは素晴らしいと思いました。「困りごと」を逆にうまく利用する方法を考えるというのは、健常児のお子さんを育てていくうえでも、持っておいてよい視点だと感じました(KAZ)

岩瀬先生の著書「発達障害の人が見ている世界」を抽選で5名にプレゼント!

発達障害の人が見ている世界

記事でもエピソードを紹介している「発達障害の人が見ている世界」は、発達障害の人やその保護者が抱えている日常の困りごとを「なぜそうなるのか?」と「どうしたらいいのか?」をやさしく丁寧に解説している本です。今回は、この本を抽選で5名にプレゼント! 以下のフォームにメールアドレスとお名前、記事の感想を書いて応募してください。締切は12月8日(金)まで。たくさんのご応募、お待ちしております。

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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